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『カンフー・パンダ3』感想(ネタバレ)…日本はパンダ好きじゃないのか!

カンフー・パンダ3

日本はパンダ好きじゃないのか!…Netflix映画『カンフー・パンダ3』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Kung Fu Panda 3
製作国:アメリカ(2016年)
日本では劇場未公開:2016年にNetflixで配信
監督:ジェニファー・ユー、アレッサンドロ・カルローニ

カンフー・パンダ3

かんふーぱんだすりー
カンフー・パンダ3

『カンフー・パンダ3』物語 簡単紹介

強敵を倒していくというさまざまな経験を重ね、伝説の“龍の戦士”としてカンフーを極めたポーは、仲間に体技を教える立場になった。しかし、慣れない指導者という立場に悪戦苦闘していた。指導する方法はまだ身につけていないが、これも慣れるしかない。そんなポーのもとに生き別れとなったはずの父親がふらりと訪ねてくる。時を同じくして、かつてない最強の敵が地上に現れていた…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『カンフー・パンダ3』の感想です。

『カンフー・パンダ3』感想(ネタバレなし)

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パンダ映画に冷たい日本

パンダは動物園の人気者。でも、心を期待でワクワクさせながら、いざ動物園に行ってみたらパンダが全然動いていなくてなんだかつまらない…そんな経験がある人はいませんか。そんなときはせめて動くパンダを観てみましょう。世の中にはカンフーをするパンダがいるんですよ。映画の中に。

ドリームワークス・アニメーションの『カンフー・パンダ』シリーズは、その名のとおりパンダがカンフーを習得して悪党を倒して強くなっていくアクション・アドベンチャーCGアニメです。特徴は次々と繰り出されるギャグとアクションの連打の心地よさ。とくに手書きアニメーションのような緩急ある動きで描かれるカンフーアクションは独特です。「動けるデブ」こと“サモ・ハン・キンポー”の若い時を彷彿とさせる、爽快な体術の連続はパンダのイメージを覆します。これくらい実物のパンダも動いてくれたら、さぞ動物園来場者も大喜びなんですけどね…。

子どもが楽しめるのはもちろん、大人も見ていて楽しい作品であり、評価の高いシリーズとして成長しました。

前作『2』では、パンダの主人公・ポーの出生が明らかになりました。ポーは子供のころからミスター・ピンというラーメン屋のガチョウに育てられてきましたが、実は山の奥深くにあるパンダの村の出身。ポーがまだ赤ちゃんだったころ、「白と黒の戦士に倒される」という予言を恐れたシェン大老がパンダの村を強襲し、ポーの父は敵の前に立ちはだかってポーの母とまだ乳飲み子であったポーを逃がしました。しかし、母はポーを籠に隠し、囮となって命を奪われてしまった…。そして、ポーの入った籠を拾ったのがミスター・ピンでした。

そんな前作『2』のラストで一瞬登場したポーの父親が今作『カンフー・パンダ3』のキーパーソンとなります。

『カンフー・パンダ』シリーズは舞台が中国ですから、中国で非常に人気を博しているアニメ映画です。アメリカはもちろん、中国で大大ヒットを記録しています。こんなふうに米中双方でここまで好意的に成功できるアニメ作品は珍しいと思います。中国側もまさかアメリカがここまで「ザ・中国」な作品を作ってくるとは思わず驚いたなんて逸話もあるくらいで、アニメーション業界では案外仲の良い米中です。

シリーズの日本ファンも必見です…と言いたいところなんですが、日本では残念というかなんというか『カンフー・パンダ』最新作に水を差す事態が…。なんと日本では劇場公開されず、Netflix独占配信になったのです。なんか、ずいぶんな温度差です…。日本人だって動物園でパンダ見たさに並ぶくらいなんだから、パンダ好きじゃないのか!(ずれた指摘)。

