あとアレもやめちゃう?…「Netflix」映画『エノーラ・ホームズの事件簿3』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年)
日本では劇場未公開:2026年にNetflixで配信
監督:フィリップ・バランティーニ
恋愛描写
えのーらほーむずのじけんぼ3

『エノーラ・ホームズの事件簿3』物語 簡単紹介
『エノーラ・ホームズの事件簿3』感想(ネタバレなし)
性染色体とか知ったことか!
女性がただ普通にカフェで授乳していたり、女優が撮影現場での身体接触に一定の許容範囲を決めていたり…でもそういうことがとにかく気に食わない日本社会の皆さん、ごきげんよう。
「日本の皇位継承は男系継承によってY染色体が受け継がれているんだよ!」なんて発言している現代の一部の日本人を、今回紹介する映画の主人公が目にしたら、たぶん呆れて何も言えなくなると思いますが…。性染色体以外のもっと大切なその人らしさに気づいてあげる心の広さを、この映画で養えるといいのですけどね。
ということで、本作『エノーラ・ホームズの事件簿3』の感想です。
本作は“ナンシー・スプリンガー”原作のヤングアダルト向けミステリ小説シリーズを映画化した『エノーラ・ホームズの事件簿』が2020年に「Netflix(ネットフリックス)」で独占配信されたことで始まりました。
好評によって2022年に続編の2作目『エノーラ・ホームズの事件簿2』も制作され、2026年に今回の3作目へと至りました。
3部作…なのかはわかりませんが、今回の『エノーラ・ホームズの事件簿3』は締めくくりのような雰囲気があります。
頭脳は大人(男性)以上、体力も大人(男性)顔負け…そんな探偵少女の物語…だったのですが、もう少女ではないですね。今作では結婚を控え、大きな一歩に踏み出します。
もちろんこの主人公の持ち味はXX染色体ではありません。世間から過小評価される若い女性が探偵として男社会に切り込んでいく…そのアグレッシブさにありました。シリーズを振り返ると、フェミニズムな視点で溢れつつ、アクションと謎解きをバランスよく織り交ぜたエンターテインメントとして、本当に良作だったと思います。子どもに観せたい模範になる映画でしたよ。
『エノーラ・ホームズの事件簿3』の脚本はこれまでと同じく“ジャック・ソーン”ですが、監督は『ボイリング・ポイント/沸騰』の“フィリップ・バランティーニ”に変更になりました。“ジャック・ソーン”とは絶賛されたドラマ『アドレセンス』でタッグを組んだ仲ですね。

主演の“ミリー・ボビー・ブラウン”は今回も大暴れ。自分の看板シリーズを持てて何よりです。
過去作が好きだった人も、まだシリーズ未見でも作品性が気に入りそうな人も、どんどん気軽に観て楽しんでください。
『エノーラ・ホームズの事件簿3』を観る前のQ&A
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Q『エノーラ・ホームズの事件簿3』は日本ではいつどこで配信されていますか?
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A
「Netflix」でオリジナル映画として2026年7月1日から配信中です。
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Q『エノーラ・ホームズの事件簿3』を観る前に観たほうがいい作品は?
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A
前作の1作目と2作目の鑑賞をオススメします。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | — |
| キッズ | 殺人が描かれますが、基本的に子どもでも観れます。 |
『エノーラ・ホームズの事件簿3』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
とある地下牢。拘束されたある人物が連行され、誰かに自由を見返りに交渉を持ちかけられます。そして「テュークスベリーという名に聞き覚えは?」と聞かれ…。
1年後。地中海のマルタ。この穏やかな島にて、教会でアーネスト・テュークスベリー卿は結婚式を間近に控え、顔に幸せを浮かべて花嫁の入場を待っていました。そして音楽が鳴り、いよいよそのときが来ます。後ろのドアが開き、入ってきたのは花嫁ではありません。自分の母です。随分と花嫁に待たされています。
肝心の花嫁であるエノーラは土壇場で本当に結婚するべきか悩んでいました。「ホームズ」の姓を捨てるべきか、でも庶民の味方と評判の貴族のテュークスベリーは悪い人じゃない…。
決心したエノーラはウェディングドレスのまま馬車で式場へ全力で向かいます。途中で強盗に襲われますが、銃を向けるも、それはワトソンでした。兄のシャーロックの相棒です。
なんでもシャーロックが誘拐されたというのです。シャーロックは名探偵ですが、エノーラも負けない推理力があります。関係は良好でしたが、エノーラが結婚を決めてからというのもどうもギクシャクしていました。もちろん結婚式には招待しました。エスコートも頼みました。けれども不機嫌な顔と低音の声で「おめでとう」と呟くだけでした。
結婚式を行う地がテュークスベリーの母の意向でマルタになり、そこでの両者の集まりでも、シャーロックは「なぜ自由を捨てる? 探偵になったのに?」と静かに問います。エノーラは苛立ち、その場では反論していましたが、心を乱されたのは事実です。
シャーロックはそれ以来は見ていません。体術にも長けているシャーロックが簡単に誘拐されるはずはありません。結婚式をすっぽかし、エノーラはワトソンとシャーロックの部屋を調査。何か手がかりを残していないかくまなく調べると、鏡に文字らしきものが残っていました。「KHOST」と書かれているような…でも何を意味するかまではわかりません。
そうこうしているうちに結婚式は中断となったようで、参加者は戻ってきてしまいました。みんな明らかに不在の花嫁を失礼な奴だと思っていることが伝わってきます。
そのとき、失踪前にシャーロックが意味深に見つめていた髭の男を見かけ、追跡します。しかし、その男は何者かに撃たれてしまい、「ラス(wrath)」とだけ言い残して目を開けることはありませんでした。
事件のことで頭がいっぱいなエノーラはテュークスベリーからも失望されてしまい…

