PART2です…映画『ウィキッド2 永遠の約束』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2026年3月6日
監督:ジョン・M・チュウ
人種差別描写 恋愛描写
うぃきっど えいえんのやくそく

『ウィキッド 永遠の約束』物語 簡単紹介
『ウィキッド 永遠の約束』感想(ネタバレなし)
ウィキッド2の日本到来
次は日本全国の天気予報です。日本列島では冬の寒さが残るものの、下旬には春の兆しが見え始めます。そして、ウィキッド前線が3か月半遅れで到来し、各地に魔法を降らせるでしょう。「権力女性」注意報は警報に切り替わる可能性が高く、引き続き注意が必要です。また、体験したことのない竜巻の発生で、家が吹き飛ぶ可能性もあるので、外出の際は上空から家が落ちてこないかを警戒してください。
ということで…2026年3月が日本では『ウィキッド』旋風第2弾の季節です。
『オズの魔法使い』の二次創作的な世界観である“グレゴリー・マグワイア”が1995年に執筆した小説『ウィキッド: 誰も知らない、もう一つのオズの物語』のミュージカル劇を映画化し、2024年にアメリカ本国で公開された『ウィキッド ふたりの魔女』。映画も素晴らしいクオリティで、世界的に大ヒットし、華々しいムーブメントを巻き起こしました。
映画は事前にPRされていたとおり、2部作であり、2024年にアメリカ本国で公開されたのは「PART1」で、アメリカでは2025年11月に「PART2」が公開に。
それが本作『ウィキッド 永遠の約束』です。英題は「Wicked: For Good」。
もちろんあの「PART1」の清々しいまでの高らかなラストから物語は直結します。『ウィキッド 永遠の約束』を観るときは、必ず「PART1」の『ウィキッド ふたりの魔女』を観ておきましょうね。
2025年は前半から『罪人たち』、そして『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』という予想外の新顔の登場で、この年のミュージカル映画の話題を持っていかれた感じでしたが、『ウィキッド 永遠の約束』の輝きが失せていたわけではありません。


日本では相変わらず遅れての劇場公開なのですが、1作目は日本国内の知名度の低さという壁も吹き飛ばし、じゅうぶんなヒットを記録しましたから、『ウィキッド 永遠の約束』でも続いていってほしいものです。
『ウィキッド 永遠の約束』を観る前のQ&A
A:前作である1作目の鑑賞を強くオススメします。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 人種差別を暗示させる内容になっています。 |
| キッズ | 基本的には低年齢の子どもでも楽しめるわかりやすさです。 |
『ウィキッド 永遠の約束』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
魔法の国であるオズ。黄色いレンガで長い長い道(イエロー・ブリック・ロード)を作る労働が行われていました。先頭で重いレンガの山を引っ張る仕事に従事しているのは動物たち。人間はその動物を鞭打ち、「もっと動いて働け!」と虐げます。
かつて動物は人の言葉を喋っていましたが、今はその能力は奪われ、人間の下で使役される存在に成り下がっていました。
そこへ上空からある影が舞い降ります。それは緑の肌のエルファバ。今や王国ではエルファバは「西の悪い魔女」として危険視されています。扇動の中心にいるのはシズ大学の魔法学部長マダム・モリブルです。
シズ大学に通っていたエルファバはその魔法の才能を見いだされるも、生まれながらにその容姿から差別されてきた経験もあり、この世界の偽善的な現実に気づいたとき、それを許すことはできませんでした。そうしてマダム・モリブルと対立することにしたのです。現在は追われる身。
エルファバは隠れ家に帰り、かつての唯一無二の親友のことを思い浮かべます。その人とは「善い魔女」となったグリンダ。薄桃色の可憐なドレスを身にまとう彼女は希望の象徴であり、民から愛されています。
グリンダとは同級生でしたが、今は関係に決定的なヒビが入っています。
