ポーラー 狙われた暗殺者
Netflix映画『ポーラー 狙われた暗殺者』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Polar
製作国:アメリカ・ドイツ(2019年)
日本では劇場未公開:2019年にNetflixで配信
監督:ヨナス・アカーランド

あらすじ

殺し屋稼業からの引退を目前にして、穏やかな生活を送っていた男。しかし、血塗られた人生からは逃げられないのか、冷酷非情な若者からなる暗殺集団が狙いを定めて追いかけてくる。背後にいるのは強欲な存在。退くことのできない状況になった時、男は鮮やかな反撃に出る。

ネタバレなし感想

マッツ・ミケルセンの全裸が見たい人向け

皆さん、真冬の氷点下の野外の大地に全裸で立ったことはありますか?

「え…何言ってんだ、コイツ…」と大半の常識人はドン引きするくだりで始まっちゃいましたが、いや、政治社会問題と同じくらい真剣な雰囲気で一度考えてみてください。仮にそういうシチュエーションになったとき、その人の真価が試されるんですよ。衣服もなければ、威厳もない、防御力ゼロの状態です。体は突き刺すような寒さでガタガタ震え、身を丸めるように縮みあがるしかないのが普通。もしこれが温かい午後の日差しのポカポカ陽気とかだったら、全裸の人がいても、開放的な人間か、変態なんだなくらいにしか思わないです。でも極寒の冬に全裸は露出狂の変態でさえも嫌がります。

しかし、もしそのような状況下でも毅然と立ち、クールに任務をこなす人間がいたら、どうですか。変態とは思わない、むしろカッコいいじゃないですか(ちょっと錯乱中)。この人にならついていけると希望を抱けるじゃないですか(確実に錯乱中)。つまり、世の中の政治や組織のリーダーになる人は「真冬の氷点下の野外の大地に全裸で立つ」くらいは完遂できる程度の能力は必須ということです(断言)。

そして本作『ポーラー 狙われた暗殺者』は、そのお手本と言っていい見事な“冬外全裸”が拝める映画です。しかも、それをするのが“マッツ・ミケルセン”なのだから、大変な大騒ぎ(私の心が)。

“マッツ・ミケルセン”といえば、悪役から、奇抜な役、クールな役、エレガントな役、可哀想な役と、なんでもこなせる、想像以上に器用な俳優。その魅力にすっかりハマり、ファンになってしまった人も多いのですが、そんな彼が今作では例の全裸を披露。先に言っておきます。めちゃくちゃカッコいい。やっぱりデンマーク出身だと寒さ耐性があるんだよ、きっと(事実無根)。それだけでなく、本作は主人公を“マッツ・ミケルセン”が演じ、彼の魅力がこれでもかと全開に詰まっており、ファンであれば絶頂する大興奮すること間違いなしです。

本作は、原作がヴィクター・サントスによるウェブコミックであり、国際的なヒットマンの「カイザー・ブラック」の活躍を描くフィクション・サスペンス・アクション。原作は「ダークホースコミックス(Dark Horse Comics)」の作品です。日本ではマニアくらいしか知らないですが、「マーベル」「DC」に次ぐ代表的なアメコミ出版社で、有名作品だと「300(スリーハンドレッド)」「ヘルボーイ」「シン・シティ」などを手がけています。映画事業も展開しており、本作はNetflixオリジナルとして作られた一本。

原作がコミックですから、良くも悪くも味付けが濃いのが特徴。今作の場合は、Netflixなので全年齢対象にしようとか、そういう忖度もなく、結果、かなりエログロバイオレンスが強めになっています。美女のおっぱいやお尻が強調されまくるし、人は必要以上に無残に死ぬし、不謹慎なことも平気な顔で描写する。間違いなく劇場公開作ではできなかったであろうノリです。

そのため観客を選ぶ一作ですが、まあ、コミックなんてそういうもんですからね。これは“マッツ・ミケルセン”の全裸が見たい人向けなんです。たまにそんな超ピンポイントな客層にターゲットした映画があってもいいじゃないですか。

だからそういう需要でこの映画を観ようと思った人。それは何も恥ずかしいことじゃありません。思う存分に堪能してください。

ちなみに私が真冬の氷点下の野外の大地に全裸で立ったことがあるかについてはプライバシー保護のため発言を控えさせていただきます。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

私にも教えてください

本作の主人公である「ブラック・カイザー」ことダンカン・ヴィズラ。

まずこの男のどうしようもない哀れみだけしかない存在感が個人的に好きです。序盤で病院にて職業上致命的な負傷の数々により、殺し屋稼業を引退することになったらしいダンカン。しかし、実際は肉体的な損傷よりも精神的な損傷の方が深手なのが後にわかってきます。

このダンカンは人生をずっと“殺し”に捧げてきたため、人として普通の享受できるであろう基本事項がすっぽり抜けています。

“殺し”以外の感情表現と知識を知らないダンカンは、女性とセックスはできても、愛までは伝えることはできず、「二度と近づかないで」と捨てられる始末。寂しいのでペットショップの前にいた犬を50ドルで引き取るも、椅子で寝ているうちに悪夢を見て気が付けば犬を撃ってしまう痛恨のミス。ちゃんと犬の飼い方の本も買っていたのに…。その後も懲りずに金魚を飼い始めるあたりに、寂しさを募らせている心が表れるようです。

8か国語は話せるということで「子どもに教えたら?」と提案され、学校で試しに子どもたちの前に立ってみるダンカン。元気いっぱいな子どもたちにククリを教え、残酷写真を見せるなど、社会派な勉強も手がけて、まあまあな手ごたえ(?)。私も“マッツ・ミケルセン”に教わりたい…。

