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アニメ『多聞くん今どっち!?』感想(ネタバレ)…うたげメンタルクリニック

多聞くん今どっち!?

初診です…アニメシリーズ『多聞くん今どっち!?』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Tamon’s B-Side
製作国:日本(2026年)
シーズン1:2026年に各サービスで放送・配信
監督:永岡智佳
自死・自傷描写 恋愛描写
多聞くん今どっち!?

たもんくんいまどっち
『多聞くん今どっち!?』のポスター

『多聞くん今どっち!?』物語 簡単紹介

高校生の木下うたげはアイドルグループ「F/ACE」の福原多聞の大ファンで、日々、全力で推し活に情熱を捧げていた。ある日、家事代行業のアルバイトのために、仕事をする新しい家を訪れると、そこはなんと福原多聞の家であった。しかも、そこでいつもは圧倒的なオーラを放っている福原多聞のプライベートの意外な姿を知ってしまう。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『多聞くん今どっち!?』の感想です。

『多聞くん今どっち!?』感想(ネタバレなし)

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10代の7割が推し活している時代

ビデオリサーチの2025年の調査によれば、日本の15~19歳の約72.8%「推し」がいると回答しているそうで、全年齢の「推し」がいるとの回答率である約38.9%と比べると非常に高い割合であり、若い世代で推し活は浸透していることが数字でわかります。

最も「推し」としているものは、15~19歳では1位「日本のアイドル」(21.0%)、2位「アニメ・漫画のキャラクター」(17.7%)、3位「海外のアイドル(K-POPなど)」(13.1%)だそうで、10代の国内外問わないアイドル人気は間違いありません。

こんな世の中なのですから、10代を主人公とするアニメでも、推し活を中心に描かれることがあっても何も違和感はないです。

今回紹介する作品も、そんな推し活とラブコメを織り交ぜた勢いのあるアニメシリーズです。

それが本作『多聞くん今どっち!?』

原作は、2021年から白泉社の『花とゆめ』で連載されている“師走ゆき”による漫画。2026年にアニメシリーズ化されることになりました。

内容は、主人公はひとりの女子高校生。その子は、とある男性アイドルグループをデビューの頃から追いかけている筋金入りのファンであり、10代のその時期を推し活に捧げています。10代の女子高校生がアイドルになる物語ではなく、アイドルのファンとしての姿を主軸にすることに徹しています。

そして、そんな主人公が、ファンであるアイドルのメンバーのひとりとひょんなことからプライベートで出会ってしまい、人知れずそのプライベートの相手と親密さを深めていく…というのが流れです。

「あのアイドルとプライベートで会っちゃった!」というのは、ファンにとっては「起きたら凄い出来事」の筆頭ですけど、本作はそれが実現したというだけでなく、プライベートでも深い関係になる…というか、早い話が恋愛関係に発展し始める…。まさに「あのアイドルと私が恋愛関係に!?」という妄想が具現化する、そんなドキドキのシチュエーションをメインにするラブコメです。

ただ、雰囲気はかなり緩いコメディになっており、「アイドルとファンが恋愛関係になる」という事実をそこまでスキャンダルとしてシリアスに描く感じでは毛頭ありません。業界モノとしても恋愛モノとしても基本的に手軽な見やすさ重視です。

アニメになって魅力が明らかにプラスされた点がひとつあって、それが作中のアイドルグループのパフォーマンスがしっかりアニメーションと楽曲の合わせ技で作り込まれていること。推しとしての魅了されるだけの説得力が増しましたね。

『多聞くん今どっち!?』のアニメーション制作を手がけたのは「J.C.STAFF」。監督は『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』など「名探偵コナン」シリーズの映画をいくつも手がけてきた”永岡智佳”で、シリーズ構成は“永井千晶”

アニメ『多聞くん今どっち!?』は全13話です。

なお、この感想記事では、アニメで描かれていない原作の展開にはネタバレ防止のために触れないようにしていますので、ご了承ください。

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『多聞くん今どっち!?』を観る前のQ&A

✔『多聞くん今どっち!?』の見どころ
★推し活(オタク)を振り切って明るく描いている。
✔『多聞くん今どっち!?』の欠点
☆メンタルヘルスの描きかたは浅い部分が目立つ。
日本語声優
早見沙織(木下うたげ)/ 波多野翔(福原多聞)/ 千葉翔也(坂口桜利)/ 畠中祐(橘敬人)/ 天﨑滉平(石橋ナツキ)/ 長岡龍歩(甲斐倫太郎) ほか
参照:本編クレジット

鑑賞の案内チェック

基本 希死念慮などメンタルヘルスをやや矮小化するコミカルなシーンがあります。
キッズ 3.0
一部のギャグは低年齢の子どもにはわかりにくいです。
セクシュアライゼーション:わずかにあり
↓ここからネタバレが含まれます↓

