ミッション:インポッシブル フォールアウト
映画『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(ミッションインポッシブル6)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Mission: Impossible - Fallout 
製作国:アメリカ(2018年)  
日本公開日:2018年8月3日 
監督:クリストファー・マッカリー 

あらすじ

世界の3つの都市が核の標的になってしまう。イーサン・ハントとIMFのチームは、核爆発を未然に防ぐため、72時間という限られた時間と少ない手がかりをもとに、正体不明の敵を追う。しかし、タイムリミットが迫る中、イーサンを疑うCIAが敏腕エージェントのウォーカーが立ちはだかる。

ネタバレなし感想

スタントがメインの俳優です

「スタント・パーソン」という職業が映画業界にはあります。俳優に代わってアクションシーンを担当する人のことですが、当然これは裏方の仕事です。俳優自身がアクションするケースもありますけど、やっぱりスタント・パーソンの出番になることは多々あります。

しかし、なぜかスタントに命を懸けている俳優がここにいます。その男の名は“トム・クルーズ”。キャリア当初はその整った顔立ちからイケメン俳優として引っ張りだこだった…はずなんですが、なぜか今ではスタント専門になっています。あれ、おかしいな…。まあ、きっともう賞とか興味ないんでしょうね。スタントでしか自己表現ができないと気づいてしまったんですね。

スタントに使う乗り物も一般人レベルではなく、F1マシンからセスナやヘリまで、なんでも乗れます。私は“トム・クルーズ”は映画に出ている「Youtuber」だと思うことにしました。目立ってなんぼの世界ですよ、この56歳。

そんな彼が一番やりたい放題することを許されているのが「ミッション:インポッシブル」シリーズです。それは作品を重ねるごとにエスカレート。シリーズのポスターを並べると一目瞭然です。

「ミッションインポッシブル」6作品のポスター

このように初期作はイケメン俳優の顔を売りにしているのに、後半作はもう乗り物にしがみついている男の画像でしかない。なんだこれ。

そのシリーズ第6作目が本作『ミッション:インポッシブル フォールアウト』。ほら、もう遊園地のアトラクションみたいなサブタイトルがついてますよ。副題の「Fallout」は「放射性降下物」や「副次的な予期しない影響」を意味しますが、どういうことかは本編を見てのお楽しみ。

本作に関しては事前にニュースになったので知っている人も多いと思いますが、“トム・クルーズ”は撮影中のスタントで大怪我しました。しかし、9カ月は走れないか、もしかしたら二度と走れないかもしれないとまで医者に言われたにも関わらず、6週間で走れるようになり、5カ月後には完治しないまま撮影を再開したそうです。ちょっと意味がわかりませんね。

『メイズ・ランナー 最期の迷宮』の例でもあるように、普通、主演俳優が怪我をするというのは“あってはならない”緊急事態のはずなんですけどね…。
『メイズ・ランナー 最期の迷宮』感想(ネタバレ)…色々あったけど完結
“トム・クルーズ”の頑張りがクローズアップされてばかりいますが、実は紅一点のチームメンバーを演じる“レベッカ・ファーガソン”も凄いです。というのも彼女は撮影中は妊娠しており、撮影終了時は妊娠7か月だったとか。それでアクションもしていますから、なんだこのバイタリティ。ちなみに無事女の子を出産したようで、おめでとうございます。

あと、“サイモン・ペッグ”も筋力トレーニングをしたらしいですが、役に立つシーンはあるのか、ないのか…。

なお、チームの仲間であり、前作でも登場していた“ジェレミー・レナー”演じるウィリアム・ブラントは今作では出番なしです(どうやらサノスと戦うほうに忙しかったみたいです。まあ、この時点であの弓矢男にどんな役目があるのか知りませんが…)。

作品自体ですが、シリーズ作としては4作目『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』あたりから急激に面白さが増し、5作目の『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』でチームプレイが確立した感じがしましたので、今作も非常に楽しみ。しかも、5作目の“クリストファー・マッカリー”が監督を続投するので、絶対に面白いに決まっている。あとは最高得点を叩き出せるかです。嬉しい事に本国ではすでにシリーズ最高の評価を獲得。とどまることを知りません。

シリーズ全作品を事前に観ておく必要はありませんが、前作となる5作目くらいは鑑賞しておけば、物語に入りやすいと思います。

鑑賞前のおすすめ PiCKUP!
↑『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』…シリーズ第5弾はチームが敵の作戦にハマって崩壊の危機!?

