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『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』感想(ネタバレ)…若さゆえに

ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー

急発進すぎたかな?…映画『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Solo: A Star Wars Story
製作国:アメリカ(2018年)
日本公開日:2018年6月29日
監督:ロン・ハワード

ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー

はんそろ すたーうぉーずすとーりー
ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー

『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』あらすじ

スターシップ造船業が有名な惑星コレリア。この星で帝国による厳しい圧力社会に嫌気をさしたハンは、パイロットになるという夢を抱き、想い人のキーラとともに脱出を図る。それから3年後、ハンはベケット率いる強盗団に加わり、チューバッカやランド・カルリジアンといった個性豊かな面々と出会いながら、広大な宇宙に飛び出す。

『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』感想(ネタバレなし)

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「なんだか、嫌な予感がするぜ」

もうこれは恒例イベントだと思っているのです。ルーカスフィルムが「スター・ウォーズ」映画をまたやるぜ!と宣言して、『フォースの覚醒』を公開した2015年。私たちはこれから来るであろう「スター・ウォーズ」台風の連続到来にじゅうぶん備えたはずです。しかし、人って慣れるものですね。2016年の『ローグ・ワン』、2017年の『最後のジェダイ』と続き、2018年にやってきた『ハン・ソロ』は意外に平穏に迎えました。どれどれ、川の様子でも見てくるか…なんて、死亡フラグをたてつつ…。

シリーズの中でも主人公以上に人気の高い「ハン・ソロ」というキャラクターにスポットをあてたスピンオフ。本作『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』は、ルーカスフィルム側としても当然“あたる”と思ったのでしょう。でも、個人的には一番リスキーだなと思っていました。

というのも、一部で黒歴史化している「プリクエルの乱」にて、一定のファンは「過去なんて見たくない」という反応を見せたことからもわかるように、ハン・ソロの過去を掘り下げるのはかなりの危うい賭けです。しかも、オリジナル3部作においてもジョージ・ルーカスが特別篇と称して修正したなかで、ハン・ソロのキャラをマイルドにしてしまい、それもファンの不評を買った忌まわしい出来事がありました。つまり、人気の高いキャラであればあるほど、チャレンジは困難です(その点、『ローグ・ワン』は新キャラばかりなのでファンも安心できましたね)。

でも、『ハン・ソロ』の映画の監督をあの“フィル・ロード&クリス・ミラー”という『LEGO ムービー』で才能を世界に知らしめた新鋭が担うと聞いて、私含む一部の映画ファンは「だったら今までにないスター・ウォーズを見せてくれるかも」と期待したわけです。ところが、“創作性の相違”で新しいアイディアをもたらしてくれるはずだった監督が降板。その後を任せられたのが、“ロン・ハワード”でした。もちろん、彼も名監督ですし、実力はじゅうぶんですが、正直“フィル・ロード&クリス・ミラー”とは全然ベクトルの違う監督であり、すっかり私も“察し”たのでした。

そこへさらに最新作『最後のジェダイ』がファンの間で賛否両論を巻き起こしたことで、余計に火に油を注ぐ状態に。

もしかして『ハン・ソロ』は、スピードとパワーのないミレニアム・ファルコンなんじゃないか…それってただのガラクタだ…とか不安渦巻くことにも。その事前のテンションダウンがアメリカ公開時の興収低迷につながったのかもしれません。

ま、でもそんなときもあるよ(謎の励まし)。「スター・ウォーズ」はもう10年、20年の長い目で見ないとダメなスケールに到達していますし。今が悪くても深刻にならなくていいでしょう。

ちなみに、スター・ウォーズをあまりよく知らないという人は、そんなファンの喧騒は一切無視してお楽しみください。過去作を観ておく必要はゼロなので、親切な一作です。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』感想(ネタバレあり)

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「いい予感がする」

『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』を観てまず思ったのが「綺麗にまとめたな」ということ。当初の監督であった“フィル・ロード&クリス・ミラー”のビジョンは、ほとんどを再撮影したという話からも、ほぼ残っていないと思いますが、後任の“ロン・ハワード”監督はさすが百戦錬磨のベテラン。ゴタゴタがまるでなかったかのように、手堅く仕上げています。

正直、『ローグ・ワン』や『最後のジェダイ』のときは、個人的には「これ、いるかな」と思うようなシーンもたびたびあってテンポに違和感を感じたのですが、今作はそれを感じませんでした。上映時間は135分だそうですが、そうとは思えないノンストップな話運びでダレることもなかったかなと。

本作はとにかくアクションシーンが多く、とくに前半は派手なシーンの連続。しかも、そのどれもがみんな個々でガラッと変わったエンターテインメントを観客に届けてくれます。冒頭のカーチェイス、戦争映画のような塹壕戦、列車強奪バトル、施設潜入&反乱パニック、宇宙空間チェイス&ディザスター、そして、ラストの騙し合い&室内戦。これまでの「スター・ウォーズ」にあったアクションを全部乗せした贅沢な作りで、これだけで大画面で観る価値があります。ほとんどアトラクション。4DXで観たら楽しいでしょうね。
これだけ大作であるにも関わらず、登場キャラクターもとても少ないため、ゴチャゴチャしていません。タイトルどおり、ちゃんとハン・ソロを主軸にしていました。最近の新3部作の方は、いろいろ群像劇スタイルでキャラの視点が変わって落ち着かなかったのですが、やっぱりひとりのキャラに絞っているほうがいいですね。

