どこでも敵なし…映画『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年)
日本では劇場未公開:2026年にAmazonで配信
監督:フランク・E・フラワーズ
ざぶらふ ぶらっでぃめありーのたたかい

『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』物語 簡単紹介
『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』感想(ネタバレなし)
海賊のブラフに要注意
日本語でも相手にハッタリをかまして騙すことを「ブラフをかける」と表現しますが、この「ブラフ(bluff)」という単語は1600年代から使われているそうです。「見せかけの力の誇示で欺く」以外にも「ぶっきらぼうな率直さ」や「急な崖」を意味する単語でもあります。
今回紹介する映画もそんな単語をタイトルにしているのですが、そういう複数の意味があることを頭の片隅に入れつつ、鑑賞すると良いと思います。
それが本作『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』。
本作は早い話が海賊モノです。でも大海原で大勢の海賊船がドンパチやるような派手なスケールの映画ではなく、ほとんどの舞台が陸地(ひとつの島)でわりと小規模にまとまった海賊アクションとなっています。
アクションが売りのエンターテインメントなので、そのジャンルとしてはたっぷり楽しめます。野蛮で豪快な剣技や体術、相手の意表を突くトラップなどが満載です。味方だろうが敵だろうが容赦なく暴力的に殺されていきます。
物語自体は王道で、島に隠れ住んでいたひとりの女性が、実は大物の海賊と因縁があり、過去から逃れられずに戦いに飲まれていく…そんな流れです。
この『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』を監督したのは、2004年の『ヘイヴン 堕ちた楽園』で長編映画監督デビューを果たした“フランク・E・フラワーズ”。『メトロマニラ 世界で最も危険な街』(2013年)の脚本でも有名です。
“フランク・E・フラワーズ”はカリブ海のケイマン諸島出身で、『ヘイヴン 堕ちた楽園』もタックス・ヘイブンとなっている地元のケイマン諸島が舞台でした。今作『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』も舞台をケイマン諸島にしており、故郷に貢献しています。
製作は“ルッソ兄弟”のスタジオ「AGBO」が主導しており、相変わらずアクションが好きですね。
主演を務めるのは、インド出身の“プリヤンカー・チョープラー”(近年は結婚を機に“プリヤンカー・チョープラー・ジョナス”という名で活躍している)。最近も『ヘッド・オブ・ステイト』やドラマ『シタデル』でおなじみのように、アクションをやりまくる女優としてすっかり定着していますが、今作でも暴れまくりです。“プリヤンカー・チョープラー”自身も製作に加わり、自分のスタジオを関与させてもいます。
その“プリヤンカー・チョープラー”と対峙することになるのは、ドラマ『ザ・ボーイズ』でも存在感を発揮している“カール・アーバン”です。
他の俳優陣は、『アウト・オブ・ダークネス 見えない影』の“サフィア・オークリー=グリーン”、ドラマ『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』の“イスマエル・クルス・コルドバ”、ドラマ『チーフ・オブ・ウォー』の“テムエラ・モリソン”など。
『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』は日本では劇場公開されておらず、「Amazonプライムビデオ」での独占配信となっています。気軽に何かエンタメを観たいときにどうぞ。
『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
| 基本 | — |
| キッズ | 暴力的な描写がやや多いです。 |
『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
1846年、カリブ海の海賊時代は終焉を迎え、まだ生き残る海賊たちは居場所を探し求めて彷徨っていました。
嵐の中、スウィフトシャー号に迫る超巨大な海賊船。T.H.ボーデン船長は警告を受け、甲板で戦闘が起きる中、自分は捕まってしまいます。髭面の海賊船の船長は「なぜ俺の印が刻まれた金貨を持っているんだ?」と問い詰めてきます。しかし、ボーデンは口を閉ざします。日誌から出航地はケイマンブラック島だと割り出し、そこへ向かえと指示。
6日後、ケイマンブラック島では、住人たちはのどかな生活を送っていました。この地は奴隷解放によって楽園となっており、いろいろな人が平和に暮らしています。
その島の海岸から少し離れた奥地にある家。部屋にいるエリザベス(リジー)のもとにウェストンがやってきて、こっそり密会。しかし、義姉のアーセルが帰って来たので、慌ててウェストンは隠れます。リジーはずっとこの島で生きてきたので外に飛び出したいと思っていました。
アーセルは息子で足の悪いアイザックの相手をしてあげます。アイザックの父は船で出発したきりで戻っていません。村ではいつも無事を祈っていますが、音沙汰無しです。アイザックの誕生日までに帰ると約束していたのに…。
寂しそうなアイザックに、アーセルは短剣をみせ、プレゼント。父がどこかで手に入れたものだと説明します。
その日の夜中、不審な物音がして、アーセルは起きます。窓の外に人影。すぐに扉を施錠し、アイザックを起こします。アイザックを床下に隠し、アーセルは銃を構えて扉に向き合います。
襲撃者たちが屋根から出現。アーセルは怯えながら押し倒されます。
「やあ、ボーデン夫人。カネはどこだ?」と襲撃者のリーダーは問いかけ、金貨がないことに激怒します。反抗的な態度をとるアーセルに、襲撃者のリーダーは金貨の実物をみせ、残りの居場所を吐けと脅します。
朝日が昇り始め、島の海岸にはあるひとりの男が到着。島を仕切るブラッドリー牧師はその男がすぐにフランシスコ・コナー船長だと理解します。大英帝国で指名手配されている悪名高き海賊です。
このコナーが来たということは、今からこの島で惨劇が起きるということで…。

