コンジアム
映画『コンジアム』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

英題:Gonjiam: Haunted Asylum(昆池岩) 
製作国:韓国(2018年)
日本公開日:2019年3月23日
監督:チョン・ボムシク

あらすじ

恐怖動画を配信する人気チャンネル「ホラータイムズ」が一般参加者を募り、数々の都市伝説を生んだ心霊スポットであるコンジアム精神病院からのライブ中継を計画する。主宰者ハジュンを隊長とする7人の男女は、深夜0時に探索を開始。ライブ配信の視聴者数は順調に伸びていくが、次第に想定を超えた怪現象が次々と起こり始める。

ネタバレなし感想

全然怖くないですよ(震え声)

1998年の『リング』に始まった、世界的現象を巻き起こしたジャパニーズホラーブームもすっかり過去の記憶。もうミレニアム世代の若者にとっては「へぇ、そんなことあったんですね、昔」の一言で片づけられそうです。2017年にアメリカ映画『ザ・リング リバース』が、2019年に邦画最新作『貞子』が公開され、ブームの源流となった作品もたびたび生まれ変わってはいるのですが、リバイバルというほどの再燃にはなっていません(2019年はどうなるのかな)。

なぜこうも勢いを失ったのか、私なりに考えてみると、日本の“心霊”作品(映画に限らず)はコンテンツ自体が古くなってしまったのかもしれません。どうも日本は「学校の怪談」とか「呪いのビデオ」とか、題材がクラシカルで進化していないんですね。学校はずいぶん近代化して昔とは変わりましたし、ビデオなんて旧時代のアイテム。もちろんそれをネット配信とかにして今風にバージョンアップする試みもあったのでしょうけど、だったら「ネットでいいじゃん」ということになる。今は映画や番組のような媒体よりもインターネットの方がよっぽど“怖さ”を提供してくれます

一方のアメリカでは、社会問題などをホラージャンルに巧みに練り込んだ作品が支持を集めており、それもまた日本の業界には苦手な分野なんですね。

そんな停滞している日本のホラー映画界隈にとって参考になりそうな作品が韓国からやってきました。それが本作『コンジアム』です。

本作は韓国ホラー映画歴代興収2位を記録するほど大ヒットした作品で、韓国のネットユーザーの間でも大きな話題になりました。

ここまでヒットした要因はおそらく本作は非常に「今」の感覚をそのまま反映した映画になっているからなのかなと。物語は、心霊スポットとして有名な廃病院に探索してライブ配信していると恐怖に襲われるYoutuberたちを「POV(ファウンド・フッテージ)」で描いた、手法としては珍しくないものです。それこそ『パラノーマル・アクティビティ』など昔からありますし、みんなで閉鎖空間を探索するという設定としては『グレイヴ・エンカウンターズ』がそっくりです。また、日本でも『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズという同類のスタイルのホラー作品もありました。

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズはネットのノリみたいな感じが反映されていて、私はジャパニーズホラーブーム下火以降の作品としては一番実験的で面白いと思っているのですが、いかんせんもう「昔」のネットのノリになっちゃっている気がします。

その点、この『コンジアム』は完全に「今」のネットのノリがダイレクトに活かされています(当然10年後20年後にはこれも古くなるでしょうが)。だからネットユーザーも同調して盛り上がりやすいのでしょう。恐怖の作りも順当に今風に正統化しているので、目新しさはなくとも、雑さは皆無です。

残忍な描写やBGMを極力使っていないのも、韓国映画のセオリーに反しているので、余計に万人にウケやすいと思いますし、全然日本でも当てはまる内容。私は全くYoutuberに興味ない人間なのであれですが、こういうホラー配信は日本の界隈でも流行っているのかな。

舞台となった廃病院は、CNNが選出した「世界7大心霊スポット」に挙げられた実在の「コンジアム精神病院」となっています。まあ、でも公式ではそう説明していますけど、正確には「7 of the freakiest places on the planet」というタイトルで紹介しているので「心霊」じゃなくて「奇妙」くらいの視点だと思いますが…(ちなみに青木ヶ原樹海や軍艦島もこれに選出されています)。

実際のCNNの紹介記事はこちらです。
7 of the freakiest places on the planet | CNN Travel
なお、韓国公開当時はネット上に「この映画は全然怖くない」と嘘書き込みをして、未見の人を油断させるのが流行ったそうなので、皆さんもネットの情報は信頼できないかもしれません。このブログの記事にも騙し情報が紛れ込んで…(ないです)。

グロい描写とかもないですし、純粋な怖さだけなので、幅広い嗜好の人たちと楽しみやすいホラー映画だと思います。お化け屋敷を映像体験する感覚でどうぞ。

オススメ度のチェック
ひとり◯(ホラー映画好きなら必見)
友人◯(ワイワイ盛り上がる)
恋人◯(恐怖で親密に?)
キッズ◯(残酷描写はないけれど)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

動画配信者は最高の適任者

本作は「POV」…つまり主観視点で物語が進行する作品ですが、今さらこの手法はもはや斬新なんて褒め方をされるものでもないです。すでに作品名を挙げたとおり、すでに手垢がベタベタにつきまくったおさがりのお古。

でも本作のPOVは適切なに正統進化した良くできた作りでした。とくにPOVのありがちな問題点をちゃんとカバーしているのが良いです。

その問題点のひとつ。それはそもそも「なぜ主観視点であるのか」という必然性。たいていは登場人物がカメラを持っていてそれで撮影している映像で物語が展開するのが基本。ただ、これだとカメラを持つ理由が必要です。ましてや異常事態が起こったときでも意地でもカメラを回しているのは不自然だったりしますし、その見どころをしっかりカメラにおさえていたりすると「なんだこいつら、プロにしたって出来過ぎだよ」と違和感にすらつながります。

