そしてあなたも…「Disney+」ドラマシリーズ『フューリアス:奪う女と追う女』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年)
シーズン1:2026年にDisney+で配信(日本)
原案:エリザベス・メリウェザー
性暴力描写 DV-家庭内暴力-描写 性描写 恋愛描写
ふゅーりあす うばうおんなとおうおんな

『フューリアス 奪う女と追う女』物語 簡単紹介
『フューリアス 奪う女と追う女』感想(ネタバレなし)
正当に怒る機会を
「ちゃんと怒ること」を実行するのが今の時代はますます難しくなっているなと思う今日この頃。
「アンガー・マネジメント」という概念がありますが、これは「怒り」が有害な行動に繋がることを抑えるためのものであり、本質的に「怒り」そのものが悪いわけではありません。でも世間では「怒り」は場を乱す“悪しきもの”だと思われやすいです。
適切に怒る機会はなかなかありません。SNSは「怒り」を金儲けに利用する悪徳企業の手のひらの上です。社会正義の抗議活動が「怒り」の正当な場かもしれませんが、わかりやすい成果がすぐに返ってくるわけではありません。モヤモヤします。それがまた「怒り」を増幅させます。
今回紹介するドラマシリーズは、そんな怒りをこういうかたちで爆発させるしかなかった者たちの胸が張り裂ける悲しい想いを物語にした一作です。
それが本作『フューリアス 奪う女と追う女』。
本作は、連続殺人犯(シリアル・キラー)の女性と、その犯人を追うFBI捜査官の女性の、追う追われるの駆け引きを描いたクライム・サスペンスです。双方とも女性ということで、『キリング・イヴ』を思わせる構図ですが、『フューリアス 奪う女と追う女』には決定的にテーマとしているものがあって、主役の2人の女性もその点で接続します。
これは事前に隠しておくこともないと思うので書いてしまいますけど、その『フューリアス 奪う女と追う女』の主題というのは、性暴力事件。とくに本作は「ジェフリー・エプスタイン事件」を彷彿とさせる、大富豪の男が大勢の未成年女子を自宅に引き込んで性的虐待を常習的に行う…という性的加害を扱っています。
ぞんざいな言い方をすれば「レイプ・リベンジ」のジャンルに当てはまるのですが、『フューリアス 奪う女と追う女』はその被害者の心理…身も心もズタズタにされたサバイバーの慟哭と激怒のごちゃごちゃな感情が生々しくぶちまけられる中身になっていて…。
言わずもがなですが、本作は非常にリアルな性犯罪被害者の苦悩が映し出されるので、フラッシュバックなどに注意してください。
『フューリアス 奪う女と追う女』は、1987年のアメリカ映画『ブラック・ウィドー』を着想元にしてはいるのですが、中身は全然違っています。企画として生み出したのが、最近も好調な“エリザベス・メリウェザー”。もともとドラマ『New Girl / ダサかわ女子と三銃士』などのシットコムを手がけるコメディ畑の人でしたが、近年はドラマ『ドロップアウト シリコンバレーを騙した女』、ドラマ『人生の最期にシたいコト(Dying for Sex)』を手がけ、シリアスな作風もみせていました。『フューリアス 奪う女と追う女』でまた評価を底上げしたのではないでしょうか。
『フューリアス 奪う女と追う女』の主演となるFBI捜査官の役を担うのは、『スノー・ロワイヤル』の“エミー・ロッサム”。そして、予測不能な連続殺人犯を演じるのは、『恋人はアンバー』やドラマ『セイ・ナッシング』で活躍する若手の“ローラ・ペティクルー”です。ちなみに、“ローラ・ペティクルー”はクィアでノンバイナリーであると公表しています。
共演は、『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』の“スクート・マクネイリー”、ドラマ『POWER/パワー』の“クインシー・タイラー・バーンスタイン”、ドラマ『全部、彼女のせい』の“ジェイク・レイシー”、ドラマ『エルズベス』の“ダニー・マッカーシー”、ドラマ『Your Honor/追い詰められた判事』の“ホープ・デイヴィス”など。
