バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生
映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Batman v Superman: Dawn of Justice
製作国:アメリカ
製作年:2016年
日本公開日:2016年3月25日
監督:ザック・スナイダー

【個人的評価】
星 5/10 ★★★★★

 

Plot Summary

超人的能力を持つスーパーマンは、その力を人類のために使ってきたが、その強大な力ゆえに非難する人々も現れ始める。そして、犯罪者を一掃するために独自に活動するバットマンも、スーパーマンを敵視するようになっていく…。

ネタバレなし感想

前作の反省を活かすも、アメリカでは大不評?

本作『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』は、『スーパーマン』の実写映画である『マン・オブ・スティール』の続編となります。『スーパーマン』は「DCコミックス」のヒーローで、聞いたことのない人はいないであろう超有名なキャラクターです。ヒーローのなかのヒーローであり、それだけ思い入れの強い人もたくさんいます。『スーパーマン』は過去に映画化されていますが、『マン・オブ・スティール』はリブートとして「DCエクステンディッド・ユニバース」シリーズの第1作品目を飾る重要な作品でした。しかし、残念ながら評価は芳しくありませんでした。一番の批判ポイントは、ヒーローのはずのスーパーマンがヒーローらしくないというもの。明らかに一般市民に死傷者がでているであろうなりふり構わない戦い方(コラテラル・ダメージ問題)、悪役の首をへし折るという残酷な殺し方…。拒否反応を示す人がいても仕方がないかなという気もします。

本作『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』は『マン・オブ・スティール』における批判を意識したつくりになっています(監督は同じザック・スナイダー)。それは前作『マン・オブ・スティール』終盤のシーンを一般市民やバットマンの視点に変え、スーパーマンが戦いの中で街を破壊する恐怖が描かれているということ。映画の批判点を逆手にとったつくりは、私も公開前から面白いなと思いました。

ただ映画的つくりなんかよりも、本作最大の売りはスーパーマンと双璧をなすダークヒーローであるバットマンとの対決です。コミックファンや映画ファンからの期待値や注目度は否応にも上がることになります。

批評家から大不評の嵐となってしまいました。映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では、本作の批評家による支持率は29%。前作『マン・オブ・スティール』の同サイトの支持率は56%でしたから、それよりも低いという状態です。

興行収入にも結果が現れています。本作は公開初週末に全世界で4億2000万ドルを売り上げ、北米では『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』に続いて歴代2位でした。しかし、その翌週には、北米での興行成績が初週末と比べて69.1%もダウン、コミック映画としては史上3番目の落ち込み方となりました。

ネットも大盛り上がりです。不評を知らされたバットマンを演じたベン・アフレックが悲しそうな顔をしているインタビュー動画がネット上では話題になり、再生回数が2200万回を超えるなど、すでに酷評がネタ化しつつあります。

そういう意味で一見の価値ある映画といえるでしょう。祭りです。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓




ネタバレあり感想

「ジャスティスの誕生」は“早すぎた!”

なぜ酷評となったのか。それは『マン・オブ・スティール』以上に雑だったからでしょう。その原因はいろいろな要素の詰め込みすぎです。

まず主要キャラであるバットマンとスーパーマン。今作のメインディッシュはタイトルのとおりバットマンとスーパーマンとの戦いです。つまり、二人に闘ってもらうためには理由が必要です。しかし、スーパーマン(超人)とバットマン(人間)はどうしたって力量差が圧倒的にあります。なのでスーパーマンは常に手加減した状態にせざるを得ません。物語終盤ではスーパーマンの弱点であるクリプトナイトによってスーパーマンは弱体化してしまいますが、そもそもスーパーマンが本気を出せばクリプトナイトを浴びる間もなくケリをつけられるのですから。とはいえ映画なので呆気なく終わってしまうわけにはいきません。そこで、なぜかスーパーマンはうっかりな言動が目立ち、精神的に弱い人になっています。

ザック・スナイダー監督もインタビューで開き直ってます。
「これは映画だからね! 楽しくするために、彼らをなんとか戦わせるように仕向けなくちゃ(笑)」
引用:映画.com
ちなみにジェシー・アイゼンバーグ演じる今作の悪役レックス・ルーサーは、バットマンとスーパーマンの戦いを煽る役割でしたが、別に必要なかったですね。

そして、本作に登場するバットマンは、実は『ダークナイト』シリーズのバットマンとは別人。ゆえにバットマンの説明も映画内でしなくてはいけません(だから本作冒頭で後にバットマンとなるブルース・ウェイン少年の両親が殺される場面からバットマン誕生のシーンまでダイジェストが流れます)。これが詰め込みすぎ原因の2つ目になります。バットマンがスーパーマンを敵視する理由と、仲直りする理由が合っていないのも大きな批判ポイントになっています。これも結局、バットマンを今回の映画内で描き切れていないことに起因しているように思います。