しかし、本作の場合、主人公である廃病院を探索する若者たちが「動画配信者」であるという設定が上手く効いています。つまり、カメラを持っているのは当然ですし、動画の面白さのために常に画角や臨場感を意識しているという、プロ精神が自然と発揮されます。だから凝った“出来過ぎ”なくらいの映像になっても不思議ではない。

病院探索だけでなく、顔合わせの食事や移動の車の中でもカメラを回しているのは実に動画配信を日課する人たちらしいですよね(まあ、実際の動画配信者があんな風に日常的にカメラを回しているのかは知りませんけど)。

実はPOVと最も相性がいい最高の適任者、それが「動画配信者」なのです。

リッチゆえの映像の安定感

この「動画配信者」であるというのはさらにPOV映画にとってプラスな側面があって、定番の問題点となる「画面がぐらぐら揺れて見にくい」という欠点を回避してくれます。

POV映画はダメなやつだと本当に画面が激しく動きすぎてただ観客にとって苦痛でしかないことがあります。そうなると映画どころではないという…。

でも『コンジアム』は大丈夫。

作中でも序盤に映し出されていましたが、人気動画配信チャンネル「Horror Times」を運営するハジュンは相当儲かっているのでしょう。今回のスペシャル企画のために用意したカメラ&配信機器はとにかく贅沢。人数分の顔をとらえるカメラベスト、アクションカム、ハンディカム、カメラスタンド棒…。総額いくらなんだというゴージャスさ。たぶんローカルTV局だってこんなもの用意できないです。

でも私たちはリテラシーとして「成功した動画配信者は金持ちだ」と知っているので、この作中の状況もすんなり受け入れられます。

そしてこれだけ機能のいいカメラがあるわけですから、映像はむやみにブレたりしないし、基本は多少ノイズが入っても安定した映像が目に流れてきます。もちろんそうでないと100万再生なんて達成する前に視聴者が「画面が見づらい」と怒って離脱してしまうでしょうけど。

つまり動画配信のリアリティと、映画としての見やすさがシンクロしているんですね。少なくとも画面酔いする弱点を抱えた映画ではなかったと思います。

せいぜい私が変に感じたのは、森の中なのに電波のとおりがいいんだなということと、ドローンを簡単にホイホイ飛ばし過ぎでは?と思ったくらいでしょうか。

コンジアム

恐怖を共有できたのは観客だけ

ただ、本作の場合、POV映画としてちょっとイレギュラーな点があって、それは前半は映像に編集が加えられているという部分があります。だから生の映像ではありません。

ベースキャンプのテントに待機する主宰者のハジュンがリアルタイムで病院探索している6人の持つさまざまなカメラの映像を切り替えて、ときどきチャンネルロゴで編集点を作ったりしています。

しかも、一部の参加メンバーと共謀して、わざと“やらせ”的に怖がらせ演出を作っており、言ってしまえば前半はハジュンの作ったホラーモキュメンタリー動画を観客も動画配信視聴者と同じ立場で見ている状態のようで、実は観客だけ正規のライブ配信では使われていない、裏の様子をおさめた動画も見れるという立ち位置。

だから最初の前半部分の探索パートはそんなに怖くありません。あくまでこれは番組だよねと安心感を持って見られます。

しかし、その安心が崩壊し始める映像が流れていくと、しだいに観客にも不穏感が心に膨れ上がり…。とくにテントにいるハジュンに振りかかる怪奇現象とまではいかない不自然な出来事(コンロの火が突然燃えあがるとか、電気が消えるとか)が地味に恐怖を増幅しますし、最終的に6人が一画面に映っている映像をひとり見るハジュンが「あれ、これは誰が撮ったのだろう」と気づいてしまうシーンもね。たぶん今回のメンバーでなんだかんだで一番怖いおもいをしたのはハジュンだったのでないのかな。

「ジヒョン腕引っ張られ負傷事件」で探索チームはヤバいと確信。あとはもう阿鼻叫喚。

序盤であんなにパーリーピーポーなお気楽さでミニトマト投げ食いとかしてハシャいでいた若者たちが、あそこまでなりふり構わず恐怖に怯える姿を見て、「ざまあみろ」と思うもよし、一緒に怖がるもよし。一番見た目が変貌していたのはシャーロットですかね。帰国子女という設定のせいか、やたら身なりがビシッとしていましたが、もう全裸の患者に襲われて散々でしたし(ちなみにこの場面で全裸患者が股間を隠して立っていることに若干の面白さを感じてしまった私)。

前半では安定していた映像も終盤は乱れに乱れていくのが逆に良い効果をもたらしていました。

憑りつかれ、402号室に引きずり込まれ、オール・ジ・エンドを迎えたメンバーたち。

動画視聴者数がめっきり減少し、フェイク動画だと訝しむ人がいるなか、この映画を観て現場の裏の動画を視聴してしまった観客だけに本当の恐怖が残る。そのオチもほどよい着地で。

こういうホラー映画を作れてヒットさせられた韓国映画界、羨ましいですね。監督デビュー作で、知名度もない新人に近い俳優陣で、このフィーバーっぷりですから。『カメラを止めるな!』をヒットさせた日本なら不可能でもないでしょうけど、少なくとも大手映画会社はやらないだろうな…。

今作の舞台になった廃病院みたいな場所、きっと過疎化が著しい日本なら似たようなものはいっぱいあるでしょう。

誰か面白いジャパニーズ・ホラー、作ってください(他力本願)。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 100% Audience 72%
IMDb
6.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

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