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『6アンダーグラウンド』感想(ネタバレ)…Netflix;ベイってる?

6アンダーグラウンド

ベイってる?…Netflix映画『6アンダーグラウンド』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:6 Underground
製作国:アメリカ(2019年)
日本では劇場未公開:2019年にNetflixで配信
監督:マイケル・ベイ

6アンダーグラウンド

しっくすあんだーぐらうんど
6アンダーグラウンド

『6アンダーグラウンド』あらすじ

並外れたスキルを持つ個性豊かな男女6人で構成されたチーム。それぞれは数字のコードネームで呼ばれ、身元は互いに知らない。自らの死を偽装して表面上の身元を消し、悪名高い犯罪者を倒すための危険なミッションに挑む。敵は独裁によって弱き者を苦しめている権力者。国家転覆を狙うべく、クーデターを仕掛ける大胆な作戦が始動する。

『6アンダーグラウンド』感想(ネタバレなし)

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マイケル・ベイ度数、計測できません!

映画には「破壊」がつきものだった。

映画史の黎明期。最初はあるがままの物事を撮っているだけで満足していた偉大な映像アーティストたちだったが、その中にも「破壊」に意味を見いだす者が現れるのにそう時間はかからなかった。何をどうやって破壊するかは国や人によって異なる。ある者は笑いでもって社会の矛盾を痛快に破壊し、ある者は愚鈍な無知の偏見によって特定の人種の権利を打ち砕き、ある者は怪獣で建物を倒壊させた。

しかし、最もポピュラーにしてスタンダードな破壊は「爆発」である。人類は爆発が好きなことは歴史が証明しており、戦争では不必要なほど大量殺戮できる爆発を起こす爆弾を開発するのに精を出した。無論、映画でも爆発に手を出すのは本能の結果といえる。こうして爆発アーティストが誕生した。

ところがここでも問題が生じる。爆発の適量がわからないのである。かつて上映時間の約8割を爆発シーンで埋め尽くす挑戦的な映画も作られたが、試写の段階で大勢の観客が不調を訴え、劇場機器も壊れたためにお蔵入りとなった(※1)。爆発は映画界における悩みの種でもあった。

そんな終わらない試行錯誤の中で、爆発を完璧に使いこなすクリエイターが現れた。それが“マイケル・ベイ”である。彼の生み出した映画はどれも爆発の理想値を示す指標となった。結果、爆発学者が考案したのが「マイケル・ベイ度数」である。詳しい計測の方法や統計的な扱いに関しては、多くの研究によって解明と整理がなされた(※2)。「ベイ・ヘム」とも過去には呼ばれたその爆発の美学は定量化された。

爆発学者にして「マイケル・ベイ度数」の専門家である“ライアン・レイノルズ”はこう語る。

「果たしてこれは最もマイケル・ベイな作品なのか? その疑問を毎回議論する必要はなくなった」

そして2019年、史上最高に“マイケル・ベイ”がベイってる映画が爆誕したという報告が“ライアン・レイノルズ”によってなされた。これは科学的に大きなインパクトを生むであろう。それこそチャールズ・ダーウィンが進化論を提唱したことや、アイザック・ニュートンの万有引力の法則の業績、はたまた地球温暖化対策に偉業を残して化石賞を授与された日本…これらに匹敵する快挙である。

その映画が『6アンダーグラウンド』なのである。(以下、続く)

※1 ライアン・レイノルズ4世. 2035.「映画はいかにして壊されたか」Bomb Press. pp.273-274

※2 ライアン・レイノルズ6世. 2088.「マイケル・ベイ度数の検定法と解析」Transformers Baylogy. 12: 85-97


 

“ライアン・レイノルズ”が茶番プレゼンで映画を紹介するなら、こちらも相応のノリで答えてあげるのが礼な気がするから、なんとなく頑張ってみた…それだけです。

はい、『6アンダーグラウンド』の話です。

今や泣く子も黙るNetflixの勢力は凄まじく、2019年はどこの会社よりも多くのNetflix映画が賞にノミネートされていて、いよいよ本格的にヤバい会社になってきたなと思うしだい。

そんなNetflixは賞レースにだけ執心しているわけではなく、エンターテインメント映画界隈でも存在感を示そうと虎視眈々と狙っているようです。まさにこの“マイケル・ベイ”監督作『6アンダーグラウンド』はそのカードのひとつ。

もちろんブロックバスター大作映画は賞レース向け映画と違って予算規模が桁違いになってくるためにそう易々とポンポン連発できないでしょうし、巨額の赤字の原因にもなりえますから慎重に事を進めるでしょう。でもNetflixはこの分野でも爆発を起こしたいという意欲がガンガン伝わってきます。

『6アンダーグラウンド』は『デッドプール』シリーズを製作したチームが主に手がけており、主演の“ライアン・レイノルズ”(製作も兼任)を筆頭に、脚本の“レット・リース”“ポール・ワーニック”も『デッドプール』メンバー。そこに“マイケル・ベイ”監督のチームも加わっての一大体制。このドッキングはなかなかに危険な香りがするのは映画ファンならよくわかるはず。

