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『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』感想(ネタバレ)…ティガーだよね?

プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち

ティガーだよね?…映画『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Winnie-the-Pooh: Blood and Honey 2
製作国:イギリス(2024年)
日本公開日:2024年8月9日
監督:リース・フレイク=ウォーターフィールド
自死・自傷描写 ゴア描写
プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち

ぷーつー
『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』のポスター。登場する4体が映るデザイン。

『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』物語 簡単紹介

幼い頃の思い出の仲間だと思っていた愛すべき存在たちが牙をむき、惨劇を体験することになったクリストファー・ロビン。辛くも生き延びることはできたが、心には大きなトラウマを負っていた。少年時代を過ごしたアッシュダウンの町に戻り、再出発のために自身を労わっていたものの、そんなロビンの前にまたしても恐怖が迫る。あのプーと邪悪な仲間たちは、さらなる餌食を求めていた。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』の感想です。

『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』感想(ネタバレなし)

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「Poohniverse」? それに「TCU」だと?

複数の映画で世界観やキャラクターを共有する「シェアード・ユニバース」。最初から失敗することもあれば、途中から失速することもある。思いつくのは簡単でも、やるとなるととても難しいビッグ・プロジェクトです。

そんな中、最も死臭を漂わせる「シェアード・ユニバース」が誕生しつつあります。

2023年に劇場公開された”リース・フレイク=ウォーターフィールド”監督の『プー あくまのくまさん』。“A・A・ミルン”の「くまのプーさん」の著作権が最初の出版から95年が経過したため2021年末に切れたことで、堂々と参上したこのスラッシャー映画は、そのタイムリーな話題性を獲得し、低予算だからこその利益回収率で成功しました。

そして早々と1年後の2024年に2作目となる続編が登場です。

それが本作『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』

ただ、続編では終わりません。話が壮大になってきました。すっかり味をしめたのか、シェアード・ユニバース化に勢いで着手し始めました。

当初は「くまのプーさん」のコンテンツだけでしたが、他の名作童話にも次々と手を伸ばしました。最初は「Poohniverse(プーニバース)」なんて言ってましたが、正式には「Twisted Childhood Universe(TCU)」という名称にしたようです。

2024年には「ピーターパン」を元ネタにした『Peter Pan’s Neverland Nightmare』、2025年には「バンビ」を元ネタにした『Bambi: The Reckoning』「ピノキオ」を元ネタにした『Pinocchio: Unstrung』、キャラクターが結集する『Poohniverse: Monsters Assemble』、2026年には「くまのプーさん」ネタのシリーズの3作目となる『Winnie-the-Pooh: Blood and Honey 3』、さらに「眠れる森の美女」「白雪姫」をネタにした映画も企画中。

恥も外聞もかなぐり捨てて手当たり次第という感じですね。

まあ、これらが全て企画どおりにいくかはわかりませんし、とりあえず2作目の『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』の話をしましょうか。

1作目は話題性ありきで飛びついた人もいるでしょう。でもハッキリ言います。2作目まで観る人は物好きなバカです。ええ、私のことです。

『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』(この邦題ももはや可愛げでも皮肉でもなくアホっぽさしかでていない)は、1作目と地続きの続編。ストーリーも繋がっています。

今作では予算が5倍に増え、製作費のおかげで前作よりも少しだけリッチな映画作りになっていますが、雰囲気はほぼ同じ。安心してください。チープです。Z級映画が好きだという好事家をガッカリはさせません。

監督は前作と同じくこの企画の立案者である”リース・フレイク=ウォーターフィールド”。でもやっぱり脚本はもうちょっと別の人にやってもらおうと思ったのか、今回は『サマー・オブ・84』”マット・レスリー”が手がけています。

『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』を一緒に観て、腐臭を漂わす仲間になりませんか? その結果どうなるかは責任を持ちません。

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『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』を観る前のQ&A

Q:『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:キャラクターが前作から引き継いでいるので、1作目を鑑賞しておくとよいです。ただし、同じキャラでも出演俳優やデザインは変わっているので注意。
✔『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』の見どころ
★全然ティガーではないティガー。
★オウルのわずかなフクロウとしての生態。
✔『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』の欠点
☆シェアード・ユニバースとしての将来的面白さに欠ける。

