(r)adius ラディウス
映画『(r)adius ラディウス』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Radius 
製作国:カナダ  
製作年:2017年 
日本公開日:2018年1月16日 
監督:キャロライン・ラブレシュ、スティーブ・レナード 

【個人的評価】
 星 6/10 ★★★★★★

あらすじ

交通事故に遭い記憶を失ったまま目覚めたリアムは、助けを求めるため近くの町に向かう。しかし、目に入るのは住民の死体ばかりで、ようやく見つけた生存者も、彼が近寄った途端に死んでしまう。やがてリアムは、自分の半径15メートル以内に立ち入った者が即死してしまうことに気づく。戸惑うリアムだったが、近づいても死なない女性ジェーンと出会い…。

ネタバレなし感想

コンパスは危ない

私は小学生のとき、「コンパス」が好きでした。定規や分度器を超える革新的アイテムだと当時は思ったものです。まず針がついているのがいいのです。子どものときは刃物類は危ないから遠ざけられるのに、コンパスには針があるのですよ。ナイフを手にして調子に乗っている若者のようなノリだったなぁ…。そして、その針を紙に刺してシュッと回せば綺麗に円が描ける。カッコいい…(小学生的ワクワク)。完全に算数のツールじゃなくて、お絵かきのツールだと思ってました。円周率…? なにそれ。

なんでこんな話をするのかというと、今回紹介する映画『(r)adius ラディウス』が、まさに「radius(半径)」という言葉のとおり、「円」を題材にした作品だからです。

本作は、ある日、突如、自分の半径15m以内に立ち入った生物が即死してしまう現象に見舞われた男の話となっています。死ぬのは一瞬。半径15m以内に入った瞬間、バタン!です。人間のみならず、他の小動物や鳥さえも死んでしまいます。

なんかあれですね、不謹慎ですがちょっと原発事故の避難区域を示す円形エリアを思い出しもしました。散々見せられましたからね…。あれの超ミニスケール版と思ってもらえれば。原発事故のアレは入った瞬間即死したりしませんが。

このザックリした大胆な設定。非常にTVゲーム的。しかも、主人公で「俺の半径15mに近づいたら、死ぬよ?」現象が起きた男は記憶喪失でもあり、この過去の記憶がその現象の原因を探る鍵にもなってきて…と物語はミステリー要素も入ってきます。

一種のシチュエーション・スリラーですが、危機的なシチュエーションを中心で作っているのは自分自身というのが新鮮です。まさに台風みたいなものですから。事態を解決するために動くと周囲が危険だし、かといって閉じこもっていても埒が明かないし…。さあ、どうする!?というのが見どころ。

製作はカナダで、監督はほとんどキャリアのない新鋭。非常に低予算だとわかるさっぱりした作りながら、アイディアと演出だけで勝負するセンスは応援したくなります。

「未体験ゾーンの映画たち 2018」で上映、オンライン配信もしています。







↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

シチュエーション・スリラーの醍醐味

特異な設定を土台にした一発ネタありきな映画というのは掃いて捨てるほど存在します。正直、ネタだけ考えるなら誰でもできるものです。本作の「半径15m以内に近づいたら死ぬ」設定なんて、私が小学生の頃に脳内で妄想していた数多の特殊能力の一つですよ。たぶん全日本人の50%は同じ妄想をしていたと思います(断言)。

しかし、それを実際に作品として説得力を持たせて映像化するとなると別の話。ひとたび映像化すれば一瞬にして妄想だったモノが綻び始めて、途端に嘘っぽくなってしまいます。

本作を観て感心したのが、突飛な設定ながらもちゃんと説得力があること。その理由は、余計なことをしていないからなのでしょう。最小限のドラマとキャラクター、演出で物語が構成されているため、変なノイズを感じさせる隙を可能な限り抑えています。これが下手な作品だと、急に恋愛のような別のドラマが割り込んだり、説明セリフだらけだったりするわけです。そういう残念なシチュエーション・スリラーはたまに見ますが…。

