そしてますます他人事ではなくなった物語…「Disney+」ドラマシリーズ『テスタメント/誓願』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年)
シーズン1:2026年にDisney+で配信
原案:ブルース・ミラー
性暴力描写 児童虐待描写 LGBTQ差別描写 性描写 恋愛描写
てすためんと せいがん

『テスタメント 誓願』物語 簡単紹介
『テスタメント 誓願』感想(ネタバレなし)
『ハンドメイズ・テイル』のその先へ
2017年に放送されたドラマ『ハンドメイズ・テイル 侍女の物語』は、ストリーミング・サービスの最盛期であり、そのうえ「#MeToo」運動も後押ししたことによる世間の関心の高まりもあって、話題のシリーズとなりました。無論、この現象は原作である1985年の“マーガレット・アトウッド”の小説『侍女の物語』の再評価に繋がり、フェミニズムSFの活況を巻き起こすことにもなりました。
そんなドラマ『ハンドメイズ・テイル 侍女の物語』は2025年のシーズン6で一応の完結を迎えたのですが、2026年は早々に続編の新しいドラマが始まりました。
それが本作『テスタメント 誓願』。
その前に『ハンドメイズ・テイル』作品群の基本の世界観をおさらいしておきましょう。
アメリカ合衆国で架空の内戦が勃発し、既存の政権は奪取され、「ギレアド」という新国家が誕生した世界が舞台になっています。このギレアドは、以前のアメリカの大部分の地域を支配下においており、かつてのアメリカ合衆国政権もまだあるにはありますが、アメリカの北や南の外縁部、もしくはアラスカなどにわずかに残存するのみです。そしてなおもギレアドに対する抵抗戦を局所的に続けています。
ギレアドの最大の特徴は、全体主義の神権政治が徹底されていることです。キリスト教の原理主義よりも極端な解釈で教義を信奉しており、外界からの情報を一切シャットアウトし、閉鎖的なコミュニティを築いています。人権は制限されているのが普通です。
とくに男女の階級制度が社会の基礎です。政治は男性だけが参加し、女性は男性よりも劣った性別とみなされ、「妻」と「母」の役割に尽くします。そして女性でも明確な階級格差があります。最も高次の女性はエリート男性の「妻(Wife)」です。
また、「おば(Aunt)」は教育の仕事に従事し、特例的に女性ながら読み書きを学んでいます。「女中(Martha)」は家事を担当します。
そして「侍女(Handmaid)」は、出産の役割を担います。この世界では環境汚染のせいなのか生殖能力に問題のある女性が多く、妊娠できない「妻」の代わりに、この妊娠可能な年齢でありながら何らかの罪を犯したとみなされた女性が割り当てられる「侍女」が裕福な男性と性行為をし、妊娠&出産をします。これはギレアドでは儀式として神聖化されていますが、要は性的奴隷であり、性暴力です。ちなみにこの侍女のアイディアは『旧約聖書』の創世記に登場する「ビルハ」という女奴隷が基になっています。
また、最底辺にいる女性が「非女性(Unwoman)」で、これはもう女性と認識されておらず、ひたすらに奴隷として酷使されます。非キリスト教徒、政治的反体制派、学者、クィア女性などが該当します。レズビアンなどクィア女性は「性の裏切り者(gender traitors)」と呼ばれています。
『ハンドメイズ・テイル 侍女の物語』ではこのうちの侍女となってしまったジューン・オズボーンを主人公に、このディストピアから脱しようとする物語が展開されました。
『テスタメント 誓願』は“マーガレット・アトウッド”の2019年の小説が原作ですが、ドラマ版ではより前作と接続するように改変され、『ハンドメイズ・テイル 侍女の物語』から4年後の世界を舞台にしています。
今回は10代の女子たちが主役で、青春モノとしての側面も濃いです。
今回新しく主人公に抜擢されたのが、『ワン・バトル・アフター・アナザー』で見事な存在感を放った“チェイス・インフィニティ”。またも反体制側に関与する役ですね。

もうひとりの主人公を演じるのが、“ルーシー・ハリデイ”で、こちらはまだキャリアが浅いのですが、ここから注目度が上がるのでしょうか。
他にも、ドラマ『背反の町』の“イゾルデ・アーディース”、『クラッシュ 真実の愛』の“ローワン・ブランチャード”、ドラマ『ノスフェラトゥ』の“マッテア・コンフォーティ”、ドラマ『New Gold Mountain』の“メイベル・リー”など。
『テスタメント 誓願』を配信で観る際にちょっと日本ではややこしいのが、『テスタメント 誓願』は「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信なのに、『ハンドメイズ・テイル 侍女の物語』のほうは「Hulu」の配信に限られていて「Disney+」にはないという問題。これは日本では「Disney+」と「Hulu」の運営企業が違っていて、『ハンドメイズ・テイル』はなおも「Hulu」との契約があるからなんでしょうけど…。
『テスタメント 誓願』のシーズン1は全10話(1話あたり約35~50分)です。
『テスタメント 誓願』を観る前のQ&A
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Qドラマ『テスタメント 誓願』を観る前に観たほうがいい作品は?
