メン・イン・キャット
映画『メン・イン・キャット』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。 

原題:Nine Lives
製作国:フランス・中国(2016年)
日本公開日:2016年11月25日
監督:バリー・ソネンフェルド

メン・イン・キャット

あらすじ

仕事人間で周囲に傲慢な大企業の社長トムは、ネコが欲しいと言う娘の誕生日に渋々と苦手なネコを購入する。しかし、その帰りにふとした出来事でトムの意識がネコに移ってしまう。ネコになったトムはペットとして家族に迎え入れられるのだが…。

ネタバレなし感想

ネコの名は…。

「ネコなんて大嫌いだ」と言えば世界中のネコ好きからネズミ扱いで袋叩きにされる…のはさすがに言い過ぎですが、ネコ好きな人たちのネコ愛は強いものです。偏見かもしれないですけど、イヌ好きな人よりもネコ好きの人の方が極端な偏愛傾向が大きい感じがするのは気のせいでしょうか。まあ、それだけネコが狂うほど魅力的ということなんでしょう。

しかし、ケビン・スペイシー演じる本作の主人公は「ネコなんて大嫌いだ」ときっぱり断言します。もし“世界から猫が消えたなら”彼は大喜びするでしょうね。

そんなネコ・ヘイターの会社社長がなんとネコになってしまったというのが本作のストーリー。映画タイトル、ポスター、予告、どれを見ても一目瞭然ですがコメディ映画です。「ケビン・スペイシーがネコになる」という一点で押し通す一発ギャグに近いといっていいと思います。

本作は『君の名は。』に便乗した動画も公式で製作されていますが、厳密には「入れ替わり」要素はありません。ケビン・スペイシーがネコの姿になるだけです。ケビン・スペイシーの姿でネコを演じるのも観たかったですけど。


監督は『メン・イン・ブラック』シリーズのバリー・ソネンフェルド。ゆえの『メン・イン・キャット』という邦題です。原題は「Nine Lives」で、これは「a cat has nine lives(猫は9回生まれ変わる)」という高い所から落ちてもなかなか死なない猫の生命力を表す諺が由来だとか。この言葉どおりケビン・スペイシーが高いところが落ちることで物語が動き出します。ちなみにバリー・ソネンフェルド監督は重度の猫アレルギーらしいです。よくこの仕事を引き受けましたね…。


このファミリーコメディっぷりはいかにもアメリカ映画らしい…と思ったら、本作はアメリカ映画ではありませんでした。

本作の配給会社は、リュック・ベッソンが社長を務めるフランス企業の「EuropaCorp」。『96時間』シリーズや『トランスポーター』シリーズなどアクション映画の印象も強いのに、なぜ?という感じですが、ほんとになぜなんでしょう。

そして、映画の制作自体は中国の企業「Fundamental Films」が担当しています。だからといって中国製品が宣伝されまくっていたり、中国人俳優が出まくっているということはないです。それどころか、ネコ好きな日本が劇中で話題になってたりします。

このフランスと中国がアメリカを舞台にネコ映画を作ったという、なんともチグハグな感じが本作のカオスっぷりを端的に表す証拠です。もうカオスになるべくしてなったというしかないですね。大丈夫かな、これで本作のクレイジーさは少しでも伝わったかな…。鑑賞前の皆さんにはぜひ肥満体質のネコが飛び越えることができるくらいの低いハードルを設定していただいて、期待値を適度にコントロールしてもらえると良いと強くオススメします。

とにかくこんなに劇中で絶えずニャーニャー言っている映画はなかなかないと思うので、ネコ好きな人は観れば幸せになれる…かもしれません。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

ネコで笑うのは愛情か?