『フューリアス 奪う女と追う女』は日本では「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信中で、シーズン1は全8話(1話あたり約50~60分)。
観ていて精神的にツラいですが、ぜひ最後の一瞬まで見届けてほしいですね。
『フューリアス 奪う女と追う女』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 直接的ではないですが性暴力の描写があります。また、性暴力や家庭内暴力の被害者のトラウマが中心的に描かれます。 |
| キッズ | 子どもには不向きです。 |
『フューリアス 奪う女と追う女』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
ハロウィンの夜、外には仮装した子どもたちがたくさん練り歩いている中、ある家の2階のバスルーム床で息も絶え絶えに這いつくばるひとりの男性。猫の仮面を被った金髪のロングヘアの女性が玄関前で来訪した子どものお菓子をその場しのぎで用意。必死に階段を降りようとする例の男に気づき、「時間ね」と言って、何かを男の腕に注射します。
息絶えた男の隣に寝そべり、囁き声で「その笑顔は好きよ」と呟き、死んだ男の顔に触れます。そして黙りこくって余ったお菓子を口にするのでした。
FBIのニューヨーク支局にてアリス・ブラック捜査官は怒鳴ってくる男、ナンパしてくる奴、ホワイトハウスにハッキングされていると訴える女など、いろいろな通報に対応していました。
そのとき、上司のメイソン・アドキンスに呼ばれます。以前の職場のニューヨーク市警の殺人課のダニー・ケリー刑事が用があるらしいです。アドキンスにスナックを買ってこいと雑に命じられつつ、アリスは現場に向かいます。ダニーとは顔見知りです。
その現場は、ひとりの男の死亡事件でした。犠牲者は有名な億万長者ジェイ・イーストンのひとり息子で裁判官のケイレブ・イーストン。階段途中で亡くなっており、薬物の過剰摂取のようですがアリスは偽装だと見抜きます。
ダニーは、ケイレブがガールフレンドと一緒に家にいたと説明。アリスは家の中を捜索し、ダニーに案内されて、掃除された後に漂白剤の臭いが充満する浴室に入ります。服のものと思われる反射するスパンコールがひとつ落ちていました。
その頃、ケイレブを殺害した女が、ジニー・アレンという名のホームレスの少女に殴れとけしかけ、彼女の荷物を奪って家庭内暴力被害者シェルターに必死な声で電話をかけ、今まさに逃げたばかりの虐待被害者を装います。秘匿されたシェルターの住所を聞き出すと、そこへ行き、怯えた様子でジニーと名乗ります。部屋でひとりになると、女性はかつらを外し、スパンコールの入った袋をベッドの下に隠しました。
一方、アリスはバーで盛り上がっている妹のエイミーと友人たちと会って席に座るも、デートの約束があるので長居できないと言います。しかし、その後にアリスは部屋で一夜の関係のつもりで家に招いた男と激しい取っ組み合いをするだけで、セックスはさせずに、後で自分が自慰するだけ。
ふとアリスはダニーに電話をかけ、麻薬の過剰摂取で恋人に殺されたとされる別の麻薬密売人のことを思い出したことを話します。名前はエイドリアン・ムラドで、ケイレブの事件と状況が似ていました。もしかしたら連続殺人なのかもしれません。
アリスは児童性犯罪対応で疲れ切っているFBIの性犯罪特捜班の責任者のノラ・ワシントンと面会。立件できなかった16年前のエイドリアンの少女売春の件で、エイドリアンとケイレブが被害者の女性に殺された可能性を述べます。
ノラは「クズ男が死んだならどうでもよくない?」と言いますが、アリスは「よくない」と否定し、調査を開始。ケイレブの住居近くの目撃者いわくケイレブの傍にいた女性の腰にポピーの花のタトゥーがあったそうです。
手がかりはこれくらいしかありませんでしたが、次なる事件が起き…。

ここから『フューリアス 奪う女と追う女』のネタバレありの感想本文です。
シーズン1:事件の真相
