4作目で退職できるか…映画『ジョン・ウィック4 コンセクエンス』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2023年9月22日
監督:チャド・スタエルスキ
ジョン・ウィック コンセクエンス
じょんうぃっく こんせくえんす
『ジョン・ウィック コンセクエンス』あらすじ
『ジョン・ウィック コンセクエンス』感想(ネタバレなし)
やっと劇場公開です
日本は海外映画の劇場公開が本国より大幅に遅れることがよくあります。その遅れっぷりは世界各国と比べてもダントツで、作品にもよりますが、ときには突出して出遅れます。
なぜなのかは知りませんが、日本の映画界の慣習になってしまっているのか…。なんにせよ、映画ファンにはモヤモヤする状況です。映画は話題性が第一。今はインターネットで世界と簡単に繋がっていますし、同じタイミングで話題を共有するのも映画の醍醐味のはず。「え? まだ日本では公開されてなかったの?」なんて言われるのはもうたくさん…。
今回の映画もめちゃくちゃ日本公開が遅くなりました。
それが本作『ジョン・ウィック コンセクエンス』です。
本作は『ジョン・ウィック』シリーズの第4作目。そのアメリカでの公開日は2023年3月24日。東南アジアなど他の国々も劇場公開はその前後に設定され、韓国や中東でも4月には公開していました。しかし、日本の本作の公開日は…9月22日。まさかの6カ月遅れです。
6カ月も経っていれば本国では配信はもちろんブルーレイだって発売してますよ。
ちなみに前作の第3作目『ジョン・ウィック パラベラム』は5カ月遅れで劇場公開していたので、悪化しました。なんで…。
それはさておき、『ジョン・ウィック コンセクエンス』本編の話をしましょう。
こっちもいよいよクライマックス。あの長きにわたるジョン・ウィックの戦いも大詰めです。簡単に振り返るとこんな感じ。
殺し屋はもう辞めます ⇒ 亡き妻の残した愛犬を殺しやがって ⇒ 殺し屋界の大物に復讐 ⇒ 業界の反感を買って狙われる ⇒ 辞めさせてください ⇒ ダメだ ⇒ 辞めさせてください ⇒ ダメだ ⇒ だったら業界のトップに直談判だ…
こんな流れです。そうです。壮大な離職の物語だったんです。仕事を辞めさせてくれない業界って嫌だね…。
ただ、主人公を演じている“キアヌ・リーブス”と監督の“チャド・スタエルスキ”はノリノリです。もうこのシリーズ、“トム・クルーズ”の『ミッションインポッシブル』と同じで俳優の願望を叶えるための私利私欲フランチャイズになってます。
今回の『ジョン・ウィック コンセクエンス』では、“ドニー・イェン”と“真田広之”が参戦して、東アジア勢が大暴れします。そしてこれは一部ファンにはテンション上がる話題ですが、シンガーソングライターにしてクィアなアクティビストでもある“リナ・サワヤマ”まで参加。ばっちり戦います。
他には、『IT/イット』シリーズのペニーワイズ役でおなじみの“ビル・スカルスガルド”、『密航者』の“シャミア・アンダーソン”、『イップ・マン 完結』の“スコット・アドキンス”などが出演。
過去作からの顔なじみとしては、“ローレンス・フィッシュバーン”、“イアン・マクシェーン”、“ランス・レディック”もしっかり健在。なお、“ランス・レディック”は2023年3月に亡くなりました。
相変わらず凄まじいアクションの連発ですので、アクションに埋もれて死にたい!という願望を持つ人には今作も満腹を保証できるんじゃないですか。
物語は完全に2作目のエンディング直後から始まって未見さんお断りだった3作目と比べると、この4作目はもう過去作すら振り返る気もないスタイルです。ここから『ジョン・ウィック』ワールドに飛び込む初心者も歓迎です。ただし、自分の身は自分で守ってね。
ちなみに、この4作目は犬は死にません!
