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映画『フランケンシュタインの花嫁』感想(ネタバレ)…男同士で生命を生み出す

フランケンシュタインの花嫁

それは禁忌なのか…映画『フランケンシュタインの花嫁』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Bride of Frankenstein
製作国:アメリカ(1935年)
日本公開日:1935年7月11日
監督:ジェイムズ・ホエール
フランケンシュタインの花嫁

ふらんけんしゅたいんのはなよめ
『フランケンシュタインの花嫁』のポスター

『フランケンシュタインの花嫁』物語 簡単紹介

生命の創造という知的好奇心が抑えられずに怪物を人為的に作り出してしまったヘンリー・フランケンシュタインは、怪物に恐怖して暴徒となった群衆に圧倒されつつ、なんとか生き延びることができた。そしてエリザベスという女性と結婚して、人生を再出発しようとしていた。一方で、怪物もまた生存し、こちらは居場所を見失い、彷徨うばかりだった。そんな中、ヘンリーのもとを訪れるひとりの人物が…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『フランケンシュタインの花嫁』の感想です。

『フランケンシュタインの花嫁』感想(ネタバレなし)

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クィア・ホラーのクラシックを探究する

クィア映画の中でも「クィア・ホラー」と呼ばれるサブジャンルは特筆性が高い…という話はどこかでも散々したので割愛するとして(いつか単独記事でまとめたいところ)、ではそのクィア・ホラーのクラシックとして名作と言えるのはどの映画でしょうか

そもそもホラーのクラシックと言えば1920年代から50年代にかけて一世を風靡して紛れもないアイコンとして語り継がれている「ユニバーサル・モンスターズ」があります。この映画群の中にも、クィア・ホラーがすでに存在しました。

その代表作が本作『フランケンシュタインの花嫁』です。

本作の原作はもちろん、イギリスの小説家である“メアリー・シェリー”1818年に匿名で出版したゴシック小説『フランケンシュタイン(Frankenstein: or The Modern Prometheus)』

そしてその原作は1931年にユニバーサルが『フランケンシュタイン』として映画化し、怪物を演じた“ボリス・カーロフ”の怪演もあって当時は大きな話題となりました。

本作『フランケンシュタインの花嫁』はその1931年の映画の続編であり、1935年に公開されました。

根本的な話からするなら、“メアリー・シェリー”の原作自体がLGBTQコミュニティにとっては愛される一作でした。この原作は、今日に至るまで多くの識者によってフェミニズムから政治性までさまざまに批評・分析されてきました。しかし、性的マイノリティのレンズをとおせば、これは「迫害される怪物」の物語であり、その存在は現実のマイノリティの体験と共有していました。“メアリー・シェリー”は両性愛者だったという指摘も現在はありますがThe Guardian、その真実性に関係なく、あの怪奇譚における怪物に共感できるクィアな人たちは確かにいたのです。

その原作の映画化として大成功をおさめた1931年の『フランケンシュタイン』もまた、じゅうぶんにLGBTQコミュニティの関心を集めました。しかも、監督を手がけた“ジェイムズ・ホエール”公然とゲイを表明していた当時としては珍しいクリエイターだったことを踏まえるとなおさらです(1998年の『ゴッド・アンド・モンスター』という伝記映画でも彼のセクシュアリティは触れられる)。

ではなぜ『フランケンシュタインの花嫁』のほうに着目するのか。その理由は、原作と前作映画でクィアネスが多層的に蓄積されていった経緯を理解したうえで観るという前提ですが、この続編ではあらゆる点でクィアネスが凝縮されきっているからで…

…という詳しい話は後半の感想で。『フランケンシュタインの花嫁』のクィアなサブテキストについてあれこれ書いています。

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『フランケンシュタインの花嫁』を観る前のQ&A

✔『フランケンシュタインの花嫁』の見どころ
★初期のクィア・ホラーを探究できる。
✔『フランケンシュタインの花嫁』の欠点
☆—

鑑賞の案内チェック

基本
キッズ 2.5
やや怖いシーンがあります。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『フランケンシュタインの花嫁』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

激しい嵐の夜。そんな騒がしさとは無縁の暖炉で快適な優雅な部屋。詩人のパーシー・ビッシュ・シェリージョージ・ゴードン・バイロン卿は、パーシーの妻であるメアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン』を絶賛していました。

「まさか君が書いていたとは」と驚く中、メアリーは「神を模倣する者は罰せられる」という教訓を出版社は理解していないと落ち着いて呟きます。「でも物語の終わりかたに迫力が欠ける」と指摘すると、メアリーはさらなる続きを語りだすのでした。

