恐竜だって平和が好きです…映画『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:オーストラリア(2025年)
日本公開日:2026年8月7日
監督:ルーク・スパーク
ぷりみてぃぶうぉー きょうりゅうせんそう

『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』物語 簡単紹介
『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』感想(ネタバレなし)
恐竜ルネッサンスがベトナム戦争に到来
「恐竜ルネッサンス」という言葉があります。これは1960年代から始まった恐竜に関する科学的見識の劇的な変化を指します。それまで恐竜については「爬虫類のような冷血動物であり、動きも鈍い」との考えかたが主流でした。19世紀の頃から恐竜の子孫が鳥類となったのでは?という指摘もあるにはありましたが、科学界の主流派には受け入れられていませんでした。
しかし、1964年に“ジョン・オストロム”という古生物学者が小型肉食恐竜のデイノニクスの化石を発見し、骨格が鳥類に似ていることを発表。これがきっかけで一気に「恐竜は温血動物で活発に動き回っていた」という説が主流化し始め、研究が活性化しました。
具体的に、恐竜がどう鳥類へと繋がったのかは、最新の知見をまとめた『ダイナソーズ 恐竜の時代』のようなドキュメンタリーを参照してください。
そんなこんなで1960年代は恐竜の科学史を語るうえで欠かせない時代なわけですが、だからといってこんな組み合わせの世界観で攻めてくるとは…。
ということで、本作『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』です。
この映画のコンセプトは単純明快で、「ベトナム戦争の真っ只中、その戦場に恐竜が現る」…以上です。本当にそれだけなので他に説明することもありません。『プラトーン』に『ジュラシック・パーク』をぶち込んで塩コショウで最低限の味つけをしただけのワイルドな料理です。
『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』は手がけたクリエイターがユニークで、それがオーストラリア人の“ルーク・スパーク”。これまで先住民に伝わる怪物を描いた『BILLABONG ビラボン』(2016年)、地球外生命体による侵攻を描いた『オキュペーション -侵略-』(2018年)とその続編の『インベイド』(2020年)、タランティーノ風のクライム・スリラーの『Bring Him To Me』(2023年)、閉所で不気味なモンスターに襲われる『Scurry』(2024年)など、多彩なジャンルを手がけてきました。
そしてアメリカの作家の“イーサン・ペタス”による2017年の小説を2025年に映画化したのが、本作『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』です。
その設定からどうしても「よくあるB級というかZ級と揶揄される低クオリティなやつじゃないの?」と思われやすいですが、“ルーク・スパーク”監督は過去作も含めてそういうチープさは全然なくて、いたって正攻法でしっかり作っているフィルムメーカーです。もちろんハリウッドの大作ほどの莫大な予算はないので、CGはやや平凡ですけど、大雑把なわけではありません。
“ルーク・スパーク”は監督業をする前は、衣装や制作の映画現場での仕事をしていたらしく、よほど映画制作が好きなのか、監督デビューしてからは監督・脚本・製作・編集・美術など兼任するワンマン・クリエイターとしてどっぷり身を捧げているそうです。
この『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』もハリウッドの大手に企画を持ちかけるも断られ続け、それでもめげずに自力で完成にこぎつける根性をみせています。
日本の宣伝では「次世代スピルバーグ」と大仰に銘打っていますけど、“スティーヴン・スピルバーグ”とは作家性は全然違っていて、“ルーク・スパーク”監督はなんというか「自分が満足できるジャンル映画を作りたい!」という、映画好きの中学生の心をそのまま体現するような勢いで突き進んでいる感じが今なおもします。でも破綻せずにそれなりにまとめあげているところをみるに、やっぱり一定の才能はあるのでしょうね。
もうこの『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』は続編も決まっているらしく、“ルーク・スパーク”監督は『Dinosaurs of the Wild West』なる西部劇と恐竜を混ぜ合わせた作品も作ろうとしているようで、すっかり「恐竜の映画監督」になりそうです。
『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
| 基本 | — |
| キッズ | 性的な話題がわずかにあるほか、やや残酷な描写があります。 |
『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
1968年、混迷を極めるベトナム戦争の最中、極秘任務遂行中のグリーンベレー小隊「毒ヘビ部隊(スネークバイト)」は雨が降りしきる夜のジャングルにいました。無線で「犠牲者がでた。もう任務を続行できない」と必死に訴えますが、その途中で隊員の悲鳴が聞こえます。最後のひとりとなった隊員は雷鳴の中、巨大な生物を目にし、持っている銃を乱射しますが…。
現地で村を制圧する米軍のもとに、身分を明かさない人物がやってきて、放射線のドラム缶を調べます。そしてジェリコ大佐はある部隊を招集するように命じます。
その頃、長距離偵察パトロール隊(LRRP)である「ハゲワシ小隊(ヴァルチャー・スクワッド)」は兵でいっぱいの北部の敵地を連携のとれたチームワークで圧倒していました。
チームを指揮するのは隊長のライアン・ベイカー。真面目な副隊長のザビエル・ワイズ、新米無線通信士のレオン・ヴァーン、元空挺騎兵隊員のイーライ・テイラーとチャーリー・ミラー、そして狙撃手のジェラルド・キーズとローガン・ストーバルで構成されています。
今日も任務を終えて帰還しようと思った矢先、ジェリコ大佐からの新しい任務があると言われ、わけもわからずにヘリに乗り込みます。
そしてテントの中で、ジェリコの口から直々に任務の詳細を教えられます。先日、谷で行方不明となった部隊を見つけてこいとのことでした。しかし、その部隊が何をしようとしていたのかは決して明かしてくれません。「極秘」と言い放って、送り出します。ベイカーは怪しいと直感しますが、従うほかありません。
隊員たちにしてみればもう慣れっこです。互いに労わり、ふざけ合い、この過酷な環境で生存してきました。ジェラルド・キーズは戦場での経験ゆえかどこからともなく声が聞こえるらしいローガン・ストーバルの心身を心配します。
夜、ヘリで降ろしてもらい、いざ任務開始。すぐに動物の大きな足跡を発見しました。この地で最大の哺乳類であるゾウではありません。トラでもないです。どうやら鳥にみえ、デカい羽根も落ちていました。しかし、こんな鳥、知りません。
おそらく行方不明の隊の誰かのバックパックを見つけて中のメモに目を通すと、どうやらその部隊は隊員をどんどん失ったようでした。
慎重にジャングルを進み、動物の気配があちこちで感じ取られる中、ベイカーは何かに足を引っ張られ、凄まじい勢いで引きずられます。人間を軽々と引きずるこの力は、野生動物にしては尋常ではありません。
一体このジャングルに何が潜んでいるというのか…。

ここから『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』のネタバレありの感想本文です。
これ、鳥じゃん!