撮影の“ブラッドフォード・ヤング”や、音楽の“ジョン・パウエル”も良い仕事をしていたと思うし、もうこれだけなら今作はじゅうぶん大成功な映画な気がします。

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ファンサービスばかりになる理由

ただ、懸念していた事項が全面に出てしまった作品でもあるなと思ったのも正直な気持ち。その懸念とは“ファンサービス”です。

当然、予想はしていましたが、ハン・ソロの名前の由来、チューバッカやランド・カルリジアンとの出会い、ミレニアム・ファルコンとの邂逅…どれもがファンなら妄想していたエピソードばかり。ファンの間では有名な「ケッセルラン12パーセク」がまさかそのまま映像化されるとは思いませんでしたし、劇中の会話やシーンなどで見られる小ネタの数々に、思わずニヤリとさせられます。

逆に“ファンサービス”以外に何かあったかと言われると、「う~ん」と頭を抱えてしまうのも事実で…。全編、ファンを満足させるためだけの映像の盛り合わせでしたね。結局、この映画である程度「スター・ウォーズ」を知っている層がテンションあがれるかどうかは、ファン接待による歓迎会にのれるかどうかにかかってくると思います。場の空気にのれたひとはイェーイ!とハイになれて一日幸せだし、そうじゃない人はそっと二次会に参加せず去っていくみたいな…。

私、個人としては「楽しいのはわかる!わかるが…」という何とも言えない感情。いや、確かに新しい要素がゼロだったわけではないです。例えば、女性型ドロイドのL3-37のあのキャラクター性は面白かったですし、L3-37が主導するドロイド大反乱シーンは、『エピソード6 ジェダイの帰還』の終盤のイウォーク族反撃を思わせて、結構好きです。“ジョージ・ルーカス”イズムを感じますね。でも、新しいとまで言えるほどのフレッシュさは感じないかなと。

でもこれってスペースオペラが抱えている問題なのかもしれませんね。例えば、「スター・ウォーズ」は毎度主要キャラが人間ばかりだから他の非人間エイリアンもメンバーに加えればいいと思うのですが、それだと「スタートレック」になるだけなんですよね。そういう意味では、今回のドロイド人権解放を訴えるL3-37も「スタートレック」っぽかったな…。だから、最近登場のスペースオペラ映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は歌と踊りとシュールなギャグで新しい個性を発揮していたわけです。じゃあ、「スター・ウォーズ」はどうすればいいの?という疑問に、この『ハン・ソロ』は答えを出せていません。まあ、私も答えは思いつかないですけど。

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本当のハン・ソロを知っているのは誰?

あと、『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』で気になったのは、この「スター・ウォーズ」ユニバースをディズニー&ルーカスフィルムがどうしたいのか、なんとなく本作で見えてくる点ですかね。

宣伝でも「銀河最速ヒーロー誕生の秘密が、この夏、ついに明かされる!」と書かれているように、明らかに今作のハン・ソロはヒーローとして描かれていました。積極的に人助けをしていくし、女性には一途だし、仲間想いだし…。でも、ファンでなくても、その後の展開で描かれる「ハン・ソロ」を知っている人ならわかるように、ハン・ソロは“アウトロー”のはず。巻き込まれ型キャラであり、「やれやれ…」タイプの性格。あれは一体どこへいったのか。私はてっきりハン・ソロがチューバッカを救うも、利用するだけ利用してどこか辺境の地にチューバッカを捨てて、ダンボール箱に入った“拾ってください”的な捨てチューバッカが見られると思ったのに…。一応、最後にベケットを容赦なく撃つところにアウトローの片鱗が見えますが、明らかに腕を平然と引きちぎるチューバッカの方がアウトローでは…。

ヒーロー映画を作りたいのはいいですが、そうなるとこのヒーロー像は古いですよね。数多のアメコミ映画が新機軸のヒーローに挑戦しているなか、この「スター・ウォーズ」は1周遅れています。

さらにラストの「ダース・モール」のサプライズ登場です。この時点でせっかく「ノー“フォース”、ノー“ジェダイ”」で進めてきたのに、なんか興が削がれるな…とも思ったのですが(このせいで悪役のドライデン・ヴォスの存在感が余計に薄くなって可哀想…)、明らかに続編狙ってますよ!的な主張が強すぎるかなと…。ダース・モールが生きているのはTVシリーズなどでは描かれていたのでファンは知っているのでしょうし、おそらく次に予定している『オビ・ワン』のスピンオフ映画につなげる予定だったのかもしれません。それにしたって露骨。こういうユニバースを先走りすぎるのは良くないって、DCユニバースやダークユニバースで学ばなかったのか…。せめてマーベルみたいにエンドクレジット後にちょこっと醸し出す程度でいいのに…。

そんなこんなで文句も書きましたが、また次の「スター・ウォーズ」作品もどんなに前評判がアレでも観ますから、思い切って作ってほしいです。

『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 69% Audience 64%
IMDb
6.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

(C)2018 Lucasfilm Ltd. All Rights reserved ハンソロ スターウォーズストーリー

以上、『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』の感想でした。

Solo: A Star Wars Story (2018) [Japanese Review] 『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』考察・評価レビュー