『ヒックとドラゴン』の時といい、日本の映画業界はドリームワークス・アニメーションを過小評価しすぎじゃないでしょうか。ちゃんと宣伝すれば、絶対にファミリームービーとして受けると思うんだけどなぁ…。やっぱりシリーズ続編はよほど人気がないと宣伝しづらいのか…。それにしたってドリームワークスの扱いの低さはさすがに…。ミニオンとかいう黄色い奴らに居場所を奪われた感が否めないですね。

シリーズのファンであれば大満足できる出来です。見たことのない人はこれを機会に夏休みにでも『1』・『2』・『3』と続けて見てみるのはどうでしょうか。

日本語吹き替え あり
佐藤せつじ(ポー)/ 浦山迅(リー・シェン)/ 石井康嗣(カイ)/ 富田耕生(ウーグウェイ導師)/ 樋浦勉 / 本田貴子 / 石丸博也 ほか
参照:本編クレジット
↓ここからネタバレが含まれます↓

『カンフー・パンダ3』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):パンダいっぱい!

魂の王国。内なる平和を味わっていたウーグウェイ導師の前に500年の因縁のあるカイ将軍が出現。圧倒的なパワーで導師を倒しますが、「あなたを止める役目なら別の者に託してありますよ」と導師は口にしつつ、気を奪われてしまいます。こうして最強となったカイは肉体の王国へ…。

その頃、ポーはいつものように元気に飛び跳ねていました。龍の戦士となり、これまであらゆる強敵と戦ってきたポーとその仲間たち(マスター・ファイブ)には怖いものも無し。お腹も減れば満たせばいいだけ。

シーフー老師は最後の稽古だと言ってきます。なぜなら今度はポーが指導者になるのです。お師匠様という大役に困惑し、全然上手く教えることができないポー。みんなボロボロになったのみ。

屈辱的な師匠の初日に落ち込んでいるとシーフー老師がやってきます。「できることばかりしていては成長はできない」とシーフー老師は言ってきます。「お前には無限の力がまだある」…そして老師はそばにあった植物に気を注入して花を咲かせます。これは自分にもできるのか…。

そんなポーは知るはずもなく、この地に出現した存在がいました。それはあのカイ将軍です。中国全土を掌握した戦国武将、翡翠刀の達人、痛みの伝道師、復讐の野獣…。しかし、どうやらカイという名はすっかり忘却の彼方にあり、誰もこの現世では知らないようです。とにかくウーグウェイの弟子を探すように手下に指示します。

そして呑気に考え事していたポーのもとに迫ります。ポーは養父に龍の戦士とは何なのか悩んでいると話しますが、その答えは自分で見つけるしかありません。そこにポーの持つ肉まん大食い記録を破りそうになっている謎の挑戦者が出現。それを達成したのは大柄の…まるでポーと同じような見た目の…。リー・シェンという名で、息子を探しに来たと言います。誰が見てもこの2人、親子です。

突然の実父との再会。「もう二度と会えないと思っていた」

なんでも秘密のパンダの村があるらしく、そこから来たのだとか。さっそく父を翡翠城に連れていき、案内します。すっかり父に感化されてハシャぎまくるポー。親子水入らずの時間を満喫します。

しかし、老師と仲間に見られてしまい、テキトーに誤魔化し…。すると攻撃の鐘が鳴ります。谷が翡翠のような緑の存在に攻撃されていました。よく見ると有名な昔のマスターの姿をしています。その翡翠の敵から「カイ」という名前が語りかけてきます。誰だろう…。

巻物によるとウーグウェイ導師には兄弟のような存在で親友であるカイがいて、昔、ウーグウェイが怪我をしたとき、カイはウーグウェイを連れてパンダだけの村にたどり着いたとのこと。パンダたちは気功を使って癒しの力で傷を治すことができました。ここで気を与える方法を教わったのですが、カイはそれを悪用することに憑りつかれ、ウーグウェイはカイと激突して魂の王国に送ったのでした…。