ネタバレありの感想に入る前に、ふと思ったのですけど、1960年代に生きていた人たちって「実物の恐竜」を観たらどんな反応をするのでしょうね…。
前述したとおり、科学界では恐竜ルネッサンスが起こった真っ只中だったので、科学者はともかく一般庶民の間における恐竜に対する認識はマチマチだったのかもしれません。従来のイメージだった「デカい爬虫類」的な鈍い動作の生き物としか思っていない人もまだたくさんいたでしょう。
映画で当時の恐竜認識を探っていくと、1960年の『失われた世界』ではいわゆる「トカゲ特撮」と呼ばれる、本物の爬虫類にトゲなどをくっつけて恐竜にみせながら撮るというやりかたを採用していました(当然動きはのんびり)。1960年の『最後の海底巨獣』や1966年の『恐竜100万年』ではストップモーションを用いているので見た目は恐竜らしいですがその動きはぎこちないです。『ゴジラ』(1954年)だってゆっくり緩慢に歩くわけですから。
1968年を舞台にする『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』は、そんな恐竜認識だった当時の人々に衝撃を与える展開から始まります。
ライアン・ベイカーたちのチームが地上に降り立って最初に目にするのが、まるで鳥のような、でも巨大すぎる足跡。羽すら見つけます。チームみんな「これはどう考えても鳥だろ…(デカいけど)」って思ってます。まさしく恐竜ルネッサンスにおける恐竜のイメージ激変を身をもって味わうことになる…。そう考えると、コミカルな導入ですね。
で、初遭遇する恐竜が恐竜ルネッサンスのきっかけとなるデイノニクスなわけです。全く鈍さなんて欠片もない、すばしっこく俊敏に群れで連携して襲いかかる…。「こ、これが恐竜…!? 全然イメージと違うけど!!」とびっくりしたでしょうね…。
今作ではこのデイノニクスに加えて、より鳥っぽい見た目に描かれているユタラプトルが、立ちはだかる敵対生物のメインとして活躍します。
さらに厳密には恐竜ではなく翼竜ですけど、ケツァルコアトルスまで出現。ケツァルコアトルスは最近も『ジュラシック・ワールド 復活の大地』で暴れていましたが、この『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』では群れで登場し、しかも草原で人間たちをついばみまくるので、より鳥っぽい仕草です。
『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』、実質、“アルフレッド・ヒッチコック”の『鳥』だったのかもしれない…。
ティラノサウルス・ファミリー映画
『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』は、鳥以外だと、ティラノサウルス・レックスの視点ではファミリー映画になっています。
だいぶ擬人的な愛情の描きかたではありますが、終盤のティラノサウルスがソ連基地で暴れまくる展開はこの映画の白眉です。さすがに人間側が弱すぎないかと思わなくもないけど、まあ、ティラノサウルスが満足したならそれでいいか…。
映画全体としては恐竜愛は確かに感じます。恐竜を描くからにはしっかり描こうという作り手の姿勢を受け取りました。
ただ、展開としては大味ではあり、とりあえずカッコいい絵を撮ることに特化し続け、型どおりの流れを突き進みます。“ルーク・スパーク”監督作の中でも最もベタなのじゃないかな?
人間側のドラマも一部のキャラクターを除いてかなり薄味ではありました。チームメンバーも多いほうではあるので、それぞれのキャラを濃く描くほうが、そのキャラが死亡したときの喪失感も観客に響くのですが、感情的な死のシーンを用意しているキャラだけになんとかドラマを盛り込むので精一杯だった感じでした。
でもソフィア・ワグナーなんてなかなかないタイプの女性研究者のキャラでしたけどね。一応は科学者なら恐竜にロマンとか感じるのかなと思いきや、すっかり孤独ですり減ってしまっており、モルヒネで現実逃避するだけになっているという…。
本作は「わ~恐竜だ~! わくわく!」みたいなキャラがほぼいなくて(ほとんど現実思考)、その役割は観客に任せきっているので、そこはストイックな構成でした。
本作においては、『ジュラシック・パーク』みたいに遺伝子実験で恐竜を現代に蘇らせましたとかではないし、『65 シックスティ・ファイブ』みたいに過去を描くものでもないです。粒子加速器によるワームホールで恐竜が過去からタイムスリップして出現したという設定です。
エンドクレジットでは歴史改変SFみたいな余韻を残していましたが、“ルーク・スパーク”監督ならその改変をさらに楽しみに変えることに専念してくれるでしょう。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
以上、『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)SPARKE FILMS PTY LTD ALL RIGHTS RESERVED 2025 プリミティヴウォー プリミティブ・ウォー
Primitive War (2025) [Japanese Review] 『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』考察・評価レビュー
#オーストラリア映画 #ルークスパーク #ベトナム戦争 #恐竜



