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『エンド・オブ・キングダム』感想(ネタバレ)…アメリカはどこまで馬鹿なの?

エンド・オブ・キングダム

アメリカはどこまで馬鹿なの?…映画『エンド・オブ・キングダム』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:London Has Fallen
製作国:イギリス・アメリカ・ブルガリア(2016年)
日本公開日:2016年5月28日
監督:ババク・ナジャフィ

エンド・オブ・キングダム

えんどおぶきんぐだむ
エンド・オブ・キングダム

『エンド・オブ・キングダム』物語 簡単紹介

ホワイトハウス陥落事件から2年。イギリスの首相が不可解な死を遂げ、ロンドンで行われる葬儀に各国首脳が出席することになる。しかし、史上まれにみる厳戒態勢の中でも各国首脳を狙った凄惨な同時多発テロが発生し、ロンドンは未曽有の大混乱に包まれる。孤立した米大統領と身辺を警護するシークレットサービスは、この想定していない危機を切り抜けられるのか…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『エンド・オブ・キングダム』の感想です。

『エンド・オブ・キングダム』感想(ネタバレなし)

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雑さも勢いも前作以上!

アメリカ大統領に一番必要な素質は何か。それは…とりあえず走って、殴って、銃をぶっ放す「豪快さ」です。えっ、政治的な駆け引きとか、交渉力とか、そんなスキルはいいのかって? いいんです、だって有事の際はそんなの役に立ちませんから。でも、それは軍隊や護衛の仕事だろうって? 何言っているんですか、大統領が強ければそれに越したことはないでしょう。それにカッコいいしね。

そんなアホ思考を映画から学んでしまった皆さん。お待たせしました。最強のアメリカ大統領伝説にまた新たな1ページを刻み込んだ映画『エンド・オブ・キングダム』が爆誕しました。

本作は2013年に公開された『エンド・オブ・ホワイトハウス』の続編となっています。前作は、アメリカの象徴でもあるホワイトハウスがテロリスト集団によって占拠され陥落してしまい、米大統領専属シークレットサービスの生き残りマイク・バニングが果敢に大統領を救出するというストーリーでした。前半はあまりにもあっけなくテロリストに襲撃されるホワイトハウスの脆弱っぷりが見物であり、後半の“ジェラルド・バトラー”演じる主人公が一人でテロリスト集団をねじ倒していく強引な展開との落差にびっくりします。見ていない人のために簡単に言ってしまえば『エンド・オブ・ホワイトハウス』は、超強い主人公が悪党どもをバッサバッサとぶちのめす系のジャンル映画です。

戦う大統領映画と言えば『エアフォース・ワン』(1997年)などの代表作がありますが、この『エンド・オブ・ホワイトハウス』はそれにバディ要素を強めにした感じですね。

以前の監督の“アントワン・フークア”は『イコライザー』をこの後撮っていますので、そういうノリの映画の仲間として割り切って見ることをおすすめします。ドラマとかリアルさなどは二の次となっていますが、観客の脳みそにプロテインを注入してくれるので、いい「肉体改造(脳みそのみ)」になります。

そんな『エンド・オブ・ホワイトハウス』の続編である本作『エンド・オブ・キングダム』。ちなみに続編だからといって前作を必ず見ておく必要は全くない内容になっているので安心してください。

今度は舞台をイギリス・ロンドンに移し、案の定、ロンドンがテロリスト集団によって占拠され陥落します。タイトルどおり。ロンドン市民はいい迷惑ですが、もうこのアメリカ大統領をこのロンドンの土地に迎え入れてしまったのが運の尽きと思うしかない…。

物語の展開は前作と同じで、ノリもそのままなのですが、前作以上に…雑。いや、前作より派手なシーンは増え、ストーリーはより大味になって、この手のジャンル映画好きにはむしろご褒美かな…。

