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『SKINAMARINK スキナマリンク』感想(ネタバレ)…目に悪い観察ホラー

SKINAMARINK スキナマリンク

目に悪い観察ホラー…映画『SKINAMARINK スキナマリンク』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Skinamarink
製作国:カナダ(2022年)
日本公開日:2025年2月21日
監督:カイル・エドワード・ボール
SKINAMARINK スキナマリンク

すきなまりんく
SKINAMARINK スキナマリンク

『SKINAMARINK スキナマリンク』物語 簡単紹介

いつもの家族の家。いつもの部屋。いつもの廊下。真夜中に目が覚めたケヴィンとケイリーという幼い2人の子どもは、何かがおかしいことに気づく。親が消えてしまっている。家にあるはずのものが無くなっている。探してみるも不可解な謎は増えていく。どうすればいいのかもわからない。暗闇に飲み込まれる前にこの空間で何を目撃するのか…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『SKINAMARINK スキナマリンク』の感想です。

『SKINAMARINK スキナマリンク』感想(ネタバレなし)

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観客の目を試す実験映画?

映画には「実験映画」というものがたまにあり、それは通常ではなかなか見られないような実験的試みを行っている堂々とやっている映画を指します。

こういう実験映画というのはその名のとおり、とても普通からは外れるいわば例外的なアプローチをとっているので、一般的な観客にはあまり好まれません。どちらかと言えば、その実験映画に付き合ってもいいという覚悟のある観客が想定されますし、むしろ観客もまた実験の被験者みたいなものです

こうした実験映画の中にはその試みが非常に高く評価され、それどころかみんなマネするようになり、ジャンルの定番にまで発展するものもありますが、たいていの多くの実験映画は一発限りで忘れられるものかもしれません。

今回紹介する映画も実験映画といわれる類のそれですが、この映画はジャンルに影響を与えていくのでしょうか。

それが本作『SKINAMARINK スキナマリンク』です。

本作は2022年にファンタジア国際映画祭で公開され、2023年に北米で一般劇場公開されたカナダ映画となっています。

この『SKINAMARINK スキナマリンク』、初期の話題の始まりがやや変わっていて、オンライン映画祭のシステム上の不具合のせいで、この映画がダウンロード可能になってしまって、いわゆる海賊版の本編動画がネットに流出。しかし、それがTikTokやYouTubeなどでバズリ、逆に注目を高めてしまったという、なんとも製作者にとっては素直に喜びづらい複雑な状況に…。

それはさておきこの『SKINAMARINK スキナマリンク』はそれだけ話題になりやすい映画で、なぜなら実験映画的な特異な映像に仕上がっていたからです。

どういう映像なのかというと、家の中だけで展開されるホラー映画なのですが、ストーリーとキャラクターを中心にドラマチックに撮影するという一般的なことをせず、まるで見守りカメラのような固定的な視点だけで場面を繋いでいるのです。少し上下左右にゆっくり映像が動いたりすることもありますが、基本はほぼ静止。セリフもほとんどなく、画面に動きは見えづらいです。

ものすごく低予算で作られており、1万5000ドルくらいの製作費だそうです。観れば「これはおカネをかけていないな」と素人の私でもわかります。しかし、事前の話題性もあって大ヒット。200万ドル以上を稼ぎ、余裕の大成功をおさめました。

ただ、賛否は真っ二つ。というか、これは否定的な意見もしょうがない作りです。なにせとにかく尖った映像アプローチですから。

まず何よりも映像に動きがないのでとても集中力を要求されます。「何が起きるんだ?」と目を凝らし続けないといけません。ワンシーンでも異変を見逃すと、もう何かわからなくなっていきます。

正直言って、目が疲れる映画です。ドライアイになりそうです(なりそうというか、なる)。さすがに私も鑑賞後は目の疲労がいつも以上に堪えました。

映画館向きかと言われるとなかなか辛いものがありますね。上映鑑賞中に目薬を差すのも難しいし、映画館ってそもそも乾燥していることが多いし…。

さらに暗い映像が続くので映画館の上映の仕組み上、なおさら映像が暗くなりやすいのがまた辛さを上昇させてしまいます。加えて、作中ではかなりの長時間、よくあるテレビや蛍光灯のチカチカのような光の点滅がじんわりと続くせいで、それが目に疲労ダメージを蓄積させるんですよね。私はこの光が相当にキツかった…。

じゃあ、映画館で観ないほうがいいのかと言えば、これを家で観るのは集中力を持続させるのが大変だと思います。スマホで観るなんてもっと無理でしょう。一瞬ノイズや画面停止などの演出が入るので、下手したらスマホが壊れたのかと錯覚しますよ。

