どこへ行くんですか?…映画『WEAPONS/ウェポンズ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2025年11月28日
監督:ザック・クレッガー
イジメ描写 ゴア描写 性描写
うぇぽんず

『WEAPONS ウェポンズ』物語 簡単紹介
『WEAPONS ウェポンズ』感想(ネタバレなし)
最後のウェポン
「ワーナー・ブラザース」の洋画作品の国内配給が2026年から「東宝東和」になる…との話は『ファイナル・デッドブラッド』の感想記事でも説明したのですが、「ワーナー・ブラザース ジャパン」の最後の配給となる海外映画はこちらになるようです。
これが最後か…映画ファンとしては寂しい気分だな…。
でもこの映画が最後なのは嬉しくもあります。個人的に楽しみにしていた一作なので。
それが2025年11月28日に日本で劇場公開された本作、『WEAPONS ウェポンズ』です。
本作は何と言ってもあの『バーバリアン』で2022年に長編映画単独監督デビューを果たしてホラー映画界隈をざわつかせた“ザック・クレッガー”の最新作ということで特筆しないわけにはいきません。でも日本では劇場公開されずに配信スルーでしたし、ホラー映画のマニアくらいしか見ていないような知名度なので新作に沸き上がっているのは一部の人だけか…。
以前の映画の面白さはそちらの感想記事でたっぷり熱く語ったのですが、今作の『WEAPONS ウェポンズ』も“ザック・クレッガー”の監督&脚本で作家性が詰まりに詰まっています。
ただ、ネタバレ厳禁な中身なので、もうこれ以上の説明できることはない…。今作もホラーですが、ホラーはホラーでもどういうホラーなのかという言及さえも面白さの新鮮さに関わってくるし…。ぜひ予告動画も目にせずに、さっさと観てください。
“ザック・クレッガー”はもともとコメディアンなので、そのホラーで躍進したキャリアは“ジョーダン・ピール”と重ねられることも多いですけど、作風として“M・ナイト・シャマラン”に近いなと思います。観客を弄ぶプロットの遊び心とかがすごく似ている…。
そう、「ネタバレ厳禁」とか「考察映画」とか、そういう触れ込みも、すでに観客を弄ぶための前振りなんですよ。
また、持ち味は同じですが、監督の前作と比べると本作『WEAPONS ウェポンズ』は、舞台のスケールも町全体に広がり(前作は1件の家だけでしたからね)、登場人物も増え、キャスティングも豪華になっています。前作の成功で、大手から引く手あまたになって製作体制が増量した効果です。それでもまだ小規模なホラー映画ですけども。
俳優陣は、『ウルフマン』の“ジュリア・ガーナー”、ドラマ『アウターレンジ ~領域外~』の“ジョシュ・ブローリン”、『Fair Play/フェアプレー』の“オールデン・エアエンライク”、『ウルフズ』の“オースティン・エイブラムス”、ドラマ『三体』の“ベネディクト・ウォン”、『アントラーズ』の“エイミー・マディガン”など。
物語上で重要な子どもを演じるのは、ドラマ『デイズ・オブ・アワ・ライブス』でも注目された子役の“キャリー・クリストファー”です。
“ザック・クレッガー”監督作を初めて観るという人も『WEAPONS ウェポンズ』をぜひどうぞ。難しい映画じゃないですから、肩の力を抜いて…。
『WEAPONS ウェポンズ』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 人体破壊を含むゴア描写があります。 |
| キッズ | 性描写や激しい残酷な暴力描写があります。 |
『WEAPONS ウェポンズ』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
これは本当にあった出来事。2年前に私の町で起きた出来事…そうある子どもの声が語ります。「たくさんの人が奇妙な死に方をしましたが、でもニュースにはでません。なぜなら偉い人たちが事件を解決できなかったので恥ずかしくて隠したからです…」
ペンシルベニア州のメイブルックにある、ひとつの小学校。ある水曜日。まだ来たばかりのジャスティン・ガンディ先生は、いつもどおり出勤し、担当する教室の子どもたちと会うつもりで教室に足を踏み入れます。