エメラルドシティの偉大なるオズの魔法使いから魔法の力で支援され、グリンダは幼い頃から夢見ていたステキな魔法に囲まれた人生を送ることができるようになりました。民衆はその魔法にうっとりし、ますます熱烈に支持が広がります。
グリンダはフィエロと婚約し、王国の中心は盛大なお祝いムードに包まれています。グリンダはエルファバのことを忘れたわけではありません。しかし、今の地位を捨てたり、民衆の期待を裏切ることもできず、流されるままに振る舞ってしまいます。
一方のフィエロはこのエルファバを敵視する雰囲気に内心では苛立っていました。以前はあんなにも仲が良かったみんなが今は引き裂かれている…。
父からマンチキンランドの総督の職を継いだエルファバの妹のネッサローズもやるせない想いを抱えていました。彼女もグリンダとエルファバが少し前までは親密な信頼で結ばれていたことを知っています。マンチキンのボックが傍にいましたが、今や動物だけでなくマンチキンまでもが迫害の対象になりかけていました。
エルファバは、もはや生きる希望もないオズの国を去ろうとする動物たちに会い、この国を変えてしまった魔法使いと戦うように励まします。
しかし、誰もが闘えるとは思っていません。あまりにも失望と憔悴の空気が立ち込めていました。
そのとき、この世界に外からあるひとりの少女がやってきて…。

ここから『ウィキッド 永遠の約束』のネタバレありの感想本文です。
1作目のラストと2作目のラストの比較
『ウィキッド 永遠の約束』の感想の前に、本記事前半でも少し触れましたが、この2作目があの1作目『ウィキッド ふたりの魔女』のラストから続くという点について、あらためて振り返っておきましょう。
というのも1作目のラストは単なるクリフハンガーにとどまらず、あれほどまでに清々しく振り切る終わり方は他作品でもなかなかないレベルでしたから。
ひたすらに抑圧されて疎外されてきたエルファバがそれでも既存の社会に順応しようと自分を律してきたにもかかわらず、それを踏みにじるかたちで権力による迫害を目の当たりにして、ついに「私はもうこんな社会はうんざりだ!」と宣言するかのごとく自身の魔法の力を解放して空高く箒で飛翔する…。
「To Be Continued」とバン!と清々しく次作へ続くことを示してはいましたが、私はもうあれでひとつの完成形であり、仮に2部作とかでなくても、このエンディングで1作限りだとしても、これはこれでありだとさえ思えるな、と。そう感じるくらいの納得度はありました。
エルファバにとって「既存社会に縁を切って自分で自己肯定を得る」という到達点はそれだけでもじゅうぶんに人生のゴールです。これ以上、何がいるのかという話です。
別にエルファバはあの世界の弱者を救うヒーローにわざわざならなくてもいいし、社会に革命を起こすリーダーになる必要もない。本人が人生を見いだせればそれでいいじゃないですか。
ただ、実際には2作目があるわけです。ではこの『ウィキッド 永遠の約束』ではエルファバは何をするのかという話。
私が2作目のエルファバのキャラクター・アークをまとめるなら、それは「前作のラストをより原作『オズの魔法使い』の物語上に練り込んで再演する」という感触だったと思います。そういう意味では、この2作目は「1作目以上のインパクトはないし、展開は繰り返しである」と評することもできるでしょう。
序盤でのエルファバは、動物たちの解放のために孤軍奮闘するひとりレジスタンス状態です。しかし、「動物の権利」を求めるも、この社会は実質的に独裁状態なので、かなり厳しい状況ではあります。そのうえ、エルファバもすっかり悪魔化され、評判は地に落ちています。
結局、原作『オズの魔法使い』どおりエルファバはこの世界にやってきたドロシーに倒されてしまいます。今作ではドロシーの顔を一切映さないのは、有名な映画で主演した“ジュディ・ガーランド”のイメージを崩したくないからでしょうけども、予期せぬ演出的効果として見方を変えれば権力による操り人形となっている無自覚で純真なドロシーの恐ろしさが強調されていますよね。
でもエルファバは生きています。それがこの作品の世界観では事実。原作の「死」という設定を表向きは崩すことなく、裏ではひっそり生き永らえ、自分の安寧の居場所を求めてどこかへ旅立つ…。
今回の2作目のラストは、1作目と比べると「原作なんて知るか!」というアナーキズムな振り切りは乏しく、どちらかと言えば、原作にも配慮しつつ無難に「着地する」終わりかたでした。
