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ドラマ『スター・シティ』感想(ネタバレ)…愛国精神を醸成するための宇宙同志

スター・シティ
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そうはなりたくないから…「Apple TV」ドラマシリーズ『スター・シティ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Star City
製作国:アメリカ(2026年)
シーズン1:2026年に Apple TV で配信
原案:ベン・ネディヴィ、マット・ウォルパート、ロナルド・D・ムーア
性描写 恋愛描写
スター・シティ

すたーしてぃ
『スター・シティ』のポスター

『スター・シティ』物語 簡単紹介

1969年のある日、ソ連の国民は何も知らなかったが、極秘のミッションを遂行する管制室は歴史的瞬間を目の当たりにしていた。ソ連の宇宙飛行士の男が人類で初めて月に降り立ったのである。この快挙は瞬く間に世界に報じられ、ソ連は宇宙開発競争のトップの座を獲得する。敵対国であるアメリカにさらに優位性を示すべく、次は女を月に送り込もうとするが…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『スター・シティ』の感想です。

『スター・シティ』感想(ネタバレなし)

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愛国心の醸成の前に観たいドラマ

最近も日本の政治家の口から「愛国心の醸成」というフレーズがさも当たり前のように飛び出していましたが、「国が国民の愛国心を育もうとする? 最高じゃないか!」と有頂天で喜ぶ人もいるのも現実。でももう少し冷静になれる人は、ぜひ今回紹介するドラマシリーズを観て、それはいかに恐ろしいことかをあらためて感じとってみてください。

それが本作『スター・シティ』です。

2019年から「Apple TV」(当時は「Apple TV+」だった)で独占配信された大作SFドラマ『フォー・オール・マンカインド』。2026年にはシーズン5も配信され、絶好調ですが、同年にはスピンオフとなるこの『スター・シティ』も始まりました。

歴史改変SFであり、「もしも」の歴史の宇宙開発競争を描いてきたメインの『フォー・オール・マンカインド』。あちらが主にアメリカ側の視点で語られていったのに対し、この『スター・シティ』は宇宙開発競争をソ連側から語っています。

具体的には『フォー・オール・マンカインド』のシーズン1のあの第1話と同時期のソ連側の世界を舞台にしています。

単に視点を変えただけと思われるかもしれないですが、しっかり『スター・シティ』独自のアプローチをみせており、とくにシリアスでダークなスパイ・スリラーの空気が色濃いです。『フォー・オール・マンカインド』のほうではシーズンが後半にいくにつれ、米ソ対立や国家内の諜報の様子が薄くなってしまっていましたが、『スター・シティ』ではその雰囲気がまた戻ってきています。こっちのほうが好きという人もいるでしょう。

もちろん宇宙開発の描写も当然たっぷりあります。メインの『フォー・オール・マンカインド』では「月に最初に降り立ったのはソ連だった」というド級の歴史改変を初っ端からぶち上げて展開していきましたが、この『スター・シティ』もそこから開始しつつ、でも「ええ!?」という驚きの本作独自の歴史改変をぶっこんできます

スピンオフなので「最終的には『フォー・オール・マンカインド』に繋がっていくんだよな」と油断してみているとびっくりです。なかなか予測不能な仕掛けを製作陣は考えてきましたよ。

SF的なリアリティはじゅうぶんな『スター・シティ』ですが、ハリウッド製作なので、ソ連が舞台でも登場人物の会話は英語です。そこはあしからず。

俳優陣は、『決断するとき』“アグネス・オケーシー”『キングスマン:ファースト・エージェント』“リス・エヴァンス”、ドラマ『グッド・オーメンズ』“アンナ・マックスウェル・マーティン”『Bad Behaviour』“アリス・イングラート”『William Tell』“ソリー・マクロード”『パラベラム 殺し屋の流儀』“アダム・ナガイティス”、ドラマ『エリザベス:女王への道』“ルビー・アシュボーン・サーキス”、ドラマ『新米刑事ヴァランダー』“ジョセフ・デイヴィス”『ポライト・ソサエティ』“プリヤ・カンサラ”など。

ドラマ『スター・シティ』のシーズン1は全8話(1話あたり約55~65分)です。

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『スター・シティ』を観る前のQ&A

Q
『スター・シティ』を観る前に観たほうがいい作品は?
A

とくにありません。『フォー・オール・マンカインド』を観ないと物語がわからないということもないです。

『スター・シティ』の見どころ
★歴史改変SFらしいポリティカル・スリラー。
★愛国心を絶対視する社会で従事する絶望の深さ。
『スター・シティ』の欠点
☆ロシア人のキャスティングやロシア語はない。

