そう男は言い残した…映画『バイオハザード』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年)
日本公開日:2026年10月9日
監督:ザック・クレッガー
ゴア描写
ばいおはざーど

『バイオハザード』(2026年)物語 簡単紹介
『バイオハザード』(2026年)感想(ネタバレなし)
ザック・クレッガー流「バイオ」
「原作に忠実です」と事前に言っておかないと、突然変異が発症して化け物になってしまう人々が多数いるこの世の中。翻案の難題を与えられたクリエイターは炎上しないかと神経質になりながら、創作をしないといけない…。
しかし、このフィルムメーカーは2026年にその殺気立った一触即発の空気を見事に走り抜けてみせました。
そうして生まれた映画が本作『バイオハザード』です。
整理しましょう。
ご存じカプコンの世界的大人気ゲーム。それが初めて映画化されたのは、“ポール・W・S・アンダーソン”監督が妻である“ミラ・ジョボヴィッチ”をスーパーヒーロー化して2002年から封切られてシリーズ化した映画群。こちらは2016年の『バイオハザード ザ・ファイナル』で幕を閉じました。長かった…。
次に、2021年に、ゲームのキャラクターと世界観を可能なかぎり強く意識したリブート映画『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』が公開。ただ、こちらは食いつきが悪く、1作のみで収束することに。短かった…。
でもこのIPを捨てるわけもなく、次なるリブートが始動し、2026年にタイトルもシンプル回帰で新作がお披露目となりました。
正直、元が有名作なので注目度はあったはあったのですが、これまでの経緯があれなので、世間の期待値は低かったと思います。予告動画がでた時点でも反応は鈍く、酷評の可能性も想定内で…。というのも今回の映画は原作のキャラクターもストーリーも全く映さないアプローチだったんですね。未知すぎて観客も警戒したのでしょう。
ところがいざ劇場公開されると大好評で…。2026年どころか、歴代のゲームを映画化した作品の中でも群を抜いた絶賛を獲得しました。
そんな偉業をあっさりやってのけたのが、“ザック・クレッガー”。
2022年の長編映画単独監督デビュー作『バーバリアン』で瞬く間にホラー映画界の新鋭となり、監督2作目の『WEAPONS ウェポンズ』も2025年のホラー映画の顔として、アカデミー賞で助演女優賞を獲るまでの快挙を達成。今や最大のホラー映画監督の成功者です。


その“ザック・クレッガー”監督が、今度はIPモノに手を出すと聞いて、ここで積み上げた評判が陥落するいつもの流れかと意地悪な人はほくそ笑んだかもですけど、そうはなりませんでしたね。
今回の2026年の『バイオハザード』を観て思いましたけど、“ザック・クレッガー”監督、非常にストイックというか、IPを背負っても自身のクリエイティブを失わずに描き切る挑戦心と集中力があるんだな、と。
日本の宣伝は相変わらずワンパターンなのですが、今作は“ザック・クレッガー”監督らしく、ゲラゲラと笑えるユーモアたっぷりの『バイオハザード』になっています。笑いどころ満載のホラーゲームのプレイ実況動画を観ている気分でお楽しみください。
『バイオハザード』(2026年)を観る前のQ&A
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Q『バイオハザード』(2026年)を観る前に観たほうがいい作品は?
