パート2の続きは?…映画『デューン 砂の惑星 PART2』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2024年)
日本公開日:2024年3月15日
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
恋愛描写
でゅーん すなのわくせい ぱーとつー
『デューン 砂の惑星 PART2』物語 簡単紹介
『デューン 砂の惑星 PART2』感想(ネタバレなし)
待ってました、パート2!
2024年前半、ハリウッドで先んじて最も訪問者を集めた観光地、それが…「DUNE」。
いや、実際にあの砂の惑星に観光客が押し寄せたわけではないですけど、興行収入という意味では好調のようです。
『デューン 砂の惑星 PART2』の話ですよ。
2021年に“ドゥニ・ヴィルヌーヴ”監督の手で堂々と映像化された『DUNE デューン 砂の惑星』。“フランク・ハーバート”による1960年代の名作SF小説を映画としたものですが、その原作がいかにSF史で重要なのかは、前作の感想でも書いたのでそちらを参照してください。
前作はコロナ禍がまだ猛威を振るっていた頃に劇場公開されたので、客足が最高潮に達するには厳しい状況でしたが、2作目はいよいよ真価を発揮しました。
『デューン 砂の惑星 PART2』は大ヒットということで私もひと安心。こういうマニアックなSFがちゃんと成果を出せると、今後も他の企画が続きやすくなるでしょうし…。
そのヒットは”ティモシー・シャラメ”と”ゼンデイヤ”という若者に熱烈な支持を集める俳優を揃えているというのも後押しになっているでしょう。
でも私は知っている…。二次創作界隈では、このメインの男女カップルだけでなく、あるキャラ同士の男男カップルが流行っていたことを…。まあ、何はともあれ、ファンダムが盛り上がっているのは作品がウケている証拠です。
今回の『デューン 砂の惑星 PART2』は、前作のキャストが引き続き登場するほか、”オースティン・バトラー”、“フローレンス・ピュー”、”レア・セドゥ”などが新規参加しています。
物語は完全に前作から引き続きます。世界観を忘れてしまったら、前作の私の感想記事でも読んで振り返ってみてください。
簡単に言えば、こうです。
- 砂の惑星に来たぞ!
- 急に戦争始まった!
- 先住民と協力しよう!
この単純な3幕を150分以上かけてじっくり描いていたわけで…。ほんと、序盤は砂の惑星を主人公が観光しているようなものだったし…。
続編となる今作は、主人公の運命が大きく動き出します。1作目の印象を覆す展開も待っている…かもしれません。さまざまなキャラクターたちとの関係性が生じながら、壮大な宇宙の歴史の一幕が繰り広げられます。1作目の物語を噛みしめたうえで、この『デューン 砂の惑星 PART2』を楽しんでください。
私は1作目も好きでしたが、2作目はより好きです。テーマがさらに奥深くなっているので…。
2作目も前作と同様に圧巻の映像クオリティです。砂、爆発、砂、爆発、砂、砂…って感じだけども…(目から色彩認識能力が失われる気分になる…)。劇場での大迫力体験がオススメ。
欠点はあれですね、トイレのタイミング。上映時間は前作を10分上回る約165分。長丁場です。幸いか、物語のペースがものすっごくスローなので、中盤だったらいつでもトイレに行っていいんじゃないでしょうか(責任はとれないけど)。
『デューン 砂の惑星 PART2』を観る前のQ&A
A:1作目から物語は直接的に続きますので、『DUNE デューン 砂の惑星』を観ておきましょう。観た人も世界観をおさらいしておくといいです。
オススメ度のチェック
ひとり | :たっぷり堪能 |
友人 | :SFマニア同士で |
恋人 | :興味あれば |
キッズ | :ちょっと長いけど |
『デューン 砂の惑星 PART2』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
メランジという貴重なスパイスが採取できる砂漠の惑星アラキスを治めることになったレト・アトレイデス公爵は、自身の息子ポールや妻のジェシカを連れ立って、そのアラキスに降り立ちました。しかし、宿敵だったハルコンネン家の策略によって、レトは殺され、ポールとジェシカも逃亡の身となりました。逃げた先で出会ったのは、この星の先住民であるフレメン。広大な砂漠で生き抜くには彼らの知恵を借りるしかありません。
フレメンの部族長であるスティルガーは、一部の民を率いて、ハルコンネン家の部隊に奇襲をかけ、抵抗していました。フレメンは先住民から「シャイ=フルード」と呼ばれている砂漠を移動する巨大な砂虫を活用し、ハルコンネン家の部隊を翻弄したりもします。
