気が済むんですか?…映画『ジュラシック・ワールド 復活の大地』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2025年8月8日
監督:ギャレス・エドワーズ
じゅらしっくわーるど ふっかつのだいち
『ジュラシック・ワールド 復活の大地』物語 簡単紹介
『ジュラシック・ワールド 復活の大地』感想(ネタバレなし)
何度目のリバース?
恐竜? え? あれ? そこらへんにいない?
もはや映画の世界では恐竜は絶滅した大昔の生き物ではありません。あまりにも何度も蘇っているので…。
だいたいは『ジュラシック・パーク』のフランチャイズのせいです。
1993年の“スティーブン・スピルバーグ”監督の『ジュラシック・パーク』、2作目の『ロスト・ワールド ジュラシック・パーク』(1997年)、3作目の『ジュラシックパークIII』(2001年)、さらに2015年に過去の3部作から物語を受け継ぐ続編にして新たな1作である『ジュラシック・ワールド』が始まり、『ジュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年)、『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』(2022年)と新3部作も一応は完結しました。
でもこの儲かるフランチャイズをここで終わらせるわけもなく…。ユニバーサル・ピクチャーズは作中の「恐竜で儲ける大企業」と同じ思考で再び映画化を始動させたのでした。
ということで本作『ジュラシック・ワールド 復活の大地』です。
相変わらず邦題のサブタイトルがポケモンカードの拡張パックみたいなネーミングをしやがって…。原題は「Jurassic World Rebirth」です。
今作『ジュラシック・ワールド 復活の大地』は「ワールド」とこれまでの名称を受け継いでいますが、世界規模の物語はなっていません。初期の3部作に舞い戻って、また「島」が舞台です。と言ってもまた観光エリアを開業するわけではなく、恐竜のいる島にある目的で主人公たちが立ち入ることになる…『ロスト・ワールド ジュラシック・パーク』や『ジュラシックパークIII』と同じスタイルですね。どっちかというと「ジュラシック・パーク4」って感じです。
そして『ジュラシック・ワールド 復活の大地』は時系列としては『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』から5年後ということになっていますが、過去作の人物が一切登場せず、完全に新規のキャラクターだけで始まります。
そのため、時系列は繋がりつつもほぼリブートっぽい新作と言えるでしょう。雰囲気リブートです。雰囲気だけね。
脚本には『ジュラシック・パーク』と『ロスト・ワールド ジュラシック・パーク』を手がけた“デヴィッド・コープ”がカムバックし、確かに初期っぽい感じのプロットになってます。
そんな『ジュラシック・ワールド 復活の大地』で監督に抜擢されたのは、“ギャレス・エドワーズ”。『ゴジラ』もやって『スター・ウォーズ』もやって、ついには『ジュラシック・パーク』までやるのか…。
俳優陣は、主役に『ブラック・ウィドウ』の“スカーレット・ヨハンソン”、『ウィキッド ふたりの魔女』の“ジョナサン・ベイリー”、『終わらない週末』の“マハーシャラ・アリ”が並びます。“ジョナサン・ベイリー”はハンサム草食系科学者を熱演しており、こういうタイプの研究者はこれまでのシリーズにはいなかったかな?
