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『ドクター・ストレンジ』感想(ネタバレ)…魔術と漫才の天才、あらわる

ドクター・ストレンジ

魔術と漫才の天才、あらわる…映画『ドクター・ストレンジ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Doctor Strange
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2017年1月27日
監督:スコット・デリクソン
ドクター・ストレンジ

どくたーすとれんじ
ドクター・ストレンジ

『ドクター・ストレンジ』物語 簡単紹介

傲慢な性格だけが欠点の天才的な神経外科医スティーブン・ストレンジは、不慮の事故で両手が不自由となり、築いてきたキャリアの全てが崩壊する。この悲惨な事態をどうしても受け入れることはできなかった。手の治療と失われた人生を取り戻すため、あらゆる手段を模索するストレンジは、やがて神秘に満ちた魔術の力へとたどり着く。医学しか信じていない彼にとってはそれは自分の固定観念を捨てる旅路となり…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ドクター・ストレンジ』の感想です。

『ドクター・ストレンジ』感想(ネタバレなし)

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ようこそ、新入ヒーローさん

新入生の季節にはまだ早いけど、マーベル映画の世界では新しいヒーローが仲間入りです。去年はヒーローたちで大喧嘩したばかりなのに、ほんと慌ただしい世界ですよ。

そのNEWヒーローの名前は「ドクター・ストレンジ」。そのヒーローが活躍する映画のタイトルも『ドクター・ストレンジ』。アメコミ映画はタイトルがシンプルで毎回いいですね。

どんどん拡充していくマーベル映画の世界に対して、本作は新入生らしく入門編として機能しているのが良いところ。本作は「もう、ヒーローが増えすぎて何が何だかわからない!」とか「アメコミはちょっと入りづらい…」なんて思っている人にもおすすめしやすい作品になっています。

「ヒーローなんてみんな同じでしょ?」と思っている人は、今回はハッキリ違いがわかるので、とにかく見てくださいよ。

『ドクター・ストレンジ』の一番の売りは、予告動画でもこれでもかと押されている最新のVFXで創り出された映像。建物が物理法則を無視して変形したりひっくり返る…『マトリックス』(1999年)や『インセプション』(2010年)をさらにバージョンアップさせたような超次元的な映像の数々は、一見の価値あり。しかも、トリッキーな映像はこれだけではありません。これは劇場で観ないと損です。

ドクター・ストレンジは魔術を使う異色のヒーロー。西洋の魔法ではなく東洋の魔術という点がポイント。杖をふって呪文を唱えるやつじゃなく、魔法陣を描いて力を放つやつです。魔術を駆使したカッコいい戦闘の連続、男の子だったら絶対マネするだろうなぁ…。似たような感じではあるので『ハリー・ポッター』シリーズファンも楽しめると思います。『ハリー・ポッター』に出てきそうな“可愛い”魔法アイテムも出てくるので要注目です。

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の中だと、スカーレット・ウィッチが魔法的なものを駆使して戦うキャラクターでしたけど、今回は完全な正統派魔法という感じですね。

あとこれは予告動画ではあまり伝わらないと思いますが、想像以上にコミカルです。同じマーベル映画の中だとガーディアンズ・オブ・ギャラクシーぐらいコメディ色が強め。マーベル映画の前作シビル・ウォー キャプテン・アメリカが割とシリアスでしたから、息抜きみたいな感じで楽しむといいでしょう。

ドクター・ストレンジを演じるのは『SHERLOCK(シャーロック)』でブレイクしたあの“ベネディクト・カンバーバッチ”です。クールですでに人気の高い俳優ですけど、今作でさらにブレイクしてしまうのではないかな。彼は結構ギャグも連発するキャラで、『アイアンマン』のトニー・スタークっぽい。ただ、下ネタはないので、子どもにも観せやすいです。幅広い観客にヒットすると思います。

ヒロインを演じるのは“レイチェル・マクアダムス”。救急救命医という役回りですが、しっかり彼女もコミカルな姿も披露。恋愛映画でキャリアを作ってきた彼女ですから、コメディアンヌ的な才能はもちろん持っているのですが、最近は『スポットライト 世紀のスクープ』で社会派ドラマでも名演を披露し、キャリアの幅を広げている印象。もともとのポテンシャルが高いですね。

ただ、個人的に今作のキャスト陣で外せないのは“マッツ・ミケルセン”です。ヴィランとして登場するのですが、素晴らしく多才なデンマークのスターがアメコミ映画に出てくれるのも嬉しいですし、やっぱりカリスマ性があるなと再確認。今後とか全然わからないですけど、なんかこう上手く回りまわって味方になってくれないだろうか…。

あと、“ティルダ・スウィントン”も重要なキャラで登場。彼女は出演映画で毎回かなり奇抜な雰囲気で存在感を放つことが多いのですが、今回は割と大人しめだった気がする。

なお、今回もマーベル映画恒例、エンドクレジットの後にも映像が続きます。ぜひ最後まで観てください。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ドクター・ストレンジ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):自分が全ての医者が…

「マスター・カエシリウス。その儀式は苦しみしかもたらしませんよ」

魔術師のカエシリウスは強大な力を求めて禁忌に手をつけるべく、自分の手を血で汚します。しかし、それを食い止めようとする者がいました。エンシェント・ワン…至高の魔術師「ソーサラー・スプリーム」の称号を持つ別格の才能の持ち主です。カエシリウスはその強力な魔法から逃げ出します。

別の場所。スティーヴン・ストレンジは音楽を聴きながら雑談しつつノリノリで手術をしていました。こんなふざけた姿ですが、腕は一流。天才的な神経外科医で病院でも一目を置かれていました。クリスティーン・パーマーと一緒に、脳死判定されそうだった患者の頭部から銃弾を見事な手つきで摘出。まさに神業です。ただ、口ぶりは傲慢で自信過剰ですが…。

