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映画『終わらない週末』感想(ネタバレ)…Netflix;結末は見なくてもいいかもしれない

終わらない週末

でも見たくなる?…Netflix映画『終わらない週末』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Leave the World Behind
製作国:アメリカ(2023年)
日本では劇場未公開:2023年にNetflixで配信
監督:サム・エスメイル
人種差別描写

終わらない週末

おわらないしゅうまつ
終わらない週末

『終わらない週末』物語 簡単紹介

アマンダと夫のクレイ、2人の子どもたちの一家は、のんびりと週末を過ごそうとレンタルした豪華な別荘にやってくる。人があまりいない環境で休もうと張り切るアマンダ。しかし、到着して早々にスマホやパソコンが使えないという事態が発生する。なぜこんなことが起こっているのかはわからない中、ひとまず明日には改善しているはずだと考えてゆっくりすることにするが、そんなアマンダたちのもとに謎の訪問者がやってくる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『終わらない週末』の感想です。

『終わらない週末』感想(ネタバレなし)

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週末が終わらなければいいって?

休みとなる週末…たいていは土曜日と日曜日のことです。

なんで2日だけなんだ…もっと休みたいよ…。そう日頃から思っている人も多いのではないでしょうか。

最近は週休3日制の導入も進んでいます。それだと給料まで減るイメージがありますが、近年は出勤日の勤務時間を延ばして合計の所定労働時間と給与を変えない仕組みもあったりします。完全週休3日制でも選択的週休3日制でも、ワークライフバランスは人それぞれなので、自分に合ったものが選べるといいですね。

では終わらない週末があったら…。それは最高じゃないか!と思うかもですけど、本当に最高なのか…。

そんなあなたの思いどおりにはいかない週末サスペンス…それが今回紹介する映画です。

タイトルは『終わらない週末』

本作は、アメリカに暮らす主人公が突然思いついた休暇で人里離れた別荘まで休みに行くところから始まります。この休み方…日本ではなかなかできないパターン…。

ゆっくり休めると思ったら、なんだか怪しいことになっていきます。もうこれは言っても大丈夫だと思うので書いちゃいますが、本作は「これって終末では?」と疑いが強まっていく終末心理スリラーです。

つまり、邦題の『終わらない“週末”』は「終わらない”終末”」と引っかけたものだということですね。原題は「Leave the World Behind」です。

原作があって、バングラデシュ系アメリカ人の“ルマール・アラム”が2020年に書いた小説で、全米図書賞にノミネートされるなど高い評価を受けました。

この本が注目を集めたのは、ちょうど出版時期(2020年10月)が、新型コロナウイルスのパンデミックで世界がロックダウンし、「もうこれは終末みたいじゃないか…」と不安と恐怖をみんな体験したばかりのタイミングだったからというのもあるでしょう。

そういう背景もあるせいか、この小説が映画化されるスピードも早かったです。出版前に入札合戦があり、「Netflix」が獲得。そして2023年に配信。もう今はパンデミックのあの世界の混乱を忘れかけているかもしれませんが、それがまた思い出される嫌な感じになるかも…。

映画『終わらない週末』を監督するのは、ドラマ『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』(2015年~)で一躍話題となった“サム・エスメイル”。2014年にトリッキーな時間軸で展開されるロマンティック・コメディ『COMET コメット』で長編映画監督デビューを果たした“サム・エスメイル”ですが、この人のキャリアは少々変わっています。

エジプト移民の両親のもとに生まれ、ドットコム・バブルの最中にテクノロジー企業を立ち上げます。20歳にしてバブルの波に乗っかり、多額の投資を受けられたのですけど、あえなくバブルは弾け、次の仕事を探すハメに…。

そこでたまたま映像作品の編集アシスタントの雑務をこなすようになり、だんだんと本格的にこの仕事にのめり込み、やがて自分の作品を作るまでになったそうです。

それで成功しちゃうんですから、すごいですね。“サム・エスメイル”、持ってるな…。

映画『終わらない週末』は、“バラク・オバマ”と“ミシェル・オバマ”が設立した製作会社「Higher Ground」も制作に関わっています。

俳優陣はかなり豪華です。原作が話題だったので、キャスティングも負けじと揃えたのかな。

まず『ベン・イズ・バック』“ジュリア・ロバーツ”。ドラマ『ホームカミング』でも“サム・エスメイル”監督と手を組んでいました。

続いて『ブラック・フォン』『レイモンド&レイ』“イーサン・ホーク”。ちょっと頼りなさそうな夫の役です。困り顔がいっぱい見れます。

さらに『グリーンブック』『スワン・ソング』“マハーシャラ・アリ”も、重要なキャラクターで登場します。どう絡んでくるのかはネタバレできませんけどね。

他には、『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』“マイハラ・ヘロルド”、ドラマ『ユートピア ~悪のウイルス~』“ファラ・マッケンジー”、ドラマ『Everything’s Gonna Be Okay』“チャーリー・エヴァンス”など。さらに“ケヴィン・ベーコン”までちゃっかりでてきます(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』みたいな本人役ではないですよ)。

