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『ラブソングに乾杯』感想(ネタバレ)…女性の友情の変化を繊細に描くウーマンス映画

ラブソングに乾杯

女性の友情の変化を繊細に描くウーマンス…映画『ラブソングに乾杯』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Lovesong
製作国:アメリカ(2016年)
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信
監督:ソー・ヨン・キム

ラブソングに乾杯

ラブソングに乾杯

『ラブソングに乾杯』あらすじ

仕事で長く家に帰らない夫を持つサラは、3歳になるやんちゃ盛りの娘・ジェシーの子育てに追われる日々を独りで過ごしていた。そこへ昔からの親友のミンディが訪ねてくる。気晴らしに外で出かけ、久しぶりに晴れやかな気持ちになるサラだったが、そんな二人の関係も年月とともに徐々に変わっていき…。

『ラブソングに乾杯』感想(ネタバレなし)

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男社会に隠れるウーマンス映画

男性同士の親密な友情関係を指して「ブロマンス(Bromance)」という言葉があります。映画にもこのブロマンスを描いた作品はたくさんあって、例えば、『スター・トレック BEYOND』にも登場したカークとスポックは典型的なブロマンスだし、『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』のスティーブ・ロジャースとバッキーもわかりやすいですね。たいていは途中で対立し合うも、なんだかんだで友情を再確認し、目的を達成する…というのがベタな流れです。ブロマンスは「ゲイ」や「BL」と違って恋愛及び性的な要素を含みません。まあ、オリジナルにはなくとも2次創作の現場でそのように解釈・発展されていくことはしばしばですが。
このブロマンスの女性版は「ウーマンス(Womance)」と言います。ところが、このウーマンスを描いた映画は、ブロマンスと比べて圧倒的に少ない気がします。そもそも女性キャラの数が乏しいという事情もありますが、やはり映画製作に関わる人、とくに監督に女性が少ないという理由も大きいでしょう。日本もアメリカも映画界は明らかに男性中心の世界です。
そんななかで女性視点の映画をインディペンデントながらも作り続ける監督がいます。そのひとりが“ソー・ヨン・キム”というアメリカで活動する韓国人の女性監督です。
その“ソー・ヨン・キム”の最新作『ラブソングに乾杯』はまさにド直球のウーマンス映画でした。本作は、インディペンデント・スピリット・アワードにて、50万ドル以下の低予算映画を選考対象とする「John Cassavetes Award」にノミネートされるなど、評価も上々。女性でしか描けないウーマンスの繊細な関係は、他にはない輝きがあります。
ウーマンスの関係を見事にみせてくれる主演は、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で登場した美女5人のうちニュークスと心通わせる姿が印象的だった赤毛のケイパブルを演じた“ライリー・キーオ”。そして、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ネオン・デーモン』での活躍が最近となる“ジェナ・マローン”
男性視点ばかりの映画だけでなく、こういう女性視点の映画がどんどん増えていくといいですね。

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『ラブソングに乾杯』予告動画

Lovesong Official Trailer 1 (2017) – Jena Malone Movie
↓ここからネタバレが含まれます↓

 

『ラブソングに乾杯』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):大丈夫?

幼い子に「起きて」とドンドンされて目覚めることになる女性・サラ。これがいつもの起床です。
3歳のジェシーを連れて外を歩きます。ジェシーはピンクの傘を持ってマイペース。
夫・ディーンに動画通話。ジェシーも父の顔を見られて嬉しそうです。夫は仕事でかなり忙しいようで、途切れ途切れの音声でそれはじゅうぶん伝わってきました。サラは冷静にその情報を整理し、いつになったら仕事が片付くのかと聞きますが「妻のために仕事の見通しをとは言えない」と夫は言います。
風呂に入っているジェシーに「私は良いママ?」と聞くサラ。ジェシーは自分で服を選びたがり、外にいるシカを窓から見たり…。天気は雷の鳴る雨です。
サラは家での子育ての連続に疲れ切ってしました。感情は失せ、沈黙しがちです。相談できる相手は身近にいません。このままではいけない。
ある日、車で出かけることにします。まずは駅、そこで迎えたのは友人のミンディ。「大丈夫?」と助手席のミンディは気軽に聞いてきます。ミンディにはサラの心の状態がわかっていました。
「家に帰りたくない」と涙ながらに漏らすサラ。薬を飲んでいるものの、無気力は変わらない。「自分を責めることはない」「あなたにすべてを任せる夫は最低だ」とミンディは励ましてくれます。
「気晴らしにいきましょう」
ミンディは代わりに運転し、サラの体に乗っかった重いものを肩代わりします。どうしてもジェシーを心配してしまうサラ。それをなだめるミンディ。久しぶりに笑顔がこぼれるサラ。
ジェシーは「ピザを食べたくない」と泣き出します。こんなストレスとずっと付き合うしかない自分。娘に嫌がらせをしているようで辛いと口にします。
今度は牧場で遊びます。そこで出会った気さくな男がジェシーの話し相手になってくれました。ロデオを見物。迫力の光景に大興奮。ミンディは例の男と仲良く会話。男は「行くなよ」と呼び止めますが、ミンディはサラと行動を共にし続けます。
夜。サラとミンディは家ではしゃぎます。本音を語り合い、普段は溜め込んでいた感情を発散。これまでの自分の悪事を暴露したり、セックスネタで盛り上がったり…。アナルセックスや3Pの話とか…。
こうして解放的な夜が更けていきます。