まあ、ミュージカル舞台版をかなり意識した映画化なので、こういうラストなのだろうなというのは薄々察しながら鑑賞はしてはいましたけど、本音を言うなら、もっと原作をぶっ壊すような新しいラストをみせてくれても良かったかなと個人的には思います。
迫害を受けた当事者が「死んだふり」で「ひっそりどこかで生きている」というオチが、2025年の限界なのか…とはどうしても考えてしまうんですよね。
それでも今回の“ジョン・M・チュウ”監督の脚色と、“シンシア・エリヴォ”の名演は、実にワクワクさせる素晴らしい体験をもたらしてくれたので、とくに評価を下げたいわけでもないし…。
ちょっと複雑な気持ちになる2作目ではありました。
観客の解釈に依存するエルファバとグリンダの関係性
わかってます。2作目の『ウィキッド 永遠の約束』の最大の魅力は、エルファバとグリンダの最高の関係性(シップネームは「Gelphie」)の成熟にあるだろう、と。
1作目の頃からグリンダの出番は原作と比べても大増量しており、映画版はこのエルファバとグリンダのペアを本当にたっぷりと魅力的にみせてくれます。
2作目は一旦別れた2人が再接続するところにエモーショナルなピークがあると言ってもいいでしょう。
シリアス一辺倒ではなく、ちゃんと滑稽なガールズ・ファイトのシーンとか、笑わせてくれるのもサービス精神豊富です(やっぱり“アリアナ・グランデ”はコメディエンヌとして自虐が上手い)。そして、最後は「I love you」のセリフ。エンディングもこの作品ではおなじみの耳元で囁くあの構図。音楽も全てが感情を揺さぶってくる完璧さ。お腹いっぱいすぎます。
当然、このエルファバとグリンダをクィアネスに解釈して楽しむも良し。これだけの材料を与えられれば料理するのに困りはしません。むしろレシピまで事前に用意してくれている…。
一方で、今作ではエルファバはフィエロとの恋愛関係を前面にだしながら深めていきます。このグリンダも交えた三角関係は、あくまで表面では男女の異性愛が大きく映されるものなので(今作でも半裸になってくれる“ジョナサン・ベイリー”)、クィアネスの入る隙間はかなり小さいです。
今回は“ボーウェン・ヤン”演じるファニーの出番もほぼ無いに等しいくらいに少ないので、ハッキリとクィアな表象は前回以上に薄れたと言えるかもしれません。
つまり、観客に依存しています。「クィアな楽しみかたをできるよう“にも”作っておきました!」というパターン。これも今のハリウッドの業界の空気を考えると、「やっぱりこのへんが限界か…」とはまた思ってしまうところではありましたね。
この『ウィキッド』2部作は、2020年代を代表するファンタジー大作として紛れもなく映画史に刻まれたとは思います。そして最もクィアに接近したファンタジー・ブロックバスターでもあったでしょう。
でもこれで満足はしていない…とはしっかりリアルタイムで観た者の感想として明言しておこうとも思います。もっともっとできるでしょう? できないとダメでしょう? そんなハングリー精神を忘れたくない…。
いつかこの『ウィキッド』2部作を引用しながら「2020年代前半はこういうファンタジー映画がヒットしていました。当時はマジョリティの大衆や投資家を逆撫でしないように気を使いつつ、観客のクィア・リーディングをいかに刺激するかが重要でした。でも今は時代が変わりました」とか、そんなことを言い切れるような、そんな世界の到来を待っています。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
?(匂わせ/一瞬)
以上、『ウィキッド 永遠の約束』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Universal Studios. All Rights Reserved. ウィキッド フォー・グッド ウイキッド
Wicked: For Good (2025) [Japanese Review] 『ウィキッド 永遠の約束』考察・評価レビュー
#アメリカ映画2025年 #続編 #2作目 #ジョンMチュウ #シンシアエリヴォ #アリアナグランデ #ジョナサンベイリー #ミシェルヨー #ジェフゴールドブラム #ミュージカル #魔女 #車椅子 #身体障害者