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A
とくにありません。過去の映画やゲームを知らなくても問題ないです。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 人体損壊などゴア描写があります。 |
| キッズ | 残酷な描写があります。 |
『バイオハザード』(2026年)感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
ある夜。医療品の配達人のブライアンはセント・ジョージ病院に到着し、運搬してきた臓器のことを受付に伝えますが、対応はここではないらしく、廊下を右往左往します。スタッフは忙しく働いており、みんな無関心です。
そのとき、「遅いぞ」と医療スタッフが近づき、ブライアンの持ってきたバッグを掴み取り、そそくさと去ってしまいます。サインが欲しいと背中に声をかけても意味なし。再度受付に仕事完了の署名の件を訴えますが、相手にされません。
やむを得ず帰ろうとしたとき、別の仕事を頼まれます。何でも報酬を倍にしてくれるそうです。おカネに目がくらみ、思わず承諾してしまうブライアン。
荷物は平凡な緑の医療バッグで、行き先はラクーンシティ総合病院だそうです。山の中にあり、かなり遠いです。
ブライアンは気楽に出発してしまいましたが、山道は積雪で車では走りにくい状態です。
走行中、恋人のミシェルと妊娠について電話しながら、その妊娠を受け止めきれずに歯切れの悪い回答に終始し、今は自分は重要な仕事をしているからと話を濁します。
その瞬間、車のヘッドライトに照らされたのは、横から飛び出してきたひとりの人間。あまりに突然すぎて、思いっきり轢いてしまいました。急ブレーキをかけ、その場で停車。息を整え、恐る恐る車から降り、後方の轢いた場に歩んでいきます。
足跡と血が雪の森へと続いており、声をかけても返事はありません。
そこでこちらもその跡を辿ってみますが、妙に固まった姿勢で女性がピクピクしていました。
放置はできないので自分の車の助手席に乗せてあげ、「ごめん。病院に連れて行くから」と声をかけ、シートベルトをしめてあげて、再発進します。
その轢かれた女性は反応が鈍く、ショック状態なのだろうと思い、急ぎます。
しかし、すぐに後ろからパトカーが接近し、呼び止められてしまいます。事情を話し、とりあえず協力してパトカーに乗せ直し、一緒に病院に向かうことにします。
ブライアンはひとりでパトカーの後ろを自分の車で追います。
ところが、少し走ると、急にパトカーが横転してしまいました。慌てて駆け寄るも車内の保安官に応答は無し。轢かれた女性の姿は見当たりません。
無線を借り、緊急事態を伝えようとしますが、上手くいきません。
そのとき、いきなりあの轢かれた女性がものすごい形相で外から窓を叩き、機敏な動きで襲いかかってきます。
これは何が起こっているのか、全く理解不能な事態で…。

ここから『バイオハザード』のネタバレありの感想本文です。
ゲームしているときの私みたい
ゲームの『バイオハザード』はカッコいいアクションをキメられるキャラクターが主人公であることが多いのですけど、ムービー中はとてもクールな活躍を眺められますが、ひとたびプレイヤーが操作するターンになると、途端に「さっきまでのは何だったんだ?」っていうくらいにグダグダなアクションしかできないキャラクターに成り下がったりします。それは私のようにゲームが下手な人がプレイするとそうなるものです。
このゲーム特有のギャップというのはこれもまたゲーム体験の真骨頂でもあるんですよね。何度もプレイして上手くなれ!という…。
“ザック・クレッガー”監督の2026年のこの映画『バイオハザード』は、そのゲームをプレイしている感覚を実に巧みに映画化できていたと思います。以前から私もゲームらしいインタラクティブな面白さを映画にも盛り込むのは難しいという話をよく感想でしていましたが、本作は「ゲームっぽい!」の連発です。世界観やキャラクターで原作重視をみせるのではなく、ゲーム感覚で原作へのリスペクトをみせるというのはなかなか新鮮です。
まずこの“オースティン・エイブラムス”演じる主人公のブライアンは本当にただの凡人で、運動能力も高くなく、銃の扱いも慣れていません。そんな彼があの『バイオハザード』の空間に迷い込む。というか、普通だったらただのモブキャラで終わるところを、そのモブにあえてフォーカスして追いかけているのが今作ですね。
観客としてはその主人公の一挙手一投足に、大いにツッコみ、笑い、共感しながら、このサバイバルを不謹慎に見守ることになります。我ながら嫌な客だな…。
そもそも観客にはどう考えたってこれはアウトブレイクでゾンビパニックが起きていることが明白なのですが、ブライアンは前半は全然理解できず、あの車に乗せてあげるパートは観客ツッコミ型の舞台ギャグとして完成しきってます。「うん、知ってた」という予定調和すぎる展開を逆手にとった遊びです。
ゲームにありがちな出来事をいじったネタも豊富。例えば、やたらと南京錠でロックされたシチュエーションに遭遇し、そのたびに銃で撃って開けるというゲームではよくあることを試すのですけど、全然銃が効かない…。車でゲートを綺麗に突破もできない…。