物語は、生命の創造という知的好奇心が抑えられずに怪物を人為的に作り出してしまったヘンリー・フランケンシュタインが、その自身の創造物である怪物に返り討ちにされ、怪物に恐怖して暴徒となった群衆の放った火で、怪物のいる風車小屋が崩壊した直後。

風車小屋が焼け落ちた後、怒れる群衆は熱狂しながら怪物の死を喜んでいました。村長はもうこれでじゅうぶんだと言い聞かせ、群衆を解散させます。そして、ヘンリー・フランケンシュタイン男爵の遺体は丁重に運ばれます。

しかし、娘マリアを怪物に殺されて恨みが溜まっているハンスは、怪物の死を確かめようと固執。焼け跡を探していると、足を滑らせて地下水道に落ちてしまいます。そこには生き残っていた怪物がおり、水中から忍び寄ってハンスを殺し、心配していたハンスの妻も突き落として殺害。

怪物は召使いミニーの前にも姿をみせ、ミニーは衝撃のあまりその場から消えてしまいます。

ヘンリー・フランケンシュタインの遺体は、婚約者のエリザベスの待つ城に届けられました。そこへミニーは怪物が生きていたと知らせに来ますが、誰も信じません。

エリザベスは嫌な予感がしていたと嘆くも、ヘンリーの遺体だと思っていたものは急に動き出し、生きていたことが明らかになります。ホっと胸をなでおろす一同。

手厚い看護で回復したヘンリーは「生命を弄んだ報いだ」と反省するも、研究の意欲は消えていない様子です。エリザベスはもうやめるべきだと忠告し、そして死の運命を感じてパニックに陥ります。

そんなヘンリーのもとへ、大学時代の恩師であるセプティマス・プレトリアス博士が突然ひとりで訪れてきます。どうやらヘンリーに話があるようです。

そして、ヘンリーがプレトリアス博士の研究室を訪れると、そこでプレトリウス博士自身が創造した複数のホムンクルス(小人)をみせられ、「黒魔術じゃないか」とヘンリーは怪訝な顔。また死体から生命を作らないかと提案されるも、拒否します。

しかし、プレトリアス博士は「男と女で生命をなす」という聖書の言葉を引用し、「伴侶が必要なんじゃないか?」と誘います。それはつまり、女…。怪物の伴侶となる「女」を作り出すということ。

さらなる禁断の誘惑にヘンリーは揺さぶられますが…。

この『フランケンシュタインの花嫁』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2026/03/31に更新されています。

ここから『フランケンシュタインの花嫁』のネタバレありの感想本文です。

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ゲイの誘惑と共同作業

“メアリー・シェリー”の原作には「mate(伴侶)」の言及があります。怪物が「人間にも獣にも伴侶がいるのに、自分は孤独なのか?」と伴侶を要求し、フランケンシュタインはその要求に応じて伴侶を作りかけますが、結局はやめてしまいます。

映画『フランケンシュタインの花嫁』はその原作の要素を抽出しつつ、ほぼオリジナルで展開を考えた続編となっています。ユニバーサル側にすれば「売れたからもっと儲けるために続編を作れ」というただそれだけなのですが、今作でも監督を続投した“ジェイムズ・ホエール”は何度も提案される脚本にダメだししつつ、かなりやりたい放題にやったようです。

前作からこの世界観の主軸となる「人間が人工的に生命を作り出す」という行為。この行為を多くの批評家はさまざまな解釈で読み取ってきました。女性の“子を産む”ことへの恐怖だとか、男性の“女性の出産能力”への憧れや支配欲だとか、科学技術への警鐘だとか…。原作者の“メアリー・シェリー”本人は原作序文で、“エラズマス・ダーウィン”(“チャールズ・ダーウィン”の祖父)が「微生物が自然発生的に生命を宿すのを観察した」という実験について触れており、それが着想のきっかけなのかもですが…。

『フランケンシュタインの花嫁』はさらに新しい解釈を可能にしています。その強烈な後押しとなっているのが、今回から新登場した原作にないキャラクター…プレトリアス博士です。

先の失敗もあってすっかり怖気づいているも「欲」を捨てられていないヘンリーに対して、プレトリアス博士は誘惑をするわけです。次の創造をしよう、と。しかも、わざわざ聖書を引用しながら「男」と「女」の役割について規範を強調しつつ、自分たちはそこから逸脱した行為をしようと誘っていることになります。つまるところ「男2人の共同で生命を作り出す」という行為です。

この男同士の共同作業が土台となったことで、本作の同性愛の含みはますます露骨になりました。異性愛結婚をしようとしている真っ只中のヘンリーを揺さぶるのですから、その構図はなおさらですね。

