セーラー服と機関銃 卒業
原題:セーラー服と機関銃 卒業
製作国:日本
製作年:2016年
日本公開日:2016年3月5日
監督:前田弘二

【個人的評価】
 星 3/10 ★★★
 
あらすじ

どこにでもいそうな卒業間近の女子高生・星泉。実は彼女は弱小ヤクザ・目高組の組長をつとめていた過去があった。目高組が解散してからは、かつてのヤクザ仲間とともに商店街の「メダカカフェ」を切り盛りしていた。ところがある日、彼女の周囲に再び不穏な空気が漂いはじめる。

「わたくし、愚かな女になりそうです。」

1981年に公開されて大ヒットした、薬師丸ひろ子が主演した『セーラー服と機関銃』は、とにかくヘンテコな映画でした。当時の人が見ても、今の人が見ても、ヘンだという感想は同じだと思います。

『セーラー服と機関銃』は単純なアイドル映画と思ったら大間違いです。もちろん単純なヤクザ映画でもありません。なんせ女子高生がヤクザの組長をするのですから。ただ、それ以上に普通の映画の範疇には入らない異常さが『セーラー服と機関銃』の特徴です。

映画冒頭からとにかく強烈。まず、ヤクザ組長の死に獣医師が立ち会うシリアスなのかギャグなのかよくわからない絵面。そして、遠いひきのカメラがブレブレに動くなか、画面中央にぽつんと映るのがなぜかブリッジをしている薬師丸ひろ子演じるヒロイン・星泉。

これだけで「なんじゃこりゃ」ですが、この感じが映画中ずっと続きます。

ヒロインの星泉の扱いも変わってました。冒頭のブリッジもそうですが、星泉がアップで普通に映ることがありません。普通だったら、アイドルとして売る以上ヒロインである星泉こと薬師丸ひろ子をもっとはっきりと映すようにするはずです。あげくあろうことか、撮影時に薬師丸ひろ子の顔を傷つけてしまう始末(ちょっと血がでる程度ですが、アイドルの命である顔ですから大問題。しかも、この撮影カットはそのまま映画に採用されています)。

しかし、そうしたヘンテコ要素に反して、物語の基本軸は意外というべきかしっかりしています。星泉が敵対するヤクザに機関銃をぶっぱなし「カイ…カ・ン」と言い放つ名シーンも、組長になった彼女が大人の世界に触れたことで「性」や「死」を理解して一皮向けたことへのメタファー。そう考えると、ヤクザ抗争とかはわりとどうでもよく、星泉のパーソナルな狭い世界に絞った話であり、アイドル映画の王道を貫いているともいえます。

ヤクザ映画でありながら、ヤクザの世界を何も知らない星泉の目線で話が進むので、基本的に敷居が低く、物語に入りやすいつくりなのも功を奏しています。

単純明快なストーリー、キャラや映像のインパクト、深読みしがいのある裏テーマ…これらが揃ってフィットしたからこそカルト的人気となったのではないでしょうか。

そんな映画の原作小説「セーラー服と機関銃」の続編「セーラー服と機関銃・その後」を映画化したのが、本作『セーラー服と機関銃 卒業』です。

しかも、ただの続編ではなく時代もキャラも一新したリブートでもあります。ヒロイン・星泉を演じるのは、「千年に一人の逸材」としてネットで大ブレイクした橋本環奈。

今やアイドルもネットでウケるかどうかが重要というのが時代の変化を感じますが、この新しい時代に「セーラー服と機関銃」がどう描かれるのか…。そして、前作映画『セーラー服と機関銃』のカルトっぷりに対して、どうアプローチしてくるのか…。

興味津々だったのですが…ネタバレ感想は以下からどうぞ。





↓ここからネタバレが含まれます↓ 




「セーラー服と機関銃」なのに普通の映画だった

どこにでもいそうな卒業間近の女子高生・星泉。実は彼女は弱小ヤクザ・目高組の組長をつとめていた過去があった。目高組が解散してからは、普通の女子高生として過ごす彼女も自分の進路に悩んでいた。地元で勢力を伸ばすホリウチグループ社への就職も考えていた矢先、かつて敵対していたヤクザ組が、ホリウチグループ社と対立していることが判明、共謀と勘違いされ彼女や元目高組の面々に危険が迫る。さらに、彼女が元ヤクザ組長であったことがネットに流出、しかも「天使すぎる美少女ヤクザ」としてネットで注目を集め始める事態に発展。連日押し寄せる敵対するヤクザ組の構成員、ぜひうちにと雇用を狙う企業関係者、CMやモデルに起用しようと狙う芸能関係者、彼女の外見に惚れてファンを自称するアイドルオタク…。好き勝手な大人たちを前に自分の未来に悩む星泉。そして、吹っ切れた彼女はそんな有象無象に再び機関銃をぶちかます。「カイ…カ・ン」。彼女は大人たちに振り回されない、自分の道を突き進み始める。

………こういう映画ではなかった

はい、上の文章は私の妄想です。

本作『セーラー服と機関銃 卒業』を見て思ったことは「続編とリブートを同時にすべきではない」ということ。『ターザン:REBORN』でも同じようなことを書きましたが、やっぱり詰め込み過ぎてわかりにくくなります。

まず続編にしたのがまずいのでは? 前作は普通の女子高生がヤクザの世界にびくびくしつつも馴染んでいく過程が一般客にもわかりやすかったですが、本作は最初からヤクザに屈しない強い星泉の状態からスタート。そのわりには、まるで前作映画をなぞるように星泉がうろたえるシーンもあり、成長したのかしてないのか謎。

このように本作では続編とリブートに加えて、前作映画をなぞるストーリー展開もあるので、前作を見た人ならまだしも、本作が初見にはイマイチ飲み込みづらい点が多々あります。一番意味不明なのが例の「カイ…カ・ン」のセリフ。映画冒頭の寝言はいいとして、クレジット後のおまけみたいな挿入はもはやお約束で入れました以上の意味はないでしょう。前作はちゃんと深いテーマがあったのに…。

また、現代的要素を入れたかったのかさまざまな社会問題が投げかけられますが、これまた蛇足感が否めない。ヘロインのありかはどこかという一点に絞られていた前作と比べて、ごちゃごちゃしすぎです。どれも星泉に直接関係はないものばかりで、この話に星泉が介入する必要はないでしょう。前作では、星泉のパーソナルな狭い世界に絞った話だったのに、今作では彼女が何から卒業し成長するのか最後までわかりませんでした。

もっとひとつの問題に絞るべきでは。やはり橋本環奈を主役にするなら、インターネット社会の要素がベストだと思うんですけど…。

セーラー服と機関銃 卒業

世界観描写がそんなに現代的でないのも気になります。あんな取り巻きの男子学生はさすがに今の時代はいないでしょうし、カフェなんてあんなさびれた商店街で経営は無理です。例えば、ヤクザ仲間との連絡はLINEグループでやって、お金はフリマアプリで稼ぐ(でも上手くいっていないまでがセット)みたいな、現代の高校生らしい発想をみせてほしかったところ。

前作と比較して、カメラの撮り方もハードな表現もスケールダウンしていたのも残念。

橋本環奈のアイドル映画として決して大失敗というわけではないと思いますが、なんだか普通の映画になってしまった感じでした。

本作を見ただけの人が「セーラー服と機関銃」という作品自体を普通だと思ってしまうのはもったいないので、ぜひ時間があれば薬師丸ひろ子版『セーラー服と機関銃』を見てみてください。