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『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』感想(ネタバレ)…映画のリブートでもヘリは落ちる

バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ

リブートでもヘリは落ちる…映画『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Resident Evil: Welcome to Raccoon City
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2022年1月28日
監督:ヨハネス・ロバーツ

バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ

ばいおはざーど うぇるかむとぅらくーんしてぃ
バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ

『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』あらすじ

巨大複合企業「アンブレラ社」の拠点地域となっているラクーンシティの孤児院で育ったクレア・レッドフィールドは、「アンブレラ社がある事故を起こし、そのせいで街に異変が起きている」という不可解な警告のメッセージビデオを受け取る。嫌な感覚を抱き、ラクーンシティに戻ってきたクレアだったが、ラクーン市警に勤める兄クリスはそれを信用しない。しかし、この瞬間にも闇夜に何かが蠢いていた…。

『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』感想(ネタバレなし)

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新しく再始動、それは同窓会でした

長くシリーズが続いてきた映画が終わると感慨にふけるものではないでしょうか。

「バイオハザード」シリーズもそうでした。2002年に“ポール・W・S・アンダーソン”監督&“ミラ・ジョボヴィッチ”主演で1作目が封切られた映画『バイオハザード』。カプコンの大人気ゲームの実写映画化として成功し、以降、『バイオハザードII アポカリプス』『バイオハザードIII』『バイオハザードIV アフターライフ』『バイオハザードV リトリビューション』と続き、ついに2016年、『バイオハザード ザ・ファイナル』として6作目で最終章を迎えました。14年近くに渡って同じ主人公で大作映画シリーズが継続するというのはなかなかないことですし、とても恵まれた作品だったと思います。評価は低迷していましたが、終わりよければすべて良し。ご苦労様という感じで、観客も思い出を噛みしめつつ解散…。

いや、映画業界に休みはない。実はもうあの『バイオハザード ザ・ファイナル』の公開中の時点で、この「バイオハザード」映画の新たな再出発となるリブート企画が進んでいたのです。感慨にふけるどころじゃないですよ。まあ、でも映画企画を主導する「コンスタンティン・フィルム」にとっては重要な大金をもたらすタイトルですから、ここでおしまいにはしたくなかったんだろうな…。

じゃあ、リブートするしても何をするのかという話。そこで方向性としてはゲームに忠実に映像化するというスタイルになったようです。今までの「バイオハザード」映画は“ミラ・ジョボヴィッチ”のスーパーヒーロー・ムービーだったですしね…。

ということで心機一転で再始動したのが本作『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

中身は本当にわりとゲームそのまんま。あのおなじみのキャラクターもどんどん登場。あのロケーションもでてくるし、あのモンスターもでてくる。なんだろう、同窓会の気分…。「あ~、元気してた~?! え、顔つき変わったね~」みたいな会話が起きそうです。

でも日本の宣伝のしかたは全然これまでと同じなんですよね。これだと過去作と同じで“ミラ・ジョボヴィッチ”がまた登場すると勘違いする人、絶対にいると思うのだけど…。せめて「キャスト一新!」「ゲームに忠実に映像化!」くらいはデデーンと予告動画で大々的にアピールしておかないと…。

そんな新たな映画『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の監督を務めるのは、『海底47m』シリーズ『ストレンジャーズ 地獄からの訪問者』を手がけた“ヨハネス・ロバーツ”。本作では脚本も担当し、順調にキャリアを重ねています。

俳優陣ですが、バイクを乗りこなす姿がかっこいいクレア・レッドフィールドを演じるのは、『メイズ・ランナー』シリーズや『クロール 凶暴領域』でもクールにサバイバルしていた“カヤ・スコデラリオ”。そのクレアの兄で屈強なパワープレイが売りのクリス・レッドフィールドを演じるのは、『ザ・ベビーシッター』の“ロビー・アメル”。持ち前の正義感でどんな敵にも挑むジル・バレンタインを演じるのは、『アントマン&ワスプ』の“ハナ・ジョン=カーメン”。ゲームでは2作目から主人公として登場するレオン・S・ケネディを演じるのは、『ゾンビランド:ダブルタップ』の“アヴァン・ジョーギア”。そしてウィルス大好きなアルバート・ウェスカーを演じるのは、ドラマ『アンブレラ・アカデミー』の“トム・ホッパー”

