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『ジェラルドのゲーム』感想(ネタバレ)…手錠プレイは同意の上でやりましょう

ジェラルドのゲーム

手錠プレイは同意の上でやりましょう…Netflix映画『ジェラルドのゲーム』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Gerald’s Game
製作国:アメリカ(2017年)
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信
監督:マイク・フラナガン
ゴア描写 性描写
ジェラルドのゲーム

じぇらるどのげーむ
ジェラルドのゲーム

『ジェラルドのゲーム』物語 簡単紹介

人里離れた静かな湖畔の別荘にやってきた中年の夫婦のジェシーとジェラルド。ここではまず誰かが訪れることもない。日常から離れた環境でマンネリの性生活に新たな刺激を求めた結果、その行為は一瞬にして暗転。こんなことになってしまうとは考えていなかった。ベッドに手錠でつながれた妻のジェシーは地獄を味わう。そして、過去の秘密が暴露されるとき、彼女は人生を解き放つ大きな決断を迫られる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ジェラルドのゲーム』の感想です。

『ジェラルドのゲーム』感想(ネタバレなし)

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スティーヴン・キング小説映画化(何度目?)

最近ちょっと夫婦の“性”生活がイマイチなんです…そんな人は本作を観ると色々思うことがあるかもしれないし、何も思わないかもしれない(投げやりな文章)。

中年夫婦が何気なく行った「手錠プレイ」が地獄へと変貌する…その様を描くホラー映画が本作『ジェラルドのゲーム』です。

もう少し具体的に話すと、手錠プレイ中に夫が突然死亡。ベットに手錠で固定されたまま残された妻に、飢えと動物と得体のしれない“何か”が襲ってきて、さあ、どうなる!? 大雑把に言うとそんなストーリー。

しかし、本作は物理的状況からの脱出という「シチュエーション・スリラー」の要素ももちろんながら、加えて心理ドラマも同時並行で展開されるため、なかなか単純ではない一作に仕上がっています。この心理ドラマの比重がかなり大きいのが特徴で、描かれ方も独特。『ドント・ブリーズ』のような純粋なジャンル映画的シチュエーション・スリラーを期待すると肩透かしを食らうかもですが、『ババドック 暗闇の魔物』のようなホラーで人間の心理と成長を暗示させるドラマが好きな人は楽しいはず。ホラーでありつつ、意外なほど心に響く展開もあります。

原作者は、ご存知、映画化されまくることで定評のある“スティーヴン・キング”です。彼の1992年に刊行された長編小説が基になっています。本作の映画化はこれが初なのかな…?

監督は“マイク・フラナガン”で、最近の監督作は、欧米版こっくりさんとも呼ばれる降霊術の占いボードゲーム「ウィジャボード」を題材にしたオカルトホラー『呪い襲い殺す』の続編の『ウィジャ ビギニング 呪い襲い殺す』。他には『ドント・ブリーズ』の真逆で、耳の聴こえない女性が謎の襲撃者に追いつめられる恐怖を描いた『サイレンス』も監督しています。いずれも評価の高いホラーであり、本作も批評家からのレビューは上々。

今年は“スティーヴン・キング”原作の映画化では『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』も公開されますから、合わせて観ると良いでしょう。

ちなみに非常にグロい演出ありです。苦手な人は注意!

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『ジェラルドのゲーム』を観る前のQ&A

Q:『ジェラルドのゲーム』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2017年9月29日から配信中です。
日本語吹き替え あり
菅生隆之(ジェラルド)/ 日野由利加(ジェシー)/ 平井祥恵(若いジェシー)/ 村治学(ジェシーの父)/ 清水はる香(ジェシーの母) ほか
参照:本編クレジット
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ジェラルドのゲーム』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):拘束された人生

旅行のためにバックに荷物を入れていく夫婦。中にあるのは日用品、衣類、そして手錠…。

ジェシーに「いい旅になるよ」と告げるジェラルド。今は車で移動中。いろいろ忙しかったですが、久しぶりの夫婦の時間。

すると道路の真ん中にがいるのを発見し、間一髪でブレーキを踏みます。小動物の死体を漁っていたようです。クラクションを鳴ら追っ払います。首輪があるから飼い犬かもしれないと気にかけるジェシーは気にしていました。

湖の畔にある別荘に到着。のどかで周りには誰もいない、落ち着けそうな場所でした。

ジェシーは冷蔵庫にあった肉を切り、外であの犬を誘いますが姿を見せません。しかし、木の奥から顔を出し、ゆっくり近づいてくる黒い犬。弱々しく泣きながら肉に顔を近づけますが、ジェラルドが声をかけたので犬は逃げます。この肉はそのままにしておきました。

「中に入ってくつろごう」

ジェラルドはジェシーの手を取り、ベッドへ。ジェシーは白いネグリジェを着て、ベッドの上に横たわり、スタンバイOK。「どうぞ」と声をかけます。

そこに半裸で手錠を手にしたジェラルドが。キスし、ジェシーの両手に手錠をつけ、寝具にくくりつけます。両腕を封じられ、完全に動けなくなったジェシー。興奮が高まる2人。今日はこのプレイを楽しむために来たのでした。

