ダンプリン
Netflix映画『ダンプリン』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Dumplin’
製作国:アメリカ(2018年)
日本では劇場未公開:2019年にNetflixで配信
監督:アン・フレッチャー

ダンプリン

あらすじ

ウィローディーン・ディクソンにはうんざりなことがひとつあった。それはミスコンで優勝した経験のある母のこと。今なおミスコンに夢中の母は、ミスコンに参加する若い女の子たちを娘以上に溺愛している。しかし、ウィローディーンは太った体型であり、とてもミスコンとは無縁で、母に仕返ししたいと思っていた。そして、自分がミスコンに出場するアイディアを思いつく。

ネタバレなし感想

“だんご”体型でもミスコンに出場!

ミス・コンテスト…略して「ミスコン」はとても知名度の高い言葉である一方で、親しみのある身近さはあまりないというのが世間の一般感覚ではないでしょうか。女性の美を競うイベントであり、要するに「誰が美人かを決める」というのが目的である以上、選ばれし者の世界。大多数の人間は参加しませんし、せいぜい遠目から見ているだけ。

それでもミスコンは日本を含む世界各地で行われ、ときに一大イベントになっているのも事実です。つまり、それだけの魅力があるということ。参加者にしてみれば、華やかな注目を浴びたいという気持ちや、他者に認められたいという承認欲求、はたまた仕事につながるかもというキャリア意欲など、あらゆる思惑があるのでしょうし、主催者側や観客側も然り。それをとやかく否定する気分には私はなれませんかね。

でもそんなミスコンも最近はちょっと立場が追いやられている部分も少しだけでてきました。なぜならミスコンはその性質上、どうしたって“見た目”で人を評価する…言い換えれば差別や偏見が介入している側面が程度の差はあれど存在することは否定できません。だから批判の的になることもあります。そのためか最近は「容姿で判断しません」と謳ったミスコンもでてきていますが、まあ、たいていの察し力のある人は“でも見た目で選んでいるだろうな”と内心は“はいはい”モードなわけで。私はこういうミスコンの建て前と本音を見ていると、すごくヨルゴス・ランティモス監督作を観ているような気まずさで面白気持ち悪いです。
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そのミスコンの容姿問題を風刺するような青春映画が本作『ダンプリン』です(「ダンブリン」でも「タンプリン」でもないよ)。

原作は、ジュリー・マーフィーが2015年に発表したヤングアダルト小説「恋するぷにちゃん」(すごい邦題…)。映画のタイトルである「Dumplin’」というのは「dumpling」という単語から来ており、これは「ちびで太った人」を指す、まあ、軽蔑的な言葉ですね。本来は日本語でいう“団子”的な食べ物を示す言葉です(なので和菓子の団子を英語圏の人に説明するなら「Japanese dumpling」と言えばいいです)。

『ダンプリン』の主人公である女子高生は母親に「ダンプリン」と呼ばれているほど、言ってしまえば“太っちょ”体型(母親は悪気があって言っているわけではない)。そんな彼女がまさかにミスコンに出場するという、青春映画です。太った人が主人公だとどうしてもコメディだと思われがちですが、本作はそういうのではなく、王道の青春作品になっています。

監督は『ステップ・アップ』(2006年)が映画監督デビュー作の“アン・フレッチャー”。もとはダンサーであり、1990年代後半から2000年代前半の数多くのハリウッド作でダンサーもしくは振付師として参加しています。『ダンプリン』にもパフォーマンスシーンが多数あるので注目ポイント。

主人公を演じるのは“ダニエル・マクドナルド”。彼女といえば『パティ・ケイク$』で圧巻の演技パフォーマンスを披露していましたが、『レディ・バード』や『バード・ボックス』にも出演しており、最近目立つ若手女優のひとり。彼女の場合、同様の“太った体型”の先輩女優陣と違って、コメディ売りをしていないのがユニークなところで、今後もどう活躍していくのか注目ですね。