『終わらない週末』はかなりスローペースで進む心理スリラーで、140分超えなので、少し時間を用意してじっくり鑑賞してみてください。

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『終わらない週末』を観る前のQ&A

Q:『終わらない週末』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2023年12月8日から配信中です。
✔『終わらない週末』の見どころ
★得体のしれない世界観に翻弄される。
★豪華な俳優陣のアンサンブル。
✔『終わらない週末』の欠点
☆かなりスローペースなので忍耐は必要。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:じっくり世界に
友人 3.5:俳優ファン同士で
恋人 3.5:興味あれば
キッズ 3.0:ちょっと長い
↓ここからネタバレが含まれます↓

『終わらない週末』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):何が起きてるんだ?

アマンダ・サンドフォードはもう起きていました。眠れなかったようです。夫のクレイはベッドで目を覚まし、苛立っている感じのアマンダを眺めます。

今朝の思いつきで海沿いの家を借りたので荷造りしていると話すアマンダ。休暇に賛成するクレイでしたが、唐突なので困惑します。アマンダは人嫌いだと言い切り、とにかく静かなところにいたいとのこと。

車で移動。後部座席には子どものアーチーローズ。アーチーはゲーム、ローズはドラマを見ています。親に振り回されるかたちですが、慣れているようで従っています。

森を進み、家に到着。かなり立派です。子どもたちはプールでさっそく遊んでいます。

アマンダは食料品店で買い出しにでます。そこで駐車場の車に大量に買い込んでいる帽子髭男に思わず警戒してしまいます。

次に家族揃って海のビーチへ。ローズは石油タンカーが徐々に近づいてくる気がしてそればかり見つめます。のんびりしていると、あのタンカーをずっと見つめていたローズは、かなり近くまできたことを親に知らせます。さすがに変です。こっちに来ます。急いで退避し、「ホワイトライオン」と書かれたタンカーは豪快に座礁しました。

そこにいた人たちは追い出されてしまいます。完全に気分も冷め、借りた別荘に帰ることになります。

しかし、テレビもWi-Fiも使えません。ローズは『フレンズ』の最終話が見れなくて不満です。アマンダは庭に鹿がいるのに気づきます。

食事後、子どもたちが寝た時間。アマンダとクレイの2人がくつろいでいると訪問者が来ます。

こんな夜遅い時間に怪しいと考えて、警戒しながらドアを開けると、正装した男と若い女でした。男はG・H・スコット(ジョージ)と名乗り、アマンダを知っているようです。なんでも家主だとか。隣にいるのは娘のルースだそうです。

中で話を聞くと、街では停電しているらしく、それでここに来たとのこと。人嫌いのアマンダは宿泊を嫌がるも、「帰らなくていいですし、半額を返金します」と言われます。さらにGHは施錠された酒棚を開けて、封筒を取り出し、1000ドルを渡してくれます。その棚の引き出しには拳銃も保管されていました。

奥でアマンダはクレイと議論。アマンダは納得いかないようで、あの人の家だと信用できないと主張。鍵を開けられたのもただのハウスキーパーだからなのかもしれないと疑います。ルースの態度が生意気に感じて、そこもアマンダは気に入らないとぶつくさ言います。

けれども追い返せないので渋々承諾。カクテルを用意してくれるGHに、アマンダは探るようにいろいろ質問。身分証明書を見せてと言いますが、会場で預けたコートに忘れたと言われます。

そのとき、テレビで緊急警報放送が流れ、非常事態宣言を告げてきます。詳細はわかりませんが、これは停電どころではありません。

これは一体何事なのか…。

この『終わらない週末』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2023/12/20に更新されています。
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終末には乗り物に乗ってはいけない

ここから『終わらない週末』のネタバレありの感想本文です。

映画『終わらない週末』は意味深なぐるぐるカメラワークが序盤から多用され、観客がこれから不確かな世界に誘われることが暗示されます(ちょっと映像酔いする人もいたかも…)。

本作は終末スリラーの序章ですが、結構派手なインパクトで驚かせる展開もいくつか挿入されますので見ごたえは確保されています。石油タンカーが盛大に砂浜に乗り上げたり、航空機が真っ逆さまに墜落してきたり、自動運転車が暴走して立て続けにクラッシュしたり…。乗り物ディザスターは定番です。「終末になったら乗り物になるな」の法則…。

これに関連して本作はテクノロジー依存の問題も突きつけます。電気やネット回線などのインフラが止まれば、スマホもテレビも使えません。本作に登場するサンドフォード家もG・H・スコットもかなり裕福な世帯なのですが、終末世界に突入すると全くその裕福さは頼りになりません。その裕福さというのは結局はテクノロジーありきだからです。スマホも使えないとデジタルなおカネも引き出せないですからね。

