ジェーン
映画『ジェーン』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。 

原題:Jane Got a Gun
製作国:アメリカ(2015年)
日本公開日:2016年10月22日
監督:ギャヴィン・オコナー

ジェーン

あらすじ

ジェーンは夫のハムと娘と平穏な毎日を送っていたが、ある日、夫が銃弾を受けて瀕死の状態で家に戻ってきた。家庭の危機が迫っている。夫に傷を負わせた悪名高きビショップ一家の首領ジョン・ビショップの手から家庭を守るため、ジェーンは南北戦争の英雄でかつての恋人ダンに助けを求める。

ネタバレなし感想

パドメ、オビ=ワンを撃つ!

名作『ロッキー』の新作『クリード チャンプを継ぐ男』が公開された2015年。高い評価を受けたこの格闘技映画の裏で、実は隠れた傑作ともいうべきもうひとつの格闘技映画がひっそり一部で公開されていました

それが『ウォーリアー』です。

『ウォーリアー』は総合格闘技を題材にした作品で、それぞれ複雑な事情を抱えた因縁のある兄弟が総合格闘技のリングの上で大金を賭けてぶつかり合う、とにかく燃える熱い映画。兄弟を演じた“ジョエル・エドガートン”と“トム・ハーディ”の肉体演技と感情が爆発するラストは、素晴らしいものでした。絶賛する批評家も多数みられた『ウォーリアー』、観ていない人はぜひ、一見の価値ありです。


その『ウォーリアー』で監督・脚本・原案をつとめたのが“ギャヴィン・オコナー”。『ウォーリアー』を製作したのは2011年で、そこから注目を集めるも、以降はしばらく映画は撮っていなかったようです。そんなギャヴィン・オコナー監督が久々に撮り上げたのが本作『ジェーン』です。

『ウォーリアー』が男の汗がほとばしる男の中の男の映画だったのと打って変わって、本作『ジェーン』は女性が中心の映画。しかも、舞台は西部劇です。この西部時代の女性の活躍を描くシナリオに惹かれたのか、主演の“ナタリー・ポートマン”が製作をつとめたいと名乗り出るほど。西部時代の女性も現代の女性も、抱える悩みの本質は共通しているはずですから、「西部劇=古臭い」と一蹴するのは気が早いです。そもそも彼女が主演で映画を背負うこともあまりなかった気がするので、ファンにはありがたい一作ですね。

実は本作は製作段階で多少のゴタゴタがあって、もともとは女性監督である“リン・ラムジー”がメガホンをとる予定でした。製作側との意見の衝突があったらしいですが、具体的なことは不明。おそらく作品の根幹にかかわる部分での考えの違いがぶつかったのでしょうけど。その代わりとして引っ張られてきたのが“ギャヴィン・オコナー”です。なので正確には彼の企画ではありません。このあたりは本作の完成度というか、主軸部分にも影響してきているあたりなので、それは記事の後半で。

ともあれ『ジェーン』は俳優たちはかなり豪華なのでそれだけでも宣伝にはなるはず。西部劇ですが、俳優陣は『スター・ウォーズ』っぽい面々が揃っているのも、特筆するほどではないけれども、ささやかな特徴。主演のナタリー・ポートマンはプリクエル3部作のパドメ・アミダラを演じています。そして、本作『ジェーン』の悪役を演じたのは、『スター・ウォーズ』のオビ=ワン・ケノービでおなじみの“ユアン・マクレガー”です。ダークサイドに堕ちたか、オビ=ワン…。

他の出演陣は“ジョエル・エドガートン”、“ノア・エメリッヒ”、“ロドリゴ・サントロ”、“ボイド・ホルブルック”となっています。“ジョエル・エドガートン”は『ザ・ギフト』という作品で長編映画監督デビューもしており、『ジェーン』の脚本にも少し関わっているっぽいですね。

意外なところで勃発したパドメ・アミダラとオビ=ワン・ケノービの対決。気になる結果は映画で確認しましょう。もちろんライトセーバーで対決はしませんよ。原題の「Jane Got a Gun」のとおり、銃ですからね、念のため。

予告動画





↓ここからネタバレが含まれます↓




ネタバレあり感想

これが女性の力強さなのか?