しかし、その教室には児童がいませんでした。この朝の時間帯なら教室が賑やかなはずなのに…。しかも、ジャスティン先生の教室だけ空っぽなのです。
でも、ひとりだけ…アレックス・リリーという子だけポツンと席に座っていました。他の17人の子はどこへ…。
前日の夜、午前2時17分。実は子どもたちは全員目を覚まし、外の闇に消えてしまい、戻ってこないという事件が起きていました。どの子も両手を広げ、吸い寄せられるように駆けていきます。住宅地をそれぞれ家から…。
事件はその日のうちに発覚。警察は捜査を開始します。各家の防犯カメラも確認し、確かに駆けていくところは映っています。でもどこに行ったのかは不明です。
唯一何もなかった児童であるアレックスにも事情聴取が行われ、「クラスメイトに何かあったのか、子どもたちの間だけで計画があったのか」と質問します。ジャスティン先生も同じく問われます。けれども何もわかりません。
捜査中は学校は休校しますが、何の進展もなく、やむを得ないのでしばらくして学校は再開されます。保護者や教師を集めて再出発をしようと学内集会が行われます。
しかし、穏便にはいきません。保護者の一部はジャスティンに原因があるのだろうと疑っており、問い詰めます。ジャスティンは前に立ち、口を開くも、「皆さんと同じく答えを知りたい」と言うしかできません。保護者からは「真実を話せ」「子どもたちはどこにいるんだ」と罵声が飛びます。
校長のマーカス・ミラーはジャスティンを庇うも、非難は収まらず、とりあえずジャスティンを休職にさせます。
ジャスティンは、ひと目に怯えながらアルコールを買いに行き、依存症を再発。嫌がらせに耐えながら家に籠るのもストレスしか溜まりません。
そしてアレックスのことが気になり始め、ジャスティンは独断でその子のことを尾行するようになり…。

ここから『WEAPONS ウェポンズ』のネタバレありの感想本文です。
考察したい人を弄ぶ
『WEAPONS ウェポンズ』の始まりは児童集団一斉失踪事件です。しかし、よくある誘拐とはまるで違う異様な事件なのは誰が見ても明らか。謎だらけです。まるで神隠し…。
本作は複数の視点で展開されますが、前半は非常にミステリー・サスペンスとして順当にシリアスに語られています。
失踪した児童のひとりマシューの父親であるアーチャーの視点は、“ドゥニ・ヴィルヌーヴ”監督の『プリズナーズ』っぽいですよね。「アイツが犯人に違いない」と決めつけ、どんどん強迫的に追跡をしようとしだす暴走具合はとくに…。ジャスティンも想像以上に大胆な危うい一線を越えて自己調査し始めますし…。
また、ひとつの教室だけを対象に子どもが大勢いなくなること、そしてその後の学内集会での教師と保護者の沈痛な空気。これらは現在アメリカで多発している学校での銃乱射事件を彷彿とさせます。
しかも、アーチャーは悪夢の中で、闇夜の空に浮かぶ「217」という数字とアサルトライフルの模様みたいなものまで垣間見るシーンまであります。どう考えたってこれは何かの暗示…。
でもこれは“ザック・クレッガー”監督作。そうは問屋が卸さない…。
子どもたち、217、銃…これらは…とある何かを示すメタファー…ではなく、ミスリードでした。はい、考察させるための餌です。わざとらしくバラまいておきました!
本国ではあの「217」の数字は「下院で2022年にアサルトライフルを禁止する法案が217票を獲得し上院で否決されたことを指している」なんて考察も飛び交ったらしいですね…。
“ザック・クレッガー”監督は前作の『バーバリアン』でも、映画全体で物語が段階的にシフトしていき、印象がいつの間にやらガラっと反転する…というのが大きな見どころでした。それこそホラーからコメディに変わるほどに…。
今作『WEAPONS ウェポンズ』はそれをもっと大掛かりにして披露してくれます。今回はさらに段階が細かく用意されているので複雑になっていますが、楽しみ方は基本は一緒です。
最初の「え?」という展開は、アーチャーの視点のクライマックス。アーチャーがジャスティンとついに対面し、シリアスな緊張感がピークに達する場面です。そこへその張り詰めた空気を完全にぶち壊す存在が現れます。校長のマーカスが…あの失踪した児童と同じように両腕を逆Vの字に横に広げて一目散に走っている…しかも襲ってくる?