『メン・イン・キャット』の全体をとおしての個人的感想を一言でいえば「粗雑」。

世の中にはネコを使った面白動画がインターネットの広大な海に山ほどある時代ですよ。十数分程度ネットサーフィンすれば爆笑できる動画なんてすぐ見つかります。ネコは最高のフリー素材。好きなだけ弄んで、やりたい放題の扱いになっている、世界一のイジられ動物です。だから今さらネコで面白いことをする映画を作りましたと言っても、ねぇ…。正直、私はそんな風に思っていましたよ。

では、この『メン・イン・キャット』はどうアプローチしてきたのか。よほど念入りに練られたシナリオの意外性で攻めてくるのか、アッと驚く盛大な映像で観客の目を釘付けにするのか、はたまた最後最後に涙腺崩壊するような感動ドラマが待っているのか。

答え。そんなものはなかった。

もうね、ケビン・スペイシーとネコです。これだけのプロットでした。絶対に企画会議はノリだったんじゃないか。

主演のケビン・スペイシー本体がほとんど寝ているだけという無駄遣いっぷりのみならず、怪しすぎる店長にクリストファー・ウォーケンを起用するという豪快キャストが出オチにみえる。それくらい中身がスカスカです。

ドラマなんかあってないようなもので、各登場人物の成長も、ネコから人間に戻る動機も行き当たりばったり。大雑把なシュレッダーや、謎のパラシュートダイブなどツッコミどころも随所にあって雑です。コメディなんだから細かい部分なんて気にしなくていいという意見もあるでしょうが、コメディだからこそ丁寧に作り込まれていると感動があると思うのです。「子ども向け」にしても、とくに中盤以降は目で見て楽しい展開もなく飽きてしまうのではないでしょうか。

雑なのは世界観も同じで、予算のせいなのか、中国企業の制作だからなのか、映画の世界が「作り物」に見えます。派手な車やビル、大げさなカメラワーク、原色を多用する色使い…すご~く嘘っぽいニューヨークです。このあたりは真面目に作る気はわざとないのだと思いますが。

ここでまで動物に対してふざけまくる映画はイマドキ、アメリカのハリウッドでもそうそうないのに、どうした「EuropaCorp」。いや、この会社らしいといえば、そうなのか。

メン・イン・キャット

ネコが可愛い」これくらいしか褒める点はないと言うしかない…。

製作陣もそれをわかっているのか、ネコの映像化だけは頑張っていました。というか製作陣のパワーはネコだけに集中したのではないかと思うほど。ちなみにこのネコはサイベリアンフォレストキャットという品種で入手が難しかったらしいですが、あれだけCG多用でネコにはありえない人間的な動きをみせるなら、全部CGじゃダメだったのだろうか…。まあ、予算が…。

そもそも本作におけるネコの扱いが「面白可笑しい動物」くらいしかなく、しょせんYouTubeとかでネコ動画を見て笑ってるノリです。ネコがピエロです。ネコに対する親身な愛情といったものはそれほど感じませんでした。だからネコ愛好家の人は逆に不快に思うのではないかと心配になってくるのですが、気にしすぎかな…。

いっそのこと、もっとハチャメチャな方向に振り切った方がまた違ったかなと思います。というか、だったら製作国であるフランスか中国を舞台にすればいいのに。なんで自国でやらないのか。

ちなみに『メン・イン・キャット』は批評家には酷評されまくりで、その無邪気で無慈悲な否定コメントを見ているだけでも若干楽しいです(あんまり嫌な気分にならないのは本作の軽さゆえかもしれない)。一部を紹介すると以下のとおり。
「笑えない」
「耐えられそうにない」
「観れば命を無駄にする」
「こちらが何度も死にそうになった」
「子ども向けにしては酷い」
「あらゆる予想を上回る残念さ」
「2回、笑えれば良いほう」
「ネコのgifの方がまだマシ」
「ネコが嫌いになりそう」
「この映画をどういう気持ちで作ったのかそっちを知りたい」
「給料が本当に無駄」
「脚本家の名前が5人あるけど何をしていたのか」
「ゴールデンラズベリー賞における傑作」
「スーサイド・スクワッドより面白い」
「ネコが一番良い演技をしている」
『メン・イン・キャット』は“やっちゃった”案件としてはネタになるので、まあOKですけどね(それは褒め言葉なのか)。

正直、『スーサイド・スクワッド』と同じ、「予告PVが一番面白い」タイプの映画でした。あの予告のノリで吹き替え版をやれば日本人受けが良かっただろうに…。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 14% Audience 41%
IMDb
5.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★

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