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女性は子育てのプロではない

男性視点の映画には男の考えるステレオタイプな女性イメージが満載です。男性はそれに自覚しづらいですが、本作『ラブソングに乾杯』のような映画を観ると、浮き彫りになって興味深いです。
まず、子育て。映画によく登場する、男の考えるであろう「女性(母親)の子育て」は、子どもの反抗に手を焼きつつも、男よりはテキパキと仕事をこなし、プライドとやりがいを持った姿が描かれがちだと思います。なんというか、保母みたいな子どもの相手をする仕事人的なイメージです。
対する本作は全然違う。サラは娘への愛情はもちろんあって、育児もちゃんとしているのでしょうが、こう、惰性感すら漂う、自身ではどうすることもできない“流れ”に身をまかせている感じです。決してタスクを理路整然とこなす仕事人ではないですよね。
この序盤の子育てパート。非常にわざとらしくない、素な感じがとても素晴らしかったです。ほとんどアドリブでまかせているのだと思いますが、ほんとに自然。母親の人は「これ、私だ」ってなるのではないでしょうか。
娘のジェシーがたまらなく愛らしく、いかにも「やんちゃ」という言葉がぴったりな言動で視線を釘付けにしてくれるのですが、おそらくジェシーの3歳と6歳の頃を演じたのは“ソー・ヨン・キム”監督の娘かな。自分の娘で知り尽くしているからこそのなせる雰囲気でした。

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男とペニスに乾杯

本作『ラブソングに乾杯』の主題はウーマンス、女性同士の親密な友情です。女の友情というものほど男性には理解しがたいものはなく、とりあえず男とは違う世界観のルールがあるんだなというくらいの認識ではないでしょうか。
サラとミンディは大の親友であり、サラにとってミンディは、子育て、そして夫との関係に苦しむ自分を慰めてくれる外部の人として描かれています。それこそ性の話題を気軽に語り合えるくらいの仲です。
そういえば、これも男性が考える女性イメージなのか「女性は下ネタを言わない」というのがある気がします。下ネタを言うのは男だ、みたいな。それも一面としては正しいし、セクハラという問題があるくらいですから、そうなんですが、当然女性も下ネタを話題にはするでしょう。お国柄もあるでしょうが、日本人だって大親友の女性同士だったら多少の性に関する会話くらいしても普通です。でも、不思議なことに多くの映画では女性がその程度の会話すらしないはなぜなのでしょうか。本作はバチェロレッテ・パーティーなど、下ネタの分量が非常に多く印象的でしたが、これが普通の女性の日常に見えます。
そんなセックス・トークもできる関係ですが、サラにも踏み込めないミンディの一面を垣間見たとき、サラは複雑な表情を見せます。この独特の距離感。でも、これは男女に限らずだと思いますが、大親友だから以心伝心であるとも限らないし、大人の友情ならよくありがちな気もします。学生時代のような友達のノリはなかなか引き継げないですよね。

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新しいウーマンスに祝福を

本作『ラブソングに乾杯』について他にも良いなと思った大きなポイントが「結婚の描き方」です。結婚は良くも悪くも人生の転機のひとつであり、たいていの映画では祝福すべき“プラス”に描かれます。一方の本作は、結婚というイベントを非常に引いた視点でみせてきます。これは芳しくない結婚後の夫婦生活を送るサラの視点で物語が進むからであり、既婚女性の結婚感のリアルさが感じ取れます。

ミンディの結婚によってサラとミンディの距離はますます遠くなっていく…そんな予感も漂わせつつ、一方で新しいウーマンスの誕生も予感させる終わりでした。つまり、それはサラと娘ジェシーとのウーマンスです。最後に頭をくっつける二人は、かつてのサラとミンディに重なるような、そんな感じです。

母にとって最高の女友達は娘なのかもしれませんね。

『ラブソングに乾杯』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 82% Audience 63%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

作品ポスター・画像 ©Netflix

以上、『ラブソングに乾杯』の感想でした。