“ライアン・レイノルズ”以外のキャスト陣は、『イングロリアス・バスターズ』でハリウッド映画出演歴もあるフランス人の“メラニー・ロラン”、『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』にも出演していたメキシコ人の“マヌエル・ガルシア=ルルフォ”、『ボヘミアン・ラプソディ』でも出ていたイングランド人の“ベン・ハーディ”、『トリプル・フロンティア』に出演していたプエルトリコ生まれの“アドリア・アルホナ”、『ストレイト・アウタ・コンプトン』や『ブラック・クランズマン』でも活躍した黒人の“コーリー・ホーキンズ”、『ディザスター・アーティスト』でも印象深いユダヤ系の“デイヴ・フランコ”。このように非常に国際色豊かです。

俳優だけでなく舞台となる国や地域もグローバルになっており、世界に売りこもうという気概を感じます。アジア系がいないのは寂しいですが…。

残念なのは日本では劇場公開していないことですね(ジャパンプレミアイベントはしている)。せっかくの爆発なのにスクリーンで楽しめないなんて…。

家で楽しむ際はできる限り大きい画面サイズでの鑑賞にしてください。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(独りでもベイしよう)
友人 ◯(友達ともベイしよう)
恋人 ◯(イチャイチャベイベイだ)
キッズ △(ちょっと残酷なベイだよ!)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『6アンダーグラウンド』感想(ネタバレあり)

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1、2、3、4、5、6、7

「人は死んだら何になるのか」「幽霊だ」「孤児だ」「愛する家族はいない」…そうモノローグで語る謎の男。孤独だが自由であると言い、どこへでも行けて何でもできることを誇ります。「最高の能力は憑りつくこと」だとも。

自由気ままに飛ぶ軽飛行機を背景に「3年前、俺は死んだ」と結ぶ正体不明の声。

『6アンダーグラウンド』は冒頭から前半にかけてかなり把握しづらいストーリーテリングになっていますが、要するに話はシンプルです。

この“ライアン・レイノルズ”演じる「1(ワン)」は、自らの死を隠れ蓑に裏で悪を倒すビジランテをしています。磁石を使ったなんか凄い発明によって億万長者になったみたいで、その資産を使って潤沢な装備を整えて世に蔓延る悪に鉄拳制裁を加えようという魂胆。まあ、バットマンですね。

しかし、独りではできることに限界があると考えたのか、チームを結成することに(バットマンよりコミュニケーションが上手!)。各地で候補になりそうな人間をかき集め(場合によっては偶発的な出会いをすることもありますが)、なんとか6人のスペシャリストを結集。それぞれが「2(トゥー)」「3(スリー)」「4(フォー)」「5(ファイブ)」「6(シックス)」というなんとも雑なコードネームを持つことに。無論、それぞれが“死んだこと”になっており、社会が彼ら彼女らを認識することはできず、チーム内でも互いの出生などは知りません。

そんなチームの初仕事の日。イタリアのフィレンツェでのミッションは控えめに言って大失敗であり、メンバーの「2」が負傷する中で、「1」は助手席、「6」はドライバー、「5」は撃たれた「2」の弾丸摘出を後部座席でしながら車で逃走。敵は複数の車とヘリで猛追してきており、街を爆走して、他のメンバーと連絡をとり、援護をもらいます。

カーチェイスのすえ、クラッシュした結果、運転していた「6」は致命傷を負い、死亡。仲間は船にて名前も知らぬ「6」を弔い、遺体を海に捨てるのでした。

欠けた穴を埋めるべく、「1」は仲間を救えずに後悔を溜めこんでいる軍人のスナイパーであった黒人の男を「天職に就きたいとは思わないか」とスカウト。偽装した葬式を執り行い、正式に「7(セブン)」としてチームに加えます。

このチームのアジトはカリフォルニア州の砂漠地帯。ここで「1」は初心者「7」に簡単に説明。話は標的の話題に移り、9人いて一人目は、トゥルギスタンの独裁者「ロヴァク・アリ」だと語ります。クーデターの起こし方として、まず将軍4人にロヴァクの弟で民主派のムラットの居場所を教えてもらい、彼を抱き入れてそのままクーデターを先導する新たなリーダーになってもらう作戦…とのこと。

さっそく舞台はラスベガスへ。部屋でセクシー美女を連れてパーティ三昧な将軍たちをあっけなく抹殺。ひとりからロヴァクの弟ムラットの居場所が「香港」だと教えてもらい、ここでの任務は完了。

そして今度は香港の豪華高層ビルのペントハウスに向けて潜入を開始。息の合ったチーププレイを見せつつも、やはりここでもトラブルが続出。

無事、クーデターを成功させることはできるのか。そして爆発は一体何回起こるというのか…。

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最後はスーパーパワー

『6アンダーグラウンド』はNetflixオリジナル作品史上2番目に予算がかかっている映画だそうで(1位は『アイリッシュマン』)、確かにカネが注ぎ込まれているのがよくわかる大作でした。

