絵文字の国のジーン
映画『絵文字の国のジーン』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Emoji Movie 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2018年2月17日 
監督:トニー・レオンディス 

【個人的評価】
 星 3/10 ★★★

あらすじ

ある男の子のスマートフォンの中。絵文字たちがにぎやかに暮らす町、テキストポリスに住む絵文字のジーンは、不機嫌な「ふーん」顔の役割をもっているが、表情が豊かで両親を心配させていた。ある日、いよいよジーンの初仕事の日がやってくるが、決められた顔とは全然違う表情をしてしまい、案の定の大失敗を犯してしまう。

ネタバレなし感想

スマホをぶち壊したいほどの駄作!?

2017年7月末、アメリカで公開されるや否や、同じく上映中だった『アトミック・ブロンド』や『ダンケルク』といった大作を差し置いて話題をかっさらった映画がありました。

それが「ソニー・ピクチャーズ・アニメーション(SPA)」が贈るアニメーション映画『絵文字の国のジーン』です。

といってもポジティブな注目ではありません。ネガティブな話題です。大酷評でした。

映画批評サイトの「Rotten Tomatoes」では9%という超低評価。各批評家たちのコメントも辛辣で、「2017年ワースト」「最低な脚本」「精神的拷問」「時間とカネの無駄」「スマホをぶち壊したい」と“怒”マーク連発のような憤怒の感情が溢れかえっています。そして、当然のようにその年の最悪な映画に贈られるゴールデンラズベリー賞にノミネート。ボロクソな状況です。

なぜそんなにも批評家を怒らせたのか。その理由については「ネタバレあり感想」で探ってみるとして、ひとつ言っておくと、クソ映画に好んで群がるマニアックなファンの皆さんが巷には存在しますが、そんな人が満足するようなモノではないと思います。要するにそこまで最底辺にめり込むような究極の“クソ”じゃないのです。

本作の主な舞台はスマホの中で、そこで暮らす絵文字たちが登場人物になっています。この世界観は非常にユニークで、観ていて楽しいものです。脳内をキャラで映像化したピクサーの『インサイド・ヘッド』や、ゲーム内をキャラで映像化したディズニーの『シュガー・ラッシュ』をちょっと連想させます。たぶん多くの人は本作でもひとめ見てワクワクするものを感じるでしょう。また、ストーリーもシンプルです。本作の監督の“トニー・レオンディス”は「子ども向けに作った」と言っているとおり、子どもなら何の苦もなく素直に楽しむと思います。実際、酷評の嵐だったアメリカでも小さな子どもたちは大満足していたというレポートもあります。子どもだけでレビューさせたら高評価90%超えだったかもしれません。ちなみに興行収入はしっかり稼いでます。

つまり、観てみると案外面白いかもよ?ということです。

日本では、ソニー・ピクチャーズ・アニメーションが手がけた『スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険』と同じように、劇場公開と同日にデジタル配信しています。
『スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険』感想(ネタバレ)…この映画、スマーフだね
人気声優を起用するなども同じで、ソニー・ピクチャーズ・アニメーションは完全にこの売り戦略でいくみたいですね。

ぜひあなたの目で観てこの作品に評価を与えてください。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

酷評の一番の理由

『絵文字の国のジーン』、いかがだったでしょうか。“ふーん”の顔になりましたか。それとも“ナイス”な顔ですか、“まずまず”の顔ですか。

大抵の日本人は本作を吹き替えで鑑賞したと思いますが、実は本家オリジナルの声優も豪華です。主人公のジーンの声を演じたのは『デッドプール』でも印象を残した“T・J・ミラー”。そして、なんと“うんちパパ”役は“パトリック・スチュワート”ですよ。何してるの。仕事、選べるでしょう、あなた。まあ、ものすごい出番は一瞬でしたけど。

で、なぜ本作は批評家から酷評の嵐だったのか。別に批評家全員が“パトリック・スチュワート”のファンだった…というわけではないです(そのはず)。

海外サイトでそのコメントなどから分析するに、一番の理由は「宣伝的」だったという部分の印象がマイナスに働いたようです。

本作を観た人ならわかるように、この映画の舞台はスマホの中です。その中でも絵文字たちが暮らす世界はテキストポリスと呼ばれていますが、他にもその外には別の世界がありました。具体的にはスマホにインストールされている各アプリごとに世界があるんですね。

しかも、ここが重要ですが、ちゃんと実在のアプリが登場します。ゲームの「キャンディークラッシュ」「ジャストダンス」に始まり、音楽アプリの「Spotify」、オンラインストレージの「Dropbox」、SNSの「Twitter」、動画アプリの「Youtube」では「ピコ太郎」もまさかの登場でした。これがさりげなくではなくて露骨に堂々と示され、加えて物語にガッツリ絡むわけです。