このあたりのテクノロジー風刺は“サム・エスメイル”監督なら大得意でしょう。

作中の終盤では、薬を求めてGHの知り合いであるダニーのもとへ向かいますが、あのダニーは家にアメリカ国旗を掲げているあからさまなサバイバリストです。そのダニーはに1000ドルの現金で交渉するしかできず、資本主義の無価値さがまたも滲みます。

また、乗り物やテクノロジー以外だと動物も象徴的に登場し、とくに目立つのは鹿です。動物がでてくる理由は、人間には感知できない何らかの異常を察知しているという野生的感覚を示すためなのもありますし、動物パニックディザスターに発展させやすいというのもあるでしょう。

加えて、とくに鹿という生き物自体が「危険」を暗示するサインとして引用されやすい動物でもあり(車との交通事故を起こしやすい動物だとか、ハンターに狩られやすい動物などの理由で)、作中でも鹿の存在感がめちゃくちゃデカいです。あんな鹿がアップで、しかもいっぱい映りまくるとは思わなかった…。

ちなみに舞台となっているのはロングアイランドで、ここに生息しているのはアメリカで最も一般的な鹿であるオジロジカです。作中でローズが「鹿ってこんなに群れるの?」と聞いていましたが、通常は数頭で行動し、場合によっては数十頭の巨大な群れになることもあります。だから映画内の鹿はそこまで不自然でもないですが、野生の鹿のほうから人間に接近してくることはあまりないでしょうね。

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疑心暗鬼の全方位攻撃

映画『終わらない週末』はスローペースの話運びの中、私たち人間社会の不信感というものを炙りだします。連帯すればいいのに、それができないもどかしさ。

例えば、人種差別。序盤でアマンダはGHとルースに警戒感を剥き出しにしますが、これは単なる人嫌いというだけでなく、その口ぶりから黒人差別を匂わせます。ちょっとカレン(典型的な人種差別の態度をとる白人女性)っぽさを意識したキャラクター像ですね。

また、異変後にひとり車で外に繰り出したクレイは、そこでスペイン語で話しかけまくってくる慌てた女性に遭遇するも、コミュニケーションできずに置き去りにしてしまいます。これは移民排除的な構図に似ています。

そして謎のドローンでアラビア語のビラがばらまかれるのは、ムスリモフォビア(イスラム教嫌悪)を示しています。アーチーがそのビラの一部を読めたのがゲームの影響だというのも、世間のゲームがいかにムスリムを敵として描いているかを物語っています。

最後にサバイバリストのダニーは今回の異常を中国か北朝鮮の仕業だと断言。本人はアジア各国の区別もついてなさそうで、これまた露骨なアジア蔑視です。

別の観点だと、GHが意味ありげに陰謀論者と思われる友人絡みの話題に言及したり、謎のノイズが響き渡ったり、ディープステート感も醸し出します。

かと思えば、アーチーの歯がどんどん抜け落ちて、謎の感染症でも流行っているのかという恐怖を見せたり…。

同時に、アーチーがルースに見惚れたり、アマンダとGHの不倫感情をチラ見せしたり、森の謎の小屋からローズが監視されているかのような犯罪臭を流したり、あの手この手の性に関する緊迫感もばらまいています。

こんなふうに本作はとにかく思いつくかぎりの疑心暗鬼を全方位から助長しまくるんですね。

ただ、個人的にはこの疑心暗鬼の演出も上手いというよりは、がむしゃらに打ち出せるだけ打ちまくっている乱雑さに見えてしまって、ちょっと散漫に感じたりもしました。

最終的にどこに焦点を当てるのかという部分は放りだしていますから、そこを期待するタイプの作品じゃないというのはわかるんだけども。

最後はローズが他人家のセーフルームで、ずっと観たかった『フレンズ』の最終回をDVDで観るところでエンディングなのですが、このしょうもないオチが良いかどうかはともかく、気持ちとしてはわかります。だって私も新型コロナウイルスのパンデミック中はやっぱり映画とかドラマとか観るしかなかったですからね。ローズを責められない…。

『終わらない週末』は原作出版時はタイムリーな作品として話題を集めたかもしれませんが、もう2023年になり、若干大衆は終末スリラーにすでに飽き始めているところもあります。オリジナリティが消費期限切れを起こすのも早いのがこのジャンルの性質なのかもしれません。

『終わらない週末』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 75% Audience 48%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0
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終末モノの作品の感想記事です。

・『ノック 終末の訪問者』

・『ステーション・イレブン』

・『スイート・トゥース 鹿の角を持つ少年』

作品ポスター・画像 (C)Netflix リーブ・ザ・ワールド・ビハインド

以上、『終わらない週末』の感想でした。

Leave the World Behind (2023) [Japanese Review] 『終わらない週末』考察・評価レビュー