そんな主人公の母親役でミスコン脳になっている女性を演じるのは“ジェニファー・アニストン”。彼女については言うことないですね。この役にピッタリです。

他には『ギヴァー 記憶を注ぐ者』の“オデイア・ラッシュ”、『ディセンダント』や『エージェント・オブ・シールド』の“ダヴ・キャメロン”など若手がいっぱい。

体型で悩んでいる人、そうでない人…誰でも自由気ままに鑑賞して元気をもらえるライトなムービーです。Netflixオリジナルで配信しています。

オススメ度のチェック
ひとり◯(悩んでいるときに元気になれる)
友人◯(友達と一緒に悩みも吹き飛ばそう)
恋人◯(恋あり友情ありで盛り上がる)
キッズ◯(見た目の偏見をなくすために)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

エイトボールが未来を占う

いきなり雑談メモ。

『シャザム!』でも出てきた、振ったら文字が出てくる丸いオモチャ。名前はなんだっけと思ったら、『ダンプリン』でもガッツリでてきました。「エイトボール」でした(正確には「マジック8ボール」という名称)。アメリカでは超有名で子どものいる家族なら普通に持っているらしいこのオモチャですけど、本当にポピュラーなのかな。私なら3日で飽きる自信があるのだけど…。
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それはともかく本編のメインストーリー。

ウィローディーン・ディクソン、縮めてウィルは幼い子どものときから母親のロージーとは距離がありました。なぜなら母はミスコンにご執心で忙しそうだったため。そんな母よりも母らしく接してくれたのが叔母のルーシー。この頃から太った体型を男子にからかわれるウィルでしたが、そんなときも同じような体型のルーシーは励ましてくれます。ルーシーがウィルに紹介してくれた「ドリー・パートン」は今でもウィルの心の拠り所。また、エレン(エル)という同世代の子を引き合わせてくれて、彼女もまたティーンとなったウィルの一番の親友なのでした。

1年前にルーシーが亡くなり、大きな喪失感を抱えていたウィル。今年も憂鬱になるだけのミスコン・シーズンが到来。母が完全にミスコン専念モードに突入し、車の運転係と化したウィルは、ミスコンにゲスト出演して優勝者を発表し「みんな輝いているわ」と抱き合う母をステージの横から不満そうに見ているだけ。

そんなウィルには気になる相手がいて、バイト先で同じく働くボーに想いを告げるかお悩み中。しかし、体型のせいか、勇気は出ません。

日常行事のように体型をからかってくる男子高校生に頭にきたウィルは、その股間を蹴りあげ、停学処分。イライラもMAXでいるとき、叔母の荷物を片付けていると、そこにミスコンの出場申込書がペラリとでてきて、びっくり。あの叔母がミスコンに出ようとしていた!?という衝撃とともに、ウィルの頭に思いつく考え。自分もミスコンにでてみよう、母は絶対に困るはず…。そんな不純な動機(ウィルいわく「デモ」)で地元のミスコン(ミス・ティーン・ブルーボネット・コンテスト)に申し込むことにしたのでした。

ミスコンを現代的にアップデート

本作『ダンプリン』は特別変わったオリジナリティのある映画ではありません。

それこそ“太った女性”が奮闘する映画は最近でも『ロマンティックじゃない?』や『アイ・フィール・プリティ!』など枚挙にいとまがないわけです。
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もちろんこれは“理想”とされてきた体型への考え方を改め直そうとする「ボディ・シェイミング」の潮流に乗っかっているともいえますが、でも“太った主人公”のボディを題材にした映画は別に昔からあります。『ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合』(1996年)とか、もっとそれ以前にも。

そしてこの手の映画のオチはたいてい決まっています。“自己肯定”です。自分のような体でも惨めに思う必要はない、前向きに生きよう…そんなエンディングがお約束。『ダンプリン』も案の定、そういうラストですし、まあ、逆にそれ以外はないですよね。

