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『BAD CGI SHARKS 電脳鮫(サイバージョーズ)』感想(ネタバレ)…私たちのサメ映画は永遠にレンダリング中

Bad CGI Sharks

私たちのサメ映画は永遠にレンダリング中…映画『BAD CGI SHARKS 電脳鮫(サイバージョーズ)』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Bad CGI Sharks
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:???
監督:MaJaMa

Bad CGI Sharks

ばっどしーじーあいしゃーくす
Bad CGI Sharks

『Bad CGI Sharks』あらすじ

世知辛い現代社会。二人の兄弟がいた。その二人を繋いでいるのはサメだった。二人が久しぶりに出会ったとき、1匹のサメが現れる。陸上の街中で。しかも、それはデジタルな作り物のサメだった。決してリアルとは言えないビジュアルで、決してリアルとは言えないモーションとともに、決してリアルとは言えない恐怖をもたらすそのサメ。兄弟の人生の脚本はここからリライトする。

『Bad CGI Sharks』感想(ネタバレなし)

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その手があったか?

激しい興亡が続くスマホゲーム業界。そんな栄枯盛衰の中で容易にはマネできない独自性を持ったジャンルとして市場の新しい世界を開拓したのが「位置情報ゲーム」だった。

拡張現実が日常を浸食したのだ。そのゲームの登場でライフスタイルも変わった人すら現れた。ハマった人々はスマホを片手にあちこちを練り歩き、陣地を奪い合ったり、仲間と交流したり、モンスターを倒したり、ボールを投げたり。傍から見ればスマホの画面を指でタップしているだけだが、確かにそこにはリアルと仮想空間の狭間が広がっている。

それは社会問題にもなり、歩きスマホの増加などは報道でも取り上げられた。

しかし、もっと大きな脅威が迫っていることに人類は気づいていなかった。

それは発覚したときには遅かった。なぜか位置情報ゲームのユーザーの死亡率が増加していた。当初、有識者はスマホに夢中になるあまり外部の危険に気づかずに事故に遭っているのだろうと推測していた。ところがそれは違った。

原因は拡張現実の世界から人を襲う獰猛なサメだった。位置情報ゲームの膨大なネットワークを利用して神出鬼没に出現するこのサメは、外で無防備にスマホをいじる人を強襲する。このままでは甚大な被害が起きるのは避けられない。

そこで政府はサメの存在を知らせずに国民に外出自粛を要請。外でスマホを使えないようにするのが狙いだった。そして、その間に対抗策を講じるべく、技術者と検討を開始した。まさに瀬戸際の状況である。

こうして新しい無線通信システム「5G」が考案された。これは高速大容量というメリットだけでなく、拡張現実空間にいるサメをシャットアウトする防御機能を搭載していた。

しかし、ここでも問題点が発生した。5G対応の端末は販売したものの、5G通信可能なエリアが拡大できていないのである。基地局を効果的に多数配置することが喫緊の課題だった。それは後々考えようと思っていた。

ところがさらに追い打ちをかける事態が勃発する。外出自粛で家に籠らざるを得なくなった人々が家でインターネットを大量に使用するようになったため、拡張現実空間にいるサメが家に誘引され始めた。ネット依存症という自覚症状のない病は想像以上に国民に蔓延していた。マスクやうがい・手洗いで感染予防できない病気が一番怖いのである。

やむを得ず政府はインターネットから国民全員を締め出す決定を下す。

サメの存在は公にできない。何か理由を考えなくては…。


 

………以上の話は、これから紹介する『Bad CGI Sharks』とは一切関係ありません

なんかB級サメ映画の感想を書くときは「嘘あらすじ」から始めるのが恒例になってきたのですけど、本編の感想よりもこの嘘あらすじを考えているときの方が楽しいかもしれない…。

まあ、いいのです。『Bad CGI Sharks』の話です。

本作はB級サメ映画を食い尽くした(いや、食われているというべきか?)ベテランたちすらも唖然とさせた問題作でした。

これまでB級サメ映画の常套手段は、特殊な能力や形態を持ったサメを登場させることでした。昨今はCG技術がありますので、思いついたものはとりあえず何でも映像化できてしまう時代。このテクノロジーの援護射撃もあって、魑魅魍魎なサメたちが次々と世に放たれ、B級サメ映画ファンは感激絶叫していたわけです。

しかし、この『Bad CGI Sharks』はその裏をかくアイディアで挑んできています。なんとなくタイトルで察しがつきますが、低クオリティなCGのサメが現実に出現して人を襲うという設定なのです。

これはもう“開き直り”というしかない。究極の潔さなんじゃないでしょうか。サメのCGがチープだね…と言われるなら、だったらチープなCGのサメが襲ってくることにしちゃえばいいじゃない。

そうか、その手があったか。いや、何を言っているんだ。でも反論できない。うん? あれ?

