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『ワンダーウーマン 1984』感想(ネタバレ)…2作目はリアルの世界を救えるか

ワンダーウーマン 1984

2作目はリアルの世界を救えるか?…映画『ワンダーウーマン 1984』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Wonder Woman 1984
製作国:アメリカ(2020年)
日本公開日:2020年12月18日
監督:パティ・ジェンキンス
恋愛描写

ワンダーウーマン 1984

わんだーうーまん1984
ワンダーウーマン 1984

『ワンダーウーマン 1984』あらすじ

スミソニアン博物館で働く考古学者のダイアナには、幼い頃から厳しい戦闘訓練を受け、最強のスーパーパワーを秘めた戦士「ワンダーウーマン」という、もうひとつの顔があった。1984年、人々の欲望をかなえると声高にうたう実業家マックスの巨大な陰謀により、世界はかつてない大混乱に陥る。しかも、ワンダーウーマンの心を揺れ動かす存在も現れてしまい…。

『ワンダーウーマン 1984』感想(ネタバレなし)

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次は何を救うのか

アメコミ映画は基本的に誰かを救う物語を描くものです。それが家族であれ、恋人であれ、故郷の町であれ、国であれ、地球であれ、とにかく救う。それがヒーローというものです。

しかし、作中のお話の中だけでなく、アメコミ映画自体が本当に何かを救ってしまうような場外での奇跡も起きます。例えば、2017年の『ワンダーウーマン』は当時絶不調だったDC映画を救う、とてつもないインパクトを与えました。「DCエクステンデッド・ユニバース」という一連のシリーズ群が低迷していたのは今さら語るのも虚しくなってくるので詳細を割愛しますが、その暗い空気を『ワンダーウーマン』は痛快に破壊してくれました。以降、DC映画は基本的に好調です(まあ『ジャスティス・リーグ』という黒歴史を残しましたが)。DC映画の流れを変えましたね。

そしてそれだけではありません。当時のハリウッドを席巻したMeTooムーブメントを始めとする女性差別の告発。なんだかんだで女性を蔑視してきた醜い業界体質が暴かれる中、この『ワンダーウーマン』は女性監督による女性主人公の女性主体ストーリーで大成功をおさめ、ハリウッドに転換点をもたらしました。男性を楽しませるだけの接待のような女性キャラクターを描く必要はない。女性のための映画を作っていい。もう映画は男性中心のコンテンツではありません。男なんて二の次でいいのです。『ワンダーウーマン』は映画業界の女性も救いました。

そんな先陣を切った正真正銘のヒーローである『ワンダーウーマン』。その続編が満を持して2020年に公開。それが本作『ワンダーウーマン 1984』です。

そしてこれは運命なのか、またもや本作にはリアルで救わなければいけない大役が圧し掛かってきました。それも今度のものは史上最大の危機です。

世界を襲うパンデミック。このコロナ禍によって劇場は相次いで閉鎖。さらに客足は遠のき、大作不足に陥り、業界全体が衰退しました。映画館が待っているのは自分たちに光を与えてくれる新作のブロックバスター大作です。『ワンダーウーマン 1984』はその役割を果たせるのは間違いありません。まさか2作目では映画業界そのものを救わないといけないなんて…誰が想像したでしょうか。

しかし、そこに水を差す事態が。ワーナーの劇場公開&ネット配信の同時展開の発表です。これによって『ワンダーウーマン 1984』を始め、以降の2021年のワーナー配給作品は全て動画配信サービスでも同時的に扱われることになり、映画館側の強烈な反発を招きました。まさか配給会社が真の黒幕になるなんて、これがフィクションなら面白い筋書きだと喜ぶのですが…。

とにかく『ワンダーウーマン 1984』はかつてないほどに厳しい戦いを強いられることに。そんな正義のヒーローの勇ましい姿を見届けるのも、映画ファンとしてこのうえなく格別です。パンデミック下で最高の全米オープニングを記録しているようで頑張ってほしいです。日本では劇場公開オンリーですけどね。

『ワンダーウーマン 1984』は1作目の続編ですが、タイトルにもあるとおり1984年が舞台になります。ワンダーウーマン自体はほぼ老化しないので姿は変わらず。今回も盛りだくさんなエンタメです。