『ジョン・ウィック コンセクエンス』を観る前のQ&A
A:過去のシリーズ(1作目から3作目)を観たほうが世界観に深く入れますが、「主人公が殺し屋の世界から狙われている」ぐらいのざっくりした事前認識で本作から見始めてもそんなに問題ありません。
オススメ度のチェック
ひとり | :アクションに酔いしれる |
友人 | :盛り上がるエンタメ |
恋人 | :ジャンル好きなら |
キッズ | :マネはほどほどに |
『ジョン・ウィック コンセクエンス』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):戦闘フルコースでおもてなし
ニューヨークの地下で犯罪情報を手中におさめている組織の王に君臨するバワリー・キング。彼は今も古巣の地下に居座っていました。
しかし、そんなバワリー・キングは今ではある人物に注目しています。一度ならず何度も殺されかけ、そのたびに不屈の精神で這い上がってきた、伝説の殺し屋。その名もジョン・ウィック。
ジョン・ウィックは現在はこの地下で身を潜め、体力回復と鍛錬に集中してきました。復讐すべきは自分をここまで蹂躙してきた「主席連合(ハイテーブル)」と呼ばれる存在。世界の権力を手にし、殺し屋たちを意のままに操る大物たちです。全てはこいつらのせいであり、自分をこの戦いの連鎖から解き放てるのもこいつらしかいない。
「準備はできているか」とバワリー・キングに問われ、ジョン・ウィックは「ああ、もちろんだ」と答えます。
向かったのはモロッコ。ジョン・ウィックは砂漠を馬で駆け抜け、主席連合のひとりである人物に跪いて忠誠を誓っているように思わせた瞬間、いとも簡単に撃ち殺してしまいます。これは宣戦布告です。
一方、ニューヨークのコンチネンタルホテルでは、ハービンジャーという主席連合の工作員が訪れ、でかい砂時計を置いていき、時間が迫っていることを知らせます。ホテルの支配人ウィンストンとコンシェルジュのシャロンは主席連合のヴァンサン・ド・グラモン侯爵に会いに行きます。
グラモン侯爵は、ウィンストンがジョン・ウィックを殺せなかったことを淡々と叱責。砂時計が終わると、ホテルを爆破してみせます。さらにウィンストンを解雇し、シャロンの胸を撃ち抜くのでした。
パリでは、盲目の殺し屋であるケインが公園で野外演奏をしている娘のミアのヴァイオリンに遠くから聴き入っていました。娘に直接会うような勇気はありません。
そこへグラモン侯爵からある人の暗殺を命令されます。リタイアしたと言っても娘の命で脅され、従うしかありません。ターゲットの名を指で確認すると、それはジョン・ウィック。ケインにとっては友人ですが、これもやむなしか…。
大阪のコンチネンタルホテルでは、支配人のシマズ・コウジがジョン・ウィックの一連の騒ぎを気にしていました。彼にとっても親友です。コンシェルジュで娘のアキラはジョン・ウィックを信用していませんが、シマズはそんな娘を一喝します。
屋上でジョン・ウィックと出会い、「ついに君の安らぎを見つけたのか」「迷惑かけてすまない」と親しく会話。ジョン・ウィックにとっても頼れる数少ない相手です。
そうこうしているうちに、グラモン侯爵の右腕であるチディが殺し屋を引き連れてホテルに乱入。アキラは父に連絡し、“おもてなし”の準備を指示するシマズ。当然、このホテルにも戦闘要員が大勢います。
避難命令がでる中、シマズの一派と主席連合の一派が対峙。ケインも侯爵側にいて、穏やかに話すものの、シマズは兄弟は売れないと告げます。ケインは戦いたくない様子ですが、互いに心情は察しています。
こうして乱戦が勃発し、ホテルは戦場に。ジョン・ウィックはこの戦いを切り抜け、事態を完全に突破するための策を練ります。
戦いを終わらせるために…。
クソな業界には最後の手段を
ここから『ジョン・ウィック コンセクエンス』のネタバレありの感想本文です。
『ジョン・ウィック コンセクエンス』は、その邦題が示すとおり、因果応報のすえにやっと「結果(consequence)」が提示されます。「ファイナル」とかにしなかったあたりは、このシリーズらしいですね(まあ、実際に最終作ではない可能性が大なのですけど)。
前作では「襲われる」という展開でひたすらジョン・ウィックが追い詰められたのに対し、今作はジョン・ウィックが壮大な反撃にでます。
しかし、今作の悪役であるグラモン侯爵は大胆不敵です。まず初っ端からニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破解体し、大阪のコンチネンタルホテルだってめちゃくちゃに荒らしまくります。「コンチネンタルホテル内での殺しは厳禁(争いもダメ)」という、これまでのシリーズで重視されてきた裏社会ルールをあっさりと踏みにじってくるわけです。
こうなってしまった以上、ジョン・ウィックは籠城とかは一切できず、徹底して攻めの姿勢でいくしかないです。