ただ、この『ダンプリン』、単なる“自己肯定”に終わらず、さまざまな他者を含めた広い意味での“多様性肯定”につなげているのがイマドキなところ。

本作は青春映画であり、実質“ウーマンス”(女性同士の友情を描くジャンル)でもあります。ミスコンに参加することに決めたアウトローな子たちはウィルだけではありません。ウィルと同じように“ダンプリン”な体型のミリー、コテコテにLGBT感全開のハンナ、そして大親友のエレンも。ミリーとハンナの部外者っぽさは誰でもわかることですが、エレンは傍から見るかぎり美人そうでミスコンに出ても違和感ないように思えますが、演じている“オデイア・ラッシュ”はユダヤ系イスラエル人。

そして本作はウィルが優勝することを目指す映画でもありません。そもそも母親へのあてつけに近い私的な恨みで出場したのですから。じゃあ、最終的にウィルは何を成すのかというと、今まで“選ばれし頂点”を決めるものだと思っていたミスコンのイメージを、”多様性を認め合う場”に転換することなんですね。

前々から好きだった「ドリー・パートン」と、実は叔母ルーシーのもうひとつの輝く世界だったドラァグ・バー「ザ・ハイダウェイ」のライブショー。この2つが合わさることで、ウィルの心にも新しい価値観が芽生える。

そういう意味ではウィルは常にサイドに居続ける、変わった主人公ポジションです。でも最後には古い形式に囚われがちなミスコンを現代版にアップデートさせた最高のマジックを披露したと言えるのではないでしょうか。

ダンプリン

重いのは体重だけではない、母親たち

確かに話自体はありきたりというか、全体が綺麗にまとまりすぎて、良い人が多すぎる気もします。せめてミリーが2位になったことについて、あの学校でからかってくる男子高校生たちはどう反応するのか、周囲はどう変わるのか、もっと見せてもいいとも思います。ウィルの恋人となるボーのエピソードももっと見たかった人も多いのではないでしょうか。また、パフォーマンス面ではあまり凝ったことをしていないので、物足りなさはあります(現実的ではありますが)。“ダニエル・マクドナルド”の大活躍を見たいなら、『パティ・ケイク$』を見ましょうってことですかね。

それでも個人的に本作に一番グッと来たのは大人陣の登場人物で、そこに感動したのでオール・オッケーです。

本作は3人の保護者の大人が出てきます。ひとりはウィルの母親のロージー。もうひとりは叔母のルーシー。そして終盤に登場するミリーの母親。思えばこの舞台はハッキリ言えば、アメリカの典型的な田舎。ミスコンがせいぜい最大のお祭りになる程度の地域。おそらくこの地で生きる女性にとって人生の選択肢は乏しかったはずです。それこそロージーのように美で頂点を目指すか、ミリーの母親のように宗教に身を捧げて祈るか、その二者択一。それ以外の存在はハブられ、ルーシーのように人知れずに自分を解放できる場所を求めるしかない。

そんな社会の圧力が自分の“重さ”となって圧し掛かっていた青春を過ごした大人の母親たちが、自分たちの娘世代が自由の翼で羽ばたくように“重さ”から解放されて“自分らしく”生きる姿は、きっと明るい展望に見えたはずです。自分たちが成し遂げられなかったことを、この子たちがやってくれるのかもしれないと。

ラストのドラァグ・バーでの打ち上げ的なシーンはそんな未来の一幕ですね。ちなみにこのシーンで原作者のジュリー・マーフィーがカメオ出演しています。

こういうミスコンなら親近感を持つ人もたくさん増えると思います。広がっていくといいですね。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 85% Audience 75%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

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↑『パティ・ケイク$』…ダニエル・マクドナルド主演作。こちらでも体型をバカにされまくりです。
作品ポスター・画像 (C)Netflix