トリプル9 裏切りのコード
映画『トリプル9 裏切りのコード』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Triple 9
製作国:アメリカ
製作年:2016年
日本公開日:2016年6月18日
監督:ジョン・ヒルコート

【個人的評価】
 星 4/10 ★★★★
 

Plot Summary

元軍人と悪徳警官で構成されたギャング団を率いるマイケルは、非情な女ボスのリーナが仕切るロシアンマフィアとの関係を断つつもりでいた。しかし、リーナに最愛のひとり息子を人質にとられたマイケルは、国土安全保障省施設の襲撃作戦に挑むことになる。そこで考えたのが、警官が撃たれたことを意味する緊急コード〈トリプル9〉を発動させて警察を惑わす作戦だった…。

ネタバレなし感想

豪勢な「警察vsマフィア」

警察無線なんて普通は聞いたことはありませんけど、映画やドラマではジャンルによってはしょっちゅう聞くものです。

その警察無線では短く情報を伝えるためにコードがアメリカでは用いられます。そのなかでも“最優先の警察コード”というのが「999」だそうで、銃撃戦で警官が撃たれたことを意味するそうです。この「999」が発信されると、警官たちは自分が今やっていることを中断し、街の至るところから撃たれた警官のところに集まることになります。要するにかなりヤバい事態を知らせる、不吉な数字でもありますね。たぶん州によって違ったりするかもしれないので、アメリカ全土がそうだというわけではないと思いますが。

この「999」から着想を得た映画が『トリプル9 裏切りのコード』です。

本作は、アメリカでも犯罪発生率が高いことで有名なアトランタを舞台に、警官とマフィアの緊迫感あふれる対立を描くクライムサスペンス。世の中にはいろいろなマフィアがいますが、この映画に登場するのはロシアン・マフィアです。まあ、それが他の類似組織とどう違うのかみたいな話は全然私にはわからないし、実感したくもないのですけど。ウォッカでも飲んでいるのかな…。

それ以外の本作の特徴は、豪華なキャストが勢ぞろいしているところ。

『ブレイキング・バッド』のアーロン・ポールや、『ウォーキング・デッド』のノーマン・リーダスといった海外ドラマ勢。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でファルコンを演じたアンソニー・マッキーや、『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』でワンダーウーマンを演じたガル・ガドットといった近年のヒーローコミック映画で活躍する役者陣。他にも、ケイシー・アフレック、キウェテル・イジョフォー、クリフトン・コリンズJr.、ウディ・ハレルソン、ケイト・ウィンスレットなど多方面からよりどりみどりで揃っています。ちょっとなかなかないメンバーです。よく集めたなと思うほど。

これだけのメンバーであれば、絶対に何かしらの知っている俳優がいると思いますし、俳優ファンには夢の膨らむ座組ではないでしょうか。あの人とこの人がこう活躍するのかな…とか、あの二人がこんなことをしてほしい…とか、いろいろ考えてしまいますよね。

一方で、劇中では序盤からどんどん話が展開し、ゆっくり登場人物の立ち位置を説明する間はないので、事前に公式サイトのキャラクター相関図で確認しておくと、理解しやすいと思います。とくにネタバレもありませんし、その方が安心して俳優に見惚れていることもできますから。

そんな豪華なキャストが繰り広げる銃撃戦、カーアクション、バイオレンス…見たいものは全て見れます。「どうです? これが見たかったでしょう?」という製作陣のしたり顔が浮かんできます。個人的には、キャストが豪華なこともあり、次に誰が死ぬのか予想しずらくハラハラするのもうれしいかぎり。たまにキャストで死亡キャラを察してしまう作品とかあるじゃないですか。ああいうのはなんかテンション、下がりますよね。

警察vsマフィアのクライムサスペンスが好きな人には堪らない映画になるでしょう。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓ 





