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『マグニフィセント・セブン』感想(ネタバレ)…7人には意味がある

マグニフィセント・セブン

7人には意味がある…映画『マグニフィセント・セブン』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Magnificent Seven
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2017年1月27日
監督:アントワン・フークア
マグニフィセント・セブン

まぐにふぃせんとせぶん
マグニフィセント・セブン

『マグニフィセント・セブン』物語 簡単紹介

暴虐の限りを尽くす男、バーソロミュー・ボーグに支配されたローズ・クリークの町。住人たちは恐怖に怯え、逆らうことはできない。その町に住み、夫を殺されたエマ・カレンは偶然出会った賞金稼ぎのサムに助けを求める。サムだけではあの支配者の勢力を打ち倒すことはできそうにない。そしてサムを中心に、ギャンブラー、スナイパー、戦士、流れ者など7人の男たちが集まる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『マグニフィセント・セブン』の感想です。

『マグニフィセント・セブン』感想(ネタバレなし)

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7人はちょうどいい

ソフトウェア開発者のローレンス・パトナムという人物は、プロジェクトを進めるうえで最も効率の良いチームのメンバー数を研究していました。その結果、「7人」が優れたチーム人数の最大値であると判明したそうです。

ところで7人のチームが登場する映画といえば、古典的名作『七人の侍』(1954年)です。盗賊行為を行う野武士に苦しめられていた農村を救うため、7人の侍が集結し、農民とともに立ち向かう…明快なストーリー。劇中では7人の侍によるチームは見事な成果を挙げてみせますが、この映画にも登場する7人という数は、科学的にも証明された意味ある数字だったんですね。さすが黒澤明監督…いや、それは考えすぎか…。

そんな『七人の侍』をハリウッドリメイクした『荒野の七人』(1960年)でも舞台が西部開拓時代に変わっても「7人」という数字は変わりません。

そして、『荒野の七人』を再びリメイクした本作『マグニフィセント・セブン』でもそれは受け継がれています。

これってチーム映画としては結構貴重だと思うのです。どれとは言いませんがチーム映画にありがちなこととして、続編とかリメイクがされた場合、往々にして人数がどんどん増えたりします。ボリュームアップをわかりやすく示すにはこれ以上ない正攻法なんですが、だんだん収拾つかなくなって雑になったりも…。私はあんまり好きじゃないです、人数を増やすのは…。

それに対して『七人の侍』系列作品の、元から受け継ぐコンパクトさは安心できます。だからか、『荒野の七人』がリメイクされると聞いても、型がかっちりできあがっているので、まあ変なことにはならないだろうと思ってました。実際、本作『マグニフィセント・セブン』は『七人の侍』や『荒野の七人』のエッセンスをかなり色濃く残した内容になっており、元作品のファンも一定の楽しみは期待できます。

一方で、私の観た印象としては本作は元作品のファンだけでなく、かなり一般層を意識したつくりにもなっている気がしました。というか『七人の侍』や『荒野の七人』を観たことがない人の方が新鮮に楽しめて良いと思います。これが初めての「7人」でもいいんじゃないでしょうか。

入門編になる作品を作るのは本当に大切なことだなと最近も実感しています。いくら名作だからといって、昔の映画を一般の普段はあまり映画を観ない人にオススメするのは、やっぱりハードルが高いものです。そういうときこそ、こういう『マグニフィセント・セブン』のような初心者プレゼントになる映画の存在はありがたいもので。

“デンゼル・ワシントン”、“クリス・プラット”、“イーサン・ホーク”、“イ・ビョンホン”と俳優陣も観客を引き寄せる効果は抜群のメンツですから。“ヴィンセント・ドノフリオ”とかがそこに混ざるあたりでも、コアな映画ファンの需要をしっかり押さえているし。

ぜひ『マグニフィセント・セブン』を鑑賞した後は、『七人の侍』や『荒野の七人』にも手を出して見てください。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『マグニフィセント・セブン』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):目的は正義、そして復讐

1800年代後半。開拓で活気づくアメリカ。生活に必死な者もいれば、権力を手にする者もいる。この静かな町でもその格差は明確です。最もパワーを持っているのは、実業家のバーソロミュー・ボーグ。運送会社から炭鉱会社まであらゆる事業を手中に収める彼は、やりたい放題ができます。労働者はこき使われるだけです。

1879年。ローズ・クリークという町ではボーグのなりふり構わない振る舞いを業を煮やした住民たちが教会に集まり、どうやってボーグを追い払うか舌戦を交わしていました。不満や怒りはみんな共通しています。とはいえボーグは法のようなもの。保安官さえも支配下に置いています。誰がそのボーグに立ち向かえるというのか…。

エマ・カレンは夫のマシューと一緒にその議論の場に参加していました。マシューは力を合わせようと声をあげます。

ところがそのとき教会の扉から入ってきたのはボーグ本人。武装した男たちを従え、住民たちを脅し、そして教会に火を放ちました。神さえも侮辱するその傍若無人な言動。「血も涙もない!」と抗議するマシュー。ボーグはそんなマシューを情け容赦なく射殺します。エマは嘆き悲しみます。