こうした映画自体の雑さは、映画製作の段階からつまずいていたことも影響しているのかもしれません。前作の監督だったアントワン・フークアは続編となる本作の脚本が気に入らず監督を辞退、フレデリック・ボンドが次の監督に決まるも彼もまた監督を離脱、なんとか最終的な監督に落ち着いたという経緯があります。

一体どんなドッタンバッタンがあったのかは知りませんが、製作上でもきっとエンド・オブな大混乱が起きていたら、面白いのになぁ…(妄想です)。監督同士で殴り合いとかしていると最高で、撮影班の大半が爆破で死ぬ…とかね。うん、映画化できる。

といってもこの雑さは本作の魅力でもあり、いわゆる「脳筋」に酔いしれる楽しみに特化したことで、好きな人にはより堪らないパワーアップをとげました。とりあえず難しく考えずに見ましょう。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『エンド・オブ・キングダム』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):世界のトップが集まる

テロ事件が頻発する世界。そのテロを裏で扇動しているとされているのが武器商人のアミール・バルカウィでした。

パキスタンのパンジャブ地方ラホールの北80km。バルカウィの一家がこの辺境で集まっていました。宴で大勢が集って賑わうその場所を上空からドローンがとらえていました。

その空撮映像をモニタリングするネバダ州のクリーチ空軍基地。MI6から標的を確認したとの情報が入り、攻撃が許可されます。その数秒後、バルカウィのいる地点はミサイル攻撃で吹っ飛びます。

2年後。ワシントンD.Cでは大統領のシークレットサービスであるマイク・バニングベンジャミン・アッシャー大統領と和やかにランニング。2人は幾多の危険も乗り越え、特別な信頼関係で結ばれていました。

マイクはもうすぐ赤ん坊が生まれます。妻のリアは子ども部屋にカメラが多すぎると文句たらたら。マイクはパソコンを開いて、書きかけの退職願に取り掛かります。ずっと人生を捧げてきた仕事を辞めるのには葛藤がありますが、子どもの未来を考えるとこれは現実的な判断です。

その頃、ホワイトハウスでは大統領が緊急の電話を受けます。イギリス首相のジェームズ・ウィルソンが急逝との報でした。

急遽、ロンドンで葬儀が行われることになり、世界各国の首脳陣が参列します。当然、アメリカからはベンジャミン・アッシャー大統領が向かうのですが、その護衛に最も頼れるマイクが任されます。側近は移動時にとくに危険があると判断し、参加を見送れないかと提案しますが、同盟国である以上、それもできません。マイクは「いつもどおりです」と冷静。アメリカの副大統領アラン・トランブルも休暇から帰ってきました。

イギリスの内閣府では、統合安全委員会が開かれ、内務大臣のローズ・ケンター、ロンドン警視庁総監のケビン・ハザード、後任首相のレイトン・クラークソン、MI-5のジョン・ランカスター長官が参加し、どうやって無事に告別式を済ますか議論していました。世界各国を呼ぶのでその対応にミスはできません。ただ、外交関係に亀裂が入っているロシアは招待していません。

マイクはリアに「断るのが難しくて…」と謝りますが、リアはお腹の子どもと帰りを待つと言ってくれます。

いよいよその日。かつてない厳戒警護の中、各国の首脳陣が勢揃い。ドイツ、カナダ、日本、イタリア、フランス…それぞれがバラバラのルートです。

仕事に就くマイクは「嫌な感じはする」と不穏さを肌で察知していました。

そして惨劇が起きることに…。

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強い男が活躍するには馬鹿が必要

前作以上にあっけなく襲撃されるロンドン。『エンド・オブ・キングダム』の名は伊達じゃない。確かに襲撃の方法も、民間人や警察にテロリストが交じっていたという前作と全く同じ展開。この世界の先進国は何も学んでいません。なにが先進なのだろうか…。

前作はアメリカのシークレットサービスの無能っぷりが露見してましたが、今回はスコットランドヤードが無能になる番です。というか万全の体制を用意していた描写として戦闘機やスナイパーか映りますが、この後のテロ騒動時に活躍はしません。ようやく物語後半で動き出したSASも、テロリストのニセSASの方が早く駆けつけるという役に立たなさ。たぶんあれです。疲れていたのかな…。

