オーシャンズ8
映画『オーシャンズ8』(オーシャンズ・エイト)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Ocean's 8 
製作国:アメリカ  
製作年:2018年 
日本公開日:2018年8月10日 
監督:ゲイリー・ロス 

Plot Summary

史上最強の犯罪チーム「オーシャンズ」を率いたカリスマ的リーダー、ダニー・オーシャンの妹デビーが仮釈放された。出所したデビーは7人の女性に声をかけ、ニューヨークで開催される世界的ファッションイベント「メットガラ」の会場で1億5000万ドルの宝石を盗み出そうとするが…。

ネタバレなし感想

性別が変わってもやることは同じ

夏になると人は開放的になりたくなるのか、劇場で公開される作品もいかにも「ザ・エンタメ!」というような痛快作が満載でとても気持ちいいですよね。恋をしたり、悪を倒したり、アクションしたり、盗んだり…。まあ、ちょっと最後の“盗む”のは勘弁してほしいところですが。

しかし、本作『オーシャンズ8』の“盗む”はそんじゃそこらの“盗む”ではありません。なにせ盗む側も盗まれる側も、とにかくゴージャスですから。

タイトルからもわかるように本作は、あのスティーブン・ソダーバーグ監督が手がけ、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピットら豪華俳優陣が揃って出演したことで有名な、クライムサスペンス『オーシャンズ11』から始まるシリーズの最新作。

『オーシャンズ12』、『オーシャンズ13』と続いて『オーシャンズ8』。なぜ数字が減ったのか…別に過去編をやるわけでも、登場人物が死んだわけでもありません。さすがにこれは本作を観に行く人は理解していると思いますが、主要人物を総取り換えして全員女性にしました。まさに女性版「オーシャンズ」ですね。

で、そうなってくると誰がチームメンバーになるのか気になるところですが、男性版に負けず劣らず超豪華。

まず男性版オーシャンズの主軸だったダニー・オーシャンの妹デビーという役柄で登場するのが“サンドラ・ブロック”。2013年の『ゼロ・グラビティ』で高く評価されて以来、あまり大舞台では見かけませんでしたが、それから久しぶりの大作に帰ってきました。実はかなり役幅の広い人なんじゃないかと思ってましたが、今作ではとにかくクール。今後、活躍は増えるのか、注目をしたいところ。

そのデビーのパートナーとしてコンビネーションを見せるルー・ミラーを演じるのは“ケイト・ブランシェット”。この女優については言うことなしですね。個人的には今作で一番凄いなと再実感させられました。もう「女」でも「男」でもない、「ケイト・ブランシェット」という性別としか思えない、確固たる自我を確立しているのですから。本当に公私ともにとんでもない人間です。

他のメンバーでは、ファッションデザイナーの技能を持つローズを演じる“ヘレナ・ボナム=カーター”。これまたみんなの良く知っているあの「ヘレナ・ボナム=カーター」そのままの演技を見せてくれます。そして、盗品ディーラーであるタミーを“サラ・ポールソン”が演じます。目立つキャリアはありませんが、『ブルージェイ』での演技は素晴らしいの一言でした。
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まだいます。天才ハッカーのナインボールを、音楽界でも類まれな才能を発揮している“リアーナ”が熱演。『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』では姿が出る機会が少なかったですが、今作ではいっぱい出ます。さらにジュエリー職人のアミータ役にインド系女優の“ミンディ・カリング”、盗みのプロであるコンスタンス役にアジア系女優の“オークワフィナ”と、多様性を意識したキャスティング。この二人も今作がきっかけでもっと活躍の場が増えるといいですけど。

これで7人。そして、デビーが集めたチームが盗みを働くターゲットとなるダフネ・クルーガー役に、女性にも男性にも人気が高い“アン・ハサウェイ”がバシッとハマっています。演じているキャラの仕事は女優。ちょっとしたセルフパロディですね。