ドラマ『フューリアス 奪う女と追う女』は、エピソードを観進めると、こちらはどんどん気が滅入ってくるばかりで…もうツラいのですけど、なんとか最後まで観終えました。
でも現実にあるトラウマを消費している感じはしませんし、むしろ非常に誠実に感じたのは、軽視されてきた被害者の怒りにちゃんと寄り添っているからですかね。
徐々に明かされていく連続殺人犯の動機と、その裏にある性暴力事件の真相。シーズン1のラストの段階では観てもらえればわかるように、この性暴力事件は世間に露見しないので、詳細な解明は行われません。なので細部は不明なところも多いのですけど、簡単に整理しましょう。
そもそもの発端は大富豪のジェイ・イーストンで、彼は未成年の10代女子を呼び集めては自身の性的欲求を満たすために性暴力をすることを常習化させていたようです。その性的加害行為は動画で撮影して保存し、後々自分で振り返って“楽しむ”ことに使用していました。しかも、過去の話ではなく、健康が悪化して老いた身になった現在も、10代女子を連れてきてもらってその加害をやめておらず…。
その性的加害行為は自身の邸宅の隠し部屋…おそらくパニックルームで密かに行われており、この「本来は安全のために隠れる場所が悪しきことに使われる」というシチュエーションが、本作では連続殺人犯の手段にもなっていたのですが、その反転がこういうかたちで映し出されるとは…。
被害者の10代女子はジェイの娘であるエマが邸宅に連れてくる役割を担っており、大富豪の男性の性的加害を補佐する女性という構図は、現実の「ジェフリー・エプスタイン事件」でも似たようなものがありました。
この被害者の10代女子たちは、どうやらホームレスの状態にあった子が大半と思われ、路上でおカネに困っているところをエイドリアン・ムラドによって風俗業にリクルートされ、その主な働き先として風俗店の「キャンドルライト・ラウンジ」が作中にでてきます。ジェイはそこに通い、息子のケイレブ、弁護士のオリバー・チャールズらと、その場で女子たちと接していたようでした。そして気に入った女子をさらに自分の邸宅へ…という流れなのでしょう。
本作の連続殺人犯…本名はキャサリン・グレースは、親に捨てられて里親関係も上手くいかずに「キャンドルライト・ラウンジ」で働くようになり、そんな中で同じ境遇のイザベル・ルナと親しくなったようです。親友であり、おそらく初恋の相手でもあるキャサリンとイザベルは、14~15歳のときにその店でジェイに目をつけられ、あの邸宅に呼ばれることになります。
そして凄惨な事件が起きることに…。2012年、ジェイのあの部屋にてイザベルは性暴力を受けるだけでなく、その場で出産するも出血多量で瀕死。エマとエマの弁護士のハル・ハートフォードもその場に居合わせるも隠蔽に加担。キャサリンは瀕死の愛するイザベルを楽にさせるべく、彼女に注射を打って“終わらせた”のでした。
イザベルの死体は捨てられ、後に発見されるも事件化はエド・ジョージ特別捜査官の手で封じられて、今に至ります。このエドはジェイと関わりがあるようで、シーズン1では明らかになりませんが、あの慌てっぷりからして性暴力の場に関与していた可能性が高そうです。
イザベルがあの場で産んだ赤ん坊は生存し、エレーナと名づけられ、イザベルの妹だと思わされて、路上生活者となり、「ビッグマン」と呼ばれるポン引きに振り回されて今も生きていました。キャサリンは真実を伏せてエレーナを見守っていましたが…。
なお、このエレーナの血縁上の父は誰なのか、それは曖昧なままです。ジェイなのか、それとも別の誰かなのか…。
本作はこれだけで終わらず、ここに捜査官のアリスの物語も絡まってきます。
アリスは子どもの頃に家出し、父親が引き取りを拒否したために里親家庭に入り、その家出の際に妊娠していたようです。さらに明らかになるのは、アリスもまたあのジェイの邸宅での性的暴行の被害者だったという事実…。アリスも被害時の動画を撮られていますが、撮影した人物は不明です。
結局、キャサリンもアリスも似た者同士であり、被害時の記憶の曖昧さがその真相を遠のかせることになっていました。
