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『スキップ・トレース』感想(ネタバレ)…まだ大丈夫ですか?

スキップ・トレース

まだ大丈夫ですか?…映画『スキップ・トレース』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Skiptrace
製作国:アメリカ・中国・香港(2016年)
日本公開日:2017年9月1日
監督:レニー・ハーリン

スキップ・トレース

すきっぷとれーす
スキップ・トレース

『スキップ・トレース』あらすじ

香港のベテラン刑事ベニー・チャンは、相棒ユンを殺した疑いのある香港の犯罪王ヴィクター・ウォンを9年間も追い続け、ユンの娘であるサマンサを育ててきた。しかし、捜査中の失敗で停職処分となり、サマンサも犯罪に巻き込まれてしまう。ベニーはサマンサを救出するため、事件の鍵を握るアメリカ人詐欺師コナー・ワッツを追うが、なぜかベニーとコナーが追われる身となってしまい…。

『スキップ・トレース』感想(ネタバレなし)

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中国で再復帰したあの監督

みんな大好き、“ジャッキー・チェン”。いや、“みんな”はさすがに言い過ぎたかもですけど、好きな人はとことん大好きにさせられる…そんなアクション映画界のスターです。その“ジャッキー・チェン”の新作主演映画ともなれば、それを観るのはファンにとって空気を吸うのと同じレベル…かな?

本作『スキップ・トレース』は、1998年の『ラッシュアワー』から脈々と続くジャッキー&アメリカのコラボ作品の系譜最新作。アメリカ合作は結構久しぶりなんですね(7年ぶり?)。

監督はフィンランド人の“レニー・ハーリン”。1988年に監督した『エルム街の悪夢4』で注目を浴び、大ヒット作の続編『ダイ・ハード2』(1990年)の監督に抜擢。その後も、シルヴェスター・スタローン主演で「ファイトォッ!いっぱぁぁつ!」なアクション映画『クリフハンガー』(1993年)や、室内でもサメが容赦なく大暴れする『ディープ・ブルー』(1999年)など、好きな人は大好きな作品を手がけてきました。しかし、全体的には不評作が多めで、ダメダメな映画を皆で決めるゴールデンラズベリー賞で最低監督賞の常連になっている状態が続き…。

普通だったらこれで監督キャリアは終わってしまいそうですが、“レニー・ハーリン”監督は新天地を見つけました。その地こそが「中国」

2010年に中国に移住するほど人生を捧げており、2014年の『ザ・ヘラクレス』の大失敗が決定的になったのか、以降は完全に中国メインで映画を撮ることに決めたようです。そして、製作されたのが『スキップ・トレース』というわけ。今後もガッツリ中国的な映画を中国資本で少なくとも3本は監督する企画があるみたいで、もう完全に中国映画監督ですね。ある意味、転職に大成功したともいえますが、成長しまくる中国映画産業を見ていると、こういう監督は増えていくのかもしれない…。

ともかく、その中国に根を張った“レニー・ハーリン”監督と“ジャッキー・チェン”、どんな相性を見せるのか…お楽しみに。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『スキップ・トレース』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):男と男の旅路

香港。ベテラン刑事のベニー・チャンは人生で最大のピンチに陥っていました。相棒のヤンを探すと、彼は爆弾を巻き付けられており、「マタドールの罠だ」と言います。そして「娘の面倒を頼む」…そう言って飛び降りて爆発してしまい…。

9年後。水上の密集住宅。香港の犯罪王ヴィクター・ウォンを追うベニー。ハンサム・ウィリーを発見し、エズモンドレスリーと協力して包囲します。

ベニーは単身で潜入。しかし、敵に見つかってしまい、乱戦に。襲ってくる敵をどんどん水上に突き落とすも、ウィリーはボートで逃走。エズモンドに追えと指示します。家を支える柱が壊されたことでドミノ倒しで家が連続倒壊。

多くの家屋倒壊でタン警部はベニーを怒ります。香港の裏社会をひとりで牛耳る男はいない、証拠もない…。1か月の停職を命じられてしまいました。

一方、ロシアのどこか。冴えない男、コナー・ワッツは捕まっていました。宙づりで。ボウリングの玉が転がってくる場所で。

こうなったのはマカオが始まり。カジノで大はしゃぎしていると、ゲスト・サービス責任者のサマンサに見惚れます。食事に誘いますが、部屋に来たのはセルゲイの集団でした。そしてロシアに連れて行こうとします。それでも必死に足掻いて逃げるコナー。

サマンサはイカサマで荒稼ぎしたコナーを捕えろとボスに指示されます。そこでサマンサは父ヤンの知り合いであるベニーに助けを求めます。

コナーについて調べるベニー。サマンサにはスタンガンを渡し、護身しろと指示。

当のコナーはロシアン・マフィアの一味に捕まり、その仲間であるダーシャが猛烈な勢いで玉を投げ、頭が潰れる…その間一髪で助けに来たベニー。縛られたままのコナーを運搬しながらの逃走。今度は転がる側になったコナーはズタボロ。