監督は“パティ・ジェンキンス”が続投。彼女は「スター・ウォーズ」映画の新作『Star Wars: Rogue Squadron』を監督することも発表されましたし、本当に史上最も成功した女性監督になりましたね。

もちろんワンダーウーマン役はイスラエル俳優の“ガル・ガドット”。今や彼女以上のハマりっぷりは考えられないほどです。今作ではギャラも十倍以上増えたのだとか(逆に1作目はどれだけ少なかったのか…)。

そして前作にも登場した“クリス・パイン”もまたもお目見え。また、今作から『ゴーストバスターズ』(2016年)など主にコメディで大活躍の“クリステン・ウィグ”、さらにすっかり『マンダロリアン』の中の人という印象で固定化された感じもする“ペドロ・パスカル”も。この2人はとくに変化の激しい演技をしてくれているので観ているだけで楽しいです。

加えて、今作ではスペシャルゲスト俳優も…。これは最後まで観てのお楽しみ。

ちなみに本作の音楽を手がけるのは“ハンス・ジマー”なのですが、以前はもうこういうアメコミ映画の仕事はしないって言ってたのに…なんなんだこの清々しいほどの反故は…。

『ワンダーウーマン 1984』は劇場を救えるのか、そのためには観客の力も合わせないと…。

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『ワンダーウーマン 1984』を観る前のQ&A

Q:「ワンダーウーマン」ってどんなキャラクター?
A:アマゾン族の王女で強力なパワーを持った超人です。身体能力や戦闘能力は最強で、人間の通常武器はまず効きません。
Q:スーパーマンやバットマンとの関係は?
A:2016年の『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』で喧嘩を仲裁し、2017年の『ジャスティス・リーグ』では共闘しました。
Q:『ワンダーウーマン 1984』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:1作目の『ワンダーウーマン』と話が続いており、そこで登場したキャラも出てくるので必見です。『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』や『ジャスティス・リーグ』は時間軸的には未来の話なので観てなくても困りません。

オススメ度のチェック

ひとり ◎(ファンは必見。映画を救える)
友人 ◎(紹介すればもっと映画を救える)
恋人 ◎(ロマンス要素も多めです)
キッズ ◎(アメコミ映画ファンを育てる?)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ワンダーウーマン 1984』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):願いを叶える

海にポツンと存在する「セミッシラ」という島。ここは外界からは隔絶されており、その存在を知る者はごくわずか。この島では女性だけで構成されるアマゾン族が暮らしており、みな屈強な戦士で、日夜鍛錬を欠かすことはありません。彼女たちは神の力を持っており、人間とは比べ物にならないほどに長寿です。

アマゾン族の王女ダイアナは、幼い頃から戦士になることを夢見ており、しだいに周囲に認められるようになっていました。そして、今日、身体能力を示す競技大会に飛び入り参加することになりました。他の参加者は全員が大人です。母であるヒッポリタ女王に見守られ、小さなダイアナは自信に溢れていました。

いざスタート。内容は特定のルートを通過し、元のスタジアムに戻ってくること。障害物を見事な身のこなしでクリアするダイアナは体の小ささを活かす臨機応変な賢さも持っています。海に飛び込み、全力で泳ぎきると、今度は岸で馬にまたがり、弓矢を手にし、目標に放ちます。青い煙があがり、ダイアナがトップであることが観衆にもわかります。森を疾走し、なおも独走。しかし、不注意で落馬、馬は行ってしまいました。一気に最下位に転落。

けれども、冷静に機転をきかせ、坂を滑り降りて、先回りに成功。またも馬に飛び乗り、挽回しようと猛追します。スタジアムに戻ってくるとラストスパート。一気に追い抜き、誰よりも先に最後の槍を投げようとします。これで勝利。ところがその瞬間にアンティオペ将軍より失格を命じられてしまい、喜びは目前で消え失せました。

落胆を隠せないダイアナ。せっかく頑張ったのに…。ダイアナの母であるヒッポリタ女王は「必ずあなたの時代がくる」と優しく慰め、「嘘からヒーローは生まれない」と諭します。目の前にはかつてゴールドアーマーを纏って果敢にもアマゾン族を守り抜いたという伝説の戦士の像が立っていました。