そんな発想で生まれたこの『Bad CGI Sharks』はB級サメ映画界隈を震撼させ、Amazon売れ筋ランキング(DVD)で101444位を記録し、確実に世界に衝撃を与えたのでした。与えました。与えた(断言)。

配給しているのは、これまたB級サメ映画ファンダムに自宅隔離よりも恐ろしい虚無をもたらした怪作『ハウスシャーク』の映画製作会社である「SRS Cinema」。なんだこの連帯…。

『Bad CGI Sharks』は今のところ「Tubi」という無料ストリーミングサービスで配信していますが、いつまで扱われているか、また日本からアクセス可能な状態が維持されるかについては私からは何も保証できません。

そもそも需要なんてほぼないに等しいのですから気にすることもないのでしょうけど、もし万が一、滅多にないでしょうが万が一、『Bad CGI Sharks』を観たくてこのブログにたどり着いたならば、私は観ようとするのを止めません。むしろ観てください。後悔はさせ…いや、何も責任はとれないのでこれ以上は言わないでおこう。

またもう観たよという人がこの感想記事を読んでいるのならば、正直、私の方から何か有益なことを語れる自信は何もないので、これ以上は読まなくてもいいかもしれません。

以下の後半の感想では『Bad CGI Sharks』について頑張って書いています。

オススメ度のチェック

ひとり △(サメ映画の感染力は侮れない)
友人 △(その友人を大切にしてあげて)
恋人 △(サメと付き合っている?)
キッズ ✖(子どもがサメ映画病になる恐れあり)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『Bad CGI Sharks』感想(ネタバレあり)

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Rendering…

ここから『Bad CGI Sharks』の簡単なストーリーの流れを寄り道しつつ、おさらいします。でも本編自体が盛大に寄り道しているような作品なので真面目にあらすじを書き連ねても、すっごくわかりにくい文章になってしまうのですよね。だから勘弁してください(言い訳)。

下着姿の女性が部屋にひとりいます。SMSをしながらボサッとベッドでくつろいでいると何かの気配を感じます。大きな背びれのようなものが横を通り過ぎたような…。今度は前を通り過ぎたような…。さすがに人生においてベッドの上で背びれを見る機会はないでしょうし(私は経験ない)、びびるのも当然です。

怯えた女性は、ベッドから床に足をつけようとした瞬間、引きずりこまれ、引きずりこま、引きずり、はやく引きずられろ。そのまま見えぬ場所に消えていきました。

その部屋に男が来ます。そこには血まみれのベッド。血の量は割とそんなでもない。とりあえずここでは直接書けない酷くぞんざいな言葉を放った後、そばでシーツが浮かび上がっているのを目にします。それはサメのかたち。あの女のメガネが乗っている。なぜなのかは聞かないで。そして…。

まあ、でも以上のことはたいして関係ないので無視してください。正直、この映画、いつでもどのタイミングでもトイレに行ってきても大丈夫です。それで話がわからなくなることはありません。もとからわからないようなものです。良心的な構成ですね。

そして、登場する謎の男バーナード。コイツも小賢しい奴ですが、重要ではありません。いや、重要なのかもしれないですけど、重要視したくはありません。私の気持ちです。

タイトルのデカデカした登場とともに本編スタート。

目覚める男。マシューは急いで出勤の準備です。オロオロと着替えて、朝食をテキトーに用意し、車に乗り込んで…。そこへお隣の変人ジョシュが飛び出してきます。ひたすらにトーク。「遅れているんだ」と無視して発進。過剰にしつこいボイスメッセージを聞き流すマシュー。

そんなマシューのもとに、やたらと陽気なちょんまげ短パン男が現れます。なんかこう、ラフな現代の格好をしたイエス・キリストみたいですよね(怒られる)。彼はジェイソン。兄弟の再会の瞬間。

二人はのんびりと会話をし、自分たちのこれまでの思い出、今の状況、未来への展望、世界中の海洋で問題になっているマイクロプラスチックが生態系に与える深刻な影響とそれを軽視する人々への苛立ちを語りあかすのでした(若干、この文章は嘘つきました)。

その頃、お隣のジョシュは家で何かにやられているようでした。とにかく俳優の人はそんな演技をしています。

一方、夜、マシューはサメに遭遇しました。家の中です。もう百戦錬磨のB級サメ映画ファンは家の中でサメが出てきても驚かないのですが、これは普通ではありません。反射的にドアを閉め、ソファでのんびりテレビを見ているジェイソンのもとへ「サメだ」と報告。しかし、間髪入れず部屋に入ってくるサメ。どうもみたいな感じです。「サメだ」「り、り、陸地で?」

こうして二人は夜の町へと駆け出します。道路をすべるようにやってくるサメ。非常にやる気のない追跡をするサメです。このスルーっと動くモーション、なんか1UPキノコみたい…。

そのサメはマシューの職場のCGに精通しているエイミーのもとにも出現。襲われるのかと思いましたが、なんとエイミーの前でサメが語りだすのでした。さらにそれぞれ色が違う3匹の小さいサメを吐き出します。3色のサメは思い思いに行動していきます。そして大きなサメは言うのです。

