スカイスクレイパー
映画『スカイスクレイパー』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Skyscraper 
製作国:アメリカ(2018年)  
日本公開日:2018年9月21日 
監督:ローソン・マーシャル・サーバー 

あらすじ

かつてFBIの人質救出部隊だったウィルは、ある事件で左脚が義足になる大怪我を負い辞職し、今は危機管理コンサルタントとして働いていた。香港の高さ1066mの史上最大のビル「ザ・パール」で、ビルのオーナーのジャオから安全管理を任されたウィルは、家族を伴ってザ・パールに滞在するが…。

ネタバレなし感想

ビルを高くする競争、映画界へ

人はなぜ高いビルを作るのでしょうか。少ない土地面積でたくさんの施設を作れるのがビルのメリットといっても、限度があります。ある程度の高さでじゅうぶんなはずです。それ以上高ければ、上へ移動するのに逆に面倒になるだけ。しかし、世界には「俺が一番だ」と言わんばかりに次々と超高層ビルが建設され、世界トップの高さは更新され続けています。ちなみに現時点に1位はドバイにある「ブルジュ・ハリファ」で828m。これを大幅に超えるビルが、サウジアラビアで「ジッダ・タワー」という名で建設中です。その高さは1008mを予定。

まあ、ここまでくると完全に自己顕示欲のためだけですね。当然、ドバイやサウジアラビアに負けてしまっているあの大国は黙っていません。そう、中国です。

そこで「我が中国の理想の超高層ビルはこれですよ」と、まるでプレゼンの資料のためかと疑いたくなるように創り出した映画が、本作『スカイスクレイパー』です。

この時点で察しがつくと思いますが、本作はかつてないレベルで中国受けを狙いまくりです。もはや接待と言っていいほど。製作はレジェンダリー・ピクチャーズですが、こうやって定期的に中国サービスに全振りした作品を作らないと、お金がもらえないのでしょうか。高層ビルだけに、落差の激しい裏事情がある匂い…。

えっ、でも映画ではビル、燃えちゃうんでしょ? そう思っている皆さん、問題ありません。ちゃんと中国の建設技術の風評に傷がつかない配慮がされていますよ(にっこりとビジネススマイル)。

『MEG ザ・モンスター』に続いて、また中国向け要素たっぷりなのか…とげんなりしているそこのあなた。でも中国の映画レビューサイトとかを見ていると、別に本作の評価は高いわけではないんですね。中国要素を入れたからって手を叩いて喜ぶほど中国の映画ファンは甘くないのでしょう。けど、スポンサーや政府は喜ぶのです。それが現実。社会人ならわかるでしょう?(脅しのスマイル)

ところが、本作は中国だけをターゲットにしないように考えられています。そこで投入されたのが“ドウェイン・ジョンソン”。みんな大好きこの俳優を主演にしておけば、客は入る。その狙いは確かにわかる。なぜなら私も観てしまったのですから…(単純な映画バカ思考)。

しかし、アメリカでは同じく“ドウェイン・ジョンソン”主演映画である『ランペイジ 巨獣大乱闘』よりも興収が低かったそうですし、“ドウェイン・ジョンソン”疲れを心配する声もあります。個人的にはさすがに今作は“中国すぎた”だけだと思いますけど…。

「家族のためにパパ飛びまああぁぁぁっす!」という相当ふざけた宣伝がついていますけど、実際こんなノリでアクションしているので、間違ってません。『ミッション:インポッシブル フォールアウト』がひたすらリアルなアクションにこだわっていましたが、今作はその真逆。「とりあえず大男が走って、飛んで、あとはVFXでちゃちゃっと派手にすればいいんだよ!」という潔さ。うん、まあ、いいか。

超高層ビルは自己満足のためにあるのですから。この映画も自己満足でいいのです。そういうことにしておきましょう。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

ごあいさつ

この度はお忙しい中、記者会見にお集まりいただきありがとうございます。只今から「ザ・パールの魅力を語り尽くす発表会」を始めさせていただきます。

ザ・パールはただの超高層ビルではありません。これはアイデア、哲学、夢の賜物であり、テクノロジーと建築デザインの驚異でもあります。古代の寓話「The Pearl and the Dragon(真珠と龍)」にインスパイアされた建造物は、香港中心部にそびえ立ち、最上部にはビルの象徴である巨大パールが鎮座し、豪華アメニティーが完備された自足型の超高層都市が完成しています。

高さ1066m、240階にもなるこのザ・パールは、安全性もトップクラスです。外装は12万枚のガラスと鋼製パネルで構成され、屈指の頑丈さ。耐風性は秒速約89メートルまでに対応し、耐震性はマグニチュード8を想定。台風や地震など自然災害に怯える心配はありません。防火設備として、10階毎に耐火コンクリート製の加圧避難室を用意し、高度なテクノロジーで管理されています。無論、セキュリティーとして、常時300人の警備員が駐在し、常に危険をチェックしており、隙はないです。