3つ目が神話・宗教の要素。本作ではスーパーマンを神として扱っています。とくにスーパーマンが死ぬ展開は原作にもありますが、スーパーマンの遺体を降ろすシーンから復活を暗示させるエンディングまで、イエス・キリストっぽい場面が満載です。映画評論家の町山智浩氏は、こうした宗教的要素に加え、スーパーマンをアメリカにやってきて問題を起こす移民として描いていることが、とくにキリスト教文化圏のアメリカ人の反発を招く要因の一つとなったと指摘しています。こういうヒーローらしからぬシリアスな宗教要素は映画を不必要に抽象的でわかりにくいものにしてしまいました。

4つ目にして、個人的に最大の問題だと思うのが、本作のメイン物語とは直接関係ない要素が突っ込まれていること。映画好きやアメコミファンでもないかぎり普通の人は知るわけないですが、本作は続編が決まっていて「DCコミックス」のヒーローたちが集結する『ジャスティス・リーグ 』の公開が待っています。そのための伏線…なのでしょうが、本作に詰め込まれた伏線要素があまりにも初見には不親切。私は原作コミックは未読なのでポカーンとなる場面が多数ありました(きっとアメコミ映画を普段見ない人はますますちんぷんかんぷんでしょう)。バットマンが幻視を見る砂漠の戦いシーン(これは原作にあるパラレル世界らしい)、「早すぎた!」と言って劇場の観客を音でびっくりさせただけの謎のキャラ(これは「フラッシュ」というヒーロー、これも次作への伏線?)、レックス・ルーサーから盗んだマル秘データにあった謎の動画ファイルの数々(アクアマンやサイボーグなど他のヒーローの顔見せというだけでした)…。コミックファンしか楽しめない要素が、メインの物語をぶったぎって挿入されるので、なにがなんだかです。完全に映画をつくる順番を間違えたのではと、どうしても思ってしまいます。

皆が求めるコミック映画は…

散々雑だなんだと書いてきましたが、元来コミック映画はストーリーやキャラが雑だったり、設定が複雑だったりするのは日常茶飯事です。なので別に本作特有の問題ではないのです。

一番の問題はコミック映画としての「痛快さ」と「コミカルさ」の不足なのだと思います。これら要素がこの映画に欠けていたからこそ、こんなにも反発を受けてしまったのではないでしょうか。去年、不評だったコミック映画『ファンタスティック・フォー』も、ヒーローらしいバトルシーンが終盤にしかなく、批判の原因になっていました。本作もとにかく暗い。最近の映画しか見たことのない人は「DCコミックス=暗いヒーロー映画でしょ?」と思う人もいるかもですが、そんなことないんです。『バットマン リターンズ』とか『バットマン オリジナル・ムービー』とかユーモアたっぷりな作品もあるのです。

散々な評価の本作ですが、本作に登場するワンダーウーマンは評価が高く、とくに終盤のバットマンのピンチに駆けつけるシーンは親指を立てる人も多いです。私自身もスーパーマンの出番だと思っていたので意外な登場に驚きました。この映画で初めて心躍る場面だったといえます。その後、ワンダーウーマンとバットマン・スーパーマンの3人が揃っての掛け合いはコミカルでしたし、やっとコミック映画っぽい感じになってきたなという感じでした(もう、映画のタイトルを『ワンダーウーマンの誕生 陰湿な男たち』にしていいのではと思うほど)。ちなみにワンダーウーマン登場場面に流れる誰もが耳に残るであろう曲はハンス・ジマーとジャンキーXLが作曲したもの(ジャンキーXLは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の作曲を担当しています)。曲タイトルは「Is She With You?」。かっこいい曲なのに、タイトルはジョークになってます。


私が最近見た個人的評価の高いコミック原作映画の鑑賞後の感想は「面白かった!」の一言に尽きます。そう、こんな単純な感想でいいんです。映画を見た人からその感想さえ引き出せればコミック映画として合格だと私は思っています。かっこいいキャラが、かっこいい音楽に合わせて、かっこよく活躍する。これが見たい人が多いのではないでしょうか。

本作は批評家からは酷評されていますが、高評価する人もいます。批評家のなかでもワンダーウーマンのように褒めている部分もあります。ザック・スナイダー監督の持ち味は『300〈スリーハンドレッド〉』、『ウォッチメン』、『エンジェル ウォーズ』でも見られたコミックの徹底したビジュアル化です。おそろくザック・スナイダー監督は本作の製作において、さまざまな注文や制約に苦しめられるなかで、自分の得意分野を活かしきれなかったと想像されます。

コミック映画は作り手側も楽しく痛快に製作しなければ、面白いものはつくれないことがわかる一作でした。
 
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