本作では、まず、いきなりの交通事故からスタート。これもう鉄板ですね。そして、事故現場で目覚めた主人公の男のもとに、一台の車両が通りかかり、「助けて」と声をかけるも、なぜかその車まで路肩に突っ込んで事故を起こし、運転手が死んでしまいます。これは大変だと警察に電話しようとしますが、あれっ、自分の名前が思い出せない…という状態に気づく主人公。これだけであれば、事故のショックで記憶喪失かな?ぐらいに思うだけです。

ところが、ここから異常事態が続発。カラスが落ちてきて、変だなくらいに思っていたら、今度は店に入ると、みんな死んでいるじゃないですか。これは毒ガスだ!と確信した主人公は口を塞ぎ、建物内に避難。外にいた人に「逃げろ」と身振りで合図するも、外の人は「何?」といった感じで接近。するとバタン。主人公、恐怖です。

しかし、ある時、1羽のカラスにおそるおそる近づいていくと一定の距離で死ぬ姿を目撃。ここで事態を完全に察する主人公。

ここまでのパートはほぼ主人公の一人芝居であり、会話もほぼなし。つまり、映像的な演出だけで見せています。例えば、カラスに近づいて死んだのを確認した時、口を押えていた布が落ちるカットが入りますが、それだけで主人公が“毒ガスじゃない”と理解したことを示しており、説明セリフに一切頼らないのがお見事。主人公にひたすら状況説明的な独り言をしゃべらすことをしないだけで、一気にこの突飛な設定にリアリティを与えます。

この序盤だけでシチュエーション・スリラーの醍醐味が詰まっていました。

(r)adius ラディウス

強制バディ・ムービー

ここから先は「あるひとりの女性」が物語に加わることで、さらに突飛な設定に予測不可能なサスペンスが発生していき、面白くなってきます。

その女性とは「ジェーン」と呼ぶことになった人で、というのも彼女も主人公と同じ記憶喪失で、しかもなぜか主人公に近づいても死なないという謎。さらに彼女が主人公と一緒にいる間は、主人公の半径15m以内即死効果が発動しないことが判明。ここでのそれがわかる演出もまたストーリーテリングが上手かったです。

この追加の設定の面白いところは、おのずとバディ・ムービーになっていく強制力があるという点。とくに中盤の病院での、うっかりエレベーターに一人だけ乗ってしまい、ここで即死効果が発動したら大変なことに!と大慌てになるシーン。観客としては、“うわ、どうなっちゃうんだ”と見たいような見たくないような気分でハラハラします。で、その後の警察に捕まるシーンで、しっかり“最悪の事態”を見せてくれるのが本作のわかっている部分。

この順番は大事だと思うのです。小出しにする感じがサスペンスを引き立てます。

逆にいうと、“最悪の事態”を見せた後のミステリー要素の謎解きパートは、それまでがあまりにも軽快だったゆえか、少しテンポが遅く感じるので、やや残念でしたが…。謎の直接的原因を提示するのも野暮かなと思ったりもしたり…。

ただ、主人公の結末として、非常にベタですが、因果応報と考えればこれ一択なので、スッキリしました。それに主人公と女性の関係性の真実を知ると、この「半径15m以内即死」というアイディアがただの企画の面白さという意味でのネタありきでなく、ちゃんと物語のドラマ性とリンクしているので納得できます。つまり、「俺の半径15mに近づいたら、死ぬよ?」状態になった主人公ですが、実はそうなる前から主人公の周りには死が溢れていたのですから…。皮肉ですね。

個人的には本作が『クローバーフィールド』シリーズの最新作でもいいくらいです。“J・J・エイブラムス”さん、ちょっと、パラドックスしている場合じゃないですよ。
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↑本作を観て思い出したのが、M・ナイト・シャマラン監督の『ハプニング』。これもなんだかよくわからないけど皆死んでいく系映画。

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