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『ザ・コンサルタント』感想(ネタバレ)…会計不正は許さない、税務署より怖い男

ザ・コンサルタント

会計不正は許さない、税務署より怖い男…映画『ザ・コンサルタント』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Accountant
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2017年1月21日
監督:ギャビン・オコナー
ザ・コンサルタント

ざこんさるたんと
ザ・コンサルタント

『ザ・コンサルタント』物語 簡単紹介

一見すると地味な会計士のクリスチャン・ウルフ。そんなウルフにある日、大企業からの財務調査の依頼が舞い込んだ。その資料は膨大であるが、ウルフはひとりで自分のやり方にこだわってその仕事をこなす。ウルフは重大な不正を見つけるが、その依頼はなぜか一方的に打ち切られ、ウルフは何者かに命を狙われるようになる。しかし、ウルフには凄腕スナイパーというもう一つの顔があった。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ザ・コンサルタント』の感想です。

『ザ・コンサルタント』感想(ネタバレなし)

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頑張れ、ベン・アフレック

俳優で監督もやりオスカー像も手にした“ベン・アフレック”にとって、2016年は苦難の年だったかもしれません。バットマンを演じた『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』は批評的に大コケ、彼も散々笑いのネタにされました。対して、弟の“ケイシー・アフレック”は主演した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で高い評価を獲得し、賞も受賞。兄弟で明暗がついてしまったかたちに…。

そんなベン・アフレックの主演作、2016年はもう1本ありました。それが本作ザ・コンサルタント(日本では2017年1月公開です)。

主人公は、イリノイ州シカゴ近郊の田舎町で会計コンサルタントを営む男。しかし、彼には体術や銃器に精通している裏の顔を持っていた…というのがだいたいのキャラ設定。これだけ聞くと、「普通そうな人が実は超強かった」というよくあるアクション映画に感じます。『ジェイソン・ボーン』や『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』のような。

でも、意外とそうではないのが本作の特徴です(宣伝ではアクション映画です!と大々的に誇示しているのですが)。主人公がバッタバッタと敵を容赦なくなぎ倒していくシーンはあるにはありますが、決してそれがメインではない…もっと主人公の内面的なドラマに主点が置かれているつくりになっています。

あえて言うなら本作を監督した“ギャビン・オコナー”の過去作『ウォーリアー』っぽいです。なので『ザ・コンサルタント』を観ればギャビン・オコナー監督らしい作品だなと思うはず。ぜひ『ウォーリアー』も合わせて観てほしいですね。私も『ウォーリアー』は好きな作品です。ちなみにギャビン・オコナー監督の前作『ジェーン』は完全になかったことにされているけど…。

『ウォーリアー』が好きな人は惹きつけられるものがあるかもしれません。そして、ベン・アフレックを応援しましょうか。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ザ・コンサルタント』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):仕事を終えるために

1989年、ハーバー神経科施設。とある親が自分の息子について医者に聞いています。「息子の病気は何なんですか?」と母は切実に質問しますが、医者はハッキリとは答えません。

その息子、メガネの少年がジグソーパズルをしています。それも裏っかえしで。ソロモン・グランディの歌詞をブツブツと唱えつつ、高速でパズルを繋げていく男の子。その子にとっての友人は弟だけで、引っ越しばかりなのが良くないのではと母は考えているようです。

医者は療養を薦めますが、軍人の父は「大きな音や光が苦手なら逃げずに立ち向かうべき」と強硬な姿勢を崩しません。「ここではうちの息子は普通に暮らせると思いますか?」と問い詰めるも、医者は「普通とは何ですか」と返答。

その少年は、パズルピースが足りずにパニックを起こしましたが、同部屋の少女がピースを見つけてくれて、無事に完成しました。

金融犯罪捜査網の長官であるレイモンド・キングはオフィスに分析官のメディナを呼びます。そして「連邦職員に採用されるのに経歴を偽るのは重罪だ」と彼女の表に出したくない不利な情報を突きつけます。

そこまでするのはある仕事を頼むからでした。いくつかの裏社会の大物の写真を見せてきます。そこには世界のアヘン流通を支配しているザルメイなど確かにすごい存在のオンパレード。しかし、そこに気づくものがありました。どの写真にも同じ男が映っているのです。顔はよく見えませんが、確かにそこにいます。

「ルー・キャロル」という偽名も使うことがあるらしいその男、普段は単に「会計士」と呼ばれているらしく、裏社会の経理を担当しているのだとか。それだとしても、なぜ彼は危険な顧客に殺されないのか、疑問が沸きます。そしてキング長官は「私の直属になれ」とメディナに指示し、期限は月末として調査を命じます。

シカゴ近郊。クリスチャン・ウルフという会計士はこの辺鄙な田舎で仕事をしていました。相手は典型的な労働階級の白人ばかり。それでも淡々と効率的な会計処理と節税のアドバイスをします。