どういうかたちで鑑賞するにせよ、約100分の映画時間、私たち観客は試されることになります。目、頑張れ、目…。

『SKINAMARINK スキナマリンク』の鑑賞後は目のケアを忘れないようにしてください。

なんか途中で何かを見逃した気がするという人は、この記事の後半の感想を読んでもそれほど解説とかもしていないので参考にならないと思います。でも目のケアの方法だけは最後に載せています。むしろそっちのほうが大切です。

なお、本作はホラー映画ですがほぼ残酷な描写などはありません。そういう点でも異色のホラー映画です。

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『SKINAMARINK スキナマリンク』を観る前のQ&A

✔『SKINAMARINK スキナマリンク』の見どころ
★「見てはいけないものを見てしまった」という恐怖。
✔『SKINAMARINK スキナマリンク』の欠点
☆目が疲れる。

鑑賞の案内チェック

基本 少しだけジャンプスケアの演出があります。
キッズ 2.0
直接的な残酷描写はありませんが、子どもには退屈かもしれません。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『SKINAMARINK スキナマリンク』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(前半)

1995年。とある家。この家には子どもを育てる夫婦が暮らしていました。子どもというのは、4歳のケヴィンと6歳のケイリーです。まだ幼く手のかかる子たちでした。

真夜中に目を覚ますこともあります。そんなときはたいていは親を呼びます。

ある日、ケヴィンがちょっとした怪我をしましたが、ケイリーはケヴィンが夜な夜な無意識にベッドを離れて歩いているせいだと言います。夜中にケヴィンはドアを開けて部屋を出てしまっているのでしょうか。これくらいの年齢の子どもであれば確かにあり得ない話ではありません。

ところが、その日は父がいません。呼んでも返事はありませんし、父の寝室であろうとも人影がないような気がします。

ケヴィンとケイリーは親がいないだけでなく、別の違和感も感じます。薄暗い家の中、いつもの光景ではないような感じがするのです。ここにドアがあったはずなのに消えている…。ここに窓があったはずなのに消えている。あれもこれもない…。

不可解な現象に子どもの頭では理解が追い付きません。消えるなんてことはあるのか…。どうして消えてしまうのか…。次は何が消えるのか…。

ケヴィンとケイリーは、ここにいない父に頼りようもないので、ひとまずアニメを観て過ごすことにします。オモチャの散らかった部屋でテレビの画面だけが部屋を薄っすらと照らします。

今は何時なのか、とにかくまだ夜です。夜はいつまで続くのか、この子たちにはわかりません。もう眠ることもできません。

しかし、今度は天井に椅子が逆さまに置かれているのを発見します。椅子は落ちてきません。くっついているのでしょうか。手が届かない高さで佇んでいます。今まで見たことがない光景に子どもたちは呆然とするしかありません。

さらに1階のバスルームのトイレが消えてしまいました。跡形もありません。階段の先の2階にもトイレはありますが、真っ暗な空間だけが広がっているので怖くて近づけません。

そしてもっと恐ろしい出来事が起きてしまい…。

この『SKINAMARINK スキナマリンク』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/02/26に更新されています。
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観察ホラーは拷問か、新体験か

ここから『SKINAMARINK スキナマリンク』のネタバレありの感想本文です。

『SKINAMARINK スキナマリンク』を観始めて約10分後の私の心境は「え?これが100分も続くの?」でした。そう、何も覚悟も準備もなく座席についてしまった私は迷える子羊。もしくは実験動物になっているとも知らないネズミ。これからじっくり試されるのです。

コンセプトとしては「今からとある家の監視映像を見てもらいます。おかしいところがあったら言ってください」と指示されてひたすら映像を眺めることになったような感じ。

これは何でしょうか。「観察ホラー」というべき新ジャンルなのでしょうか。

1999年に『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』というホラー映画が公開されて大きな話題になりました。こちらはモキュメンタリーにおける「ファウンド・フッテージ」というジャンルを普及させる起爆剤となりました。ファウンド・フッテージというのは、誰かによって撮影されたもののその映像が長い間所在不明となり、その映像が何かしらの理由で発見されて、今まさにお披露目となる…といった設定を背景に持つサブジャンルです。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の場合は「魔女の逸話を題材としたドキュメンタリー映画を撮影するために森に入った学生が消息を絶ってしまい、1年後に彼らの撮影したフィルムが見つかった」という設定になっています。