物語自体は、ずっと一貫して「離職させてくれよ!」って話なのですが、今作では主席連合のクソっぷりが露わになり、離職を望む労働者へのイジメみたいな様相が過激になっていました。
わけのわからない面倒な手続きをさせたり、無理難題な仕事を押し付けたり、同業者からの集団攻撃で孤立させたり…。あげくには自分で作ったルールを自分で破る…。こういう会社、現実にいるよね…。
それにしても今作の“ビル・スカルスガルド”演じるグラモン侯爵を見ても思ったけど、主席連合ってかなり雑に運営されてるよね…。よくこんな陳腐な体裁であれだけの殺し屋をコントロールできていたなと思います。カネだけの権力で調子に乗っているだけの奴なみんなこんなもんですけどね。
今回はついに決闘という西部劇そのまんまなルールを適用して、ジョン・ウィックは業界に文字どおり銃を突きつけます。
やっぱり最後の手段はこれなんです。ストライキもダメ、労働法も守らない…そんな会社は実力行使でぶっ潰すしかありません。クーデターです。
決着は一瞬。個人的には「アイツだけ殺せばそれでOKになるのか?」とすごく心配なんですけど(主席連合を完全に壊滅させないとマズくない?)、たぶん殺し屋さんたちをもっと総動員すれば、普通にこの業界、いくらでも転覆できるんでしょう。
ジョン・ウィックは労働者の模範になってくれましたよ。
階段は人生。転げ落ちると止まらない
『ジョン・ウィック コンセクエンス』のエンターテインメントとしてのアクションに関して言えば、今作もやりたい放題でした。
前半は、大阪のコンチネンタルホテルを舞台に、東アジア風味のアクションのてんこ盛り。これは完全にハリウッドの考えるヘンテコなアジア観を土台にしたアクションなんですけど、まあ、それがやりたいならもう何も言うまい…。ホテルに力士のボディガードがいるんだもの、ツッコミはしきれない…。
シマズ・コウジを演じる“真田広之”の刀アクションは変わらずの切れ味ですし(でもここでも死ぬけどね)、ケインを演じる“ドニー・イェン”の盲目の達人戦士っぷりもね。それにしても『ローグ・ワン』といい、外国人も『座頭市』が本当に好きだな…。
アキラを演じた“リナ・サワヤマ”は、なんだかジョン・ウィックみたいな戦い方をしていましたね。ジョン・ウィックは近接戦闘術「ガン・フー」が本来の基本スタイルなのですが、このアキラは弓矢で近接戦をしており、わざとジョン・ウィックとシンクロさせているのかもしれないです。
個人的に本作で一番好きなアクション・シークエンスは、後半の凱旋門でのぐるぐるカーチェイス&戦闘ですね。これまでも車を使って物理的に踏んだり蹴ったりな目に遭うアクションがありましたが、その最終形態みたいなハチャメチャさでした。あれはもう洗濯機の中です。どんどん轢かれまくるのが本当に荒唐無稽で笑ってしまう…。ジョン・ウィック、普通はあそこで死んでるからね?
そしてサクレ・クール寺院まで到達する最終関門、長すぎる階段のアクション。満身創痍の中で「これを登るのかよ」という顔をするジョン・ウィックに、申し訳ないけどまた笑ってしまう…。
あの階段を延々と落ちまくるシーンとか、「もういい、もう頑張った! だからそれくらいにして!」って言いたくなる…。
その前にあったドラゴンブレス弾で建物内を突破する場面での上から視点もカッコよかったですね。あそこはもう芸術的な美しささえありました。だから余計にその次の階段がおかしいのですけど…。
あと今作の犬担当でもあるトラッカー(ノーバディと名乗って正体を明かさない)は、これまでのシリーズの中で一番に犬への優しさに溢れていました。きっと“チャド・スタエルスキ”監督も最後は犬に優しくしようと思ったんですよ。
最後はジョン・ウィックは腹を撃たれながらもグラモン侯爵を射殺し、やっと自由になれました。けれどもそれは致命傷のようで、妻ヘレンを思い出しながら、日の出の中でゆっくりと倒れていき…。次のシーンはジョン・ウィックの墓であり、彼は死んだのか、それとも死の偽装なのか、それは曖昧です。
ただ、このフランチャイズ、全然終わらないことがすでに決定済みで、5作目もアナウンスされ、スピンオフ映画『Ballerina』も来年公開予定で、2023年9月には前日譚ドラマシリーズ『ザ・コンチネンタル』の配信も迫っています。配給のライオンズゲートがこの売れる人気フランチャイズを終わらせるはずもないので、作品自体は作中の主人公並みになおも酷使されそうです。
次は誰が踏んだり蹴ったりな目に遭うのかな…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 94% Audience 93%
IMDb
7.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved. ジョンウィック チャプター4
以上、『ジョン・ウィック コンセクエンス』の感想でした。
John Wick: Chapter 4 (2023) [Japanese Review] 『ジョン・ウィック コンセクエンス』考察・評価レビュー