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『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』感想(ネタバレ)…父は肩身が狭いんです

ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

父は肩身が狭いんです…映画『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Jack Reacher: Never Go Back
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年11月11日
監督:エドワード・ズウィック
ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

じゃっくりーちゃー ねばーごーばっく
ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』物語 簡単紹介

元アメリカ軍のエリート秘密捜査官ジャック・リーチャーは、危機対応能力に関しては抜群のスキルがあり、多くを経験してきた。しかし、現在は孤独に街から街へと放浪の旅を続けていた。ある日、ケンカ騒ぎの末に保安官に連行されそうになるのを機転を活かして上手い具合に回避する。そして、元同僚のターナー少佐に会うため軍を訪れると、ターナーはスパイ容疑で逮捕されていることを知る。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』の感想です。

『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』ネタバレなし感想

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トム・クルーズ、なおも奮闘中

本作は「頑張ってアクションするトム・クルーズを見守る」シリーズの最新作です(注:勝手につくりました)。

『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(2015年)にて、まだまだいけるぜなところを見せてくれたトム・クルーズ。2016年も奮闘してます。

本作『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』は続編作品です。タイトルだけみると第1作なんてあったか?という感じですが、第1作の邦題は『アウトロー』(2012年)だったのでわからないのも無理はない(原題は「Jack Reacher」でした)。でも、第1作を見ていなくても大丈夫なお話しなので、気にする必要はありません。

というか、今作は前作と比べて良くも悪くも作品性がかなり変わっています。

トム・クルーズ演じる主人公のジャック・リーチャーは、“はみ出し者”であるゆえに社会から外れた一匹狼として、独自の価値観で活躍していくのが魅力だった前作ですが、今作では一匹狼ではありません。本作のエドワード・ズウィック監督も明言しているとおり、作品の主軸に疑似家族的なドラマが加わっています。ちなみに監督のエドワード・ズウィックは、過去作でいえば日本では『ラスト サムライ』(2003年)が有名です。『ラスト サムライ』にも疑似家族的な要素がありましたね。

また、前作では、突如発生した無差別狙撃事件の真相に、警察さえも上回る専門的知識を駆使して迫っていくというミステリーサスペンス要素もありましたが、今作ではそれもなし。ジャック・リーチャーのプロフェッショナル感も抑えめです。その代わり、スーザン・ターナーという新しいパートナーの活躍が目立ちます。このスーザン・ターナーを演じる“コビー・スマルダース”という女優、誰だろうと思ったら、『アベンジャーズ』シリーズで秘書的ポジションとして登場するマリア・ヒルを演じていました。サポート役にしては存在感ある人でしたから、本作で見事に出世です。

これらをもって「作品にさらなる広がりが増えた」とプラスに解釈するか、それとも「普通のアクション映画になった」と捉えるかは人それぞれですが、少なくとも前作ファンは「こんなのジャック・リーチャーじゃない」とガッカリするかもしれません。そんなの気にてないよという人は、普通に楽しめるんじゃないでしょうか。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):明らかに普通じゃない男

夜、保安官が現場に駆け付けます。そこは小さなダイナー。目撃者によれば、ある男が一瞬で相手をぶちのめしたそうです。その男は今も現場のダイナーに平然と座ってます。

銃を突きつけ、こっちを向けとその男に指示する保安官。「暴行罪で逮捕します」と拘束しますが、そのジャック・リーチャーというらしいその男は余裕そうにこんな発言をします。

「90秒で2つのことが起こる」「まずあそこの電話が鳴る」「次にお前が手錠姿でブチ込まれる」

突拍子もない予言に笑う保安官たち。一体何を言っているのか。

しかし、本当に店の電話が鳴りました。男は犯罪特査部のターナー少佐からだと言います。「あんたと表の4人は軍の敷地内で犯罪行為をした」とまで。

さっぱりわからない保安官は、電話におそるおそる出ます。すると警察が到着。保安官は有無を言わさずに逮捕されました。

ひと仕事終えたようにジャック・リーチャーはワシントンDCへ向かいます。ターナー少佐に会いに来たはずでしたが、いたのはモーガン大佐という男。「彼女は解任された」と驚くべき発言をします。逮捕されて軍法会議待ちでスパイ容疑だとも。

不審に思ったジャック・リーチャーは事情を知るモアクロフト弁護官のもとへ。「君の履歴に問題がある」とその弁護官は告げ、「父親失格」だとまで言います。けれども子どもはいないので変です。しかし、キャンデス・ダトンという女性がジャック・リーチャーを父親とする15歳のサマンサという子がいると主張し、養育費を求めているらしく、初耳でした。

それはともかくなぜターナー少佐がこうなったのか。「起訴の証拠は?」と尋ねると「自宅から極秘情報を収めたハードドライブを没収し、その情報を売っていた」と言います。

これは裏がある。そう直感したジャック・リーチャーは独自に行動を開始。すると尾行に気づきます。自分を見張っていた男たちを適度に威嚇し、とりあえず追い払います。

今度はその自分の娘だという女を確認。けれども相手もなかなかで、つけていたことが女にバレます。「キャンデスの娘か?」と聞くと「ママは客商売はやめた。一緒に住んでいない」と立ち去っていきました。