「私をアップグレードして」と。

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B級メタ映画

一般的にサメ映画というのはスリルを提供するものです。たいていの人はそう思っています。

だから限られたシチュエーションに人が追いやられ、そこで狂暴なサメが襲ってくる。これだけでもじゅうぶんなスリルがあります。根本的な話、サメが変異したり、空から落ちて来たり、そんなことをする必要ないのです。サメがただ襲ってくるだけで怖いものなのです。

その普通の怖さを描くだけでもいいのに、この『Bad CGI Sharks』はシチュエーション・スリラーという構図ですらも、半ばゴミ箱に捨てています。

怖がらせる話にもしていない。では何をしているのか。

それは観た人はわかるとおり(わかるのか?)、とてもメタ的な構造を持った物語をしています。

つまり、サメ映画を作るということへのオマージュそのものであり、そうやって作られたサメ(デジタルなCG)への言及でもある。だから全然サスペンスではないというか、むしろドラマ性の方がある(これでも)。

B級サメ映画に対してここまでのメタなアプローチで向き合った作品が生まれるのもそれだけとくにコンピューターグラフィックスで創造されたB級サメ映画のコンテンツが普及し(普及は言いすぎでした。一部の人のみです)、成熟してきた歴史があるゆえです。

『Bad CGI Sharks』はそのメタ的なアプローチが上手いかどうかはさておき。いや、あまり上手くはないのですけど。あのバーナードのしつこいくだりは全然機能してこない、余興もいいところですし…。B級サメ映画ならぬB級メタ映画ですよ。

でも『Bad CGI Sharks』はB級サメ映画が愛されてきたから生まれた一作なのは間違いありません。

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BadじゃなくてLoveです

そうです、『Bad CGI Sharks』はB級サメ映画への愛の結晶です。

本作はB級サメ映画の本質をついています。つまり、私たち(ファン)はB級サメ映画の何を好きなのか。チープな作りのサメのCGそのものを愛しているんじゃないの?…と。それが「Sharksploitation」にハマる心理なのだろう、と。

スリルを出す効果としては蛇足でしかない多様なCGサメたち。あれらが続々と性懲りもなく生まれるのはそのサメたちへのキャラ愛が満たされていくからにほかなりません。

『Bad CGI Sharks』だってあの3色サメ、めちゃくちゃ可愛いじゃないですか。私、もし今後のテクノロジーの発展でバーチャルペットが実現したらサメを飼おうと思っているくらいです。あの3色サメなんてちょうどいい。これからは駅の案内AIも汎用的な女の子キャラなんて使うくらいならサメにしてくれと主張したい。どうしてサメを捕まえる位置情報ゲームが登場しないのかと腹立たしい。とんでもサメから逃げたり、倒したりする位置情報ゲーム、楽しそうなのに…。

こういうサメキャラ愛。それが今日のB級サメ映画を支えています。

『Bad CGI Sharks』はそのツボを刺激してくる。だから「気持ちいい」のです。そのツボがない人にとっては不愉快どころかセクハラにしかならないのですが…。

それをメタ的に創作物への愛として描くというのは、他にもいろいろな題材でやられていることで、それこそ2019年に話題沸騰となった映画『すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』も、ちょっとネタバレにならないようにぼかしますけど、そういう内容でした。つまりこの『Bad CGI Sharks』もそれ並みにヒットするかもしれない…(妄想)。

個人的にはこの『Bad CGI Sharks』を観た時、ある作品のエピソードを思い出しました。それは『ウルトラマン』(初代)の第15話「恐怖の宇宙線」。私もイチオシで大好きな物語です。これはかいつまんで説明すると、子どもが土管に描いた絵が実体化して生まれた怪獣「ガヴァドン」というのがいて、子どもの描いたものなので何とも言えないしょぼいデザインの怪獣なのです。面白いのは、その怪獣は子どもたちに応援されるようになり、ウルトラマンは帰れとまで言われるということ。これもいつもやられ役な怪獣ですが、視聴者の子どもはウルトラマン以上に怪獣が好きだという需要を制作者がわかって作ったストーリーですよね。

B級サメ映画のサメも似たようなもので、ファンになると恐怖を与えるサメ自体の方が好きになってしまうんですね。

B級サメ映画というのは、ファンになってしまえばもうBadもGoodも関係ない。LikeであってLoveなサメたちなのです。

もちろん私も『Bad CGI Sharks』を愛しています。

『Bad CGI Sharks』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★
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・『シックスヘッド・ジョーズ』

作品ポスター・画像 (C)badCGIsharks バッドCGIシャーク、バッドCGIサメ

以上、『BAD CGI SHARKS 電脳鮫(サイバージョーズ)』の感想でした。

Bad CGI Sharks (2019) [Japanese Review] 『BAD CGI SHARKS 電脳鮫(サイバージョーズ)』考察・評価レビュー