ここから『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』のネタバレありの感想本文です。
海賊ファンも大興奮のご当地映画
『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』で舞台になっているケイマン諸島は西インド諸島に含まれますが、今もイギリスの海外領土。ケイマンブラック島も実在する島です。
このケイマンブラック島の名前の「ブラック」は「Black」ではなく「Brac」であり、ゲール語で「断崖」を意味するそうで、その地形に由来します。本作でもまさにタイトルどおり、崖が終盤の印象的なステージとなっていますね。
ちなみに「ケイマン」の名は「Caymanas」という「ワニ」を意味する言葉に由来していて、この島ではかつてはワニが有名だったそうです。しかし、今ではワニは絶滅したと考えられており、たまによそから泳いで流れ着いてくる個体がいる程度だとか(ある種のワニは海水も耐えられます。キューバからは200kmは離れていますが泳いでこれるんですかね)。ワニ自体はそれほど人を一方的に襲う動物ではありません。ただ、本作では「ケイマン諸島と言えばワニだね!」というノリで、狂暴なワニが豪快に海賊たちを襲ってくれますね。ケイマン諸島流のサービス・シーンです。
『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』はフィクションですが、このケイマン諸島の歴史をエンタメの中でサラっと紹介してくれています。例えば、カメ漁が盛んで、作中でもカメを獲っていることを示唆する日常のシーンがあります。1833年にイギリス議会が奴隷制度廃止法を可決したことを受けて、このケイマン諸島でも奴隷が解放され、もともと島の人口の半数近くが奴隷だったこともあり、作中でもその歴史を反映して有色人種が多めの顔触れです(なので「ケイマン人」と言った場合、肌の色は本当に多種多様です)。
さすがケイマン諸島出身の“フランク・E・フラワーズ”監督なだけあって、しっかり地元愛が溢れる映画でもありました。まあ、かなり地元の人が殺されることになるのですが…。
もちろんケイマン諸島と言えば、海賊も話題にしないわけにはいきません。海賊時代ではケイマン諸島は海賊たちにとっては格好の停留場。島の洞窟に宝物を隠したり、好き放題に利用していたようで、海賊にとっても楽園でした。
ケイマン諸島の地元民にとっては海賊はやっぱり嫌な存在なのかなと心配にもなりますが、実際のところ、地元では「Pirates Fest」というイベントを盛大に開催しており、毎年この時期に大勢の海賊コスプレの人たちが集まり、海賊ごっこで楽しみまくっているそうで、海賊ファンの聖地になっています。
そんなこんなでこの『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』は、ケイマン諸島の海賊文化の期待に応えまくったご当地映画…ってことなのでしょうかね。
案外、海賊モノ作品で、ここまでご当地性を大切しているものは珍しい気もします。そういう点では本作はケイマン諸島を愛する海賊ファンのための盛り盛りな贅沢ムービーなのかもしれません。
海賊なら大国に挑んでほしかった
そんな海賊ファンも大興奮のご当地映画に特化することに全力集中しているせいか、オリジナル・ストーリーではありますが、物語自体の王道さは展開を平凡にしており、『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』の映画としての基本的な面白さはやや控えめでした。
“プリヤンカー・チョープラー”演じるアーセルのアクションはじゅうぶんに見ごたえがありましたし、敵対する“カール・アーバン”演じるコナーの残虐非道っぷりも楽しかったのは間違いないです。
とくに前半の島上陸からの殺戮は、コナーとアーセルのパートが重なることで、なかなかにスリルがあります。コナーという凶悪な存在の出現による絶望感に対し、このアーセルならどこまで反撃できるのかというワクワク感。
それにしても“カール・アーバン”、今作でも植物でハイになってるし、異様に復讐に執着しているし、最近はそんな役柄ばっかりです。カリブ海の世界でも同じなのか…。
後半の籠城戦だけ、ちょっとだいぶ暗い空間での戦闘になってしまうのがもったいないですね。これなら前半の朝方の戦闘のほうが楽しみやすかったです。
戦闘は全体的には良いのですが、問題はさっきも書いたように物語の展開です。今作は主人公のアーセルが「実は海賊もびびる最強の女でした!」というハッタリをお見舞いするのですけど、それはもう観客にもわかりきっていることです(“プリヤンカー・チョープラー”だし…)。
それ以上の意外な展開はなく、ひたすらにアーセルはコナーとの因縁の対決に挑むだけなんですね。
しかも、最終的にコナーに勝ちますが、イギリスの軍船が迎えに来て終わりというのはどうも盛り上がらないような…。
そもそもアーセルは事実上奴隷同然で、それをコナーに助けられ、野蛮な世界の中で自由を得るものの、今度は平和な世界で自由を謳歌するべく、助けた存在に歯向かいました。マラヤーラム語の名前を捨てて、未来を選んだのがアーセルです。
だったら順当に考えて次に倒すべきはイギリスの大国であろうと思いますし、コナーとの対峙は中盤で済ませて、終盤はイギリス船との衝突の中で、過去に決別し、まだ見ぬ将来を掴むというエンディングでも良かったのではないだろうか…。
これならまだ『パイレーツ・オブ・カリビアン』のほうが全然挑戦的で面白い反権力をぶちかましていたし、「リベルタス!自由を!」と叫ぶくらいなら『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』も何かやりきってほしかったところです。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
以上、『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Amazon MGM Studios ザブラフ ブラッディメアリーの戦い
The Bluff (2026) [Japanese Review] 『ザ・ブラフ ブラッディ・メアリーの戦い』考察・評価レビュー
#アメリカ映画2026年 #フランクEフラワーズ #プリヤンカーチョープラー #カールアーバン #サフィアオークリーグリーン #イスマエルクルスコルドバ #テムエラモリソン #海賊 #ワニ