それから年月が経過。80年代。ダイアナは大人に成長し、今は人間の世界で暮らしていました。普段はスミソニアン博物館で働く考古学者。しかし、裏では「ワンダーウーマン」として人知れずに持ち前の驚異の身体能力で人助けをしていました。今日もショッピングマーケットで起きた窃盗によってパニックになる中、人質の子どもを救出し、犯人たちを一網打尽にしたばかり。

そのダイアナは、夜、ひとりで食事します。彼女はかつての大戦時に初めて人間の世界にやってきて、そこでアメリカ軍のパイロットであるスティーブ・トレバーと恋に落ちました。しかし、強大な敵が出現し、そこでダイアナは真のパワーを解放したものの、スティーブはその身を犠牲に世界を救ったのでした。

スティーブのことをダイアナは一時も忘れたことはありません。時代は変わり、あの時よりも飛行機が身近になった世界。夜空を飛ぶ飛行機に愛した人への想いを馳せます。

職場のスミソニアン博物館では新任のバーバラという学芸員が一緒に働いています。彼女はドジで、何かと不器用です。でも素直で悪い人ではありません。共に食事をして、すっかり仲良くなります。バーバラが夜に歩いているとひと気のない道で男に絡まれますが、ダイアナが助けることもありました。

ある日、FBIより博物館に強盗事件の証拠品として古美術品がいくつか持ち込まれ、鑑定の依頼を受けます。その中に不思議な石がありました。ダイアナは新任の学芸員バーバラと共に調査を始めると、それは所持者の願いを1つだけ叶えると伝えられている魔力を持つ石「ドリーム・ストーン」だと推察されます。

でもさすがに半信半疑で2人は信じていません。もしそれが本当ならかつての恋人にもう一度会って普通に暮らしたいとダイアナは気軽に願ってしまいます。一方、密かに石を自室に持ち込んだバーバラは「ダイアナになりたい」と切望。クールで、セクシーで、スペシャルなあんな存在に…。

次の日、博物館にブラック・ゴールド社の経営者マックス・ロードが来訪してきます。「あなたの願いは全て私が叶えよう」と陽気な決まり文句を言い放つCMが全米に流れていて、世間ではすっかり有名な人です。しかし、その実態は経営状況は悪化しており、石油もろくに採掘できず、共同経営者にも逃げられる散々でした。

マックスがここに来た理由はひとつ。ドリーム・ストーンの噂を聞きつけ、それを手に入れて野望を叶えようと企んでいました。

そしてそれぞれの願いは叶ってしまうことに…。ダイアナはスティーブを蘇らせたかわりに超人的パワーを失い、バーバラは魅力と身体能力を手に入れ、マックスは自身がドリーム・ストーンとなります。

欲望が際限なく具現化した世界に未来はなく…。

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80年代と現代風刺が入り乱れる

『ワンダーウーマン 1984』はさすがにエンターテインメント大作なだけあって、アクション、アドベンチャー、ロマンス、サスペンス、社会風刺…何でも盛り込んだ豪華さ重視の「おせち料理」みたいになっていました。

全体的なルックは1作目からガラッと変わっています。時代が違いますからね、大戦時から80年代にチェンジし、しっかり映像の質感もキャラクターのセンスも80年代風になっているのが特徴です。1作目にあったミリタリー風に満足していた人はちょっと面食らうかもしれません。

起こる事態も荒唐無稽です。何でも願望を叶えてしまう男の出現ですからね。リアルでドラえもんが登場したらたぶんあんな感じになるんですよ。

この突拍子もなさについていけない観客もいたかもしれませんが、そもそもアメコミってそういうものなので割り切るしかないです。『ワンダーウーマン 1984』を観ていると、クリストファー・リーヴ主演の『スーパーマン』シリーズを強く連想しますね。今作のヴィランであるマックス・ロードもどことなくレックス・ルーサーっぽい暴れっぷりですし。今、DCは映画ではスーパーマンを描かなくなりましたけど、まさにワンダーウーマンがその役割を担っています。

欲望パニックとして起こる世界的危機も、ちゃんと80年代らしさがあります。この時代はエンターテインメント文化が花咲き、大衆の妄想が具現化していました。技術発展もあってフィクションとリアルの垣根があやふやになり始めた時期でもあります。例えば、作中でマックスにそそのかされてアメリカ大統領が衛星を使って弾道ミサイルを迎撃する通称「スター・ウォーズ計画」を話題にします。結局、これは構想に終わるのですが、スペースオペラというフィクションが現実の軍事戦略に影響を与えていたわけです。