ここまで一気に振り返るとあらためて吐き気を催す凄惨さですが、ドラマ『フューリアス 奪う女と追う女』は単に「おぞましい悪人」がいるという話ではなく、性暴力が社会のシステムによって維持されるという構造をしっかり描いているのが良かったですね。
例えば、アリスは過去に刑事の元恋人であるマーシャル・コネリーから暴力の虐待を受け、職場に相談するも対応してもらえず、被害者側が辞めるハメになります。また、「キャンドルライト・ラウンジ」は警察の男性たちの行きつけの場所でもあったようで、職場の男性中心コミュニティの罪というものが否応なしに浮き彫りに…。
日本でも最近も同質のニュースを見たばかりですが…。
シーズン1:手段はともかく怒りは正当である
ドラマ『フューリアス 奪う女と追う女』は、そんな社会の歪みに対して、タイトルどおり憤怒の感情を抱える女性たちの物語です。
PTSDにおいても怒りの感情は病理化されやすいですが、その感情は正当であるということ。本作はその女性の怒りをギリシャ神話の「メデューサ」に例えていましたが、これはフェミニズム文学批評でもよく象徴として言及される話です。
キャサリンはその怒りに基づいて連続殺人を実行します。あの事件の関係者だけでなく、自分の目的の邪魔となった人たちも殺めていくほどに暴走は激化します。でもサイコパスではない…その塩梅の“ローラ・ペティクルー”の演技と演出が凄まじかったですね。
当のキャサリンは“持たざる者”であり、ゆえにシェルターなどの善意のシステムや、シェルター管理人のベッキーや筋ジストロフィーのオールデンといった他者からの好意、はたまた「OnlyFans」みたいな今っぽいサービスを使いこなすしかできません。生活ギリギリの復讐者です。
そんなキャサリンも諸悪の根源であるジェイには手出しできない。それはやはりトラウマがあるからで、そのキャサリンがアリスに促されて意を決してジェイの豪邸に侵入するあの第7話のラスト。ツラそうな表情に反してBGMは“リアーナ”の「We Found Love」で軽快なのがまた苦しい…。
一方、アリスはキャリアを歩んで生活は安定するも、マーシャルの虐待のトラウマのせいでバスルームで殴られたのでシャワーに入れないなど、後遺症を引きずっています。そして、一夜の男との激しい暴力プレイを好み、傷つけられることに快感を感じるなど、人間関係にも苦悩。被害者でも性欲はあるということに触れるあたり、“エリザベス・メリウェザー”らしいです。
怒れる存在はFBIの性犯罪特捜班のベテランのノラも同じ。若かりし頃に自分が組織の不正に多少なりとも関与させられた屈辱。その怒りをエドに向けるシーンは決壊寸前の緊張感で壮絶です。
ジェイの娘のエマもある意味では被害者なのですが、こちらはその関与が本当に一線を越えてしまっていて…。加害者になるかならないかの境界線は容易に踏み越えてしまうことを物語っていました。
シーズン1は全然スカっとしません。ダニーがエドの頭を踏んづけたくらいで、多くの男が罪を問われずに済んでいます。
最後の最後でアリスはジェイへの復讐を密かに敢行していたと示唆する演出もありましたが、自分の性加害動画の閲覧者の一覧を眺め、キャサリンの怒りを受け継ぐ次なる復讐者になるのでしょうか。アリスはキャサリンと違ってもっと正規の方法で正義を実現できる立場になります。それは果たされるのかは今後しだい。
シーズン2への更新が決定済みとのことで、シーズン1を観てしまったら、その続きを見届けないと気が済まないですね。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
△(平凡)
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以上、『フューリアス 奪う女と追う女』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Disney
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