デッドプール
映画『デッドプール』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Deadpool
製作国:アメリカ
製作年:2016年
日本公開日:2016年6月1日
監督:ティム・ミラー

【個人的評価】
 星 6/10 ★★★★★★
 

Plot Summary

好き勝手に悪い奴らをこらしめて金を稼いでいた元傭兵のウェイド・ウイルソンは、恋人ヴァネッサとも結婚を決意した矢先、末期ガンが発覚する。謎の組織からガンを治せると誘われたウェイドは、そこで人体実験を受けて不死の肉体を得るが、醜い身体に変えられてしまう。

ネタバレなし感想

コミックヒーロー映画×恋愛映画

愛されていればどんな下品なことを言っても、残酷なことをしても許される。現実にはそんな人はいないかもしれませんが、映画にはそんな羨ましいキャラクターが存在します。それが“デッドプール”(愛称「デップー」)です。

『デッドプール』はコミックヒーロー映画です。しかも、完全に単体の映画というわけではなく、『X-MEN』の世界観ともクロスオーバーしています。本作でもコロッサスとネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドという2人のX-MENミュータントが登場します。でも『X-MEN』シリーズを観たこともない人も安心してください。基本的に単体でじゅうぶん成り立っている作品ですから。

何よりも、本作の魅力は“デッドプール”というひとりのキャラに大きく依存しています。というのもデッドプールはとにかく他にはないキャラクターです。

デッドプールは第4の壁を超えることができるという反則的な設定があります。そのため、映画のスクリーンの向こうにいる私たちに普通に話しかけてきますし、自分や他者を演じているのが役者だということも自覚しています。これに加えて、自己中心的で自分はヒーローではないと断言するデッドプールは、下ネタや残酷な行為も平然と行います。完全に子どもには見せられないレベルで。

そんなデッドプールが活躍する本作は、下ネタギャクや他の映画のパロディが雪崩のように絶え間なく挿入され、全部を把握できる人はそうそういないのでは?というくらいです。しかし、これをもって本作をマニアックな映画と評するのは早計。実は意外とストーリーは王道の恋愛映画で、恋愛の設定自体は邦画でもよくあるものです。幅広い客層に受ける要素を持ち合わせています。意外とアメコミ映画でここまで恋愛に比重を置いた作品は珍しいのじゃないかと思うほど。たいていはお約束的にヒロインがいて片手間で恋愛しているみたいな感じですからね。

本作は、R指定にもかかわらずアメリカで大ヒット。日本人でもじゅうぶん楽しめる映画です。下ネタや残酷表現がよほど嫌いでない限り問題ないでしょう(下ネタや残酷表現は笑って済ませられるレベルのものなので心配しないでね)。

ちなみにエンドクレジットのあとにもおまけ映像があるので、この映画を堪能したい人は最後まで見ましょう。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓




ネタバレあり感想

なぜデッドプールは受けたのか

本作の随所にぶっこまれるネタの数々は楽しく、メタなギャグも新鮮でわかっているととても楽しいです。ネタの解説はきっと他のウェブサイトが解説してるのでそちらを探してください(丸投げ)。俳優ネタギャグは完全に映画ファン向けですが、いろいろ調べて関連作を観ていくきっかけにするといいですよ。個人的に好きなギャグは、ヒーローお馴染みの着地(スリーポイントランディング)をちゃかすシーンですかね。ヒーロー映画らしいシンプル・イズ・ベストなギャグが好き。

しかし、『デッドプール』の上手いところは単にマニアな人だけが楽しめるマニアックな映画にしなかったことだと思います。

前述したとおり本作は恋愛映画です。しかもかなりベタ。難病を抱えた主人公がヒロインとの付き合い方に悩みつつ、さらわれたヒロインを助けるというシンプルさ。メッセージも、多少欠点があっても身近に傍にいてくれる人は好かれるという恋愛の大切さ要素を押さえています。いわゆるヤングアダルト小説にあるような話で、だからこそ普段ヒーロー映画を見ない層にも受けたのではないでしょうか。

デッドプールというキャラがこんなにも熱狂的な支持を得る理由は、きっと私たちにとってすごく身近な存在に感じるからなのではないかと思います。第4の壁を超えるという設定も、素を隠さない発言も、結果的に身近さをより印象付けることになっています。

昨今のヒーローはもちろんカッコいいのですが、どうしても私たちから見れば雲の上の人すぎます。超大金持ちのIT科学者とか、第2次世界大戦を知る歴戦の兵士とか、格闘も諜報もスタイリッシュにこなす美女とか、怒ると巨人化して手が付けられない男とか、完全に神様レベルのパワーを持つ異世界の人とか、なぜかそんな桁外れな奴らと肩を並べている弓矢の人とか…。それに対して、デッドプールことウェイド・ウィルソンの普通さ。ちょっとヤバい思考の持ち主ですけど、あれくらいは平均の範囲内。むしろ境遇はあまりにも不憫。そんな奴です、応援したくもなりますよ。

たぶん本作の成功で類似の模倣作品がいっぱいでてくるかもしれません。でも、第4の壁を超えてふざけているだけでは絶対に上手くいかないと思います。少なくとも本作級のムーブメントは起こせないはずです。やっぱり「身近さ」と「愛嬌」、この2つがバランスよくセットになっていないと、ダメなんでしょうね。

Deadpool

どう進化するのか、楽しみ

ストーリーの単純さは本作の長所ですが、短所とも評価できます。デッドプール自身も言っていたとおり、低予算だったせいもあって、目立ったバトルは2場面しかありません。戦闘演出もスローモーション(バレットタイム)を多用したありきたりなもので、決して雑ではないですが、真新しさもありません。しかも、最初の高速道路の戦闘シーンは回想を3回ほど挟むため、テンポが落ちます。仲間キャラは凸凹感があってよかったですが、活躍をもっと見たかったというのも本音。ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドは原作コミックではテレパス能力の使い手でしたが、本作では爆発力を操るキャラクターに変更したのも、少しでも派手にしようとする製作者側の苦肉の策を感じます。ただ、このネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(長い…)とコロッサスを今回の仲間に持ってきたのは上手いなと思います。デッドプールのおふざけに対する、いい対極の存在として機能していますよね。

残念なのは敵キャラで、すごく薄い存在です。デッドプールは傷ついても死なないので戦いに緊迫感はなく、この悪役フランシス・フリーマン(エイジャックス)もどうやって不死のデッドプールを倒すか何の戦略もないというのはそれでいいのかと思います。超人的な反射神経と無痛無感覚の身体を持つらしいですが、なんか明らかにミュータントとしては弱そうな部類に見えるという…。やっぱりデッドプール級クラスになると、もうそんじゃそこらの敵では相手になりませんから、反則級のヴィランを持ってくる必要がありますよね。

こうした点を気にすると、ヒーロー映画としては物足りない印象も受けます。まあ、さすがに『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』と比べるのは可哀想ですが(テーマも全然違うし…)、横並びで揃っているアメコミ映画の強豪たちもなかなか手ごわいの確か。

エンドクレジットのあとのおまけ映像(なぜか『フェリスはある朝突然に』のパロディ)で、デッドプール自身も言及してますが、続編の製作は決定しており、次はきっと予算大幅アップしてバトルもド派手になること間違いないでしょう。まだまだ成長する映画です。私としてはこのデッドプール的な方向性でどこまで進化していくのか、そこに興味があります。

でもキーラ・ナイトレイを“ケーブル”に起用するのはダメですよ。それは見たくない…。

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