しかも、このプレトリアス博士というキャラは、見た目からしてあからさまなのですが、非常に女性らしい仕草を滲ませ、キャンプ的な存在感を放っています

プレトリアス博士を演じた“アーネスト・セジガー”は、『The Real Thing at Last』(1916年)など出演作で女装をする役が得意だったそうで、本人も女性参政権のために活動する男性の団体に参加したり、当時は女性の仕事とされた裁縫に興味があったり、何かと女性と縁深い人だったとか(素の姿がもうフェミニンです)。両性愛者だったという指摘もあります。

“ジェイムズ・ホエール”監督はこのプレトリアス博士に“アーネスト・セジガー”を起用することにかなりこだわったそうで、本作の最重要キャラクターと言っていいでしょうね。

ちなみに映画冒頭で登場するジョージ・ゴードン・バイロン卿は実在の歴史中の人物ですが、彼は好色だったとされ、彼もまたバイセクシュアルだったとみなされています。

そうやって整理すると、この映画はとにかく出だしから終わりまでゲイネスに満ちており、(作り手がどういう意図であれ)男同士で生命を生み出すことへの大衆の反応を弄んでいるような映画に思えてくるのも無理ありません。

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怪物と花嫁の解釈

一方で「怪物」のほうは『フランケンシュタインの花嫁』においてもやはり終始、大衆から迫害されるという可哀想な目に遭い続けています。

この一連の描写は典型的なモラルパニックです。

興味深いのは、キリスト教の風刺が随所にある点です。イエス・キリストは蘇ることでその神聖を証明し、大衆に信仰されました。対するこの怪物も死の淵から蘇ってみせたのに、大衆は信仰するどころか、暴言と暴力を向けてきます。全くもってキリストとは逆の扱いを受けることになります。

こうしたダブルスタンダードは、クィアな世界にとっても他人事ではないです。ひとたび「危険」とレッテルを貼られると、何をしようとも(何もしていなくても)社会に敵視され、追いつめられる経験は散々しています。そしてたいていその迫害の背景には保守的な信仰がありますし(アメリカでも日本でも…)。

今作では怪物は「friend」を欲するようになり、寄り添ってくれる相手がいることの温かさに気づきます。偏見さえなければ平穏がある…。

こうした心情はLGBTQコミュニティの観客の共感をより集めるのは言うまでもないでしょう。1930年からのヘイズ・コードの時代というまさに抑圧の中で作られたクィア・ホラーと考えると、当時にこの映画を観たクィア当事者はどう思ったのでしょうかね…。

そして肝心の「花嫁」。これに関してはこの映画の最大のツッコミどころでもあります。『フランケンシュタインの花嫁』ってタイトルのくせに花嫁が全然登場しないじゃないか!…というクレームもおっしゃるとおり。「キャー!」って叫んでいるだけであっという間の退場ですからね。

この花嫁をどう解釈するのかも人それぞれですが、クィア・リーディングとしては同性愛嫌悪のかたちと分析されることもあります。しかし、同時に花嫁自体もあれだけ強烈なヘアスタイルをしているわけで、とてもクィアな存在感があります“エルザ・ランチェスター”がメアリー・シェリー役と兼ねて演じていることもあって、あの花嫁は原作者の有するクィアネスの具現化…なのかもしれません。

どうであれ、伝統的な女性として期待される物語を捨て去る行為とも解釈できるので、クィア・アイコンとしてはあの短い出番でもじゅうぶんに印象に刻まれます。

また、よくみてみると今作で怪物は別に結婚や恋愛の願望を口にしてはいません。というか、そういう概念すら理解してないのだと思いますけど…。あくまで怪物は「friend」を求めているだけ。そういう意味ではあの怪物は、ある種の友情や恋愛にこだわらないパートナーシップの切望者であり、その点でもクィアな感じにみえます。

結局のところ、怪物は自死を選びます。プレトリアス博士と花嫁という作中で最もクィアな奴らも巻き込んで…。このオチは性的マイノリティが辿り着くベタな悲劇です。まあ、さらなる続編の『フランケンシュタインの復活』(1939年)で怪物はまた蘇るんですけども…。

『フランケンシュタインの花嫁』
シネマンドレイクの個人的評価
–(未評価)
LGBTQレプリゼンテーション評価
?(匂わせ/一瞬)

以上、『フランケンシュタインの花嫁』の感想でした。

作品ポスター・画像 (C)Universal Pictures ブライド・オブ・フランケンシュタイン

Bride of Frankenstein (1935) [Japanese Review] 『フランケンシュタインの花嫁』考察・評価レビュー
#アメリカ映画1935年 #続編 #2作目 #ジェイムズホエール #クィア映画史

ホラー
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シネマンドレイク

ライター(まだ雑草)。LGBTQ+で連帯中。その視点で映画やドラマなどの作品の感想を書くことも。得意なテーマは、映画全般、ジェンダー、セクシュアリティ、自然環境、野生動物など。

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