共演は、『コンパニオン』の“ルパート・フレンド”、『ペドロ・パラモ』の“マヌエル・ガルシア=ルルフォ”、ドラマ『MANIFEST/マニフェスト』の“ルナ・ブレイズ”、『フィアー・ストリート プロムクイーン』の“デヴィッド・アイアコノ”など。
これが初めてのシリーズ未見という人でも『ジュラシック・ワールド 復活の大地』から鑑賞しても大丈夫です。
『ジュラシック・ワールド 復活の大地』を観る前のQ&A
A:とくにありません。過去作との繋がりはわずかです。
鑑賞の案内チェック
基本 | — |
キッズ | やや千切れた腕が映りますが、些細な扱いです。 |
『ジュラシック・ワールド 復活の大地』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
17年前。ヘリがある孤島に出入りしています。この熱帯雨林に囲まれた場所にはインジェン社の秘密の研究所がありました。インジェン社はバイオエンジニアリングによって大昔に絶滅した恐竜を蘇らせることを実現していました。
この研究所では遺伝子組み換えによる突然変異の恐竜を創出する研究に取り組んでおり、厳重な防護スーツに身を包んだスタッフが「D-REX」と書かれた区画に入ります。しかし、お菓子のごみの袋がドアの隙間に入り込み、システムが異常を警告。焦ったスタッフは非常事態の対応に移行します。
しかし、その生み出された恐竜のうちの1体がスタッフを襲い…。
現在。インジェン社を買収したマスラニ・グローバル社がイスラ・ヌブラル島にて恐竜のテーマパーク「ジュラシック・ワールド」を開業したものの、恐竜がコントロール不能となって大量に逃げ出し、闇取引のせいもあって世界中に拡散した事件から8年が経過。
恐竜たちは一旦は世界に散らばりましたが、地球の気候は恐竜の長期的な生存に適さなかったようで、恐竜たちは赤道付近の地域に生息するにとどまっていました。
ある製薬会社の幹部であるマーティン・クレブスは特定の何体かの恐竜種の生体サンプルを欲していました。新たな治療法の鍵であり、手に入れば莫大な利益となるからです。
けれども恐竜がいるのは特定の孤島に限られます。そこで元軍の秘密工作員であるゾーラ・ベネットに密かに依頼することにしました。古生物学者のヘンリー・ルーミス博士を護衛しながら、ターゲットの恐竜からのサンプル採取を支援する任務です。
必要なサンプルは、モササウルス、ティタノサウルス、ケツァルコアトルスの3体。いずれも一筋縄ではいかない大物です。
とりあえずスリナムの酒場で、ゾーラの長年の友人であるダンカン・キンケイドを探検隊の隊長に抜擢し、キンケイドの勧めで、船頭のルクレール、傭兵のニーナ、そして警備主任のボビー・アトウォーターを引き入れ、チームを結成します。
その頃、例の孤島の周囲を小型船で呑気に周遊していた一組の家族がいました。ルーベン・デルガド、その娘テレサと幼いイザベラ、そしてテレサのボーイフレンドであるザビエルです。
そのあたりの海域には巨大なモササウルスがいて…。
テンプレ化した「ジュラシック・パーク」ムード

ここから『ジュラシック・ワールド 復活の大地』のネタバレありの感想本文です。
何の反省もしないことに定評のあるこのフランチャイズ世界の人類たち。『ジュラシック・ワールド 復活の大地』も性懲りもなく同じ過ちを繰り返し続けます。
今作はあの島に立ち入る目的として、ブラックオプス(公にされない極秘任務)っぽさがより増していますが、愚かな製薬会社の儲け主義だったり、デルガド・ファミリーの遭難漂流の導入だったりと、なんだかんだで初期の『ジュラシック・パーク」シリーズと同じ光景です。
ただ、それにしたって今回はビデオゲームのおつかいクエストイベント感が濃かったなぁ…。最近の『モンスターハンター』ゲームをプレイしたばかりの人には既視感がありすぎるんじゃないか…。
「モササウルス」「ティタノサウルス」「ケツァルコアトルス」の3体のDNAサンプルをとってこい!という…理屈もクソもない、大雑把な内容。いや、恐竜(モササウルスとケツァルコアトルスは厳密には恐竜じゃないですけど)と心臓病とかを結びつける理由づけはわからないでもないけど、凄まじくざっくりしたこじつけだ…。
そもそも恐竜を蘇らせる技術があるなら、わざわざ現地で生体サンプルを入手せずとも、どうとでもなるんじゃないかっていうツッコミもできますが、真面目に考えてはいけないのがこのシリーズのルール。コメディだと思うしかありません。
しかし、コメディだと強引に納得するにしても今回のプロットはもはや公式パロディになりかけているのではと懸念を禁じ得なかったですよ。
前作の感想でもいろいろ不満を書きました。あまりに類型的すぎるストーリーやキャラクターに成り下がっていて、恐竜の無駄遣いのような感じだったのは今も前作に対して思うところです。
今回の『ジュラシック・ワールド 復活の大地』は、このシリーズがもうテンプレ化した『ジュラシック・パーク』ムードを漂わせていればいいと、振り切れてしまったことをハッキリ証明してしまったような映画だったと思います。