『多聞くん今どっち!?』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

人気オーディション番組から生まれ、瞬く間に人気となった男性アイドルグループ「F/ACE(フェイス)」。メンバーは5人。坂口桜利橘敬人石橋ナツキ甲斐倫太郎、そして福原多聞

高校生の木下うたげはとくにこの福原多聞を推しとしており、ファン「E/YES」のひとりとして夢中でした。今日も自宅の居間のテレビの前に陣取り、推し団扇を両手にライブパフォーマンス映像に釘付け。「多聞くん、神!」と大熱狂です。

そんな娘を両親は冷静に見守っており、双子の妹弟は姉に飽きれています。これもいつもの家族の風景です。

自室は福原多聞グッズでいっぱい。自分のファンを「ガールフレンズ」と甘い声で呼ぶ福原多聞は、高校生とは思えない色気のある顔つきでセクシー&ワイルド担当となっており、ダンスもプロ級。絶賛するところならいくらでもあります。そのとき、ドームライブの当選の通知が届きます。なんと狭き確率を引き当てました。木下うたげは思わず勝利の雄叫びをあげます。

木下うたげは家事代行(ハウスキーパー)のバイトをして、推し活のおカネを稼いでいました。今日初めて行く家の居住者の名は資料には「福原多聞」とあります。同姓同名なのか、すっかり頭は妄想で埋め尽くされます。

到着したのは普通のマンション。中に入ると散らかりまくっており、部屋の隅っこに全身真っ黒な服でひとりの若い男がうずくまっていました。その表情は重苦しいです。でもその顔はあの…目に焼き付いていつでも想像できるその顔…アイドルの福原多聞でした

木下うたげは内心では焦りつつ、表面上は平静のまま仕事にとりかかります。本人の家だとは…。もしかしたらオフのときは静かで人見知りなだけかもしれません。変に詮索するわけにはいきません。あくまでこちらは仕事をする人間…。

もう1度見に行くと、福原多聞は部屋の真ん中で「あんな若い人が来るなんて聞いてないよ…。クソ陰キャだと笑われて晒される!」とぶるぶる怯えて丸くなっていました。あまりの姿に本当に同一人物なのかと不安になってきます。

応援してあげようと思い、「実はファンです。生まれてきてくれてありがとうございます」と言いますが、福原多聞はなおも自己否定をやめません。本人が福原多聞を否定するので、その言葉に木下うたげのスイッチが入り、「たとえ本人でもアンチには屈しません!」と熱弁。

「あなたはやっぱり多聞くんです、偽物なんかじゃありませんよ」「ジメ原さんでも応援します!」 

こうして木下うたげの家事代行は数日続きました。食事も作ってあげると、食べる前はあからさまに不安そうでしたが、食べた瞬間、福原多聞はいつものセクシーなモードの切り替えが突発的に起きます。

もはや福原多聞の専門家である木下うたげは扱いに慣れています。

「誰が何と言おうとたもんくんは世界一!これだけは譲れません」

しかし、やや空回りして、福原多聞に接近しすぎ、しかもその姿をマネージャーの藤田渉に見られてしまいました。木下うたげはプライベートの福原多聞を知りすぎたことを反省し、もう彼の家の家事代行の仕事を辞めようと身を引きます。

そしてあの当選したライブにただのいちファンとして足を運びます。本来はこれだけ遠い人なんだと噛みしめながら…。

ところが、その終了後、福原多聞が裏の廊下に木下うたげを引っ張り込み、何も言わずに急に来なくなった理由を問います。

「私だけが独り占めなんてダメです」と遠慮する木下うたげ。しかし、「俺の横で俺を推せよ。あんたがいないとダメなんだ」と至近距離で言われてしまい…。

この『多聞くん今どっち!?』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2026/04/30に更新されています。

ここから『多聞くん今どっち!?』のネタバレありの感想本文です。

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推しと恋愛の違い

アニメ『多聞くん今どっち!?』では、最初から推しへの特大感情が爆発しまくっている主人公である木下うたげの日常が、一挙手一投足、テンポよく映し出されます。

こうやって木下うたげをみていると、いかに「オタクであること」に劣等感を感じることは一切なく、清々しく明るく描くことが気持ちのいいことか、あらためて実感できます。オタク文化は男性のインセル的な空気に支配されすぎているきらいが昔からありましたが、10代の女子のポジティブなオタク像をとおして、その自己憐憫は吹き飛ばされます。

この自身に劣等感を根付かせる隙さえ与えない木下うたげのポジティブさは、後にも触れる、福原多聞の抱える劣等感を振り払うエンパワーメントにも繋がっており、「推しがオタクを肯定する」だけでなく、「オタクが推しを肯定する」という相互作用を上手く物語に組み込んでもいました。

ただ、そんな木下うたげが作中で唯一ネガティブな感情をみせるのが、「推しに恋愛してはいけない」という一線を越えたときで…。いや、一方的に恋愛感情はさておくとしても、少なくとも「実際に恋愛関係になってはいけない」という、絶対的な一線が存在することがハッキリ浮き彫りになります。

私は推し活も恋愛もしない人間なので、そういう気持ちの経験はないのですけど、そんな私からすると、これはなんとも変な心情だなと思います。推しはよくて、恋愛はダメな理由はなぜなのか…。そもそも推しと恋愛の感情の違いって何?