ネタバレあり感想

赤い奴らが蔓延る街

リアリティにこだわってつくったという製作陣の自信のとおり、犯罪、銃撃戦、カーアクション、突入などはどの場面をとっても作り込まれており、魅入ります。こういうのはやっぱりアメリカには敵わないですよね。だってガチで銃犯罪が日常的に起きている国ですから。いや、憧れる気持ちは微塵もないですけど…。

全体的に赤色を軸にした絵作りも印象的で、序盤の赤い煙幕の暴発から赤い装飾ライト、マフィアボスの全身真っ赤なファッションにいたるまで統一感があってGood。鑑賞前は「えっ、これはなんかのヒーローのコスチュームなの?」と一瞬思った、本国版ポスターに写っていた赤いギャング団はカッコいいです。でも、まさかうっかりミスで赤くなったしまったという経緯だったのは意外というか、愛嬌あるポイントでしたが…。

Triple 9

暴力表現もしっかりしており、ボンネットの上に首を並べたり、足首に小型爆弾を付けて爆破したり、バリエーションで楽しませてくれます。やっぱり暴力シーンも多様性が大事だからさ…(ちょっと違う)。

個々の映像パーツは非常によくできており、この世界のヤバさがひしひし伝わります。ちなみに舞台のアトランタ。本当に犯罪が多いのかちょっと調べましたけど、数字的には治安が悪いことはわかりました。そもそもWikipediaの「アトランタ」のページに「犯罪」という節があること自体がよく考える異常ですよね。ただ、やっぱり現地のリアルな治安の悪さって全然わからないものじゃないですか。統計なんかでは生の実感はないですし。だからといって体験は御免こうむるし。なので私たちは映画で知ったような気分になるしかないのです。たとえフィクションだとわかっていても…。

映像も役者も豪華だけど…

しかし、ドラマにとって肝心の「999」が活かしきれていない感じが…。

「999」の発動で街は無法地帯と化すというけれど、「999」発動前から結構やりたい放題やっています。そもそもこれだけ治安が悪いなら、警官が撃たれる事態は頻繁に起きているのではないだろうかと思ってしまうのですが…。まぁ、そんなこといったら、警官がギャング団に関わってる時点で、この街は終わってますけどね。

国土安全保障省施設の襲撃場面でも、なぜ「999」を発動してまで時間稼ぎが必要なのかいまいち説得力に欠け、あまり「999」を発動する重要性が伝わってきませんでした。そのせいか、「999」を発動するまでのサスペンスも、「999」以降のドラマ展開もノリづらい。

なので、一番面白いのは序盤のドラマとあまり関係ない単発的なアクションシーンという感想になってしまいます。

また、実力派俳優からなるキャスト各人は皆素晴らしい演技をしていて良いのですが、せっかくのキャスト陣がうまくドラマとかみ合っていないと感じました。キャスト同士の化学反応によって今まで見たことのない魅力が生まれているということもなく、「こんな有名俳優が出演している」以上の楽しみ方が乏しい。これでは豪華キャストの起用が宣伝にはなっても、作品の深みにはつながっていません。

例えば、それが如実に表れているのが本作でマフィアのボスを演じるケイト・ウィンスレット。 強烈な存在感を発揮しており、彼女のキャリアではなかなか見たことがない役柄で新鮮です。しかし、劇中の扱いはなんかあっさりしてます。もっと他キャラと絡んで、非道な暴力とか見せてほしかった…。ケイト・ウィンスレットに罵倒されたい、しばかれたいという需要を抱える客層は一定数いると思いますよ。たぶん。

そんなマフィア勢と比べて、主人公ポジションである警官クリス・アレンを含めた警察側の魅力が弱く、パワー負けしてるのも物足りないです。

キャラとドラマがひとつにハマればもっと良い映画になった気がします。少なくとも駄作と切り捨てるには惜しい映画であることは確か。個々の俳優のポテンシャルの高さもあって、ワンシーン単位では楽しい一作ではないでしょうか。

ぜひアトランタを訪れる際は、赤い奴らがいないか周囲を確認してみてください。あと足首に爆弾がついていないかもチェックしてくださいね。

©2015 999 Holdings, LLC