3作目は復讐にんじゃ銃ばんばん…映画『ジョン・ウィック3 パラベラム』(ジョンウィック チャプター3)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年10月4日
監督:チャド・スタエルスキ
ジョン・ウィック パラベラム
じょんうぃっく ぱらべらむ
『ジョン・ウィック3 パラベラム』あらすじ
とある事情から、一流殺し屋が集う「コンチネンタルホテル」の掟である「ホテル内で殺しはおこなってはいけない」を破ってしまったジョン・ウィック。聖域から追放された彼を待っていたのは、組織による容赦のない粛清の包囲網だった。刺客たちがさまざまな殺しのスキルを駆使し、賞金首となったジョンに襲いかかるが…。
『ジョン・ウィック3 パラベラム』感想(ネタバレなし)
あれ、なんで戦っているんだっけ?
これまでの『ジョン・ウィック』。
人生に酷使されて疲れたようにベンチに座るこのヒゲ面の男。この男の名前は「ジョン・ウィック」。タイムトラベルしたり、地獄に行ったり、爆発バスに対処したり、仮想現実世界で戦ったり、悪魔を祓ったり、宇宙生命体になったり、天狗に拾われたり、それはもう酷い目に遭った。もうそろそろ平穏な余生を過ごしてもいいはずだ。そう思ったジョンだったが、ついこの間まで仕事していた職場(殺し屋業)を辞めて最愛の女性とラブラブ生活を送っていた矢先、その女性は病で亡くなってしまった。
絶望に打ちひしがれるジョン。またかつての友と一緒に時間旅行でもしようかとボンヤリ考えていると、仔犬が贈られてくる。それは今は亡き愛する女性の最後の置き土産だった。犬の可愛さという暴力にすっかり心を撃ち抜かれたジョンは、“僕のワンダフルライフ”を過ごす充実感を得る。
しかし、脚本家は残酷だった。突如、マイホームにノックしてきた女たちに地面に埋められた。これはまだ許せる。ところが次にノックもせずに現れたチンピラどもに愛車を奪われ、さらにはまだ幼い愛犬さえも殺されてしまった。マイ・ホビーとマイ・ベイビーをいっぺんに喪失し、ジョンは今度ばかりは黙っているわけにはいかなかった。
強盗の正体は、一大勢力を築くロシアンマフィアの息子なのはわかっている。復讐の炎を胸に燃えさせて、銃を手に取ったジョンは、さっそく憎き敵を探す。
…瞬殺だった。
巨大なロシアンマフィアを素早く単独で壊滅させて、途中で新しい犬も調達して、意気揚々と家に帰る。やっと本当に静かな暮らしができる。かつての愛する女性との思い出が詰まったこの我が家で。何をしようか。クローン技術を使って愛する女性と子犬を蘇らせるのもいいかもな。
…家が全焼した。
原因はイタリア系犯罪組織からの暗殺の依頼を断ったからだった。仕事は辞めたはずだが、契約の問題だという。なんてブラック企業なんだ。
労働組合も労働基準監督署も役に立たない。仕方がないのでターゲットの殺害仕事をそそくさと片づけるジョンだったが、今度は口封じで殺されそうになる。しかも、ニューヨーク中の殺し屋に命を狙われるハメになった。その渦中、ホテル内で“殺し”はしてはいけないというルールを破ったジョン。これによってジョンは高額の懸賞金がかけられる存在になった。たぶん顔バレもしているから、ネットにも写真があがっているだろう。街中の殺し屋に暗殺指令が下るまであと1時間。とことんついていないジョンは愛犬とともに街を駆ける。逃げ場はあるのだろうか…。
以上が『ジョン・ウィック』とその続編『ジョン・ウィック チャプター2』のあらすじです。なお、ところどころ嘘が混じっているので、本当の物語を知りたい方は映画をその目で見てください。
そんな“キアヌ・リーヴス”が最高に輝く『ジョン・ウィック』シリーズ、ついに3作目の登場です。その名も『ジョン・ウィック パラベラム』。邦題に「チャプター3」とついていませんけど、3作目です。
1作目は前菜、2作目はメインディッシュだとしたら、3作目はメインディッシュのおかわりです。え、おかわりなんてあるの? あるんです、このレストランには。ちょっと味付けは変えてますので大丈夫。
少年漫画みたいな世界観と上乗せしまくり展開で一部の嗜好を持つ観客を夢中にさせたこのシリーズですが、3作目はさらにネタ化をパワーアップさせ、もはや“キアヌ・リーヴス”がやりたいだけの絵がてんこ盛り。究極の自己満足。でも私も大満足。
男をナルシズムを否定する『アド・アストラ』を素晴らしい映画だと称賛しておきながら、男のナルシズム全開の『ジョン・ウィック』を最高だと絶賛している私…なんて優柔不断なんだ。でも、いいんです、全部好きなんです(自己完結)。
それでも批評家は2作目以上に3作目となる『ジョン・ウィック パラベラム』を高評価していますし、興行も順調で、こんな右肩上がりを続けるアクション映画、珍しいです。これは…10作くらい、いっちゃうんじゃないか(いけ、いけ)。あ、ちなみにこれはもうネタバレとか関係ないし、発表されている事実なので書いてしまいますけど、もうすでに4作目の製作も発表済みで公開日も決まっています。クライマックスじゃないです。