さっきも書いたようにいかにも『ジュラシック・パーク』な導入に始まり、要所要所でおなじみのテーマ曲を流してエモーショナルなノスタルジーを喚起させておけば、はい、完成。これでいいだろ?と言わんばかりの既製品。これを伝統の味と呼ぶか、大量生産化された味と呼ぶかは、人それぞれではありますけども…。
例えば、あのヘンリー・ルーミス博士がティタノサウルスの群れに遭遇して(すごく雰囲気だけの求愛をしている)、足元まで行って体表に触れて感極まるというこのシリーズの毎度の感動シーンがあります。でも1作目のまだ誰も恐竜を生で見たことがない『ジュラシック・パーク』のときや、一般人が初めて恐竜を観ることができた4作目の『ジュラシック・ワールド』のときなら、その演出も響きますよ。しかし、今回はどうなんだ、と。もう散々世界中に恐竜が知れ渡って、あちこちにいた状況を経験している世代なんですから、ああいう感動演出はちょっと白々しいんじゃないか。
あと、リアルなフィールドワーク研究者は野外では時間が大事だとわかっているので、感傷に浸らないでテキパキと作業するものですからね。わりと動物相手にドライなのが研究者です。
もちろん良かったシーンも部分的にはありました。
モササウルスとの水上での駆け引きからのスピノサウルスの群れに海で襲われる展開とかは、非常にパニック映画らしい悪化っぷりですし、デルガド家とティラノサウルスの川下りイベントは微笑ましいし…(Tレックス、もう犬だよ…)。それにしても今作ですっかりケツァルコアトルスはヒトを食うイメージがついちゃったな…(新たな偏見の始まりである)。
人間側だと“スカーレット・ヨハンソン”演じるゾーラの女性表象は良かったです(前作のメイン女性がアレだったのもあるので…)。
ミュータドン!?
上記で苦言を呈した「ジュラシック・パーク」量産ブランド化の弊害はさておくとしても、『ジュラシック・ワールド 復活の大地』はシリーズとして一線を越え切ったなと思う最大の箇所がありました。もう何のことかは観賞済みの人は重々承知だと思います。アイツです。
今作ではプロダクトプレイスメントで始まる(えぇ?!)研究所パニックが冒頭にありますが、本筋と全然関係ないわりには、終盤でビッグイベントとして出番がやってきます。
これまでもこのフランチャイズはこういう要素は無かったわけではありませんでしたよ。遺伝子組み換え恐竜は初期3部作から言及があり、「ワールド」3部作は完全に人工的な新種の狂暴な恐竜を「観光の見世物」のために作り上げていました。
で、今回はヴェロキラプトルに翼竜の翼をくっつけた奴らがうじゃうじゃ出現しますが、まあ、これはまだいいですよ。問題は「Distortus rex」と学名がつけられているあのラスボス感満載の巨大恐竜ですよ。
誰が観てもわかるとおり、恐竜というか怪獣です。絶対にこのまま放置するとさらに巨大化して光線を吐くようになりますよ。
『ジュラシック・パーク』フランチャイズは「モンスターバース」と同じ方向性でいくつもりなのか? ゴジラやコングみたいな怪獣大乱闘路線に?
これは「リバース(rebirth)」じゃなくて「リチェンジ(rechange)」ですね。フランチャイズのリアリティとフィクションのバランスと質を完全に別軸に書き換えるもの…。
私は前作からずっと言ってますけど、「ミュータント恐竜は怪物で、本来の恐竜は尊い野生動物」みたいな構図にして、“倒され役”の恐竜を設定するのはあまり好きじゃないです。でもミュータント恐竜を安易に人類のお友達にするのもご都合良すぎます。
もっと言えば、このシリーズの原点はすごく繊細な倫理的問いかけが土台にあるものであり、それを崩してしまうと、単に恐竜が暴れているだけの大味なパニック・ムービーでしかない代物になります。ここ最近の続編は生命倫理を問う原点をすっかり失っています。
『ジュラシック・ワールド 復活の大地』の続編があるのかは知りませんけど(スタジオは絶対に作りたがるけど)、いよいよテンプレ化した『ジュラシック・パーク』ムードを漂わせるワンパターン手法は次は通用しないでしょう。さすがにあの怪獣の背景にあのテーマ曲を流すのはミスマッチすぎます。
このあまりに収拾のつかないほどに飛躍しまくった世界をコントロールできるのか、不安で仕方ありません…。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
作品ポスター・画像 (C)2025 Universal Studios. All Rights Reserved. ジュラシックワールド リバース
以上、『ジュラシック・ワールド 復活の大地』の感想でした。
Jurassic World Rebirth (2025) [Japanese Review] 『ジュラシック・ワールド 復活の大地』考察・評価レビュー
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