他にも、ドラマ『ARROW/アロー』の“ニール・マクドノー”、ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』の“ドナル・ローグ”、ドラマ『エクスパンス -巨獣めざめる-』の“リリー・ガオ”など。

「バイオハザード」映画はこれが初という人でも大丈夫。どっちかというと本作の方が本来の「バイオハザード」ですから。

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『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』を観る前のQ&A

Q:『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:とくに過去の映画を鑑賞する必要はありません。物語は関係ないです。
Q:怖いのが苦手でも観れる?
A:エンタメ度の強い作品なのでそこまで身構えなくてもいいですが、当然グロテスクなゾンビやモンスターはでてきます。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:初見でも大丈夫
友人 3.5:ホラー好き同士で
恋人 3.5:ロマンスは無し
キッズ 3.5:ゲーム好きなら
↓ここからネタバレが含まれます↓

『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):ラクーンシティのいつもの光景

1998年。クレア・レッドフィールドはトラックの助手席で目覚めます。また昔の夢を見ていました。幼い頃、クレアは兄のクリスとともにラクーンシティの孤児院で暮らしていました。ある夜、リサ・トレヴァーという子を見かけてクレアは静寂の孤児院を探索したことがあって…。そんな遠い昔の記憶。

今のクレアはヒッチハイクをしてトラックに乗っています。向かっているのは懐かしいラクーンシティ。この街は今や変わり果てました。

ラクーンシティの一帯で影響力を持っていた製薬会社のアンブレラ社が存在したのですが、そのほとんどの施設は移転してしまい、街は衰退しつつありました。それでもアンブレラ社の面影はまだ残っています。クレアはこのラクーンシティで「S.T.A.R.S.」という特殊部隊として治安を守る兄クリスに会いに行くつもりでした。

そんな複雑な心境のクレアをよそに隣で喋り続ける運転手。よそ見をしていると前方に人がいたのに気づくのに遅れ、思いっきり轢いてしまいます。雨の中、降りる2人。轢かれたその人はピクリとも動きません。

「いきなりで気づかなかったんだ」とパニックになる運転手。クレアはひとまず運ばないとと提案しますが、運転手は動揺。しかし、2人が振り返ると轢死体が消えています。なぜ…? 運転手の犬がその血をペロペロと舐めて…。

一方、ラクーンシティにあるダイナーでは「S.T.A.R.S.」所属のアルバート・ウェスカージル・バレンタインがこの街の警察(RPD)に配属されたばかりのレオン・S・ケネディをからかいます。

ウェスカーとバレンタインが出ていった後、レオンは食堂の女性の目から血が出ているのに気づきます。そして外では鳥が悶え苦しんでおり…。

クレアはトラックを降ります。クリスの家のドアをノックするも反応なし。ナイフでこじ開けて入るとクリスが2階から降りてきました。人を轢いた話をしつつ、ベン・ベルトリッチから届いたビデオを見せるクレア。そこにはチェルノブイリ級のヤバいことが起きたと興奮を抑えて語る男の姿が。この後に連絡が取れなくなったそうですが、陰謀論に憑りつかれたのかとクリスは怪訝な顔。

するとアンブレラ社からの警報が街中に響き、「自宅で待機しろ」と指示してクリスは出ていきます。

家で待つしかなくなったクレアでしたが、窓をぶち破って謎の襲撃者が出現、やむを得ずバイクで逃げます。

その頃、「S.T.A.R.S.」のもとにチーフがやってきて、スペンサー邸を調査に行った隊員が帰ってこないと報告。クリス、ウェスカー、バレンタインらのチームは現場にヘリで向かいます。

その後、レオンが寂しく待機する警察署に、突然トラックが入り口ゲート付近まで突っ込んできて、レオンもびっくり。署長に言われてゲートを封鎖するも、署長は車で出ていってしまいます。

このラクーンシティで何かが起きている…。

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うん、知ってた

まあ、ラクーンシティで何かが起きている…なんてもったいぶった書き方しましたけど、わかりきっているのですけどね。

この『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』、予定調和すぎる…。そもそもの世界観の初歩をあらためて物語内で事実として明かされても、ちょっとこっちとしては反応に困ります。

