あなたも合わせて3BAD!…映画『バッドボーイズ3 フォーライフ』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2020年)
日本公開日:2020年1月31日
監督:アディル・エル・アルビ、ビラル・ファラー
バッドボーイズ フォー・ライフ
ばっどぼーいず ふぉーらいふ
『バッドボーイズ フォー・ライフ』あらすじ
マイアミ市警の敏腕刑事コンビ、マイク・ローリーとマーカス・バーネット。ブランド物のスーツをスタイリッシュに着こなし、得意のドライビングテクニックでポルシェを飛ばす豪快なマイクに対し、マーカスは家族こそが守るべき大切なものと真剣に考え、そろそろ引退を考えている。二人の人生は分かれ道にぶちあたるが、そこに謎めいた強襲者が現れる。
『バッドボーイズ フォー・ライフ』感想(ネタバレなし)
ベイの代わりに新鋭が現る
バッド? いやいや品行方正な良いやつなんですよ、きっと、彼は。そうじゃないとこんなに大作に出れないですもの。いきなり誰のことを言っているのか?
“ウィル・スミス”です。彼は凄いという話。
あれ、その話はもうどこかでしたな…。
そんな黒人にも白人にも日本人にも愛されている大人気アフリカ系アメリカ人俳優“ウィル・スミス”が俳優として一躍有名になったのが1995年公開の『バッドボーイズ』でした。彼が映画デビューしたのは1992年の『ハートブレイク・タウン』らしいので、こんなにもすぐに当たり役をゲットできるなんて、やっぱり幸運の持ち主です。
この『バッドボーイズ』はもうひとり、今のハリウッドを代表する映画人のデビューの場ともなりました。それが現在は破壊王と呼ばれる“マイケル・ベイ”です。“マイケル・ベイ”の監督デビュー作がこの『バッドボーイズ』であり、当時は当たるかどうかもハラハラだったとか。
最近また『バッドボーイズ』を見直しましたけど、今見てもよくこんなぶっとんだ映画をキャリア第1弾で作れたなと関心してしまうくらい、ハチャメチャで大胆な映画です。
お話は単純で、マイアミ警察の麻薬特捜班のコンビが悪者をやっつける…といういたって普通のバディ・クライムサスペンス&アクションです。なのに、なんでしょうか。監督の独特の映像センスも相まってやたらとエッジのある一作に仕上がっており、他の汎用なバディものとは一線を画す存在感だなとあらためて思います。
人種的にも黒人主役映画でここまで大ヒットできるということを証明したわけで、なんだかんだで“マイケル・ベイ”監督も(偶然かもしれませんけども)今のハリウッドを作るパイオニアだったんだなと再評価できる作品でもあるかもですね。
その『バッドボーイズ』は2003年に続編となる『バッドボーイズ2バッド』が公開されて以降、それ以上の展開は音沙汰なしだったのですが、2020年になって第3弾が爆誕しました。1作目から25年ですよ。ずいぶんゆっくりなシリーズ化ですが、まあ、いろいろなハードルがあったのかな…。
ともかくそれが本作『バッドボーイズ フォー・ライフ』です。
タイトルにナンバリングはないですが2作目からの正統な続編。お話もつながっています。ただ、前作を事前に鑑賞しないとついていけないということはほぼ皆無なので安心してください。
しかし、作品に欠かせない存在であった“マイケル・ベイ”は今作には関わっていません。それを聞いたら「え、大丈夫なの?」と心配な声をあげる人が出るのも当然。あのカメラワークや爆発は無しなの!?…それも寂しいし、そんなのバッドボーイズじゃない…。
でもノープロブレム。ソニーは“マイケル・ベイ”に代わる狂った奇才を見つけてきていました。『バッドボーイズ フォー・ライフ』の監督に抜擢されたその人物こそ“アディル・エル・アルビ&ビラル・ファラー”のコンビです。
私もこの二人の監督の作品をあまり観ておらず、2018年の『ギャングスタ』(原題は「Patser」)しか鑑賞していないのですが、その『ギャングスタ』だけでも個性がじゅうぶん伝わるくらいのクセの濃さがあります。例えばこの『ギャングスタ』はストリートギャングを題材にした映画なのですが、TVゲームをキーワードにしており、よく知られているゲームBGMも使ったり、自由すぎる演出が炸裂。監督自身が30代前半と非常に若いこともあって、すごくイマドキな適応性があります。
加えて、この“アディル・エル・アルビ&ビラル・ファラー”監督はベルギーで活躍するモロッコ人で、その出自もまたユニーク。2015年の『Black』という監督作はブリュッセルで生きる移民のアイデンティティを問うラブストーリーであり、そういう社会に根付くマイノリティへの目線もあります。
つまり、現代のゲームや音楽などのポップカルチャーとマイノリティ文化を両方描ける、これ以上ないくらい今の時代に渇望されている人材にぴったりなんですね。ハリウッド進出するのも納得のクリエイターです。
その“アディル・エル・アルビ&ビラル・ファラー”監督によって継承された『バッドボーイズ フォー・ライフ』はどんな作品になるのか。ぜひとも見届けてください。
“ウィル・スミス”はもちろん“マーティン・ローレンス”ももちろん登場。久しぶりに映画で見た気がする。今作は“ヴァネッサ・ハジェンズ”など若い顔ぶれも追加されています。
いつものあの歌も出てくるので、過去作ファンも新規の人も一緒にノリノリでバッドボーイズになりましょう。
オススメ度のチェック
ひとり | ◯(頭を使いたくないときに) |
友人 | ◯(悪友と一緒にバッド鑑賞) |
恋人 | ◯(気軽な痛快作を観るなら) |
キッズ | ◯(バッドになりすぎないでね) |
『バッドボーイズ フォー・ライフ』感想(ネタバレあり)
バッドボーイズも引退!?