クリスチャンは殺風景な家に帰り、静かに食事をとります。そしてライトのフラッシュをつけ、大音量で音楽を聞きだしました。それがいつから日課になっていました。

翌日、狙撃の訓練をするクリスチャン。普通に考えれば絶対にあてられないような長距離。相当な距離がありますが、見事に命中してみせます。

クリスチャンは幼少期から多くを経験しました。母は家を出ていき、父のもとで体術を学びました。刑務所ではフランシスという男から裏社会を教えてもらい、対人コミュニケーションも磨きました。

そんな中、今度は裏社会と関係ない仕事をしようということになり、IT大手のリビング・ロボ社へ向かいます。なんでも緊急で帳簿の確認が必要になったらしいです。経理の女性社員が使途不明金があると騒いでいるとか。重役は気にしてなさそうですが、仕事を完璧にこなすことが絶対のクリスチャンは、紙の帳簿を要求します。

次の日、会社にまた訪れると、徹夜していたのか居眠りしているデイナ・カミングスという女性がひとり。経理課の女性で、資料を渡されます。あの不正だと睨んだ情報に気づいたのは彼女らしいです。

デイナの手伝いの協力を丁重に拒否し、紙の資料を徹底的にひとりでチェックしていくクリスチャン。ホワイトボードだけでなく、ガラスにまでびっしりと数字が並びます。

そして突き止めました。6167万9000ドル。謎の改ざん。不正が誰の仕業かはわかりません。

しかし、CEOのエドが死亡し、自殺らしいですが、とにかく仕事が途中で打ち切りになってしまいます。まだ自分の仕事を終えていない…。クリスチャンには許せないことで…。

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過去は語らなくとも…

てっきりシンプルなアクション映画かな?と思って観たら、全然違ってびっくりでした。

とにかく設定が盛り盛りです。それこそ色々上塗りしすぎて原型をとどめていないくらい。

会計士にあんな天才的な数学能力は必要なくない?と思ってしまうほどのコテコテの頭脳明晰描写とか。ちなみに、職業サイトを見ると会計士に必要なスキルとして一番に挙げられていたのは「専門用語や経営状態をわかりやすく説明するコミュニケーション能力」って書いてありました。本作の主人公には絶対ないであろう能力でした…。

戦闘面でも突飛な設定が目立ちます。スナイパーだからといってまさか対物ライフルを使うとは…。

まあ、こういうオーバーな設定はこの手のジャンルなら全然OKなんですが。

銃器を満載しているキャンピングカーとか、完全にアメコミの領域です。これでマスクしてマントつけたら普通にバットマンになれます。というか、本作はDCコミックスでコミック化もすでにしてるんですねGIZMODOで日本版が公開されてます)。本作の配給はDCコミックス映画を手がけるワーナー・ブラザースですから、もしかしたらワーナー・ブラザース側の意向もあるのかも。

しかし、アメコミらしいアクション・ジャンルには振り切っていない。まず、アクションシーンがとにかく少ないです。中盤あたりで1回大きな狙撃シーンがありましたが、あとは大きな見せ場は終盤までお預け。それよりも終盤は弟・ブラクストンとの兄弟愛の要素が全面に押し出されます。兄弟の再開の場に入り込む敵の親玉を即撃ち殺すところとか、まさに「アクションしてる場合じゃないんだよ!」という感じでしたが。とか思ってるとラストは「自閉症に理解を」みたいな道徳的な場面で終わるという…なんというか落ち着きのない映画です(映画自体が自閉症っぽいともとれますが)。加えて、劇中では複数の登場人物の視点がコロコロ変わって描かれるため、ちょっと見づらい…。

なんかモヤモヤします。

アメコミ風にしたいワーナー・ブラザース側と、内面ドラマを重視したいギャビン・オコナー監督側で、見えざる戦いがあったのかと勘繰りしたくなりますが…どうでしょう。

個人的に思ったのは、こういう殺し屋的キャラがどんな過去を背負っているかというのは別に知らなくてもいいなと。謎は謎のままでいいんじゃないですか。妄想で補完するのが楽しいというか。天才的な数学能力があるのは自閉症だからです!とか、子どものとき体術の訓練してました!とか知ってしまうと「あ、そう…」という気持ちになる。本作は、自閉症の要素は直接描かず、匂わせる程度で良かったなと思いました。

でも、本作、ベン・アフレックの魅力は出ていたので、まあ、いいか。わかっているのかわかっていないのか「とぼけた顔」で、容赦なく人をボコボコ殴るところとか、なんか好きです。新たなベン・アフレックのハマり役になったんじゃないでしょうか。

2017年はベン・アフレック久しぶりの監督作『夜に生きる』が控えています。まだまだ、ベン・アフレック応援は続きます。

『ザ・コンサルタント』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 51% Audience 76%
IMDb
7.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

以上、『ザ・コンサルタント』の感想でした。

The Accountant (2016) [Japanese Review] 『ザ・コンサルタント』考察・評価レビュー