再びモアクロフト弁護官に会い、大手軍事請負企業「パラソース」に尾行されていること、ターナーも同じく狙われての結果なのではないかと質問。なんでも彼女は部下をアフガニスタンに派遣し、その部下2人が殺されたらしいです。ますます怪しい。

次の日、ジャック・リーチャーはモーガンに呼ばれ、モアクロフト大佐が殴り殺されたという衝撃の知らせを聞き、その場で殺害容疑をかけられ、逮捕されました。

重警備刑務所へ連行。そこにあの尾行してくる男たちが訪問。危険を察知したジャック・リーチャーは隙を見て自分を連行する男をぶちのめし、制服を奪います。さらに捕まっているターナーを救出、最短行動で的確に車を奪い、逃走

こうして逃亡罪、反逆罪を重ねた2人は謎の陰謀に立ち向かうことに…。

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トム・クルーズも圧倒する女性陣

前作『アウトロー』は、イマドキのアクション映画ではそうそうないオールド・スタイルな作風が印象的でしたが、今作で追加された主軸である疑似家族もある意味昔からある古典的な要素です。

前作で面白かった、ジャック・リーチャーが周囲から浮いているがゆえのギクシャクしたコメディが今作でも健在で、それが疑似家族から浮くというかたちで表現されているのが本作独自の愉快さ。ジャック・リーチャーを家族に馴染めない父親っぽいキャラにしているのは、製作者側が明らかに狙った結果です。ターナーとサマンサに食事を持っていったジャック・リーチャーが受け取ってもらえるもののバン!とドアを閉められるとか、ターナーがサマンサに格闘術を教えるのを見ているだけとか、常に疎外感のあるジャック・リーチャーが可笑しい。なんかトム・クルーズに合ってます。

ただし、これはギャグとしては確かに面白いのですが、ジャック・リーチャーのアイデンティティとは上手くかみ合っていないようにも思ってしまったのが本作の残念さ。社会から孤立するジャック・リーチャーが既存の社会に暮らす人たちを翻弄するのが魅力なのに、本作では冒頭、つまりジャック・リーチャーがひとりのときはいい感じだったのに、劇中大半はジャック・リーチャーが翻弄されっぱなしです。

これもあれも原因はターナーとサマンサという2人の新キャラにある気がします。

ターナーは一般人とはとても思えない強烈なキャラです。修羅場への場慣れさでいえば、ジャック・リーチャーと互角。何食わぬ顔でとりあえず身の回りのものを武器にする彼女は普通じゃないです。レストランの厨房で戦いのシーンなんて、武器を探すとなったら一般人であれば包丁を手にしそうなのに、なんだあの鈍器は? アメリカ軍にはこんなのがゴロゴロいるんだろうか…。ターナーに限らず、悪役も電話で殴るとかしてましたから、たぶんこの世界では殴打が最強なんでしょう。相変わらず痛さが伝わるアクションは良かったです。

サマンサも負けていません。まず初っ端からジャック・リーチャーの尾行に気付くという才能を発揮。もうこの時点でただものじゃないんですが、さらに後のシーンでは大胆な盗みを平然と行います。バックまるごと盗むのはさすがにすぐばれちゃうだろうと思わなくもないですが、ジャック・リーチャーとターナーは気にしてない様子でした。

この疑似家族、狂ってる…。ターナーとサマンサはラストで社会復帰し、普通の生活に戻ったみたいに描かれていましたが、あの2人こそアウトローじゃないですか。とにかく2人のキャラがたちすぎてジャック・リーチャーが霞んでました。

全体的にジャック・リーチャー自身がこの映画に馴染めていない感じがしました。「俺の居場所はどこだろう…」と。

別作品の話ですが、作品の方向性を早期に確立した『ジェイソン・ボーン』シリーズは、最新作でマンネリ化の罠にハマってました。これはこれで問題ですが、一方の『ジャック・リーチャー』シリーズは、2作目で作品の方向性がぶれ始めるというのは、若干心配です。

でも、思えば『007』シリーズだって作品の方向性が確立したのは数作品つくってからでしたし。長い目で見守ってあげるくらいでいいのかも。5、6作くらい続いたら方向性が確立するかもしれませんし…。そんなに企画がとおるのかという問題は別にあるけれど。というかトム・クルーズはそんなにもつのだろうか、『ジャック・リーチャー』シリーズよりもそっちが心配です。

『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 38% Audience 42%
IMDb
6.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. ジャック・リーチャー2 ネバー・ゴー・バック

以上、『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』の感想でした。

Jack Reacher: Never Go Back (2016) [Japanese Review] 『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』考察・評価レビュー