物語は完全に2作目のエンディング直後から始まり、未見さんお断りなので、過去作鑑賞は必須。そもそもこのシリーズのノリについてこれない人は論外なので、ファンだよ、キアヌと一緒なら死んでもいいよという方のみ、ぜひとも劇場にお越しください(銃は持ち込まないでください)。
オススメ度のチェック
ひとり | ◎(脳から汁が出る興奮) |
友人 | ◎(話のネタで盛り上がる) |
恋人 | ◯(キアヌと交際しよう!) |
キッズ | ◯(将来の夢はキアヌ!) |
『ジョン・ウィック3 パラベラム』感想(ネタバレあり)
無限に広がる世界観
今や『ジョン・ウィック』シリーズは当初の時点では想像もできない「え、そんな世界観だったの?」という、もはや『マトリックス』に匹敵する独自ワールドを際限なく展開しており、ちょっとやそっとでは未見の人に解説しきれないのですけど…。びっくりなのは2作目で「うわ、凄い世界を広げたな…」とその風呂敷の盛大な広げ具合に口をあんぐり開けていたら、3作目『ジョン・ウィック パラベラム』ではその風呂敷を畳むどころか、さらにこれでもかと広げたという、もうどこからツッコんでいいのかわからない発展のさせ方。ほとんど『シャークネード』みたいなB級映画のノリですよ。
よくもまあ、こんな中学生の考えた脳内妄想を具現化するみたいなことをやらかしたなと感心すると同時に、“キアヌ・リーヴス”がすごく楽しそうで、私もハッピーです。はい。
さすがに怒涛の世界観一気飲みをしてしまったため、私も頭が追い付いていないので、少し整理がてらまとめると…。
まずこのシリーズの世界の裏社会では“殺し屋”が結構います。過剰だろうってくらい実は潜んでいます。絶対に供給過多ですよ…。
その裏社会にはルールが2つあるそうで、そのひとつが「コンチネンタルホテル内での殺しは厳禁(争いもダメ)」ということ。このコンチネンタルホテルは殺し屋専用のホテルで、一種の拠点みたいな場所。殺し屋の人たちが使える独自の通貨があって、裏稼業の報酬で支払われるそれで宿泊などのサービスを受けられ、今回の『ジョン・ウィック パラベラム』では武器の提供や死体の処理などもやっていることが判明。しかも、ジョン・ウィックとは旧知の仲であるウィンストンが支配人を務めるニューヨーク以外にもこのホテルは存在するようで、今作ではソフィア(彼女自身も元殺し屋)が支配人となっているモロッコのホテルが登場。ホテルの他にも殺し屋通貨で利用できるサービスはたくさんあるみたいで、作中ではタクシーや闇医者も活用していました。
そしてもうひとつのルールが「“血の誓印”は厳守」という点。この“血の誓印”というのは、相手と血の拇印をもって契約として交わした印のことで、これがある限り、契約者は誓印の持ち主に1度だけ望みを叶える義務があるらしく、拒否はできません。ジョン・ウィックは2作目でこの“血の誓印”のせいで泥沼にハマることになるわけですが、3作目の本作では逆に“血の誓印”を使ってソフィアを仲間にするなど、逆転構造があってユニークです。
正直、この2つ以外ルール無用らしいので、もう実質何でもありなんですが、一体今までどうやって裏社会の秩序を守っていたんだろう…。
また、裏社会のGoogleみたいなポジションで膨大な情報ネットワークを管理しているのが「バワリー・キング」の地下組織。基本は伝書鳩とホームレスを介しての情報網なのでハッキングなどはされないという、最強セキュリティ。2作目から登場していましたが、今作ではさらなる底知れぬ存在感をラストで見せ、まだまだ何か隠し玉がありそうな予感。やっぱり“闇Google”は怖いな…。
私も俺も、復讐したい
とまあ、ここまでの世界観はだいたい2作目の範囲なのですが、3作目『ジョン・ウィック パラベラム』はここからが凄い。
何よりもこの裏社会を牛耳るトップの存在がしだいに明らかになりました。それが「主席連合(ハイテーブル)」と呼ばれる存在で、世界の犯罪組織で権力を持つ12人のメンバーで構成されているのだとか。当然、コンチネンタルホテルもこの傘下。逆らえません。
実はジョン・ウィックが過去作で殺害したロシアンマフィアのヴィゴやイタリアンマフィアのサンティーノはその上位メンバーらしく、すでにガンガン喧嘩を売ってしまっている状態。ジョン・ウィックさん、えらいところに手を出してしまいました。
今作では主席連合が秩序を守るべく(いや、秩序なんてあるのか、余計に乱してないか?)、「裁定人」という人間を派遣してきます。このキャラがまた不気味で、現状は命令を冷酷に出しているだけですが(もしかしたら戦ったらすごく強いかもだけど)、オーラがあるキャラ。演じているのは“エイジア・ケイト・ディロン”で、ドラマシリーズ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の出演で有名ですね。ちなみに“エイジア・ケイト・ディロン”はノンバイナリーです。