手がかりはパンダの村にある。父に村に連れて行ってもらうしかない…。

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このパンダ、絶滅しそうにない

シリーズものは作品ごとに思い切ってテーマがガラッと変わるものもありますが、『カンフー・パンダ』シリーズは、常にテーマが一貫しています。それは「師弟」による技術の継承という、中国武術映画の伝統的な要素です。1作目では3世代を描きつつ、大ベテランがベテランに「教え方」を伝授し、ベテランがダメな新人に“らしさ”を活かした方法で技術を授ける…という非常に良くできた構成。それに対して2作目は、立派になった新人が逆にベテランを超えて見せるという構成。そして、3作目である本作『カンフー・パンダ3』は、新人だった主人公が逆に教える側になるという逆転の構成になりました。

一番良かったところは、まさにポーがパンダたちにカンフーを教える展開。それぞれの得意や趣味を活かして、自然と学ばせる…つまり、『1』のときにシーフー老師からポーがされたことをしている。この逆転が綺麗に描けていました。

まあ、教えるという点においても今作のポーは優秀すぎましたが…。

本作『カンフー・パンダ3』は過去作『1』・『2』とストーリーの型はほぼ同じ。そういう意味では3作目ともなり、マンネリ感も否めません。とはいえ全体的にウェルメイドなので、続編としてじゅうぶん楽しめる出来栄えでした。なによりもテーマを共通させ、ぶれさせずによく3作も作り上げたものです。

ただ、今作に至っては、よく少年漫画とかに見られる「主人公が成長するにつれ、強さの基準がどんどんインフレしていく現象」が起きていて、ポーが遠い存在になりましたね。

『カンフー・パンダ』シリーズは、ポーが覚醒したときが最大の盛り上がりポイントなんですが、今作はもはやカンフーの次元を超えています。もう強すぎです。無敵すぎて、悪役が可哀想なくらいです。カメのウーグウェイ導師さえも超越したので、これ以上成長しようがないのでは?という気も。『1』や『2』のような地味ながらも「おっ」となるような成長をワンシーンで見せるアクションのほうが好みでした。それでも、ラストバトルの場面は背景描写が非常に綺麗で、絵的な凄さではシリーズナンバーワンだったのは良かったし、これで最後だという作り手の意気込みを感じさせる大団円だったと思います。

ポーがあまりに強すぎるせいか、本作『カンフー・パンダ3』のヴィランであるカイ将軍はシリーズ最強なわりには扱いが雑です。ポーたちや老師でさえ知らない相手で(しかも劇中でもネタにされる)、なんだか因縁がないので戦う意味もない感じ。他の老師を使役して戦わせる展開は、ベタながらも燃えましたけど。今作は敵側のドラマは完全に捨てて、ポーの成長の究極のラストを描くことに徹した感じがしますね。その思い切りの良さは正解だったのではないでしょうか。

細かい部分だと、ポーは父に案内されてパンダの村をたどり着けたわけですが、タイガーやカイ将軍までたどり着けるのは強引かなとも思います。足跡をたどってといっても限界があるでしょう。でも、そこは大したことじゃありません。わりとそのへんのデティールはどうでもいいシリーズですから。

あと、『カンフーパンダ』シリーズは音楽がいい。ドリームワークス・アニメーションではおなじみのハンス・ジマー&ジョン・パウエルのコンビが編み出す壮大なBGMは個人的に好きです。サントラが欲しくなります。アニメーションは音楽がマッチしていると本当に印象に残りやすくなりますよね。

もう完全に漫画でいえば、最終章で起こることを全部突っ込んだ感じです。きっとこれがシリーズ完結…でいいのかな? 『4』は作るのか…。さすがに今のポーに敵う相手は思いつかないけど。ベタなものだと、子どもができて、そこで新しい世代交代を描く…みたいなものはありがちですが、ポーに恋模様が全然ないのですよね。繁殖しないと、絶滅するからね、パンダは…。

『カンフー・パンダ3』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 87% Audience 78%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
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関連作品紹介

ドリームワークス・アニメーション作品の感想記事です。

・『トロールズ』

・『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』

・『スノーベイビー』

作品ポスター・画像 ©Netflix カンフーパンダ3

以上、『カンフー・パンダ3』の感想でした。

Kung Fu Panda 3 (2016) [Japanese Review] 『カンフー・パンダ3』考察・評価レビュー