8人揃いました。8人って意外と多いな…。

注釈をつけておくなら、今作は「オーシャンズ」シリーズの続編となります。しかし、前3部作を観ておく必要はそこまでないです。それよりも鑑賞前に勧めたい作品として『メットガラ ドレスをまとった美術館』というドキュメンタリーが良いと思います。というのも、本作の舞台は「メットガラ」というイベント。これはニューヨークのメトロポリタン美術館で開催される祭典で(メットは「Metropolitan Museum of Art」の略)、超セレブしか参加できないことで有名です。ただ、私みたいな凡人には無関係の別世界ですからあまりイメージが湧きにくいもの。なので、このドキュメンタリーを観て、脳内で情報を補完しておくと、より『オーシャンズ8』に入り込めるのではないでしょうか。

ちなみにこれはネタバレじゃなく、あくまで期待外れに終わらないように、事前忠告として書いておきますが、シリーズの人気俳優“マッド・デイモン”が出ることを楽しみにしている人もいると思いますが、残念なことに出てきません。厳密には出演シーンはカットされました。理由は不適切な発言で再び火星送りになったからです(若干の嘘)。

鑑賞前のおすすめ PiCKUP!
↑『メットガラ ドレスをまとった美術館』…もう別世界です。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

リニューアルはやっぱり楽しい

続編なのか、スピンオフなのか、リブートなのか、ちょっと定かではない本作ですけど、少なくともシリーズ4作目になることは間違いありません。

しかし、観てもらえれば気づいたと思いますが、前作の『13』どころか初期作の『11』よりも、チームメンバーの数が少ないだけでなく、犯罪のスケールも比較的小さめになっています。実際に製作費が約8500万ドルだった『11』に対して、この『8』は約7000万ドルだそうです。さすがに出演俳優が女性だからギャラが少なくて済んだ…なんてことはないと思いますが、それにしたって4作目にしては随分抑えめじゃないですか。

もともとこの「オーシャンズ」シリーズは、ケイパー映画でありながら、可能な限り派手なドンパチなどハリウッド的な豪勢な映像に頼らないというコンセプトで作られていました。そのぶんのリソースを俳優の豪華さに回し、あとは各キャラたちの景況な会話劇と華麗な“仕事っぷり”で見せるわけです。そのシリーズの基本は、本作にもしっかり継承されていました。

しかも、今作は全員が女性になり、つまりキャラクターを一新したことで、少なくとも見た目ではマンネリ化しつつあったシリーズをリニューアル。キャラクターを女性にしてリブートした作品と言えば最近も『ゴーストバスターズ』がありましたが、こちらは続編としてのつながりはありません。対して本作は物語が継続しつつ、ほぼフルキャラ転換したわけですから、かなり大胆ですよね。

そのかいあって、キャラクターの掛け合いといい、新鮮に楽しめました。ここまでくるとキャラクター映画というよりは俳優映画でしたけど。

前述したとおり、個人的には“ケイト・ブランシェット”のカリスマ性に痺れました。もうルー・ミラーひとりで簡単に宝石を盗めるんじゃないかなと思わすほど。『ブルージャスミン』や『キャロル』のときとは全然違うのですが、芯にあるものは共通している感じが本当にクール。こういう人間になりたいものです。まあ、足元にも及ばないか…。

ちなみにシリーズ恒例のカメオ出演ですが、私は全く疎いのでほとんどわからず…。メットガラの主催者であり、ファッション雑誌「ヴォーグ」編集長、あの『プラダを着た悪魔』のモデルになったと言われているアナ・ウィンターさえも全然気づけないくらいですからね…。これは範囲外だったな…。

しかし、本作のゴージャスさはマニアックな業界知識なんてなくとも楽しめるものなので、全然ノープロブレムでした。

オーシャンズ8

次に期待したいところも!

一方で、なんとなく物足りない気持ちもあったのも正直な本音。その理由をいろいろと鈍い頭で考えてみましたが、どうも“予定調和すぎる”気がするせいかな?