映画には「プロダクトプレイスメント」というのがあって、つまり作中に実際の企業名や商品名が示されてスポンサーとして宣伝に使われるときがあります。本作の“これ”もそうなのかはわかりません。もしかしたら映画が企業に金を払っているかもしれないし、タダで使用させてくれているかもしれません。

そもそもスマホの中が舞台ならしょうがないじゃないか…むしろユニークで面白いだろう…そういう意見も理解できます。

でも具体的なアプリ名を登場させる必然性はなかったですよね。例えば「Spotify」では音楽の波に乗るという演出がありましたが別に「ミュージックアプリ」でいいよねと。「Dropbox」は「オンラインストレージアプリ」なら何でもいいし、“落ちる(drop)”というギャグをしたかっただけなのか。「Twitter」にいたっては青い鳥が呼んだら来るのですが、そういうことでいいの…機能に関連なくないですか。

本作は「プロダクトプレイスメント」の域を超えてます。まるで、アイアンマンのボディに「Apple」とデカデカと書いてあって、故障したら「Apple Store」に駆け込んでいるみたいなものですから。

せめて実在のアプリの登場は前菜程度のお遊びでとどめて、メインディッシュのシナリオではしっかりオリジナリティだけで物語を展開するべきでした。そこを上手くクリアしていたのが『シュガー・ラッシュ』ですよ。あれも実在のゲームキャラが出てきますが最初だけで、ちゃんと独自性のある物語で楽しませていました。

個人的には、スパムメールに騙されそうになって文句を言っている(英語だと「fuck off spam !」になってる)くだりとかは好きなのにな…。

子ども向けなら口うるさくツッコむべきじゃないかもしれません。でも、子ども向けだからこそ、安易な実在のアプリを挿入するような宣伝的になりうるつくりは避けるべきだと思います。ただでさえ子どもは影響されやすいのですから。

絵文字の国のジーン

絶対にマネしないでね

もうひとつ酷評の理由といえば、ストーリーの雑さです。

本作は、本来は「ふーん」の役割を持つはずの絵文字のジーンが多彩な表情をしてしまうという悩みを抱え、それを解決するためにファイヤーウォールの先にあるクラウドに行くというのがだいたいのプロットです。で、結局、ジーンは多彩な表情を活かした新しい絵文字として認められ、めでたしめでたしで終わります。これだけだと、ああ、良い話じゃないかという気分にもなるのですが…。

よく考えると、なぜ1つのキャラが1つの表情を担当するのか謎です。"うんち”とかそういう絵文字は別として、あの黄色い奴らは表情ごとに存在する必要性ゼロじゃないだろうか。ただでさえ、この作品の設定では「スキャンする」ことで絵文字を読み取っているらしいので、余計に変です。だから、ジーンのあの結末も、観客である私的には「ふーん」ですよ。そりゃそうだよねと。

この絵文字に対する理不尽な設定のほかにも、本作、スマホへの理解が不足しているのではと思うシーンもチラホラあって。アプリ内でジーンが騒動を起こすとリアル世界の持ち主であるアレックスのスマホから音が鳴り出すという怪奇現象。普通にコワイ。

その異常を起こしまくるスマホに困ったアレックスはスマホショップにスマホを持っていき、そこでスマホを初期化して問題改善を図ろうとするわけです。ジーンたちスマホの中の世界は大パニック。このままでは世界が消えてなくなる!…と思った矢先、「やっぱり、やーめた」みたいな感じでアレックスがケーブルを引っこ抜き、初期化は中止、事なきを得るというシーン。あそこまで初期化している途中で強引にやめたら内部データが壊れます。絶対にマネしないでね。

いや、そんなリアリティ、どうでもいいじゃないかと思うかもですが、実在のアプリを出しておいて、メインのスマホの描写が雑とは何事ですかと私は思ってしまうわけです。子どもに対する正しいスマホの使い方の説明にすらならないので、教材にも不適当ですよね…。

あとアレックスの片思いの女の子、絵文字ひとつで何かずいぶんあっさり関係を深めますね。というか、アレックス側のリアル世界とスマホ世界の物語上の関連性が薄すぎます。下手したら、スマホ関係なしにアレックスと女の子は仲よくなれた気さえしてくる…。

これらのプロットの穴は、素直に練りこみ不足なのだと思います。なんでもかなり製作期間は短かったとか。その理由も、うかうかしていると絵文字文化自体が無くなる可能性があったからという切実な背景もあったみたいです。それでもしっかり練り上げていれば名作になったのではと思うほど惜しいアイディアではありました。

ちなみに今度の『シュガー・ラッシュ』の続編、『シュガーラッシュ:オンライン』はインターネットの世界が舞台だとか。こっちは大丈夫でしょうか。

↑『シュガー・ラッシュ』はゲームが舞台。そこまで宣伝要素はなし。

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