この違いについて、作中で木下うたげはモノローグで説明します。本来はアイドルはみんなのものであり、大勢のファンに向けられる気持ちがたったひとりに向けられるのは問題である…と。

同担拒否とか、本気の恋と推しが同一線上にある人とか、それぞれの推し活のありかたがあるので、木下うたげの考えがスタンダードというわけではないのですが、何かしらのルール(境界線)を設定して自分を制限するのは推し活あるあるなのかもしれません。

アニメ『ささやくように恋を唄う』で描かれたように、憧れから恋愛へ変わるプロセスはそんなに珍しくないですし、推しから恋愛に変わったっていくらでもいいだろうに…。

とくに商業的なアイドルにそうした暗黙のルールが設定されやすい背景は、ある種の処女信仰にも近いものがあるなと思います。アイドル側にせよ、ファン側にせよ、純真でなければいけない…みたいな。

そんな推しと恋愛の違いが垣間見えるのが個人的には興味深かった『多聞くん今どっち!?』ですけども、“深田晃司”監督の映画『恋愛裁判』のような社会文化批評的なテーマ追及はなくて、やはりラブコメなので、お行儀のいいオチに着地するだけではありますが…。

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アイドルのメンタルヘルス

推し批評・恋愛批評としては八方美人で無難に片づけている感じもあった『多聞くん今どっち!?』ですが、そこは見るからに軽めのジャンルゆえにもとからあまり期待はしていませんでしたし、良いのですけども、むしろ気になったところが別にありました。

それは、福原多聞の抱える問題への取り組みかたです。

さっきも書いたとおり、木下うたげの「福原多聞を崇める全肯定のポジティブさ」は、福原多聞の抱える劣等感を振り払うエンパワーメントになり、彼の人生を好転させます。そこは展開としてはとても良い描写です。

ただ、冒頭からの福原多聞のあの状況は明らかにメンタルヘルスの不調を抱えているものであり、それは福原多聞の性格として個人問題に矮小化はできないでしょう。実際、ああいうメンタルヘルスの悪化で精神的に苦しんでいるアイドルの当事者は現実に少ないはずですし…。

それに対して本作は、推しと恋愛…そのどっちなのかはさておくとして、とにかく身近な人の強い感情が「救い」になるというかたちで描いています。確かにそれはそうです。身近な人のサポートは欠かせません。

でもそれだけで解決してしまえるような描写はやっぱり避けたほうがいいだろうなとは思いました。ましてやいち企業が本来は自社の責任である所属タレントの健康問題を、そんじゃそこらの未成年に丸投げするのは論外です。

本作はあまりこの現実でも深刻化しているであろう「アイドルのメンタルヘルス問題」に真剣に向き合っている感じはなく、それこそ福原多聞が飛び降り自殺未遂をする行動すらもギャグで片づけているほどです

通称「ヤミ原」の状態のみならず福原多聞は全般的に木下うたげをガスライティングしやすい立場にいるのですが、そこに関する言動や態度の影響にもやや無頓着すぎるトーンでもあったかなとも思います。

恋愛が他人を良くすると安易に帰結させるのは恋愛至上主義的な発想ですし、やはりそこは「恋愛にも(推し行為にも)限界がある」ことを知ることこそが成長なのではないかな、と。メンタルヘルスに問題があるなら、専門家のサポートを受ける必要があるのは言うまでもなく…。

私としては、木下うたげと福原多聞は、それぞれ、ファンとアイドルの立場を降り、対等な人間として向き合って、やっと恋愛関係のスタートラインだと考えているので、「ファンであり、恋人でもあります!」という両輪ラブコメ展開(推し活全肯定)で何もかも押し切らない終着になってほしいなと思いました。

『多聞くん今どっち!?』
シネマンドレイクの個人的評価
5.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
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関連作品紹介

日本のアニメシリーズの感想記事です。

・『違国日記』

以上、『多聞くん今どっち!?』の感想でした。

作品ポスター・画像 (C)師走ゆき・白泉社/多聞くん今どっち!?製作委員会

Tamon’s B-Side (2026) [Japanese Review] 『多聞くん今どっち!?』考察・評価レビュー
#音楽アニメ #女子高校生 #アイドル