街にゾンビが徘徊しているのです! …うん、知ってた。

アンブレラ社が人体実験を行っていたのです! …うん、知ってた。

ウェスカーが裏切るのです! …うん、知ってた。

だいたいすでに6作も映画を作っておいて、あらためてゲームに忠実な映像化というのはどういう需要があるのかという論点があります。

というのもゲーム特有のインタラクティブな面白さを映画には移植できないという問題があって、それは他のゲームの映画化作品の感想でもよく話題にだしているとおり。

「バイオハザード」というゲームはとても面白いです。キャラクターを操作して、あの不気味な世界を探索し、アクションで敵を倒していく…この要素だけじゅうぶん売りがあります。昨今は映像の進化もあって、本当にリアルな世界を体験できますからね。こういうジャンルのゲームはハードの進化とともに面白さも格段にアップしますし、今後もVRの発達でさらにスゴイことになりそうですよね。

一方の映画はせっかくのゲームの面白さを消失させます。もう映画はゲームと比較してリアルさが売りになる時代ではありません。逆に足枷です。例えば、本作『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』はゲームの1作目と2作目(あと3作目も混じっている)を合体したような展開で、複数のキャラクターが大集合するのですが、ゲームであればこのキャラの多さはロールプレイングできる視点のバリエーションの多さとなり、面白さに繋がります。でも映画になると単にわかりにくいだけになるんですね。それどころかこういう緊張感のある作品で主人公級のキャラがバンバン登場しても「どうせ死なないんだろうな」という安心感になってしまってスリルも無くなるし…。

キャラクター愛に頼った見せ方をするにしても、「バイオハザード」はもともとそんなキャラありきで売っているような作品ではないですからね。訴求力は弱いです。

結果的に、映画全編を通して、なんだか味気のないゲームプレイ動画を見せられているような、そんな映画体験で終わっているようにも思います。

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今度はもっと新鮮なやつがいいです

『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』独自の改変も当然あります。

例えば、今作におけるラクーンシティは今のアメリカに各所にあるであろう、かつての盛況を失って荒廃するも自力ではどうにもできない地方の哀愁が漂っています。それこそ大企業の不正で地域一帯が汚染してしまった実話を描く『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』と同じ。現実にもアンブレラ社みたいな企業はいるのです。

ただ、あんまりそういう衰退する地方自治体のリアルを生々しく描くほどではないので、全体的に本当に単なる背景で終わってしまっているのですけど…。

個人的にはクリーチャーのデザインは好きなのですが、ゲームの場合はそのゲーム性を考慮してデザインされたものなので(弱点をわかりやすく強調するとか)、映画にするときはもっとデザインを変えるか、意表をつくようなクリーチャーをもっと見たかったという気持ちもあります。

全体的に改変している部分もあまり映画の面白さに繋がっていないような…。ゲームにはハッキリ登場していたのに今作の映画では全然登場しないキャラもいるのですけど、それは次回作に持ち越しなのか、単にカットされたのか、それも曖昧ですし…。

こうやって振り返ると、あの“ミラ・ジョボヴィッチ”版の映画『バイオハザード』シリーズは、次に何が来るのかわからないのでそれはそれで新鮮な気持ちで楽しめていたんだなと再確認できました。『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』を鑑賞する前に初代の映画『バイオハザード』も再鑑賞したのですけど、アレンジのしかたが尖りまくっていて、やっぱり“ポール・W・S・アンダーソン”監督は面白い人だなと今になってなお感心しました。やっぱり『モンスターハンター』より『バイオハザード』の方が向いているよ…。

『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の続編、また“ポール・W・S・アンダーソン”監督にやらせてくれないかな…(ダメだ、同じことを繰り返している…)。

私のすっごく私的な実現してほしいことは、『バイオハザード』と『ゴーストバスターズ』の世界観をクロスオーバーしたお祭り映画が観たいな…という。作ってくれないかな、ソニーさん。

ともあれ“ヨハネス・ロバーツ”監督はまだ続編をやる気満々みたいですし、ネタとなるゲームもたっぷりあって魅惑的な世界が広がっていますし、今後はいくらでもフレッシュに蘇るかもしれないですからね。『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の続きも待ってます。

『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 30% Audience 66%
IMDb
5.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
3.0

作品ポスター・画像 (C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved. ウェルカムトゥラクーンシティ

以上、『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の感想でした。

Resident Evil: Welcome to Raccoon City (2021) [Japanese Review] 『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』考察・評価レビュー