気持ちのいい空、美しい街並み、開放的な人々、猛スピードでぶっとばす車…。警察に追われる車が一台、現在進行形で道路を爆走中。凶悪犯罪なのか。その車に乗っている男二人。そいつらの名はマイクとマーカス。マイアミ市警察官です。ん? マイアミ市警察官…うん、あってる、警察官です(修正なし)。
華麗なドライビングテクニックでバスを回避し、ビーチを走行するショートカット。無駄にドリフトしまくり、追跡を回避したかと思えば、今度は後ろ向き走行。ハンドルを握るマイクは楽しそうですが、マーカスは必至な形相。
そして目的地らしき場所に到着。華麗に降りるマイクに対して、マーカスは車のドアを開けて消火栓にぶつけます。
そこは病院。マーカスの孫が生まれたのでした。「grand-baby」の可愛らしい姿にデレデレのマーカス。それを優しそうに見つめるマイク。
なんでこいつら警官をクビにならないんだろう…。
そんなほのぼのとした日常とは打って変わって、とある刑務所では謎の女性イザベル・アレタスが手引きによって脱獄。緊迫した状況が起きていました。その事件はマイクとマーカスにも関わってくるとは露知らず…。
マイクとマーカスはお祝いパーティで人生の幸せを噛みしめていました。二人の性格も境遇も違いますが、今では一心同体の家族そのもの。会場を出て二人で夜の街で競争だとハシャいでいると、ヘルメットをすっぽりかぶった謎の人物がバイクですれ違いざまにマイクに発砲。出血しながら倒れるマイクと、大慌てで駆け付けるマーカス。急いで搬送され、治療を受けることに。
でもそんな凶弾に倒れる男じゃないのです。なんていったってランプの魔人ですからね。あ、違った…。じゃあ、なぜ平気なのか…。う~ん、とにかく強いんです。
車椅子ながら元気な姿を見せるマイクはマーカス・ファミリーの結婚式に参加。ちなみにここで“マイケル・ベイ”がバッチリとカメオ出演しています。目立つな、この人…。
友情は永遠に思えた二人でしたが、あんな風に喧嘩を売ってきた以上は犯人をとっ捕まえたいと息巻くマイクの一方、マーカスは新しい命も生まれてなるべく平穏に安全にしたいと願い、関係性は険悪に。もう二人の人生(ライフ)は別方向なのか。
そうこうしている間にもネット上でマイクが撃たれる主観動画がアップされ、話題になります。犯人の露骨な挑発に黙っていられないマイクは独自に調査を開始。銃弾から手がかりとなる人物を追い詰めようとしますが、上司のハワード警部から独断行動はするなと言われ、チームで動くことに。
そのチームとは「AMMO」と呼ばれるマイアミ市警特殊エリート部隊。リーダーはマイクのかつての恋人であったリタ。メンバーはマイクよりも一回りも二回りも若いです。当然、若干浮いてしまうマイクでした。ここでリタをミュージカル学校の云々に例えているのは、たぶんリタを演じる“ヴァネッサ・ハジェンズ”が『ハイスクール・ミュージカル』で出世した人だからなんでしょうね。
AMMOとの作戦も独断突入で台無しにしてしまったマイクは、やっぱりマーカスに助けを求めますが、当のマーカスは嫌嫌顔。しかし、尊敬するハワード警部が目の前で射殺されたことから、二人は決意します。これが「最後」だと。
バッドボーイズ、人生を賭けた大一番が始まります。
かぎりなくギャングに近い警察
破壊大好き監督の不在によって『バッドボーイズ フォー・ライフ』のアクション映像面には一抹の不安が鑑賞前はあったのですが、杞憂でした。
いや、もちろん爆発成分は少なめです。たぶんあの監督が続投していたら冒頭のカーチェイスシーンで何台かの車が華麗に爆発していたことでしょう。別の監督最新作では実際に好き勝手にドカンドカンやってましたからね…。
本作ではむやみやたらな爆発演出が消えたので、全体的に映像が引き締まった感じがします。冒頭のカーチェイスからそれは顕著で、カッコいいドライビングありつつの、マイクとマーカスのどうしようもないトークがテンポよく挟まれ、とてもいい感じ。
中盤のサイドカー付きバイクでのドタバタチェイスもすごくバッドボーイズらしくて楽しいです。サイドカーでミニガンを撃ったら実際はバランスを崩しちゃわないのかな…。
ただ一番“アディル・エル・アルビ&ビラル・ファラー”監督の持ち味が出ているなと思うのは、ストリートギャング的な“じゃれあい”の楽しさ。まあ、薄々感づいていると思いますが、このマイクとマーカスはぶっちゃけ警察というよりは限りなくギャングのノリです。このシリーズは警官モノの皮を被ったギャング映画です。