パーマーとは以前は恋人。でも今は同僚関係に戻りました。今夜の神経学会のパーティに来ないかと誘いますが軽くあしらわれます。しょうがないので高級車をかっとばしてひとり会場に向かいます。道中で今度の患者を吟味。自分のキャリアに傷がつく患者を治す気はありません。

しかし、スマホに届いたカルテに目を向けた瞬間、車は道を外れて派手にクラッシュ。ストレンジはガラスの破片を大量に浴びて…。

目が覚めると病院のベッドの上。全身ボロボロ。しかし、最も重傷なのは両手。神経修復はできず、骨にピンを11本入れて、なんとか手を尽くしましたが…。手が再び自由自在に動けるとはどの医者も期待していませんでした。ストレンジは自分で高度な治療方法を提案し、手術させます。けれどもリハビリをしても望んだ劇的な改善の気配は無し。

リハビリのトレーナーに当たり散らすストレンジ。「これほどの神経を損傷しながらリハビリで回復した奴を知っているのか?」「ひとり知っています。下半身不随になった男は急に来なくなった。でも何年かして街で歩いているのを見かけました」「カルテを見せろ」「その傲慢な態度が治るのなら」

「医学の力ではもうどうにもできない」と心配するパーマーにさえも冷たい発言で追い返してしまいます。

そんなある日、例の回復したという人のカルテが送られてきます。その所在を突き止め、会いに行ってみます。「君は絶望の淵から戻った。私も戻ってきたいんだ」

そしてその男は何をしたのかを教えてくれます。「師匠と出会ったんだ。その場所は“カマー・タージ”」

藁にも縋る思いでストレンジはネパールのカトマンズに向かいます。しかし、路地裏で暴行を受けてしまい、すると謎のローブの人間が助けてくれます。「カマー・タージへ行きたいのか?」

ついていくとそこは何の変哲もない扉のある建物。

「ひとつ忠告しておく。常識は全て捨てるんだ」

こうしてストレンジは自分の理解を完全に超えた体験をすることに…。

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漫才の相方はマントです

一言で感想を言えば「なんだかんだで楽しかった!」。これぞアメコミ映画!という感じの王道なつくりだったのではないでしょうか。

最新のVFXで創り出された地形や建造物を自在に操る映像は『ドクター・ストレンジ』の白眉ですが、私は東洋の魔術が気に入りました。なんか『ハリー・ポッター』のせいなのか、「魔法=西洋」というイメージがつきまとう昨今、本作の魔術は新鮮。杖を使う西洋の魔法と違って、魔法陣を描くモーションが入るため、ちょっとカンフーっぽくなるんですね。魔法というかアクションの一種として楽しめました。『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』といい、ハリウッドには東洋ブームがきているんでしょうか。そして、この魔術アクションもワンパターン化することなく、アストラル体での戦闘などバリエーション豊かに楽しませ続けてくれるあたり、よく考えられていました。

こういうのを作り手が恥じることなく、潔く映像化できるのは本当に大切で、良い映画を生むための必須条件。でもあまりにも現実離れしすぎていると、観客の中には冷める人もいます。

そこでこの『ドクター・ストレンジ』が上手いのは、主人公は最初、全く魔術を信じていない設定になっているので、要するにこの映画自体と距離がある観客とシンクロさせているんですね。そんな彼が一生懸命、空に手をぐるぐる回して魔法陣を必死に作る姿を見せることで、観客もこの世界に自然と納得させる。このストーリーテリングはふざけているようで、実はすごく巧みだと思います。

その実は入念に練られた実在感のある魔術アクションにプラスして、マーベル映画の十八番であるコミカルさがいい感じにマッチしていて最高。まさかマントを可愛いと思ってしまうとは…。ここまで年齢低めの子どもでも楽しめるギャグが連発するとは思わなかったです。

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困ったときは魔術?

まあ、観る前からなんとなく頭にあった懸念事項…「魔術なんてなんでもありじゃないの」問題は確かに気にはなりましたが、よくよく考えると神の力や超能力を使えるヒーローがもう「アベンジャーズ」にはいるんですよね。チートな奴が増える一方です。だから、今さらな気も…。ただ、本作の時間巻き戻しはもう使えない、最初で最後の禁じ手にすべきかな。本作一回限りなら私は許せます。それにしても、本作の悪役のカエシリウスやドーマムゥの扱いはちょっと可哀想でしたけど…。このへんはコメディに徹してやや強引に誤魔化した感じでしたね。

まあ、マーベルの世界ではああいうトンデモ級の悪役がゴロゴロ存在するので、その前哨戦としてのチラ見せなのかもしれないですけど。そう考えるとドクター・ストレンジのチートっぷりも今はそう見えるだけで、だんだん大したことのない感じになるのか。

今後どうするのやら。エンドクレジット中に挟まれた映像では、ドクター・ストレンジがソーと語り合ってましたが、相談役という立ち位置になるのかな? 確かにあの血気盛んな「アベンジャーズ」の奴らには、中立的な指導者が必要ですもんね。

次のマーベル映画はガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス。ある意味、ドクター・ストレンジが5人いるようなハチャメチャっぷりなので、こっちも大変だ…。

『ドクター・ストレンジ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 89% Audience 86%
IMDb
7.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
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関連作品紹介

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の作品の感想記事です。

・『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』

作品ポスター・画像 (C)2016 Marvel. All Rights Reserved.  ドクターストレンジ1

以上、『ドクター・ストレンジ』の感想でした。

Doctor Strange (2016) [Japanese Review] 『ドクター・ストレンジ』考察・評価レビュー