現在、ハルコンネン家の勢力はハルコンネン男爵の甥であるラッバーンが率いており、北の都市を根城としています。惑星の南は砂嵐で生存不可能とみなし、支配の管轄外でした。
ポールとジェシカもこの抵抗に参加し、フレメンたちのサバイバル術を学んでいました。フレメンたちは水を何よりも尊び、敵の死体からも水分を回収します。そして仲間の死体からの水は神聖な場所に保管し、手をつけません。
フレメンたちの隠れ家につくと、異なる反応で出迎えられます。あるフレメンたちはポールを異端のよそ者として敵視します。一方、別のフレメンたちは「リサーン・アル=ガイブ(マフディー)」という古くから語り継がれる予言の救世主としてポールに期待していました。スティルガーもまたポールの素養を見抜き、救世主の可能性を信じ始めていました。
問題はジェシカです。フレメンたちの話し合いの結果、この地の教母は老いているため、ベネ・ゲセリットのジェシカを新しい教母にすることになりました。
そのための儀式として、「命の水」を神聖視される砂虫の血をジェシカは飲むことになります。透きとおった青い液体ですが、普通は有毒。それを口にして生き残れば教母としての地位を獲得します。ジェシカはこれを無事にこなし、未来と過去を幻視しました。同時にお腹の子と対話できるようにもなりました。
ジェシカは信仰を頼りに、ポールを救世主として確かなものにするべく、息子に囁きます。しかし、ポールはあくまで戦士としてフレメンと仲間になりたいようでした。
そこでジェシカはまずはより信仰深い原理主義者が多い南で匿ってもらうことにし、フレメンたちのコミュニティを掌握していきます。
一方、ポールはフレメンたちとハルコンネン家の部隊との戦闘を重ね、着実に成果をあげていきます。さらに砂虫も乗りこなすことに成功し、支持を集めます。
いつしかポールはフレメンたちに受け入れられ、ウスール・ムアディブというフレメンらしい名前まで授かるようになりました。
戦いの中、ポールはフレメンのチャニと親しくなってもいきます。2人は愛し合い、互いを支え合う仲となりました。
ポールは以前から見ていた未来視を継続して体験しており、それは自分が南に行くと大勢が命を落とすという内容になっており、密かに恐れていました。
その頃、宇宙で絶大な権力を有する皇帝は、皇女イルーランの進言もあり、ハルコンネン家の暴虐なやりかたではない別の道を模索し出していました。対するハルコンネン男爵はこのままでは用済みになると危機感を持ち、危険すぎて手が付けられなかった甥のフェイド=ラウサを使うことに決め、このフェイド=ラウサをアラキスの地へ送り込みます。
砂の地で己の未来に迷うポールは一体どの運命を選ぶのか…。
救世主の覚醒は喜ぶべきことか?
ここから『デューン 砂の惑星 PART2』のネタバレありの感想本文です。
『デューン 砂の惑星 PART2』は、皇帝の娘イルーラン(演じるのは“フローレンス・ピュー”)の語りで始まり、これが壮大な歴史の1ページにすぎないことをあらためて観客に示唆します。
これはこのシリーズで最も大事な部分のひとつで、本シリーズは『スター・ウォーズ』みたいな主人公を中心になすエンタメではありません。あくまで本作のポールは歴史上の人物にすぎず、それ以上の意味はないです。なのでどこかストーリーテリングにおいてポールを客観視するような描かれ方になっており、それは物語が進むにつれて強まり、最後に別のキャラクターの視点になることで、その仕掛けが頂点に達します。
2作目の本作ではいよいよポールがフレメンたちの間で「救世主となるのか」という運命に向き合います。原作からして典型的な白人救世主な貴種流離譚なのですが、“ドゥニ・ヴィルヌーヴ”監督版はかなりそれに批判的なアプローチをとっていたと思います。
まず序盤からポールは救世主というのがベネ・ゲセリットのプロパガンダだと自覚しています。ベネ・ゲセリットはこの宇宙レベルの公家の封建制を実は裏で操っており、言ってしまえば諜報組織みたいなものです。
ポールは当初はこのプロパガンダに抗っており、フレメンと対等な関係を構築しようとしていました。フレメンたちも破壊工作のプロフェッショナルであると同時に、すごくアットホームにも描かれていて、良かったです。今作の”ハビエル・バルデム”演じるスティルガーの気さくな感じがいいですよね。ポールはおじさんに可愛がられる子なんだな…。
一方、ポールの母であるジェシカは早々に運命を知り、救世主プロパガンダに心血を注ぐことに…。原理主義に取り入り、弱い者の心を懐柔して…という手口がやけにリアルで怖いです。
前半は若く血気盛んなレジスタンスと、その合間にチャニとのロマンスがあって、なんとも大学っぽいノリがあるような…。