また、これもゲームならば定番で、ハンドガン、ショットガン、アサルトライフル…といった感じで、武器を拾い、どんどん武器は確かに強くなっているのですけど、いかんせん主人公のスキルは成長していないので、射撃は下手なままという…。
弾を拾うくだりさえもギャグです。こういうゲームって、なぜか銃と弾がセットで配置されておらず、弾だけ引き出しに入っていたりする(プレイヤーに探索させるため)。その妙な不自然さをちゃんと取り入れ、ブライアンは「あと何発の弾はあるんだ…」といちいち数える姿も、ゲームならしょっちゅうやる仕草です。
一方でそんな今作の主人公のドタバタ劇を、アクションとしてはとてもスムーズかつ没入感たっぷりにも映し出していて、今回は撮影の仕事が良いですね。前半はひたすら走るという平行移動。ビルの屋上から次々と感染者が落っこちてくるあのわけわからんが怖いことだけがわかる阿鼻叫喚シーンがピークです。次にビルを上がる高さのある上下移動に展開し、絶対に乗ったらダメなエレベーターに乗るというフラグも回収し、人間版タンブルウィードを退治(なおも「轢いてごめん」と謝ってる主人公がまたシュール)。ここまでくると主人公もヤケクソ精神で突き進むので「ビデオゲームみたいだ!」の歓声にすっかりこっちのテンションも上がります。
2026年はドラマでも『ウィドウズ・ベイ』が、ホラーのトロープをことごとく弄り倒して高評価を得ていましたが、こういうアプローチはホラー好きほど愉悦できて、私は最高です。
「your body, your choice」
そして“ザック・クレッガー”監督の映画『バイオハザード』は、もうひとつ笑いどころとなる大きな要素があります。
“ザック・クレッガー”監督は過去作である『バーバリアン』でも『WEAPONS ウェポンズ』でも、男女のジェンダーの差異による認識の違いをピックアップし、その面白さと恐怖が紙一重な状況を痛烈に風刺するのが得意技でした。「この状況は女性ならこう認識しているけど、男性なら全然違う認識をしている」…というやつです(詳しくは過去作の感想にて)。
本作『バイオハザード』でもその風刺をきっちり装着していて、それに気づけると笑いがもっと増えます。
それが、男女における妊娠への認識の違い…とくに中絶ですね。
冒頭は電話から始まりますが、そのやりとりで示唆されるとおり、どうやら主人公のブライアンはカノジョを妊娠させたようで、しかし、「偽陽性かもしれないし、確かめないとね。一緒に考えよう」とか言いながら、だいぶ往生際の悪い態度でいます。
続く病院を出発した後の運転しながらの通話のシーンでは、あろうことか「I think … your body your choice」みたいな発言(実際はもう少し長めのセリフ)まで言い放っています。このセリフ、趣旨としては「きみの体のことなので、きみの意見を尊重するよ」という、あくまで恋人を優先するカレシ風な感じで振る舞っているのですけど、いやいやいや…。
このセリフは「My body, my choice(私の体、私の選択)」という中絶の権利を求める社会運動でもよく使われる身体の自律性を訴えるスローガンをいじったものだと思われます。
ブライアンはフェミニストっぽく言葉を選んだつもりかもですが、男側がそれを言ったら単に責任をなすりつけているだけにしかならないわけで…。
“ザック・クレッガー”監督作、あれですね、毎回、電話のシーンで初っ端から「この男は最低です」と示すのが恒例になってきてますね。
映画の後半では自分が感染したことを自覚し、観念してスマホにカノジョへのメッセージを残すという、表面上はエモい感じを漂わすシーンがあります。「変わるのが怖かった、きみとの子どもが欲しい、きみは最高の母親になる」とかなんとかべらべらと…。
いやいやいや、ここも別に感動の場面でも何でもない。そういうことじゃないだろう、と。これから死ぬ奴が、残される女性に「子どもを産んで育てて?」と身勝手に丸投げしているだけであり、またしても無責任極まりない…。
ブライアンの中の「中絶に対する恐怖」は視覚的にも提示され、感染した子どもをショットガンで盛大に吹き飛ばすシーンから、アンブレラ社の研究室に向かうビル内で得体のしれない変異を遂げた赤ん坊と思われる存在がチラ見えするおぞましいシーンまで、露悪的に盛りだくさんです。ただ、「男のお前が中絶を怖がるなよ」ってことなんですけど…。
さらに皮肉なことに、ブライアンは感染が進行して化け物になってしまいます。これはまさしく自分の望まぬ体に変えさせられたという点では、女性が“男性によって”妊娠させられるのと類似の状況で…。つまり、治療薬は中絶薬と同じですよね。身体を元に戻すわけですから。
“化け物”化したブライアンはかろうじてある意識の中で治療薬を欲します。結局、「男が妊娠したらどうせ中絶を願うんでしょ?」という、世の男性の妊娠への無責任(精子を配達して終わりですか?)と身体負担の不均衡を突きつけるようなオチでした。
『オブセッション 災愛』に続き、2026年のホラー映画はダメ男の活きがいいな…。
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以上、『バイオハザード』(2026年)の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Sony Pictures レジデントイビル
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