前作はアメリカが馬鹿でしたが、本作はイギリス以外の他の国も馬鹿な感じになってます。日本の総理も登場しますが、なぜか渋滞から抜けられないでいるうちに、橋が爆破され車ごと川に落ちていました(なんか日本が一番マヌケでした)。でも、あんなに目に遭って回避できるのは不可能なので、日本でなんら落ち度はないのですけど。あと、ロシアはイギリスが嫌いだからロンドンの葬儀に参加しなかったというのが笑いどころ…ロシアが一番賢いんじゃないか。

主人公を活躍させるために周りの人間や国家さえもどんどん“馬鹿”にしていった結果がコレなのでしょう。ただ、個人的にはこの“エンド・オブ・キングダム”になっちゃう序盤のパニック描写は楽しく見られました。真面目にツッコむなんて論外ですから。右往左往する政府や市民を「まるでごみのようだ!」と嘲笑えるくらいの心の広さがあればオール・オッケーです(何がだろうか…)。

このご時世にこんな映画を作るんですから、やっぱり製作陣はどうかしているぜ…。

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街の壊滅は致し方無い犠牲

『エンド・オブ・キングダム』はアクションさえ楽しめればそれでいいのですが、アクション超大作と呼ぶには前半の突拍子もないアホな映像のオンパレードと比べて、その後に続くのはあまりに普通すぎるアクションシーンの連続な気がして、前作以上の楽しさは感じなかったかな…。前作はまだホワイトハウスという限られた空間でどう闘うのかという緊迫感がかろうじてありましたが、本作はロンドンを意味なくあちこち巡るので緊張感が持続しないのが残念。せめて、どこかに籠城し続けてほしかったなとも思うのですが。ロンドンにはそんな頑丈な場所はなかったのでしょうね。じゃあ、仕方がない。

ただ、良かった部分もあって、マイク・バニングとベンジャミン・アッシャーのコンビがすっかり完成されて、最高のバディになっているので、妙な安心感があります。もうこいつらがいればなんとかなるだろうという予定調和ともいえますが、でもそこがいい。この作品がシリーズ化して、ファンができるのも納得。この二人の活躍を見るには、毎回、街がひとつ陥落しないといけないのが難点ですが、2~3の街の壊滅も目をつぶりたくなるほどの気分もわからなくもない。

一方で、だからこその最後、この映画のラストが気になってしまい…。いくら難しく考えず見ようと努めても、本作のオチにはツッコまざずにはいられない人が出てきて当然の展開でしょう。テロの首謀者をドローン空爆してお終いという究極の雑さ。そもそもテロの首謀者がロンドンでのテロを企てたきっかけが、アメリカのドローン空爆に民間人の親類が巻き込まれたからという理由だったにもかかわらずにです。一応、最後の空爆の際は周囲に民間人はいなさそうでしたが、それでも普通に町中を爆破してました。その後、良いこと風な演説をするモーガン・フリーマン演じる副大統領が、すごく馬鹿な人にしか見えなかったという…。そこは素直にマイク・バニングとベンジャミン・アッシャーがこれからも暴れられるように街を壊滅させてくださいと本音を言えばよかったのに(ええぇ…)。

今度はどこが壊滅するのかな…。でも、大丈夫。まだ主要な街はたくさんありますからね。あと50作は作れるでしょう。

『エンド・オブ・キングダム』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 26% Audience 51%
IMDb
5.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★
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関連作品紹介

『エンド・オブ・キングダム』の続編の感想記事です。

・『エンド・オブ・ステイツ』

作品ポスター・画像 (C)LHF Productions,Inc.All Rights Reserved.   エンドオブキングダム

以上、『エンド・オブ・キングダム』の感想でした。

London Has Fallen (2016) [Japanese Review] 『エンド・オブ・キングダム』考察・評価レビュー