史上最も評価の低いヒーロー誕生!誰か応援を!…映画『マックス・スティール』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年12月3日
監督:スチュワート・ヘンドラー
まっくすすてぃーる
『マックス・スティール』物語 簡単紹介
『マックス・スティール』感想(ネタバレなし)
Rotten Tomatoes「0%」
「Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)」という映画批評サイトがあります。このブログでもたびたび評価を引用させてもらったりしてます。
このサイトでは承認された執筆者によるレビューが掲載され、各レビューを総合して映画の評価が0~100%の数値で算出されます。勘違いされやすいこととして、この評価は得点ではありません。あくまで、各レビューでは肯定的か否定的かの2択しかなく、肯定的評価を出した人の割合を示しているだけです。なので、評価が99%だったとしても絶賛しているとは限らず、良いか悪いかでいえば良いと答えた人が99%いるという意味になります。そのためレビューしている人の数がそもそも少ないマイナーな作品だと、比較的簡単に極端な数字になりやすい問題はあります。それでも「100%」や「0%」という数字になることは珍しいですが…。
そんななか、2016年に「Rotten Tomatoes」で堂々の「0%」評価を獲得しちゃった映画が本作『マックス・スティール』です(2017年6月時点)。
レビュー数が20人と少ないですが、それでも全員が否定的評価をしたのは、まあ、あれなんだろうとは大方の察しがつくでしょう…。でも、オールネガティブってそうそうないんですよ。どんなに世間から嫌われている映画でも、「いや、私は評価する!」という人が出てきてもおかしくないじゃないですか。なのに…。もちろん批評家じゃなくて一般観客の中には好評の声もないわけではないですけどね。
『マックス・スティール』はアメリカのマテル社が1997年に発売したアクションフィギュアシリーズを映画化した作品。企画当初の2009年は、パラマウント・ピクチャーズが製作する予定だったらしく、同じく玩具の映画化で大成功を収めた『トランスフォーマー』シリーズに続け!という狙いがあったと思われます。ところが上手くいかず、企画をリスタートして、撮影が終わったのは2014年。やっと公開したのは2016年で、アメリカでも全然宣伝もされませんでした。製作の段階でさえゴタつくと、作品のクオリティにも影響してくるんですね…。
アメリカで本作を配給したのは「Open Road Films」という会社。これはAMCシアターズとリーガル・エンターテインメント・グループというアメリカの二大最大手映画チェーン企業によって設立されたものなのですが、それにしてもこの盛り上がりのなさ。よほどやる気がなかったのか、土壇場での急な公開作業で精一杯だったのか。どちらにせよ、宣伝でどうこう評判が回復したりはしなかったと思います。作りの中身があれなのでね…。
監督も俳優も特別に語りたいものがない…。これじゃあ感想になっていないだろうと思うのですけど、う~ん、実際そうだしなぁ…。監督の“スチュワート・ヘンドラー”という人は、過去に『ヘイロー4 フォワード・オントゥ・ドーン』という有名なゲームの映像化作品を手がけています。だから映像面でのこだわりはある…はず。それ以外は…うん。
俳優は、ドラマシリーズ『シリコンバレー』で知られている“ジョシュ・ブレナー”がヘンテコな機械役で声をあてています。それくらいかな…。
逆にここまで圧倒的な低評価だと気になってくる人もいるかもしれません。あなたこそが本作の数少ない支持者かもしれないのですから。
『マックス・スティール』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):「手が光る」で検索
高校生のマックス・マクグラスは母親と故郷の地に帰ってきました。母はかつての家に荷物を運ぶのに忙しいですが、マックスは屋根に上って父を懐かしみます。マックスの父親であるジムは昔に不慮の事故で亡くなっていました。引っ越しを何度も繰り返していましたが、母はこれで最後にすると言います。
マックスが段ボールから荷物を広げていると、父との写真がでてきます。自分はまだ赤ん坊で、父のことはよく覚えていません。母いわく父は星が好きだったようです。
するとノイズが少し鳴り、電気がチカっと点滅します。電気系統の不調でしょうか。
母がいなくなった部屋でマックスは体に異変を感じます。何か自分の手から発せられているのか。気のせいか…。
とりあえず無視して翌日も出かけます。しかし、スマホさえも手で触ると起動しなくなり、困ります。そんな悩みを抱えつつ新学期の始まる学校に自転車で急いで向かっていたせいもあり、車の前に飛び出してしまい、勢いよく地面に投げ出されてしまいます。
すぐに車から人が降りてきて心配してくれます。ソフィアという女子でした。
科学の授業に参加すると、父の話を教師から持ち出されます。優秀な人だったようです。壁には父の若かりし頃の写真記事が飾っており、確かに優れた学業をおさめていたことがわかります。