80年代の社会や国際情勢をコミック流に風刺すると同時に『ワンダーウーマン 1984』は今の現代社会、つまりトランプ時代を貫くテーマ性も内包しています。

自らドリーム・ストーンと化したマックスはまさしく現在猛威を振るっているポピュリスト権力者そのもの。自分すらも欲望に押しつぶされそうになっているさまは痛々しく、哀れです。

あの終盤の、正しさを見失い、個人の願望だけが暴走する世界の終末という映像は、それこそ今のネット世界でよく見る光景と同じでした。

『ワンダーウーマン 1984』は1989年の冷戦終結につながる歴史にワンダーウーマンが関与していく物語ですが、並行して現代のカオスに終止符を打ってほしいという切なる願いも感じます。

この巧みな二重風刺を成立させているだけでも、“パティ・ジェンキンス”監督、かなり積み重ねとして考えていますし、シリーズの方向性が明確に見えますね。

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学問のワンダーウーマンでいいのでは?

一方、そのスケールの大きいメインストーリーと並んで描かれるダイアナ自身のパーソナルな物語。

今回はあの死んだはずのスティーブが復活(体は別人だけど心はスティーブで、ダイアナにはスティーブに見えている)。そこでの2人のデートが1作目の反転になっており、スティーブが見知らぬ80年代文化(彼にとっては未来)に大興奮している姿が可愛いです。

飛行機デートも映像として綺麗ですし、まさかのここでワンダーウーマンおなじみの「インビジブル・ジェット(透明飛行機)」の出番になるとは…。

ただ、本作は個人的には惜しいなと思う部分もありました。とくにバーバラですね。彼女はワンダーウーマンとは真逆となる女性の立場を代表しています。魅力のなさに劣等感を感じ、それがドリーム・ストーンによって超人化したことで、チーターとして悪に動いてしまい…。

その動機はいいのですが、バーバラの物語の解決は何もしていないのは残念です。そもそも博物館のスタッフに美貌も筋力もいりません。学問への情熱だけでじゅうぶん魅力的のはず。そこに気づかせてあげるエンパワーメントをこのワンダーウーマンはしていないです。あの序盤の2人の他愛もない会話シーンはとてもよく、シスターフッドの予感を感じさせるのに、それは終盤は欠片もなくなるのはちょっと…。ただでさえDC映画は今年は『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』にてシスターフッドの極みを見せてくれたので、今回の『ワンダーウーマン 1984』はかなり後退したように見えますよね。

理想としては「あなたは学問のワンダーウーマンだ!」という肯定が欲しかったのですけどね。

終盤の展開もやや真面目過ぎたかなとは思います。『キングスマン』ほどふざけろとは言わないけど、もう少し肩の力を抜いてもいいような。まあ、この一途な真面目さもワンダーウーマンの魅力ではあるのですが…。

真実の投げ縄はワンダーウーマンにとっての象徴的なアイテムです。真実が軽視される今だからこそ、真実の大切さを語るヒーローがいる。“パティ・ジェンキンス”監督は3作目も企画中とのことですが、このコロナ禍で練り直しをしているようです。確かにヒーローの存在価値を問われる事態でしたから、ワンダーウーマンが何を救うべきなのか、熟慮しないといけないでしょう。でも真実の重要性は今以上に問われるわけで、やっぱりワンダーウーマンは必要です。

あと、最後の最後にでました、1975年からのテレビシリーズでワンダーウーマンを演じた“リンダ・カーター”がアステリアとしてサプライズ登板。実質、2人のワンダーウーマン。これは次に期待するなという方が無理ってものです。

とりあえず今は、世界中にいるワンダーウーマンな医療従事者とエッセンシャル・ワーカーに感謝!

『ワンダーウーマン 1984』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 59% Audience 74%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
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関連作品紹介

DC映画の感想記事の一覧です。

・『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』

・『アクアマン』

・『シャザム!』

作品ポスター・画像 (C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics ワンダーウーマン2

以上、『ワンダーウーマン 1984』の感想でした。

Wonder Woman 1984 (2020) [Japanese Review] 『ワンダーウーマン 1984』考察・評価レビュー