今作では「AMMO」という若者で構成されたエリートチームが登場し、これまでのバディを中心とした要素に世代間のイチャイチャが追加されます(なんか最近こういうのハリウッドの定番な気がする)。なにせマイクとマーカスも(そして演者本人も)すっかり中年を超え、若者から見れば高齢者の入り口に立った人に思われるお年頃。ヤングな奴らとはノリが噛み合いません。ましてやマイクはメンターという柄でもない。
でもギャングのテンションでなんかチームになっちゃうぜ!…という、まさにギャング映画スタイル。ラストバトルの舞台ではヘリは落ちるわ大炎上するわで大惨事なのですが、しっかり人的被害が最小限なのは、うん、映画だからね。
無論、ツッコミどころはさらに増しましたよ。バッドボーイズだけならまだしもあのエリートチームもかなり緩いし、ほんと、ここの警察はどうなってんだ、と。
そこに関しては、そういうものです!と思ってもらうしかないのですけどね。逆に善側がギャングなので、敵側がやたら凶悪になりがちですが…。
誰が息子であってもおかしくない
マイクとマーカスのバディ感はこのシリーズの大事な肝です。
しかし、『バッドボーイズ フォー・ライフ』は過去作の時点で表面化していた“ある問題”がハッキリ出た部分もあったと思います。
それはやっぱりマイクが主軸なんだなということ。
当然、こういうのもあれですが、“ウィル・スミス”が前に出てしまうのは俳優人気度からして致し方ないのですけど、今作はそれがちょっと際立ちましたね。
その最大の理由は鑑賞済みならおわかりのようにストーリー上のサプライズ展開である、敵となるアルマンドの正体。たぶん大方の“ウィル・スミス”主演映画を追いかけてきた人なら誰しもが心の中でツッコミを入れたでしょう。また息子かよ!…と。
しかも主演作で言えばすぐ最近に『ジェミニマン』という映画があったばかりですからね(ネタバレになるので多くは語るまい…)。既視感だらけです。
でも一応『バッドボーイズ フォー・ライフ』は息子パターンに変化球を入れてきています。アルマンドは中南米系の出自で、だからこそ黒人のマイクと関連があるとは思ってもみなかったという観客の意表をついています(なお、アルマンドを演じた“ジェイコブ・スキピオ”は南米のベネズエラの東に位置するガイアナという国に関係)。
まあ、確かに意外と言えば意外なのですが…。いよいよ誰が“ウィル・スミス”の息子でもおかしくなくなってきたな…。
というか、そんな重大なマイクのあれこれを相棒でいつも一緒にいたマーカスは関知していないとかあるの?と思わなくもないのですが、きっとこの『2』と『3』の間にいろいろあったのでしょう(強引な納得)。
こうなってくると次の『4』は、マイクの息子だと名乗る人間が10人くらい現れて大乱戦を繰り広げるんじゃないか。それはそれで面白そうだから困る。
そうです、続編の話です。『バッドボーイズ フォー・ライフ』は明らかに続編を作る気満々なエンディングでしたが、実際に製作陣はそのつもりなようです。マーカスはサポートに回って、マイクと息子コンビでのバディになるのかな? それともあの若者チームも介入を増やして『ワイルド・スピード』シリーズ風でいくのかな? どちらにせよ“ウィル・スミス”は何歳になってもアクションやり続けそうですよね。
大作になっても健在な才能を見せる“アディル・エル・アルビ&ビラル・ファラー”監督も次の仕事が決まっています。『ビバリーヒルズ・コップ』の第4弾の監督です。これまた、いや『バッドボーイズ』以上に大変な作品です。さらにマーベルからも声がかかっているとかいないとか…。
なんにせよバッドボーイズはまだまだ続きます。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 77% Audience 97%
IMDb
7.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
作品ポスター・画像 (C)2019 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved
以上、『バッドボーイズ フォー・ライフ』の感想でした。
Bad Boys for Life (2020) [Japanese Review] 『バッドボーイズ フォー・ライフ』考察・評価レビュー