鑑賞の案内チェック

基本
キッズ 2.0
殺人や性行為の描写があります。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『スター・シティ』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

1969年6月26日、ソ連のとある場所にある家。ドアを激しくノックする音。ひとりの女性がベッドから飛び起き、玄関を開けると、政府機関の職員でした。こうしてアレクセイ・レオーノフの妻は子どもを家に置いたまま連行されます。詳しくは何も知らされず…。

「私たちは善良な国民です」と涙ながらに訴えますが、何も教えてくれず、通されたのは管制室でした。ソ連宇宙計画の設計主任(チーフデザイナー)から「アレクセイは今、月に降り立った」と教えられます。拍手に包まれる管制室。

「この最初の一歩を我が国に我が同志に。マルクス・レーニン主義に捧げます。今日のことは小さな一歩だが誰もが星へ行ける日が来るでしょう」

そう言って宇宙飛行士のアレクセイはソ連の英雄となり、人類初の月に降り立った人間となったのでした。

ソ連が人類初の月面着陸を成し遂げたことはアメリカへの勝利として盛大な祝われ、ソ連の政治のトップであるレオニード・ブレジネフ書記長も大々的にこれをアピールし、華やかなパレードがソ連で行われました。

設計主任はその栄誉を評して勲章を受賞されますが、式典には妻とマクシム・タラソフ副首相しか同席していません。KGBはアメリカに命を狙われる可能性があると危惧しているためです。

設計主任は、月は足掛かりであり、今度は火星金星へのさらなる探査計画を提案したく書記長との対談を申し込んでいましたが、副首相からそれは出しゃばりすぎだと言われます。設計主任は自分がこんな日の目もみずに尽力するだけの人生にうんざりしていました。

その頃、ソ連の宇宙開発計画の秘密の拠点であるスターシティにて、大学を出たばかりでモスクワから来た若いイリーナ・モローゾワは出勤します。職業はKGBでの監視業務です。多くの女性が規則正しく並べられた机で盗聴監視の記録作業に従事していました。イリーナはこの仕事を始めたばかりで、さっそく宇宙飛行士とその妻の秘密録音内容をタイピングしていきます。

そんな盗聴をされているとも知らない、宇宙飛行士のヴァーリャ・ミロノフと妻のターニャでしたが、宇宙飛行士のサーシャ・ポリヴァノフが会話の最中に入ってきます。ターニャは夫が月に行くのか知っておきたいようですが、夫も同僚も口を閉ざします。

一方、スターシティのKGB監視責任者であるリュドミラ・ラスコワ大佐は設計主任に月面基地の計画がアメリカに漏洩したことを伝え、スターシティにスパイがいると指摘します。

イリーナは同僚のヴィカと休憩中に会話しますが、ヴィカはルナ16号で月面着陸する最初の女性となる予定のヤーナ・アフマートワを盗聴しているとのことでした。

そのヤーナは、同じ女性の宇宙飛行士候補であるアナスタシア・ベリコワと降下訓練をしていましたが、アナスタシアは最初に降下するのを躊躇。呆れるヤーナがさっさと降ります。

そんな中、ヤーナにスパイ疑惑が浮上し…。

この『スター・シティ』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2026/07/13に更新されています。

ここから『スター・シティ』のネタバレありの感想本文です。

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シーズン1:ソ連と女性と愛国ホラー

『スター・シティ』はポリティカル・スリラーというか、もはや「愛国ホラー」と言い切っても過言ではない様相でした。愛国心のもとに人生を送ったり、科学に貢献することがこんなにも暗く絶望的なのかという闇をたっぷりみせてくれます。

とくにこの愛国心というのは常に家族規範、ことさらジェンダー規範を前提にしていることをゾっとするかたちで突きつけます。

それを思いっきり味わうことになるのが、女性の宇宙飛行士です。

『フォー・オール・マンカインド』ではシーズン1の第1話でサラっと示唆されるだけだった、ソ連の月に降り立った初の女性。それをめぐる裏側がまず描かれるわけですが、当然ながらその女性の躍進とは裏腹にフェミニズムとはまるで真逆の現実がありました。

結局、マルクス・レーニン主義を標榜していようが、民主主義を標榜していようが、そこには家父長制が根を深く張っているんですね。

本来では月面着陸する最初の女性となる予定だったヤーナは、その反抗的で男勝りな態度ゆえに、愛国的な女性らしさに当てはまらないとみなされ、スパイ疑惑をでっちあげられて処刑されます。