シリーズのストーリーの特徴というか、持ち味はシンプルで、ラストに「どうだ、ざまあみろ!」となるカタルシスがあること…その一点に集中していると思うのです。今作やはりその構成になっていて、ちゃんと“やるべきことはやる”展開が待っています。

この部分については了解しているのですけど、今作の場合は『オーシャンズ11』のプロットをなぞっているせいもあって、どうしても1作目の焼き直しのような物語性になってしまったのは4作目にしては残念でした。これもシリーズ恒例のセルフパロディだと思えばいいのですが、それでも少し観飽きているかなと。

それに役者陣も名演ではありましたが、いつもの演技なので、これもまた観飽きたという印象を強める要因になってしまったかな。“ヘレナ・ボナム=カーター”や“アン・ハサウェイ”とかは本当にいつも出演作で見るようなキャラ性そのままですから。“アン・ハサウェイ”は一生こういうイメージで仕事していくのだろうか…それもそれで可哀想になってくるのですが、いらぬ心配か…。まあ、でも実力のある女優だし、逆にこういうベタなキャラもできるのは余裕の表れなのかな。個人的には「えっ、この俳優がこんな役を!?」というような意外性を見せてほしかったという部分もあります。

あとは本作の顔となる「全員が女性」というコンセプトも抜群に活かされていたのかと思うと、う~んと…。別にチームメンバーがみんな女性になっている理由付けがほしいとか思っているわけじゃないのです。そういう辻褄とかは割とどうでもいいのがこのシリーズの軽さでもありましたから。ただ、それもどうかと思う側面も以前から思わないでもなくて。『オーシャンズ11』の元ネタである、1960年の『オーシャンと十一人の仲間』では、第二次世界大戦を共に戦った仲間という設定があるのでチームとしての理由付けが実はあるのですよね。

そういう意味では、今作はチームの結集において意外にフェミニズムを強調してはいないのは良さでもあり、もったいなさでもありました。まあ、ここのバランスは難しいところですが。

個人的な希望としては、どうせリニューアルするなら過去作とのつながりも綺麗さっぱり断ち切ってよかったのではと思っていました。旧作へのサービス的な目配せはいらないのではと。それくらいできるほどの作品パワーは今作にあったと信じられる潜在性を感じた…のです。やっぱり凄いキャスティングですから。

監督の“ゲイリー・ロス”は、『ハンガー・ゲーム』でも実績がある人ですが、やはりシリーズの生みの親であるスティーブン・ソダーバーグのあのスタイルとは違ったのかも。ないものねだりですけど、ソダーバーグ版の『8』も見たかったな…。

最後にこれは明確な不満ですけど、なんかどうでしょうね、アジア人への差別とまでは言わないですが、ステレオタイプな偏見をどうしてもいまだに感じるのです。今作のコンスタンスといい、終盤でサプライス的に登場した男性版オーシャンズのメンバーのひとりであった“チン・シャオポー”演じるイエンといい、言葉にしづらいですが、白人側とは壁を感じる…“子猿”みたいな扱いですよね…。いや、アジア人だからって変にトリッキーなキャラにしなくていいんだよ? ハリウッドさん。まあ、邦画に出てくる外国人も大概ですけど…。

これで終わりなのは絶対にもったいない。次回作があるなら、ぜひ監督は女性にしてほしいですね。それこそ真の求められている『オーシャンズ“9”』ではないでしょうか。

ROTTEN TOMATOES ※
Tomatometer 67% Audience Score 47%
IMDb ※
6.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★
※2018年8月10日時点

関連作品紹介

シリーズ作品

・『オーシャンズ11』(2001年)
…カジノの金庫から大金を盗む!
・『オーシャンズ12』(2004年)
…ローマの美術館で至宝を盗む!
・『オーシャンズ13』(2007年)
…ラスベガスで復讐する!

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