その裁定人が戦闘部隊として送り込んでくるのが、ゼロという男が統率する暗殺集団(SHINOBI)。なぜか「きゃりーぱみゅぱみゅ」の「にんじゃりばんばん」が流れる寿司屋という、全日本人観客がズッコケる場面もあるのですけど…(フグをそういうことに使わないでください)。ほんと、あれ、なんなんだろう。わかっていてギャグにしているのか、素でアレがマッチしていると思っているのか…。『アベンジャーズ エンドゲーム』といい、日本描写、変だよ…ハリウッドさん…。
こんな感じでついに倒すべき“最強の敵”が明らかになる、少年漫画で言えば一番盛り上がる最初の山場となった3作目。一応、言っておきますけど、この『ジョン・ウィック』シリーズ1~3作の出来事は連続しているので全部合わせても1週間程度以内に起きたことなんですね。いや、ハードスケジュールすぎるだろう(ただ、多少の時空のねじれが起きている気も…)。
これまでと違うのは過去作では1作品の中で「強襲される→反撃する」の2段階展開があったわけですが、今回は「強襲される」の部分だけ。つまり、完全に『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』と同じ形式なんですね。
タイトルにもなっている「パラベラム」は、ラテン語の警句「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ(Si vis pacem, para bellum)」に由来し、ドイツ武器弾薬工業(DWM)が開発した「パラベラム弾」としても名が残っていますが、まさに復讐の準備をするターンだけを描き切った一作でした。
お望みのアクションをご用意しました
そんなどでかい世界観があってもやっていることは“キアヌ・リーヴス”のやりたいアクションのみ。そう、そういう映画です。
監督は2作目に続いて“チャド・スタエルスキ”。無論、アクションは今回もマニア垂涎のカッコよさ。ちゃんと新しいことをやるのが素晴らしい。
1作目は体術と銃撃を組み合わせた近接戦闘術「ガン・フー」というコンセプトがありましたけど、もはやこの映画はそれだけを見せる単体芸サーカスではありません。演目はバラエティ豊か。
図書館では長身相手に本で戦う「ブック・フー」を見せ(マネしないでね)、なんかしらんが刃物が無数にディスプレイされている廊下では「ナイ・フー」で切りつける刺し殺す…最後は渾身の斧投げ。
馬小屋へ逃げ込むと、馬を使って(文字どおり、馬には乗っていないのが爆笑)の戦闘術を披露。そのまま乗馬で街を疾走し、バイクに追われながらのホースチェイス。馬で身を隠しながらの射撃など、西部劇のアレを現代のニューヨークの街でやってみせます。
なお、2作目では車を使っての「カー・フー」を披露していましたが、今作では逆に敵にやられてボコボコになってました。こういう逆転構造、ほんと、このシリーズ上手いですね。
そしてついに待ってました。犬との連携バトル。まあ、やるのはジョン・ウィックではなく、ソフィアなのですけど(“ハル・ベリー”が超クール)、いやあ、1作目の頃から期待していたことを実現してくれるなんて。なんて“わかっている”映画なんだ。高いところの敵を踏み台ジャンプで攻撃する犬とか、そう、これが見たかったんですよ。
後半のホテル籠城戦は「ガン・フー」に立ち返りつつ、ゲームっぽい殲滅バトルに。敵が防弾装甲のせいで何発か撃ち込んでもやられないとか、最終ステージの防御力の高いザコ敵みたい。
ラストはゼロとの「オマエオコロスノハオレシカイナイ」の対決。侍の刀とシラットを合わせた戦闘術で魅せてきます。ちなみに駅でのシーンで、このハゲ男が普通に瞬間移動するんですけど、ジョン・ウィックも俺もできると言わんばかりに瞬間移動するのには笑ってしまった。完全に超人じゃないか。そんな使い方したらいくらなんでも刀、折れるよという、アグレッシブ・“カタナ”スキルで決着。“キアヌ・リーヴス”のアジア魂、ここに極まれり。
ラストで燃えたぎる復讐心を胸にジョン・ウィックは何をするのか。盛大なフルボッコ・タイムを期待して私の心はワクワク。ジョン・ウィックの場合はアベンジャーズと違ってひとりでサノスを倒すようなものですからね。4作目ではチームを作るかな。ソフィアとかシャロンとか、味方になりそうなメンバーはいるし。個人的には親族とか出てきて、お年寄りアクション&子どもアクションも見たい。
うわ~、妄想が止まらないぞ~。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 90% Audience 87%
IMDb
7.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★
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続編の感想記事です。
・『ジョン・ウィック コンセクエンス』
作品ポスター・画像 (C)2019 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ジョンウィック3
以上、『ジョン・ウィック パラベラム』の感想でした。
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