もちろんそのおカネを使い込む場所は「派手なアクションシーン」です。

序盤のフィレンツェのパートから凄まじくベイってる。開始5分程度でさっそく爆発シーンを魅せてくれるという監督の粋な計らい。ただのカークラッシュなのにイチイチ芸術的に爆発。この車、火薬でも常に満載しているのでしょうか…。もう車が派手にクラッシュするのを眺めるだけの映像動画になってますね。周りの人の車両回避能力も凄いですよ。そんな大爆発&アクシデントでも一切傷がつかない主人公たちの乗る蛍光グリーンな車。まあ、スポンサー・カーなのでしょうけど(ちなみに車種はアルファロメオの「GIULIA QUADRIFOGLIO」)。

このパートは実際にフィレンツェで撮っているらしく(よく許可が下りるな…)、プチ観光映画にもなっています。サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(ドゥオーモ )をパルクールでダダッと「4」が降りていくカッコいいシーンもあれば、ダビデ像のチ○コの感想を呟く一同というアホなシーンも…。

また、ロヴァクの残忍な命令によりトゥルギスタン国境の難民キャンプを空爆して化学兵器で襲うという酷い場面もあるのですが、ベイ風味になると社会的な悲痛さまでも吹き飛ぶという若干の困った問題もなくはない。この欠点、監督作『13時間 ベンガジの秘密の兵士』でも思いましたけど。

爆発だけが芸じゃないよと見せたいのか、香港では「7」の土壇場のバッド・アイディアで屋上プールを撃って室内を水が押し寄せるという、高層ビルではなかなか見られない水攻めシーンも披露。水の使い方も派手なんだなぁ…。

その後も取り残された「4」がパルクールで逃げている最中に、鉄骨が無数に落ちてくるというオーバーキルにもほどがある展開も。やっぱりこの監督、トランスフォーマーを出さなくてもこれくらいの物量の攻撃は繰り出してくるんだった…。

ラストの舞台となるトゥルギスタンの船での大乱闘にいたっては、「1」のハイパー磁石パワーでとんでもないことに。というか、そうはならんだろ(こぼれるツッコミ)。「とても危険な道具だ」「ジェダイの気分」とか言っているけど、マグニートーですよね、デッドプールさん。

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すぐにできるクーデターのやりかた

それにしても“ライアン・レイノルズ”、すっかりデッドプール的なノリのユーモアが常に炸裂するようになってきましたね。本作も製作面にたぶん関わっているだけあって、おそらくギャグは本人が自前で考えているのではないだろうか。

そこでそのギャグ?と正気を疑うぶっこみも目立ちます。フィレンツェでの目ん玉を落としてパニックになりながらのスマホロック解除とか。香港での笑気ガス(このガスの意味、ある?)からのリーダーなのかボケ役なのかわからない「1」の立ち位置とか。私が「7」だったら撃ち殺してしまいかねない面倒なボスですよ。

話運びは言わずもがなかなり大雑把で、根本的なことを言うなら、そもそもクーデターってそんな簡単に起こせないだろう…という指摘もできますよ。あの国の民衆も放送を聞いただけで「イエーイ!」ってなりすぎですよ。反対勢力がいるなら保守勢力ももっといるだろうに。それともあれかな、本能的に暴れるのが好きな戦闘国民だったのかな。あ、もしかして『パージ』と同じ世界観か。だったら納得だけど…(笑気ガスのシーンのマスクは少し『パージ』オマージュだったと思う)。

百歩譲ってクーデターが可能だとしても、あそこまでの込み入った手順を踏んだ作戦は必要だったのかという疑念は消えない…。

あとは最後に良い話風にまとめていますけど、国際的な法的正義抜きで、民衆の集団リンチに任せてしまうあたり、やっぱり狂気のエンディングじゃないだろうか。

『6アンダーグラウンド』は私の推察ではきっと『ワイルドスピード』シリーズみたいなことをやっていきたいのかなと思います。明らかに続編も作れる構成になっており、チームものの醍醐味と、そして既存のオール年齢層のフランチャイズにはできない残酷表現もやっちゃうという…。ただ、それを目指すにしても、今回のチームアップはかなり即席感があります。「6」死亡時も観客側は全然悲しくないですからね(タイトルに反して「6」が早々に退場するとは)。

「7」はブレイン、「4」はビリー、「3」はハヴィエル、「2」はカミーユ、「5」はアメリア…それぞれの本当の名が明らかになり、やっと好きになり始めたところで映画は幕引き。

やっぱりチーム映画にするにはしっかり熟成させる期間が必要で、さすがにこの1作だけでは詰め込みすぎて、感情移入させるほどの映画と観客のシンクロ具合とはいかないでしょう。まあ、それは今後の発展しだいでもあるのですけど。Netflixは続けるのかな…。

そういえば『6アンダーグラウンド』の「マイケル・ベイ度数」、皆さん、計測できましたか。正確な値はですね、あ、計測機のスイッチを入れていなかった…。

『6アンダーグラウンド』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 37% Audience 89%
IMDb
7.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)Skydance Media, Netflix

以上、『6アンダーグラウンド』の感想でした。

6 Underground (2019) [Japanese Review] 『6アンダーグラウンド』考察・評価レビュー