これでもまだ不安という方もいらっしゃるかもしれません。そこで当社では、さらなる安全安心を確立するために、ある秘密兵器を用意しました。

それがウィル・ソーヤーという人間です。この男はアメリカ海兵隊に所属し、10年前まではFBIの人質救出チームにいました。つまり、暴力的危険性や犯罪に対応するスペシャリストです。そういう人材は他にもいると言いたい方もいるでしょう。しかし、ウィルは違います。凶悪な立てこもり犯が至近距離で自爆した際には、自らの足を失うだけの怪我ですむほどの肉体的な強靭さを持ち、決して屈することはありません。銃アレルギーの方も安心です。ウィルは銃に頼らず敵をせん滅できるパワーを有しています。さらに片足を義足となったことで常識を超えた脚力と跳躍力を獲得。エネルギーの外部補給なしで、自力でブースタージャンプに匹敵する身体能力を発揮できます。また、野生動物と同様の行動力を持ち、クレーンを素手で登ることも可能。ダメージを受けてもダクトテープだけで修復できる自己回復機能を備えており、自らで必要なアイテムを製造する高度なスキルもあります。

ウィル・ソーヤーは、ビルが機能不全に陥ったとしてもスタンド・アローンで行動する切り札なのです。これにはどんな皆様も満足いただけると信じています。当社も自信を持ってオススメできる魅力的なオプションです。

これでザ・パールの素晴らしさをご理解いただけたと思います。興味のある方はぜひ資料をお持ちになってください。

なお、このセキュリティ・システムは利用者全てに提供されますが、ウィル・ソーヤーのみは本人の家族を最優先に行動します。ご了承ください。

スカイスクレイパー

摩天楼はこの男だけの舞台

茶番が過ぎましたが、作品自体そんなノリですから許されるはず、きっと。

本作は誰が観てもわかるように、『タワーリング・インフェルノ』に代表される「ビル火災モノ」というジャンルです。高層ビルが火災に見舞われ、人命を救出するために屈強な男が捨て身で燃え盛る建物に突入する…ド定番のエンタメ。

ただ、いかんせん主人公が“ドウェイン・ジョンソン”であるため、全体的に超強引なパワープレイが目立ちます。どんな映画に出ても基本は敵なしな俳優ですから、当然の摂理なのですけど、あまりにもその豪快な技が次々披露されるものですから、観客も“ぽか~ん”となるのはしょうがないです。作中の香港人たち一般市民が「“ドウェイン・ジョンソン”はすげぇな」と見守っているだけの映画といっても言い過ぎではないですね。

びっくりしたのは、あんな火災が起きたのだから救助隊が投入されるのが普通なのに、なんか空気を読んでいるのか全然出てこないこと。警察もウィルを追いかけるくらいなら、目の前の大火災をどうにかしなよと言いたくなりますが、あくまでウィルが主人公なので、周りのキャラも全てウィルを中心に動くように設定されています。

同じく“ドウェイン・ジョンソン”が主演した『カリフォルニア・ダウン』という映画では、大地震でパニックになった街で家族を救助する主人公を描いていましたが、この作品でもまさかの「救助隊なのに他の人命は無視して家族に専念する」という禁じ手が躊躇いもなく使われていました。一方の『スカイスクレイパー』も同じノリで、他に危機的な状況にある人命がいそうですが、あえてそこはスルーして、主人公と家族だけにスポットをあてています。こんなのリアルじゃない!と律儀に怒る人もいるかもですが、もうそういう映画なんだと思うしかないですね。

それにしたって今回の“ドウェイン・ジョンソン”は強すぎます。一応、義足という設定もありますが、全くそんな要素は感じさせません。さも当たり前のように銃を持った相手を片足状態でぶちのめし、クレーンからビルへ難なくジャンプ。この義手、筋力強化システムが組み込まれているのかな…。というか、実は冒頭の爆発で片足を失って義手になったのではなく、全身がロボコップみたいにサイボーグ化しているとしか思えない…。本当は、こういう障害をただの演出を盛り上げるための飾りとしかしないのは、実際のハンディキャッパーの人たちを複雑な気持ちにさせるのでよろしくないのですけど、この映画にそんな気遣いはなく…。

一番「なんだこれ」と思ったのは、火災への収拾の付け方です。システムが起動したら消火できるの!? そもそもシステムはあれだけの大火災でも平気なんですね。タブレットで操作してオンラインにしていたから、きっと普通の無線通信なんですよね。それが正常に動くんだもん。さすが世界で一番安全な中国だなぁ(忖度)。

あとは、いかにも「女性が活躍するシーンを作りました」というお役所的仕事もきっちりこなす、ビジネスの最低ラインはクリア済み。

本作は、『セントラル・インテリジェンス』という“ドウェイン・ジョンソン”と“ケヴィン・ハート”というアメリカ屈指の人気男を組ませたアクション・コメディを前作で監督した“ローソン・マーシャル・サーバー”作です。
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その割には、ユーモア成分が少なめなのが、ちょっと個人的には残念でしたけど、企画設定時点でギャグだからもういいやとなっているのかもしれない。

とりあえず中国では火災が起きても、なんとかなります。信じてください。

ROTTEN TOMATOES 
Tomatometer 47% Audience 74%
IMDb 
6.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★

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↑『タワーリング・インフェルノ』…「ビル火災モノ」の代表作。
(C)Universal Pictures