ところかわって荒野。ひとりの男が馬にまたがって移動していました。その名はサム・チザム。7つの州の委任執行官であり、賞金稼ぎでもあります。

そのサムがたどり着いた町の酒場では、ジョシュ・ファラデーというさすらいのギャンブラーが今日も賭け事を楽しんでいました。早撃ちの実力をその場で見せたサムにもたじろがないジョシュ。その凄さを聞いたエマはこの人なら助けてくれるのではないかと考えます。サムは「興味ない」と言いますが、ボーグの名前に関心を示します。

一方のジョシュは酒場の男たちにイカサマを責められ、銃を向けられていました。しかし、トランプ手品で相手の油断を誘い、すぐさま発砲。耳を吹っ飛ばして圧倒します。

サムはエマとその友人のテディQから話を聞き、相手の勢力を把握。さすがにひとりでは勝てそうにありません。仲間がいる。それも強い奴が…。

とりあえず酒場で凄みを放っていたジョシュに話を持ちかけます。二手に分かれて仲間探しに疾走。ジョシュにはボルケーノ・スプリングスにいるグッドナイト・ロビショーを見つけろと指示を出します。そしてサムが向かったのは賞金首のメキシコ人であるバスケスという男の居場所。「仕事を手伝ってくれたら俺は追わない」と約束し、仲間に加えます。

戦いの準備は着々と整い…。

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仲間集めは大事な基礎

『マグニフィセント・セブン』のストーリーは骨格はいつもどおり。

ローズ・クリークという町は住民たちの苦労の末にやっとのこさで開拓して出来上がった場所でしたが、そこに目を付けた略奪男爵バーソロミュー・ボーグといういかにも悪い奴によって我が物顔で支配されており、住民たちは逆らえない状態に。いつの時代も悪は蔓延る。

こうなったら切り札として助っ人を呼んでくるしかないと考え、夫マシューを殺されたカレンは賭けにでるように、町を出ます。

さっそく出会えたのは、治安を乱す殺人犯を射殺して賞金を得る委任執行官サム・チザム。続いて、流れ者のギャンブラーで拳銃の扱いが上手いジョシュ・ファラデー、ウィンチェスター銃の使い手の賞金稼ぎのグッドナイト・ロビショー、一匹狼のアウトローな雰囲気を漂わすビリー・ロックス、賞金首のメキシコ人のバスケス、マウンテンマンのジャック・ホーン、コマンチ族のネイティブ・アメリカンのレッド・ハーベストを仲間に加え、いざ反撃の準備へ。

住民たちに銃の訓練をして、鍛え上げ、防御も固めて、対決に備えます。

そして町の反逆に怒り狂ったローズ・クリークとついに決戦のときが…。

あらすじとしてザックリ振り返ると、まあ、オリジナルと大して変わらない、定番の流れですね。変えようがないくらいにこれで面白さが担保されているとも言えますけど。

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八方美人な荒野の七人

『荒野の七人』を含めて『七人の侍』から影響を受けた作品は枚挙にいとまがありません。一方で、本作はここまでガッツリなリメイクですから、『七人の侍』や『荒野の七人』と比較してどうこう語ることになるのは必然の流れ。そうなると、結構ああだこうだと言いたいことがでてくるのもわかります。

ただ、私の感想としては良くも悪くもいかにも現代的な無難なリメイクだったなと思いました。前述したとおり、本作は『七人の侍』や『荒野の七人』のエッセンスをかなり色濃く残した内容になっていて、プロットも基本は同じ。じゃあ、何が違うのかといえば、現代に通じるような商業的なバランス調整&スケールアップが施されたといった感じでした。

まず、何よりも7人のメンバーが人種的な意味で多様性豊かになったという点。黒人もいるのは当然として、メキシコ人、ネイティブ・アメリカン、そしてアジア人までいます。これをもって、現代の世相を反映させたとか、さらには暴れまくるトランプ大統領への図らずも警鐘を鳴らすことになっているとか言う声も聞かれます。ただ、もはやこの多様性アピールはハリウッド映画界における基本ノルマみたいなものなので、とりあえずやりました!という雰囲気もします。

あえてその多様性の観点に注文を付けるなら、女性の扱いが相変わらずステレオタイプでしたね。ヘイリー・ベネットが演じる一応ヒロインポジションのキャラクターも、最後に見せ場が用意されているとはいえ、恰好といい、関わり方といい、イマイチ。どうせなら、7人にメンバー入りして良かったんじゃないだろうか…。

7人のメンバーを演じた俳優陣は今回、すでに大物な役者ばかりを起用しています。この点も、かなり商業的ヒットを意識したつくりなのが明らかです。割とその俳優のイメージそのままなキャラだった気がします。だからなのか、あんまり各キャラの背景が掘り下げられなかったですね。

アクション面は明らかにパワーアップしました。弓矢、斧、ナイフ、ガトリング・ガン、爆発…リアルな西部劇という世界観でできる最大級の大盛りを提供してくれました。これはわかりやすい売りであり、アントワン・フークア監督の得意分野が炸裂してました。

これらのバランス調整&スケールアップは、これはこれで楽しいし、正しいのですが、結果、八方美人な作品になったともいえます。私的にはもっと思い切って変化球を見せてくれても良かったかな…。

『マグニフィセント・セブン』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 63% Audience 72%
IMDb
6.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)Sony Pictures マグニフィセントセブン

以上、『マグニフィセント・セブン』の感想でした。

The Magnificent Seven (2016) [Japanese Review] 『マグニフィセント・セブン』考察・評価レビュー