ジェラルドはバイアグラを飲み、あちらもスタンバイOK。「誰もいないから叫んでもいいんだぞ」「助けを呼ぶんだ」と言います。

戸惑いながらも指示に従ってみるジェシー。しかし、やはりしっくりきません。「私、こういうのイヤ」と拒絶しますが、ジェラルドは芝居だと勘違いして続行。ジェシーは完全に拒否して突き飛ばします。

夫婦関係に刺激を与えるためと思ってのことでしたが、上手くいきませんでした。

こんなレイプごっこは予想しておらず、バカみたいに思えてきたジェシー。

「外して」と要求しますが、ジェラルドは「外せなかったら?」と意味ありげに口にします。ジェラルドがすべての主導権を持っているのでジェシーにはどうしようもありません。なおも続けようとするジェラルド。

しかし、急に震えて苦しみだし、心臓を手で押さえたかと思ったら、バタンとジェシーの上に倒れます。足でジェラルドをどけ、そのまま無抵抗でベッドから落ちるジェラルド。ジェシーは必死に手錠をほどこうとしますが、寝具に固定されており、外れません。今度は本気で「助けて」と叫ぶのみ。

ジェラルドは動きません 話しかけてもピクリともせず。床に血が流れていくのを目にして、これは完全に危険だと自覚。絶叫しますが誰にも声は届きません。

日が暮れ始めます。助けのために声をあげるのも疲れました。

そのとき外で物音が。誰かいるのか。気のせいか。もし真っ暗になったらそれこそ絶望的ではないか。

そしてドア付近からやってきたのはあの犬。ガッカリするジェシー。「ステーキどうだった? ひときれ200ドルもするのよ」

しかし、犬が今見つめているのは…。

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抜けた(ズタボロ)

人なんて滅多に訪れない二人だけの環境で、ご満悦な気分に浸っているのも束の間、夫のジェラルドはバイアグラもしっかり飲んで準備万端。自慢げに手錠プレイを始めます。しかし、リアルを求める夫に妻のジェシーは嫌気をさして拒絶。ところが、夫が突然発作のような状態を起こして死亡(バイアグラは正しく服用しましょう)。手錠で身動きの取れないジェシーは絶体絶命のピンチに陥ります。

そんな部屋へやって来た訪問者は道中見かけて餌をあげた野良犬。そこにはベットから落ちて血を流した夫の死体。よだれをたらす犬。あっ…(察し)。

当然のムシャムシャタイムが始まり、神戸牛よりこっちの方がイケますねと言わんばかりにかじりつく犬です。なんていうか、犬ってホラーにはつきものですけど、絶妙に怖いだけじゃない愛嬌を醸し出してきますよね。

で、ここからが“スティーヴン・キング”らしい摩訶不思議展開の連続です。手錠拘束状態のジェシーの前に元気にしゃべりまくる夫(死体じゃない方)が現れたかと思いきや、今度は手錠脱出とベット破壊が上手いジェシー(自分の別人)も出現。怒涛のトークタイムが繰り広げられます。なお、犬さんは相変わらずムシャムシャタイムを継続中。

この間にストロー作戦で水を飲むことに成功したりしつつ、手首を血ですべらせれば手錠を抜けるのではないかと思いあたり、実行。これまでそれほどグロい演出がなかったのはこのためのフリだったのか、この手首グサッからの皮膚ごとグチャっと抜けるシーンはかなりドキツイ…。ダニー・ボイル監督の『127時間』みたいでした。こういうシーンをワンポイントで入れてくれるだけでも本作はホラーとしてのキャッチーさは抜群で、個人的には大満足です。まあ、あんなに皮膚がまくれたら血で濡らす意味ないだろうとツッこめますけど…。

あとの車の脱出はあっさりで、シチュエーション・スリラーはこれでおしまい。

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思ったよりずっと小さい

シチュエーション・スリラーとしてはこんなものですが、観ればわかるとおり、本作の肝となるのはジェシーの過去のトラウマだということがわかってきます。つまり、手錠拘束状態からの脱出を試みる過程で、ジェシーは過去のトラウマからの脱出を迫られるわけです。

そのトラウマとは、幼いころに父から受けた性的虐待。「二人だけの秘密だ」と言われ、ずっと内に秘めてきたこのトラウマは彼女にとって“枷”となり、縛ってきました。

“枷”の象徴となる手錠と結婚指輪を捨てたジェシーは過去を語れるようになり、前へ進んでいきます。彼女の頭上の日食が消えて輝く太陽と、日食の光が演出されているエンドクレジットが良かったです。あの手首グチャっからここまですがすがしくなるとは、凄い上げ下げが大きい作品ですね…。

やや終盤の急ぎ足感は気になるし、先端巨大症のあの男も唐突な扱いで終わるのがちょっと残念でしたけど、ホラーと心理ドラマ、双方で映画らしい演出が巧みに組み合わさっており、なかなか綺麗にまとまった映画化だったのではないでしょうか。

『ジェラルドのゲーム』は男性的抑圧に苦しむ女性の話でしたけど、きっとこの構図はいろいろなものに当てはめられるはずです。今後も“スティーヴン・キング”原作は大胆なアレンジによって何度も映画化されるのかなと思います。

そういえば、あの犬、どうしてるのかな…。

『ジェラルドのゲーム』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 91% Audience 71%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『ジェラルドのゲーム』の感想でした。

Gerald’s Game (2017) [Japanese Review] 『ジェラルドのゲーム』考察・評価レビュー