オススメ度のチェック

ひとり 3.0:前作が好きなら
友人 3.0:物好きな友達と
恋人 2.5:趣味に合うなら
キッズ 1.0:とても残酷です
↓ここからネタバレが含まれます↓

『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(前半)

とある場所にある「100エーカーの森」アッシュダウンの町の近くにあるこの森には、ある恐ろしい存在が棲みついていました。人はその存在を知らずにいましたが、ある日、事件が起こります。この森で数人が無惨に殺されたのです。世間はこの事件を「100エーカーの森の大虐殺」として報じましたが、犯人までは詳細に暴けず、真相は藪の中。多くの噂だけが広まっていました。

そんな森で、電球で装飾されたキャンピングカーで3人の大学生の女が死者の霊に呼びかける儀式をしていました。肝試しのノリです。

ところが、急に車が揺れます。そのとき、外からの一撃でひとりが串刺しになり、あっという間に絶命。さらにキャンピングカーは横倒しになり、激しく出火します。もうひとりは炎上する車内で燃え、這い出たところで丸太で潰されます。最後のひとりは一本ずつ手足をボキボキに折られ、頭部をトラバサミで粉砕されてしまいました。

容赦なく襲いかかったのは、プー、ピグレット、オウルの3体。この100エーカーの森の虐殺者の正体です。

警察の捜査が行われる中、先走る3人組の男が猟銃を手に100エーカーの森へ。待ち受けるプーたちと対峙することになり、またしても圧倒的なパワーで人間を惨殺。ピグレットも死亡しますが、プーたちはこれを機に、森に留まるだけでなく、人間たちのエリアに積極的に攻めていくことを考えだします。

一方、クリストファー・ロビンは追い詰められていました。実はクリストファーはまだ子どもだった頃、100エーカーの森でプーたちと出会い、友達になって遊んでいました。あのときはプーも普通に見えました。けれども疎遠になり、大人になって戻ってきたとき、プーは自分に牙をむけました。

その恐怖の体験が今も脳裏に焼き付いています。しかし、世間は信じてくれません。それどころか、自分が殺人鬼であるという事実無根の噂を流され、孤立していました。クリストファーは医者の仕事も続けられなくなってしまいます。そこに見るも無残な半死半生の人が運び込まれてきます。きっとプーがやったに違いない…そう確信します。

今のクリストファーには両親のアランとダフネ、幼い妹のバニーがいます。この最後の居場所である家庭を大切にしたいと思っていました。

ときおり、クリストファーは催眠療法士のカウンセラーを受けていますが、双子のビリーが幼少期に誘拐されて行方不明になったトラウマが悪夢として離れません。

ある日、捜査を続けていた警察がプーの住居を発見し、侵入。人間のバラバラな部位が無造作に並んでいるのを見つけ、事態の深刻さを実感します。

クリストファーも恐怖を乗り越えようと、病室にいるプーの殺傷から生存した人に話を聞きに行きます。しかし、そこで清掃員のキャベンディッシュという人物を見かけ、昔の記憶が蘇ります。

あの人はビリーの誘拐時に車に乗っていた人間ではないだろうか…。

そこから恐ろしい真実が浮かび上がってくることに…。

この『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/08/10に更新されています。
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ティガー? オウル?

ここから『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』のネタバレありの感想本文です。

『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』は先ほども書いたように製作費が倍増しました(実際の製作費は50万ドルとのことですが、たぶん広告費などもいれるともっとかかっていると思います)。そのおかげが、一部のビジュアル造形は見違えるように良くなっています

まず冒頭のキャンピングカーの3人を八つ裂きにするお披露目パート。ここだけでも、前作一本分を上回る出来栄えじゃないかな。豪快に殺してくれますし、ひとつひとつの殺害もじっくり描いて、ロケーションの使い方もいいです。

そしてウィニー・ザ・プーたちの造形が本当にクオリティアップしました。前回はどうしても「頑張って作りました!」というお手製っぽさがありましたけど、今作では「どうですか!」と言わんばかりに自信をもって顔のアップになったりしますからね。

面白いのは、1作目の映像が今回の2作目では事件の再現映像として流れていること。つまり、前作はそういう扱いになったも同然。1作目のクオリティの低さや、演じている俳優の違い(今回はクリストファーを”スコット・チェンバース”が演じている)といった大人の事情を、こうやって説明づけているわけです。この解決方法はちょっと『スクリーム』みたいなメタな片付け方ですね。