モンタナ州トリプル・オークで出会って親しくなった女性のカミールにプレゼントとしてあげたのは「銃」。銃の撃ち方を教育してくれるサービスつき。私も“マッツ・ミケルセン”に教わり(以下、略)。

同じ殺し屋業界を描き、引退した男を主人公にする映画といえば、最近は『ジョン・ウィック』が有名ですが、あちらはまだ愛を理解している男の話であり、そういう意味では裕福な主人公でした。
『ジョン・ウィック チャプター2』感想(ネタバレ)…殺し屋もブラック業界に悩まされている
対する『ポーラー 狙われた暗殺者』のダンカンの不憫さは格別。原作どおりなのか、狙ってやったのかはわかりませんが、犬のくだりといい、『ジョン・ウィック』と対極的な構図にしようとしているかのような設定&演出でした。

その哀れさがまた“マッツ・ミケルセン”に合っているから困るのですけど(嬉しい)。

悪役のクズ&アホさが際立つ

一方、その人生八方塞がりなダンカンの前に立ちふさがる、敵キャラクターたち。

これがまたクセが強い。スキルが凄いとかじゃなく、ビジュアル的なクセが濃い。ここまで悪役をどうしようもないクズに描く映画が今の時代も作られることに感謝。

冒頭のチリのシーンで、マイケルという金を持ってそうな男を大自然に立つ豪邸の野外で強襲するチャラチャラした殺し屋集団。セクシーなシンディがハニートラップを仕掛け、ヒルデとアレクセイが密かに接近し、遠くの位置からファクンドがスナイパーとして狙撃する。そしてカールが迎えに来る。それがいつもの手口なようです。シンディの「おしゃぶりの時間よ」が合図で、いとも簡単に自分の体が弾丸で射抜かれるターゲットの男。まあ、よく考えなくてもこんなまどろっこしい方法で殺さなくても、普通に狙撃すればいいだけの話なんですが、そこはツッコんではいけない。

たぶんこの殺し屋集団は効率性とか有用性とか考えてはおらず、このノリで殺すのが楽しいというだけなんでしょう。

その後に命令されたダンカン探しの仕事では、マイアミ、ニューワーク、オースティンと次々に可能性のあるエリアを来訪、その場にいた全然無関係の人を殺すだけ。役割分担して行けばいいのに、なぜか全員に現場に向かってしまうあたりにアホさが出ています。

その“大丈夫か?”と心配になる暗殺者集団を手先に使っている黒幕がミスター・ブルートという、これまた個性が弾詰まりしているような奴。演じているのは、『アリス・イン・ワンダーランド』シリーズや『パーティで女の子に話しかけるには』に出演していた“マット・ルーカス”。いつも変な役ばっかりですね、この人。

とまあ、やけに知能指数の低い悪役レベルの映画なのです。

ポーラー 狙われた暗殺者

なにこれ、カッコいい

その両者が激突するとどうなるのか、それは火を見るよりも明らか。そもそもダンカンは殺しにしか自分の活力を見いだせていないのですから、殺し屋がやってきたら元気になります。むしろ子どもと一緒に遠足に行かせるとかした方が、相手を弱めることができるだろうに…。

例によって例のごとく「おしゃぶりの時間よ」作戦でダンカンを葬るためにトリプル・オークのダンカンの住居を包囲。色仕掛けは成功したかに見え、ダンカンとシンディが乱れている姿をスナイパーは確認。おしゃぶりタイムで全裸のダンカンが無防備になった瞬間に引き金をひいた…が、ダンカン、とっさのカウンター。射抜かれたのは体を持ち上げられたシンディであり、そこからの緊迫の戦闘開始。撃たれたシンディがダンカンの位置を無線で教え、再び壁越しに狙撃するも、シンディは斧で即死。ダンカンの姿が見えないとスコープで覗いていたファクンドは背後に殺気を感じる…と、そこに全裸で銃を構えるダンカン。なにこれ、ファック・カッコいい。そのまま部屋に侵入した暗殺者を狙撃し返すと、木上から待ち伏せ銃撃でこちらに来た相手もお陀仏にし、残った敵も仕留めて完了。

どうやって家からスナイパーのところまで瞬間移動したんだとか、そんな細かいことは無視しよう。“マッツ・ミケルセン”、ありがとうございました。皆さん、この全裸になっている俳優、デンマーク王室から勲章もらっている人なんですよ。

その後に敵の罠で捕まり、じわじわと肉をえぐる拷問をミスター・ブルートにされ、片目もえぐられますが、やはりここでも華麗に反撃。真っ暗にして音楽をかけ、倒していくというセンスもわかっており、狭い廊下での撃たれ撃ち返す血塗れの攻防も迫力とケレン味が満点。

極めつけは、電話での位置特定を逆手に利用し、敵を集め、眼帯のダンカンが両手ターゲットレーザーで機銃掃射。なにこれ、ファック・カッコいい(2度目)。

その両手レーザーになんの意味があるのかとか、そんな細かいことは無視しよう。“マッツ・ミケルセン”、ありがとうございました(さっきから同じことを言っている)。

ブルートの首が斧でスパーンってなって、窓からパリーン、ポトってなるのはオマケです。

簡単に言ってしまえば、下品な殺し屋映画です。ノワールというほどの上品さもないような、あえて世間体に気をつかうのも放棄した“考えたら負け”なレベル。でもそこが今作のアイデンティティだとしたら、それは今の映画界では個性として光っていると言ってもいいでしょう。たまには中二病をそのまま映像化したみたいな映画も見たいですからね。ラストのカミールとの確執を良い話風にまとめたくだりも考えてみれば凄い雑さですけど、「ま、いいか」の精神で。

結論は、“マッツ・ミケルセン”の全裸って良いものですね…ってことです(えっ)。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 12% Audience --%
IMDb
6.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

(C)Netflix