放課後、あの車の女性が自転車を直してくれるそうで、車に乗せてくれます。ソフィアは修理が得意のようで、自転車もあっという間に直してくれました。
家に帰るとマイルズという男性がいました。父と仕事をしていたことがあるそうです。父との昔話をしてくれます。今はNテック社に勤めています。そして父の事故の話をしかけますが、停電。
その頃、実験室である問題が起きていました。被検体の逃走で、部隊が派遣されますが、相手は想定上の力を持っており…。
マイルズが帰った後、マックスは父の事故についてインターネットで調べます。爆発事故のようですが、原因はいろいろと噂されており、確かなことはわかりません。しかし、パソコンまで故障。
イラついたマックスはパソコンを叩きますが、自分の手が青白く発光し、思わず驚いてしまいます。じっと見つめると揺らめくエネルギーのようなものが…。これはコントロールできるらしいと気づき、その日からマックスは近くの森の中でそのパワーを試してみることにします。
マックスはその不思議な力に自分でよくわからないままに魅せられていきますが…。
ネタにならない程度の駄作
観終わって思うことは、「とんでもない駄作…ではなかった。でも、やっぱり良いか悪いかでいえば”悪い”になるかな…」この低いテンションですよ。
どうせならネタになるくらいの駄作っぷりだったら、いっそ話題になるのに…。真面目に作ってつまらないというのは一番悲しいパターンですよね…。
ストーリーやキャラクターは超ド定番です。家族問題などに日々を悩む思春期の青年主人公がある日に不思議な力に目覚める。そして、能力をコントロールしていき、悩み事に実は秘密が隠されていたりしちゃったりして、なんだかんだで悪を倒す。
この土台は別に良いのですが、土台しかない…みたいな汎用な映画でした。決してチープな映画ではなく、CGも鑑賞に堪えうるものだし、撮影は割と綺麗でした(褒め言葉になっているのだろうか)。でも、それ以外が…。
悪役も魅力はないし、ヒロインにいたっては存在価値ある?というくらい「とりあえず登場しました」感があります。というか主人公を轢き殺しそうになっておきながら、結構平然としているのが凄い。ヒロインが真の悪だったら意外だったのに…。
たぶん作り手も、ティーン向けならこれくらいのベタさでちょうどいいだろう!っていう確固たるバランスで仕事をしたつもりなのでしょう。でも当のターゲット観客はこれで満足するかというと…。一応、脚本を担当しているのは『マイティ・ソー ダーク・ワールド』の“クリストファー・ヨスト”です。
ゲームの方が向いている気がする
唯一個人的に良かったのは、主人公が“青白いユラユラ”能力に気づき、試したり、隠そうとしたり、ハシャいだりするパート。ネット検索で調べるくだりとかのありそうな感じがいいです。超能力を手にした高校生たちを描く『クロニクル』(2013年)っぽさを感じました。『クロニクル』のほうが何十倍もオリジナルなドラマを展開していくのだけど…。
数少ないオリジナリティといえば、地球外生命体スティールと合体することくらいでしょうか。ただ、このスティールという宙に浮かぶ球体で青いひとつ目のロボットみたいな奴。よくしゃべって主人公と漫才みたいやりとりを交わすのですが、おしゃべりロボットといえば『スターウォーズ』のC3POとか映画の定番です。でも、本作のスティールは、「Portal 2」というTVゲームに登場する「Wheatley」というロボットにめちゃくちゃ似ているなと思いました。見た目もそうですが、しゃべってる雰囲気がとくに。
このマックスとスティールの会話がまた冗長です。好きな人は好きかもしれないけれど…。別に映画で永遠と聞いているべき内容でもない。SNS上でずっと話していればいいのに…。
ゲームと言えば、『マックス・スティール』の監督の“スチュワート・ヘンドラー”は前述したとおり人気ゲーム「HALO」の実写作品を手がけている人であり、本作もどことなく全体的にゲームっぽいです。ゲームだったら、ストーリーやキャラクターが多少淡白でもプレイヤーの操作という補完があるので気にならないのですけど、映画はそうはいかないです。
この作品はゲーム化すべき!と思ったら、すでにゲーム化されてました…。しかもドリームキャスト。え、そっち…!? うん、最新のハードでゲーム化されることを期待してます。流体を操る主人公とか最新のハードなら再現できるよ!
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 0% Audience 48%
IMDb
4.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 2/10 ★★
作品ポスター・画像 (C)2015 MAX STEEL HOLDINGS, LLC. All Rights Reserved. マックススティール
以上、『マックス・スティール』の感想でした。
Max Steel (2016) [Japanese Review] 『マックス・スティール』考察・評価レビュー