ここで私たち観客は情報量の多さに困惑します。まず日中に大人のマーカスが同様の状態になっていることで、あの事件は「真夜中であること」「被害者が子どもであること」のポイントはもうどうでもよくなります。関係なかったのです。そしてジャスティンを執拗に襲ってくることで、これは誘拐でもないことも察せられます。まるで操り人形のゾンビです。
そのうえ、子どもがあのポーズで疾走する姿はどこか不気味なのに、大人がそのポーズで走っている姿はどう考えても不格好で、もはやギャグになっているという…。「わ、笑っていいの?」という困惑までやってきます。
そして今度はポールの視点、ジェームズの視点に移っていくわけですが、この男たちはほぼコメディ・パート。
まずポールですが、ジャスティンの視点のポールは、追いつめられ弱っている女性を献身的に支え、アルコール依存を心配する理性を持っている頼れる男性として映っていました。ところがポール視点では、こいつは感情的で仕事でも迂闊な行動を連発しているかなりダメダメな野郎だと露呈します。ジャスティンの前で落ち着いているように見えたのも、内心では仕事上でヘマしたのでこれ以上の失態ができないから焦っているだけでした。
さらにそれに輪をかけてダメっぷりで笑わせてくれるのがジェームズで…。こちらは「お前、おい、お前…!」って感じのおっちょこちょい。アレックスの家に侵入してあんな経験したのにまだ金銭にしか執着していないのは、なんか逆にあっぱれだよ…。
走ろう、嫌いな奴めがけて…
『WEAPONS ウェポンズ』の次なる後半の「え?」の転換点は、マーカスの視点になったときの、グラディスの初登場ですね。アレックスの母方の叔母を名乗るこの人物…どう考えても…先入観はやめようと思っても…やっぱり明らかに怪しい…怪しすぎる…。
結局、今作の事件の黒幕はこのグラディス(これが本名なのかも怪しい)で、彼女は人間の生命を奪い取る魔女でした。無実のジャスティンが典型的な魔女狩りでバッシングされる中(女性らしくない風貌の人が子どもをグルーミングしていると非難される光景は既視感がありますね)、本物の魔女が普通にいたというオチ。
そのグラディスを校長として人格者なマーカスは内心では疑いつつも失礼になるので何も踏み込めないのですが、ゲイカップルである夫のお人好しなテリーがあっさり家に招き入れてしまったがゆえに、大変なことに…。
アレックスの視点では、グラディスの独壇場がこれでもかと展開。可哀想なのですが、この後に痛烈でカタルシス直球な反撃が用意されていますので大丈夫。
ジャスティンとアーチャーが協力してアレックスの家に乗り込むくだりは、何度ぶちのめされてもしつこくアーチャーに襲いかかってくるジェームズといい、核心に迫る舞台なのになぜかユーモア満載。
そしてついに反撃タイム。『フェリスはある朝突然に』のパロディなのか、やりすぎ感たっぷりのあのシーン。これを観るためだけに『WEAPONS ウェポンズ』を観る価値はあった…そういうことにしておこう。
本作、あの「独特なポージングでの子どものダッシュ」からこのラストまで繋げる強引さ…それでもあえて突き通してみせたこと…嫌いじゃないですよ。これはもうみんなこのポーズで走って嫌いな奴を追いかけ回したくなる…。
それにしてもグラディスという新たなホラーアイコンを生み出したことがこの『WEAPONS ウェポンズ』の最大の快挙ですね。“エイミー・マディガン”がハマり役で完璧でした。
さて、考察を煽る仕掛けとは書きましたが、考察が無意味とは限りません。本作に「銃」が象徴的にでてくるのは事実です。銃というのはことさらアメリカではいかようにも捉えられる存在。人々を魅了し、恐怖させる、奇々怪々なアイテムですからね。
そんなこんなで“ザック・クレッガー”監督、一発屋で終わらずに2025年も見事な手腕を発揮してみせました。今後もオリジナル作を期待したいですが、次の監督作は『バイオハザード』のリブートだそうで…。どうなるのかな…。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
△(平凡)
以上、『WEAPONS ウェポンズ』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)2025 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved ウエポンズ ウェポンス
Weapons (2025) [Japanese Review] 『WEAPONS ウェポンズ』考察・評価レビュー
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