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A
ドラマ『ハンドメイズ・テイル 侍女の物語』を観ないと物語が完全に理解できなくなるわけではありません。『テスタメント 誓願』から初めて世界観に触れるという人でも基本的には大丈夫です。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 性暴力およびその被害経験のトラウマの描写があります。全体的に未成年女子を虐待に扱う展開が続きます。 |
| キッズ | 低年齢の子どもには不向きです。 |
『テスタメント 誓願』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
アグネス・マッケンジーは優雅な朝を迎えます。女中が髪も服も整えてくれます。制服は紫だと決まっています。カレンダーは見ることも禁じられていたので今は何年かは知りません。でも大切なのは今の自分が初潮を迎えていない「プラム」だということ。女性にとってそれが何よりも重要だと教わってきました。
お気に入りのドールハウスのように、完璧に整然とした家。父である司令官は、日々、この平穏を脅かす異端者やメーデーのテロリストと戦ってくれています。私は私の務めを果たすのみ。
青い服を身に着けた継母のポーラが家に現れます。新人の女中のジラのだす料理を前にするアグネス。ジラは舌が切り落とされているので話せません。ポーラは静かなジラを気に入っています。ポーラはアグネスの服装を褒め、「ありがとう、お母さま」とお礼を返します。
2人の間には緊張感が漂っていました。なぜなら互いに嫌い合っていたからです。でも表情にはだしません。
そしてアグネスは紫のバスに乗ります。そこには同じ格好の同年代の女子たちが乗っています。紫のカーテンを少しめくると、外に吊られた人間が見えます。
今日は遠足。自由にハシャぎます。ビダラおばは、頭に赤いバツ印のついた白い袋を被せられた男たちの首吊り死体を生徒にみせ、これはレイプの罪だと語り、「男の衝動は凄まじく抗えないのです」と解説します。こうして10代の女子たちは、女性である自分たちは決して安全ではないことを噛みしめます。
リディアおば学院に到着。ここがアグネスたちの学びの場であり、すべては司令官の「妻」候補となるための教育です。ピンクは幼い女の子用で、紫色はプラムである上級生の女子用、そして女子が初潮を迎えて最高司令官と結婚できる年齢になると、服装は緑色に変わります。
アグネスの親友のベッカはひと足先に緑になることが決まっていました。シュナマイト(シュー)と一緒に小声でお喋りしながら、校内へ。
そこには白い服の女子も集まっていました。彼女たちはここギレアドの外から来た新参者であり、「パール・ガールズ」とも呼ばれています。プラムの女子はそんな彼女たちを軽蔑していました。
アグネスはすぐにリディアおばのオフィスに呼び出され、新しい改宗者であるパールのデイジーの世話を任せられます。カナダのトロントから来たらしいですが、何やら様子がおかしく…。

ここから『テスタメント 誓願』のネタバレありの感想本文です。
シーズン1:セクシズム・カルトのデビュタント
実に陰鬱な気持ちになる青春学園モノをみせてくる『テスタメント 誓願』。
『ハンドメイズ・テイル 侍女の物語』の頃からですが、この世界観が「あり得ないディストピア」として傍観できず、観ていて気まずい…もしくは陰惨な経験がフラッシュバックしてしまうのは、私たちの現代社会の構成要素と通じているからです。つまり、女性差別と家父長制…。
今回、学校が舞台になったことで、その歪んだ社会構造がいかに幼い頃から個人を捻じ曲げていくのかを生々しく突きつけられることになります。
『ハンドメイズ・テイル』がシーズン6まで長期継続し、正直、ちょっとダレてきていたなと思っていましたが、今作『テスタメント 誓願』で根源の恐怖という初心に帰ってきてくれた感じ。
今回の主な舞台となる学校も見た目は綺麗ですが、女子に対して「社会に良しとされる女となる」ための「教化」に特化した施設として恐ろしい一面をたっぷりみせてくれます。