しかし、追っ手はしつこく、迫ってきます。工場内部で乱闘。最後に残った敵はダーシャという女。女相手に戦う気はないと遠慮するベニーでしたが、相手はなかなかに手強いです。けれどもラッピングでぐるぐる巻きによって身動きを完全に封じめました。

ベニーはコナーを車で連れていきますが、コナーも彼のパスポートを燃やして抵抗。マカオまでのルートを列車に変更します。列車内でヤギの睾丸を食べさせて、団欒する2人。

今度は列車を飛び降り、徒歩での旅路に。どうやらコナーが追われているのは人殺しの現場を見たからだとか。舞台はモンゴルへ。全く息の合わない2人は大丈夫なのか…。

その頃、シャワー中だったサマンサは襲撃に遭っており、スタンガンが大活躍していました。

敵はどんどん暗躍する中、いつまでこの逃げまくりな事態は続くのか…。

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ジャッキー、まだやれます

相変わらずのいつものジャッキー映画でした。良く言えば安心感のある実家気分、悪く言えばマンネリ感は否めない。どっちに傾くかで、人によって評価は変わるでしょう。

まず、一番重要なアクションですが、確かに『スキップ・トレース』も楽しいです。

予告やポスターで散々使われまくっていたマトリョーシカのところとか、劇中で見られるスラップステッィクなアクションシーンではジャッキー節が健在。最近のハリウッドは『ジョン・ウィック チャプター2』など、VFXを使わない生アクションの価値が再評価されているなか、やはり“ジャッキー・チェン”の積み上げてきたこの実力は凄いなと実感します

ただ、やっぱり…老いましたよね…。顔が老けた以上に、アクションのノンストップ感はだいぶ抑え目になったというか、まあ、若い時の作品のようにいかないのは当然なんですけど。なんだろう、観ていて心配になってくる自分がいる。川で溺れる場面とか、役者を心配するという意味で固唾を飲みました。本作でも最後にお約束のNGシーン集が付いてますけど、アクションに失敗する姿は、なんか昔のようには笑えなかった…。最近、トム・クルーズが『ミッション:インポッシブル6(仮題)』の撮影中に足首を骨折したというニュースを聞いたばかりのせいかな…。「OKだよ」とジャッキーは笑顔で言ってましたが、もう、優しいんだから…。

その“ジャッキー・チェン”の体力に配慮したせいか、アクションシーンの分量も比較的短い気もしました。監督いわくカットを挟まず長回しで撮ることにこだわったとインタビューで言ってましたが、そんな目を見張る長回しはあったかな…。序盤の木造の家がドミノ倒しになるシーンなどは、もうちょっと長く見せてほしかったなと思ったりも。

というか、今回“ジャッキー・チェン”とバディを組む“ジョニー・ノックスビル”、もう少しアクション頑張れなかったのか。お荷物になっていたような…。しょうがないですけど、全体的に本作は“ジャッキー・チェン”頼みすぎです。

意外にダーシャとレスリーの女性陣二人が良いアクションを見せていて、もうちょっと活躍を見たかったですね。

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変わらないけど…

『スキップ・トレース』は、アクションを除いた部分も、いつものジャッキー映画。

ジャッキー&アメリカのコラボ作品はたいてい子ども向けに作られており、今作も子どもに見せられる感じの内容でした。小学生レベルの下ネタギャグはもちろん、本作にもジャッキー恒例の「おっぱいタッチ」があるとは…変わらないなぁ。寒くてパンツ一丁で抱き合って寝る男二人とか、正直、今の現代的価値観ではそれはどうなのというギャグもありますが、中国市場を前提とした映画ですから、こんなものなんでしょう。

モンゴルのゴビ砂漠で捕らわれた二人が、謎の大男と戦わされ、なぜかなんかパーティに発展し、なんか歌い踊りだすという展開の唐突さにもびっくりですが、中国視点の綺麗なモンゴル民族描写という感じでしょうか。

コメディにさえすごく中国配慮を感じる様子が、やっぱり本作はアメリカ映画じゃなくて、中国映画なんだなと思わせます。

個人的にはそろそろ“ジャッキー・チェン”の引退も考えて、彼の映画的幕引きを美しく撮れる人が現れてほしいところです。それこそクリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』や、ヒュー・ジャックマンの『LOGAN ローガン』みたいな。もしくはシルヴェスター・スタローンの『クリード チャンプを継ぐ男』のような世代交代を見せるやつとか。

それまで何とか頑張ってください、ジャッキー。

『スキップ・トレース』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 38% Audience 27%
IMDb
5.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

(C)2015 TALENT INTERNATIONAL FILM CO., LTD. & DASYM ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED スキップトレース

以上、『スキップ・トレース』の感想でした。

Skiptrace (2016) [Japanese Review] 『スキップ・トレース』考察・評価レビュー