しかし、ポールが救世主として確実に崇められていくと、しだいに不穏な空気に…。本当に救世主が世界を救うという短絡的な考え方でよいのか。信仰というものにメスを入れる物語のセンスはさすが『灼熱の魂』や『プリズナーズ』を作った”ドゥニ・ヴィルヌーヴ”監督らしさです。
そして終盤に追いうちの真実。ジェシカはハルコンネン男爵の娘であり、つまりポールもまたハルコンネン家の血を受け継ぐ者でした。ハルコンネン家の人たち、みんな頭がツルツルだから、まさか自分が…って思っただろうな…。
完全に現実に打ちのめされ開き直ったポールは救世主スタイルへと遠慮なく傾き、最後は祖父であるハルコンネン男爵を刺し殺し、フェイド=ラウサとの決闘に打ち勝ち、皇帝を屈服させ、自分が新皇帝へと上り詰めます。イルーランとの政略結婚も即決するほどに心を冷たくして…。核兵器まで駆使して…。自分はプロパガンダにハマるわけないと思っていた若者が、まんまとその術中に陥る…ありそうな風景です。
このだんだんと影を深めていく“ティモシー・シャラメ”の演技がまた見ごたえありました。
原作の改変が素晴らしい
『デューン 砂の惑星 PART2』は前作で描ききれなかった原作1巻の残りをメインに描きつつ、原作2巻の要素もドッキングしています。原作1巻と原作2巻は時間軸がかなり違うのですが、今回の映画ではそれを荒業で対処してました。
とくに印象的なのが、ジェシカのお腹の子です。妹と紹介されていましたが、原作ではアリアという名前です。原作ではアリアは生まれて幼いながらも大人の思考を持つ特殊な子として描かれます。それを今回の映画では胎児の頃から母とテレパシーで対話できるという設定に大胆に変更。まだ産まれてもいないのに、饒舌に物語に介入していきます。
ファンから人気が高いアリアでしたが、映画では“アニャ・テイラー=ジョイ”演じる成長した姿が一瞬映るというオマケ程度。次回作への期待を煽る…。まあ、“アニャ・テイラー=ジョイ”は別の映画で砂漠を爆走するからね…うん…。
それと、アリアとハルコンネン男爵のあの原作のシーンを映像でみたかったという原作ファンの気持ちもわかります…。これこそ映像化が厳しそうだけども。
そのハルコンネン男爵ですが、今回はフェイド=ラウサも登場して、ハルコンネン・ファミリーが揃いました。もともとこの原作のハルコンネン家は原作者がホモフォビアということもあってか、ステレオタイプなゲイのネガティブ表象で色濃く構成されていたのですが、”ドゥニ・ヴィルヌーヴ”監督版はもっとキャラクターとして素直に魅力的になっていたのではないかな、と。
”オースティン・バトラー”演じるフェイド=ラウサなんて、かなり良かったですよ。ソシオパスだけど愛嬌ある感じがでてたし、絶対、ポールとの二次創作カップリングが流行りそうだなと思いながら観てた…。ちなみにフェイド=ラウサがハルコンネン男爵に一瞬キスするシーン、あれは”オースティン・バトラー”のアドリブらしいです。
ただ、やっぱり最後に印象を持っていくのは、チャニを演じた“ゼンデイヤ”。この”ドゥニ・ヴィルヌーヴ”監督版はチャニがもうひとりの主人公でしたよ。明らかに家父長的な権力支配構造に嫌悪感を示すキャラクターとして、観客の共感性を引き継ぐ存在ですから。ラストの決闘後のチャニが立ったままで決定的な物語視点の変更が起きる演出はたまらないです。原作ではもっとポールに忠実なのですが、この大幅改変は大正解で、これがあってあのチャニの視点での幕引きになっているからこそ、「もっとこの歴史の続きを観たい!」と思わせますよね。
ということで、早く、早く「PART3(パート3)」を…!
”ドゥニ・ヴィルヌーヴ”監督としては一旦休憩するみたいですが、でも3作目を作りたいという意欲はあるそうで、2作目の成績も良いので、これは期待大。3作目はこの感じだと原作2巻と原作3巻を合わせて映像化するのかな…。私は原作3巻が一番好きなんだけど、楽しみ…。これだけ脚色に手ごたえあれば、次もさらに進んだ展開を見せてくれることでしょう。
そんな次の映画を待ちわびつつ、私も砂虫を乗りこなせるようにしておこう…。どこにいるかな…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 93% Audience 95%
IMDb
8.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)2023 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved デューン2 DUNE2
以上、『デューン 砂の惑星 PART2』の感想でした。
Dune: Part Two (2024) [Japanese Review] 『デューン 砂の惑星 PART2』考察・評価レビュー