西部劇というものは基本は「男の世界」。荒れくれ者の男たちが銃を片手にワイルドにぶっ放して暴れまわる。そんなシチュエーションが誰でも真っ先に目に浮かびます。じゃあ、女性はというと、せいぜい被害者的な囚われのヒロインポジションか、男たちの激闘のすえに手に入る愛のトロフィーでしかない。それが実際の現状でした。

おそらく『ジェーン』はそういったものに対するカウンターになる映画を作りたかった…はず。少なくとも初期の時点で監督を手がける予定だった“リン・ラムジー”の方針では、その西部劇世界で自然に立ちあがる女性を普通に描く映画になっていたのではないだろうか。そう考えてしまいます。

ところが実際に出来上がったものを見ると、あれ?と。西部劇というクセのあるジャンルなのは承知ですけれども、それを踏まえてもそこまで面白いシナリオでもないような気もする…それが正直な感想です。製作前の優秀脚本をリストアップするブラックリストに選ばれたそうですが、どうだろうか。何かしっくりこないような、本来の主軸が行方不明になったような、そんな違和感がずっと消えないまま映画が終わってしまいました。

テーマも、男社会のなかで懸命に生き抜く女性の力強さを描きたいのはわかる…でも実際に劇中で描かれていたのは「元カレに頼って戦ってもらおうとする」女性。これで「真実の愛」になるのか? いささか疑問です。せめて元カレがいい寄ってくるもそれを跳ね除けて独りでも家庭を守ろうとする姿とかじゃダメだったのか…。

元カレ・ダンとジェーンとの「なんで連絡くれなかった、探したのに」みたいな愚痴の会話を挟むものだから、痴情のもつれのような陳腐なドラマに見えかねません。これでは全然ステレオタイプを打破する作品でも何でもない。いつもの男女のメロドラマの延長にしかならない気がする。

ジェーンが能動的に行動しているのは事実ですし、そこに意味があるのかもしれませんが、これだと従来の西部劇映画における女性キャラクターの視点を少し増やした程度の新鮮味しかないのではないかなと思ってしまいます。

西部劇的なカッコよさも…

映像は綺麗です。まあ、もともと西部劇の絵は基本カッコよくなりがちで、そこについては何の心配もないというか、想定の範囲内ではあるのですけど。

でもなにより特別に「カッコいい」と思えるシーンがないのが残念。終盤の闇夜での戦闘も爆発にはこだわっていましたが、全体としてはイマイチ。ビショップ一味の実態が不明すぎます。何人の敵に囲まれたのか観客にわからないので、あの爆発がどの程度有効なのかは不明だし、最後のジョンとの一騎打ちもいつまにかそういう状態に発展していた感じです。この一騎打ちも全く盛り上がらないし。とくに悪役のジョン・ビショップがそこまで悪そうには見えないですよね。ゴア表現も抑えめで、緊迫さも感じませんでした。

これも私の勝手な推測ですけど、エンタメ感を出そうと製作側は苦心した結果、割と中途半端な派手さが残っただけに終わったのかな。“リン・ラムジー”はそこまでベタなエンタメは作りたがらない、独立性の高いフィルムメーカーとしてのこだわりが強い人のはずですから、そこから監督交代にともない、どんどん軟化して、今の感じに落ち着いたのならそれは残念。

結局、本作をどういう映画にするのかという基本の足場がしっかりしないまま映画を作ってしまった感じですかね。

“ギャヴィン・オコナー”監督は今回は脚本をつとめてはいないですが、『ウォーリアー』と比較するとガッカリしてしまいます。シナリオにも大きな部分から小さな部分まで粗があるというか。例えば、メアリーという娘が実は生きていたという展開も、川に靴が浮かんでいるから死んだと思い込むなんて、古臭すぎませんか。

“ギャヴィン・オコナー”監督は本作では雇われ的な仕事だったので、これで彼のキャリアに泥がつくのはさすがに可哀想ですけどね。

ジェーン

主演のナタリー・ポートマンは、『ブラック・スワン』(2010年)でそれまでの純真なイメージをひっくり返したことでアカデミー賞を受賞しましたが、本作では綺麗なナタリー・ポートマンに逆戻りです。なんでしょう、自身が母になったからでしょうか。気持ちはわかるけど、映画は面白くないと擁護できない…。ちょっと今回のナタリー・ポートマンは私には綺麗すぎました。少なくとも従来の西部劇の男性主人公と対等に見えるほどの活躍にはなっていませんでしたし…。

キャスティングが合っていないわけではないので、やっぱり作品の根幹のブレのせいでしょうかね。

ちなみに今年はナタリー・ポートマン主演作がもう1本、アメリカで公開されます。タイトルは『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』。1963年に起きたジョン・F・ケネディ大統領の暗殺事件を“ジャッキー”の愛称で親しまれたファーストレディであるジャクリーン・ケネディの視点から描いたドラマとのこと。こちらのほうが評価が高いので、こっちのナタリー・ポートマンに期待してます。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 42% Audience 37%
IMDb
5.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★

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