とまあ、褒めはしましたけど、造形のクオリティが向上しても「くまのプーさん」からはやはり離れていくばかりで、もう「くまのプーさん」のパロディとしての立ち位置も限りなくオマケに近いです。

一応、「くまのプーさん」のおなじみののシーンはありましたね。流れているのはバラバラな手足だけども。

1作目との違いで、キャラクター面で目立ったのは、とくに今作で大きな出番が増えた2体。

ひとつ目は、ティガーですが、これはティガーなのか?ってくらいにティガーらしさ皆無です。というかトラかどうかも判断できない…。ティガーの初登場作が1926年のパブリックドメインになった原作ではなく、その続編の作品からだったために、1作目には登場できなかったらしいですけど、このデザインなら別に著作権の問題もないのでは?と思わなくもない。

二つ目は、オウル。翼があるという明らかに造形の難易度が一段階上になるキャラですが、まあ、こういうデザインに落ち着くよね…。なんかこういうウルトラ怪獣か仮面ライダーの怪人、いた気がする…。フクロウのペレットを吐く習性のように今作のオウルもゲボゲボします。

そんなオリジナルとは似ても似つかぬ2体なので、新しくオリジナルからキャラ追加で充実したのに原作からは遠ざかっていくという現象を後押しましたよ。

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シェアード・ユニバースが心配になる

『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』の前作からの他の改良点を挙げるなら、クリストファー・ロビンを主体にした物語が展開されることです。前作はよくわからんガールたちが惨劇に遭っているのが大部分だったので…。

相変わらず不憫な今作のクリストファー。今作ではそんな彼のメンタルを「くまのプーさんのホームランダービー」でフルボッコにするくらいに追い打ちをかけます。

あのプーたちの正体が判明し、なんとマッドサイエンティストだったらしいアーサー・ギャラップ博士によって誘拐された子どもが動物融合実験に利用されて生まれたハイブリッド・モンスターなのでした。しかも、その死体が100エーカーの森に埋められ、蘇ったゾンビ状態。それはもう死なないや…。

だとしたら前作の「森に残された生き物たちは飢え、イーヨーを殺して食べて、変わり果てました」という設定はなんだったんだ…。イーヨー、食べられる必要はなかったんじゃないか…。

しかし、これで終わらず、プーは実はクリストファーの双子のビリーであると判明。ビリー、熊と相性良かったのかな…。

結局、両親を殺されつつ、なんとかプーと対峙し、変貌しきってしまった亡きビリーの苦しみを終わらせるべく、その頭に斧を振り下ろすのでした。頭部粉砕したらハチミツが噴出したらどうしようと思ったけど、そんなマヌケな演出はなかった…。

もちろんあんな出自なら当然いくらでも自己再生できるわけで、この「くまのプーさん」に「めでたしめでたし」はありそうにありません。

エンディングでは他の童話のおどろおどろしい挿絵をどんどん映し出し、シェアード・ユニバースをやるぞ!と意気込んでいました。

ただ、本作を観て、このフランチャイズはシェアード・ユニバースをやって本当に魅力的になるのか、ちょっと心配にもなりました。というのも、今作でも「くまのプーさん」の範囲内でキャラクターが追加されましたけど、キャラが増えても面白さが増えたわけではなかったので…。この映画にはキャラクター同士の掛け合いの面白さが1ミリもないです。今回も凄いぎこちない会話しかしてないしなぁ…。

要はどういうキャラが増えてもやることは「残酷に人を殺す」という一辺倒なので容易にワンパターン化します。

今後に新作がでますが、そのときは『ハロウィン』的なスラッシャー映画ではない、違うサブジャンルにして、組み合わせると予想外のことが起きそうなハラハラドキドキが欲しいですね。

プーも次は身長が3mくらいに巨大化してもいいです。熊なんだからそれくらいデカくなれるだろう(強引な期待)。

『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』
シネマンドレイクの個人的評価
3.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

作品ポスター・画像 (C)2024 ITN DISTRIBUTION, INC. ALL RIGHTS RESERVED. ブラッド・アンド・ハニー2

以上、『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』の感想でした。

Winnie-the-Pooh: Blood and Honey 2 (2024) [Japanese Review] 『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』考察・評価レビュー
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