あの第8話の学校での性教育シーンとかね…。女子たちはついに神の御業(子を授かる方法)を学べると期待しているのですが、性交の具体的な言及はなく、内性器の模式図を前に「夫に仕えればいい」とだけ“おば”は言い、次に妊娠した体のための振る舞いと食事管理を教え始める…。日本の性教育と官製プレコンセプションケアで見たやつだ…。
それに対してデイジーがこっそりシューに生殖を教えるくだりは数少ない本作のユーモラスなシーンです。「固い棒? 精子という小さい細胞が泳いで上がる? バカにしてんの?」という反応になるのは、まあ、わかる…。あらためて解説すると変な事象だし…。
そして生理が各自始まるといよいよセクシズム・カルトのデビュタント。これがまた吐き気のする光景の連続で、年配の男性たちの前で初潮を報告し、ティーパーティーと舞踏会があり、勝手に夫候補が選定され…。
私はデビュタントという文化自体、好きじゃない…というか嫌いですけど、その本質の嫌な部分を再確認できましたよ。
シーズン1:女の子の存在意義
『テスタメント 誓願』はそんな世界で、10代の女性たちが、友情、嫉妬、駆け引き、裏切りといった人間模様を繰り広げます。
シーズン1で大きな起点となるのが、レベッカ(ベッカ)・グローブの父であるあの医者野郎による女子生徒への性暴力。アグネスやフルダが被害を受けたことを勇気をもって打ち明ける中、デイジーが怒りとともに行動を起こし、ベッカが刃を突き立てる…。
プラムの女子たちは極めてこの世界を当たり前として生きているのですが、そんなマインドコントロールされた若きあの子たちでさえも理不尽さに憤り、連帯し、小さな反乱を起こすわけです。女の子の存在意義が静かにフェミニズムに変わります。
デイジーの変化はとくに象徴的でした。ギレアドの世界への冷笑すらあった部外者が、同年代の苦悩に心震わし、「ギレアドもメーデーも知ったことか」の精神でたてつく。これぞフェミニスト(あと、タンポンもない世界であんな真っ白な服で生理を隠し抜いたデイジーは奇跡ですよ)。
若きフェミニストは他の女子たちもフェミニストに徐々に変えていきます。本来はデイジーは諜報の任務だけだったのですが、図らずも反抗心を芽生えさせる中核になっているのが面白いですね。
一方のガースはデイジーと真逆で、彼はギレアドに表向き従いつつ、メーデーに逆らえもしません。そんな若き男子がフェミニストになれるのか?というキャラクター・アークもハラハラします。
サスペンスで言えば、リディアおばとビダラおばの軋轢も予想外の目が離せないものでした。以前の世界では小学校教師の同僚だった2人の複雑な胸の内。
ウェストンとの婚約を破棄するに至ったアグネスの行動と、ベッカ母の犠牲によって、ベッカは「目(Eyes)」の監禁から脱し、ガースとの結婚に落ち着きましたが、この組み合わせはある意味で好都合。アグネスへの恋心を秘めるベッカにはとくにです(ガースの行動しだいだけど)。
ついにギレアドではテロリストとされているジューンが実母だと知ったアグネスも、反体制側に傾くのか。ただ、ジューンのやっていることもそれはそれで酷いので、アグネス的には恨みも生まれるのかな。
あと、侍女の存在は描かれるのかですね。前ドラマで描かれた「侍女たちの大反乱によるマサチューセッツ戦争」の影響で、冒頭の時点では侍女のシステムは無くなったかに思えたけど、まだ侍女はいるっぽいし、レッド・センターの名もでてきたし…。
ひとつツッコミたいのは、ボストンがなおもせめぎ合いの渦中にあるわりに、ギレアドの人たち、潜入工作を許しすぎだろ…。これ、普通に政権相手にクーデター起こすほうが早いんじゃないか?
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
△(平凡)
以上、『テスタメント 誓願』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)20th Television
The Testaments (2026) [Japanese Review] 『テスタメント 誓願』考察・評価レビュー
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