そして「都合がいい」として白羽の矢が立ったのが、アナスタシアです。月に立っても台本を読むだけの「女の役割」を押し付けられ、地球に戻ればソビエト女性の模範として、望んでもいない夫と結婚することを強要される…。「象徴」なので、命を危険に晒すわけにはいきませんから、宇宙にも二度と行けず、田舎で農作業…。虚しい、虚しすぎる…。

一方、イリーナも「女の仕事」からキャリアがスタートします。それがKGBでの盗聴記録業務です。彼女は後の時代を描く『フォー・オール・マンカインド』でも登場しますので、おそらくここから成り上がっていくのでしょうけど、イリーナの場合は、諜報の仕事を活かしながら自分の地盤を少しずつ獲得していく過程がスリリングでした。

そのイリーナにとっての非常に複雑な相手であるリュドミラは、作中で最もキャリアのある女性ですが、きっとリュドミラも女らしさの規範の中で何かを犠牲にしてこのポジションを得たのでしょう。イリーナにしてみれば、怖いがでも師となる存在として複雑な関係性を構築していました。

ただ、このイリーナも、どうやらレオニード・ブレジネフ書記長と関係のある出自があるようで、まだ謎を隠していますね。

そう言えば、イリーナは宇宙飛行士(実はスパイ)のヴァーリャ・ミロノフの妻であるターニャに感情移入し、亡命を手助けまでします。イリーナ自身にターニャのような反体制気質はないようですし、なぜあそこまでリスクに手を出すのか。第5話でリュドミラがイリーナに対してターニャに性的魅力を感じているのだろう?と煽るように問い詰めるのですが、これもあながち間違いではないのかもしれません。イリーナはターニャとサーシャの不倫での性的関係の盗聴の際も動揺していましたが、それはセクシュアリティの理由からなのか。このあたりもこの時代のソ連を舞台するうえでの緊張感をともなっていましたね。

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シーズン1:ソ連でも驚きの歴史改変

女性だけではありません。男性も『スター・シティ』では愛国心の名のもとに搾取され、疲弊していきます。

こちらも虚しさを全身で背負うのが、ソ連宇宙計画の設計主任(チーフデザイナー)です。名前が全くでてきませんが、実在の人物であるセルゲイ・コロリョフのことであるのは言わずもがな。史実では1966年1月14日に亡くなるので、このフランチャイズの世界線ではもし彼が亡くならずに宇宙計画に関与し続けたら?…という「if」を描き出しています。

史実でも名前を伏せられ、その実績は死後になってやっと世間に評価されたので、本作における設計主任はひたすら孤独です。そんな彼の魂の継承者で弟子のような存在になるセルゲイ・ニクロフが同じ名前なのも狙った設定なのでしょう。

その本作の設計主任が進める宇宙開発計画。てっきり『フォー・オール・マンカインド』のシーズン1で描かれた月面基地競争の舞台裏が描かれるのかと思ったら、本作はその1974年よりも前の出来事を映します。それがソ連の金星探査計画である「ベネラ計画」です。

ベネラ計画時代は本当にあったもので、史実ではベネラ7号は1970年に金星の地表に着陸し、地球以外の惑星表面からデータを送信した最初の探査機となりました。もちろん人間が乗っているはずはありません(金星の気温は約460℃で、気圧も尋常じゃない)。

しかし、本作はそのベネラ7号は実は有人ミッションだった!というとんでもないフィクションの大嘘をぶっこんできましたよ。しかも、スパイのヴァーリャが乗り込むというオマケつき。同乗したラクシュミはとんだ修羅場に巻き込まれましたね…(ラストでフィンランドに辿り着いて亡命できたから良かったものの…)。

でも、これぞこのシリーズらしい大胆な歴史改変の醍醐味であり、ドラマチックなサスペンスの連続。見事に今回も引き込まれました。

おそらくこの『スター・シティ』は続くとしても今後もタイムジャンプなしで1970年代にとどまり続ける(もしくはさらに過去を描く)感じでしょうが、ソ連が舞台だろうが、その切れ味は変わらないことをワンシーズンで証明してみせてくれましたね。

『スター・シティ』
シネマンドレイクの個人的評価
8.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
?(匂わせ/一瞬)

以上、『スター・シティ』の感想でした。

作品ポスター・画像 (C)Apple スタシティ

Star City (2026) [Japanese Review] 『スター・シティ』考察・評価レビュー
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