ここから『エノーラ・ホームズの事件簿3』のネタバレありの感想本文です。
歴史の加害者としての自分を直視する
『エノーラ・ホームズの事件簿』シリーズは、1作目ではイギリスにおける女性参政権運動、2作目では女性労働者によるマッチガール・ストライキ…いずれもフェミニズムに根差した歴史上の社会問題を取り上げ、巧みにリアルをフィクションに織り交ぜてみせていました。
今回の『エノーラ・ホームズの事件簿3』は、これまでが比較的ローカルなフェミニズム関連の実話の出来事を取り上げていたのに対し、一気にスケールが飛躍しました。
それが植民地主義…とくに大英帝国の加害史です。
やはり昨今はリアルタイムでまたも植民地主義が政治的論題になっている以上、脚本の“ジャック・ソーン”も避けて通れないなと思ったのでしょうか。それゆえに、どちらかと言えば過去作では「若い女性の代表」として豪快に時代を切り開く側だった主人公のエノーラですが、今回は自分の家系(というか属する貴族社会全体)の負の責任を問われる加害者に立つことになります。
今作においては先進的な大人の女性たちの思いを引き継げばいいという単純なものではありません。アグレッシブさだけでは解決もできません。反省しないといけないのですから…。
『エノーラ・ホームズの事件簿3』は舞台となっている「マルタ」がそのテーマのまさに中心地のひとつでした。
ざっくり背景をおさらいすると、マルタという諸島は1964年にイギリスから独立するまではイギリスの領地で、19世紀ではいわばイギリスの植民地支配の玄関口のような役割を果たしていました。
作中では、ミキエル・ミツィといったマルタの自由を求めて闘う者たちが登場しますが、当時のマルタは植民地なので扱いは三流。エノーラが地元警察に逮捕された際も、お上のひと声ですぐさま釈放されるシーンにて、「イギリスの男性 >イギリスの女性 > マルタの人々」という上下の構図が露骨に浮き彫りになり、エノーラ自身もショックを受けているのが印象的です。これまでは階級や男女の差だけに着目していたのに、それ以上の残酷な格差が世の中にはあるのです。
さらに事件の根本にあるのは、19世紀に実際に起きた「アフガン戦争(アングロ・アフガン戦争)」。1838年にイギリスがアフガニスタンに対して宣戦布告して勃発したものです。作中で言及される「ホーストの戦い」(金塊強奪の件も含め)は架空のものですが、各地で虐殺と略奪が行われたのは事実であり、本作はその残酷な歴史を土台にしています。
本作にてモリアーティが言い放つ「植民地の恩恵を受けていないイギリスの貴族はいない」という批判は的を射ており、ホームズ家とテュークスベリー家は家系の偽善的な一面を直視させられます。
ましてやアーネスト・テュークスベリーは自分の父がホーストの戦いの指揮官だったと知り、かなり動揺を隠せず…。そんな彼にワトソンが寄り添う場面は、今作でワトソンにインド系の“ヒメーシュ・パテル”をキャスティングしていることが効果的に活かされていました。
基本的に子どもでも観られる作品に調整しているので、帝国主義的な侵攻の残忍さを直球で描くことはしていませんけど、子どものときからこうした論点に触れていくのは大切だなと思います。大人になっていきなりこの論点を突きつけられて「う、う~…なんだよ! Wokeだ!」と条件反射になってしまうよりはね…。
囚われの身が似合うヘンリー・カヴィル
『エノーラ・ホームズの事件簿3』のプロット自体は、結婚バカンスものの構成になっていて、舞台がリゾート地のマルタなのもそうですし、当事者が「結婚していいのだろうか?」と土壇場で悩みだすのもお約束。
しかし、その葛藤は「家父長制的な規範への迎合」と「植民地主義への迎合」の2つが折り重なっていくので、これまでの過去作のフェミニズムと比べると複雑化しています。
でも全体的には軽く観ていられるトーンで、楽しい一作でした。
序盤の「ウェディングドレス姿で馬車からのあわや銃撃戦か」みたいな西部劇といい、マルタの街並みの追跡劇や地下での格闘といい、今回もアクションは快活です。“ミリー・ボビー・ブラウン”の得意分野です。
一番の盛り上がりは、主要メンバーの勢揃いシーンなのかな。ああやって揃うと、やっぱろエノーラのチームはなかなかに手強いですよね。
正直、今回のモリアーティはそんなに怖くないというか。エノーラのチーム・パワーが圧倒的に上回っていたので、もうちょっとモリアーティ側へのテコ入れが必要だったかもしれません。
謎解きもそこまでハラハラドキドキするものではなかったし…。今作はモリアーティが裏にいるのはわかりきっていましたからね。これでモリアーティはミスリードで全然違う奴が黒幕だった…!とかだったら、驚きだけど。
シャーロックは良かったです。あの“ヘンリー・カヴィル”を誘拐されているだけの役にとどめるという使いかたをするのはこのシリーズぐらいなものですよ。個人的にはもっとシャーロックとワトソンの絡みも観たかったところではあるけどもね…。
『エノーラ・ホームズの事件簿』シリーズは今後も続くのかどうかはわかりませんけど、あらためて「楽しいシリーズをどうもありがとう」と感謝です。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
関連作品紹介
ミリー・ボビー・ブラウン出演の作品の感想記事です。
・『ストレンジャー・シングス 未知の世界』
・『エレクトリック・ステイト』
・『ダムゼル 運命を拓きし者』
以上、『エノーラ・ホームズの事件簿3』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Netflix エノーラホームズの事件簿3
Enola Holmes 3 (2026) [Japanese Review] 『エノーラ・ホームズの事件簿3』考察・評価レビュー
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