『SKINAMARINK スキナマリンク』も一見するとファウンド・フッテージなのかなと思わせますが、全然背景の説明がありません

そもそもこの映像はこうやって撮られましたとかそういう設定はないようで、この画面視点自体が観客の見ている範囲を象徴するようなものでしかありません

そのため、観ている間ずっと妙にモヤモヤします。「おい、そこの下を映してくれよ!」とか「何が起きているんだ?」とか、わからないことが多すぎるのです。

一般的にファウンド・フッテージはカメラで撮った映像という概要になっていることが多いので、その映像も撮影者の視点で、いかにも「手持ちカメラで撮りました!」みたいな感じで、ブレまくったり、やたらその撮影時の臨場感がでます。そうやって観客にこの恐怖に没入させる…というのが狙いになってきます。「見てはいけないものを見てしまった」恐怖を強制的に共有するんですね。

対する『SKINAMARINK スキナマリンク』も「見てはいけないものを見てしまった」という点は一致しますが、前提として「これは何なんだ?」という疑問に全く答えないため、通常のファウンド・フッテージもの以上に観客を放置します。映像も基本は固定で、後半に少し登場人物の視点と一致しますが、なぜそうなったのかの納得いく理屈はないです。

もう「観察する」しかできないのです。だから耐久を余儀なくされる感覚が何よりも刻まれます。

この暗く荒い映像、光源も乏しい見えづらさ、映っているのが子どもゆえに何も解説じみたこともしてくれないシチュエーション。全部が観客に「汲み取る」ことを要求します。

たぶんこういうアプローチのビデオゲームならまだ成立すると思うのです。ゲームはプレイヤーが能動的に介入することを大前提にしているので、映像に注視し、そこで何か異常を見つけて、その発見動作が次の展開のトリガーとなり…というインタラクティブな楽しさを提供できます。

しかし、この『SKINAMARINK スキナマリンク』は観客が異常に気づこうか気づくまいが勝手に映像は進んで展開していきますからね。観察して、考察して、次へ…というアクションの楽しさに繋がりづらいです。

本当に冗談抜きでこれは観客を試してくる映画であり、ここまで静かに挑発的なホラー映画はなかなかお目にかかれないものでした。これを拷問的ととるか、新体験ととるか、そこは人それぞれですけどね。

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悪夢の抽象化の結果

『SKINAMARINK スキナマリンク』を監督したのは、カナダの映像作家の“カイル・エドワード・ボール”

何でも人々が見た実際の夢や悪夢を再現する映像シリーズを2017年にネット上で開始していたそうで、そうやって視聴者から寄せられた自分の悪夢の情報を集めていくと共通点があるのだとか。そして2020年にその悪夢映像化の流れで短編映画『Heck』を発表。この短編を長編映画化したのが『SKINAMARINK スキナマリンク』です。

ちなみにこのタイトルは北米で親しまれている子ども向けの歌「Skinnamarink」に由来するそうで、作中でも昔のカートゥーンが流れたり、チャッターテレフォンという電話のオモチャが印象的に使われたりと、全体的に幼児体験を彷彿とさせる要素が散りばめられています。

「みんなの悪夢を映像化しよう」という起点からしてもう実験的なので、これは実験映画になるべくして生まれた実験映画だなという感じですね。

おそらく寄せられた悪夢体験情報を基にしているのであえて肉付けせずに、多くの人の悪夢と重なるように抽象化を徹底した結果があの「一切背景の説明の無い」というアプローチなのでしょう。

『SKINAMARINK スキナマリンク』のような全編がこのアプローチとなる映画はそうそう現れないと思いますし、マネしづらいでしょう。部分的に演出として利用するなら全然ありですが…。『パラノーマル・アクティビティ』みたいなバランスのほうが大多数にはウケますしね。

悪夢を再現しようとしたら相手の目を疲れさせることになった…というオチが、妙に悪夢とはかけ離れたリアルな苦痛になっているのが何とも言えない…。

はい、ここで目のケアのお時間です。『SKINAMARINK スキナマリンク』を観て、なおかつこの記事をパソコンやスマホで読んでいるそこにあなた。目を酷使しすぎです。労わってあげてください。

テキトーに遠くの景色に目を移しましょう。そして目を左右上下に動かしてストレッチしてください。近いもの、遠くのもの…そんな感じで見る対象を変えて、ピントの調整も試してみましょう。たまにしっかりまぶたを開閉し、目の筋肉をほぐすのです。

目を閉じましょう。15秒くらい閉じて休みます。

そしてゆっくり目を開けたら…何か周囲で異変が起きてたらごめんなさい。

『SKINAMARINK スキナマリンク』
シネマンドレイクの個人的評価
5.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

作品ポスター・画像 (C)MMXXII Kyle Edward Ball All Rights Reserved

以上、『SKINAMARINK スキナマリンク』の感想でした。

Skinamarink (2022) [Japanese Review] 『SKINAMARINK スキナマリンク』考察・評価レビュー
#カナダ映画 #夢