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

すごい奴だ

これぞ、エンタメ。楽しかった。ポリコレも政治も考えなくていい、純粋な“映画”。もう映画に感想とか考察とか必要ないですね。そんなの書いている場合じゃないですよ。だから、ここでお終い。あとは外に出てヘリでも飛ばそうか。

…そうしたいのですが、私は凡人レベルの乗り物しか操縦できないので、大人しく駄文を書きつらねます。はい。

スパイ映画というジャンルは基本的にテンプレで構成されているので、真新しいことは起こりません。なので、その王道をいかにカッコよく見せるか、それが全てなところがあります。その点、本作はそのスパイ映画の究極系といってもいい、最高純度のエンターテインメントを見せてくれました。

もう、“ヘンリー・カヴィル”演じるオーガスト・ウォーカーが悪役だということは鑑賞前から察するのは簡単だし、どうせ最後は危機は回避されて終わることもわかりきっていること。でもハラハラドキドキしてしまう。失敗したらどうしようと焦る。このサスペンスを観客に提供できたら大合格ですよ。逆にそういうのに感情が動かされない人なのならば、根本的にスパイ・エンタメ映画が向いていないのだと思いますけど…。

本作最初の派手シーンであるHALO降下シークエンスがとにかく美しい。フランスのパリにあるグラン・パレに潜入するためにイーサン・ハントとウォーカーが高度からスカイダイビングし、嵐を突っ切って気を失ったウォーカーをサポートしながらギリギリで着地。これ、全部スタジオ撮影に見えますが、ちゃんと本当に“トム・クルーズ”本人がHALO降下していますからね。映画に登場したHALO降下の中でもベストな緊張感でした。これを撮っているカメラの人も凄いですよ。えっ、なんでグラン・パレに侵入するためにわざわざHALO降下するかって? そっちのほうがカッコいいからに決まってますよ。当然です。皆も一度は学校や会社にHALO降下で出勤・通学したいと思ったことがあるでしょう? HALO降下はロマンだからね。

続いてターゲットのジョン・ラークと思われるアジア人男とのトイレ・バトル。これがまたカッコいい。この敵となる男を演じる“リャン・ヤン”が地味に凄い。なにせ“トム・クルーズ”と“ヘンリー・カヴィル”という二人の最強男に対してちゃんと互角以上の強さを持つキャラに見える。なんなんだ、この人…と思って調べたら、『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』の戦闘シーンや『キングスマン』のスタントを担当したなかなかとんでもないプロフェッショナルでした。こんな逸材が裏方で仕事していたんだな~。つまり、今作は本来スタントで姿を観客に見せない人を表舞台で起用しているんですね。これ、地味ですけど、とてもこの作品らしいと思います。本当に「スタント」という職業への愛を感じますね。

そして今度はソロモン・レーンをめぐってイーサンが警察から逃げまくるシークエンス。パリの街を疾走する白熱のチェイスシーンは、クロード・ルルーシュ監督の1976年の「C'était un rendez-vous」という短編作品から影響を受けているそうで、こんなあたりに監督と“トム・クルーズ”の映画知識量の奥深さを垣間見せてくれます。この場面で、イーサンの爆走する車に乗っているソロモン・レーンが終始真顔なのが地味に笑いを誘う…。

それで問題のロンドンでの建物上での追いかけっこシーン。ここのイーサンが死に物狂いで爆走する姿で、私は後述する理由でちょっと感動し始めてきたのでした。

ラストはヘリチェイス。ここに関しては言うことなし。「ありがとう、トム・クルーズ…」と念じていました。

ミッション:インポッシブル フォールアウト

どんな物事や行為にも価値はある

こうやって振り返ってみると、今作は本当にガチでアクションに向き合う傾向が強かったですよね。

途中までは知略で戦うシーンも多いです。例えば、デルブルックという反宗教の狂人を騙す場面。3つの核兵器が宗教の聖地を破壊したというニュースが流れるなか、デルブルックの声明を発表させるかわりにパスコードを聞くという交換交渉を行うわけですが、それは全部フェイク。この「マウストラップ」シーンは、前作『ローグ・ネイション』のラストをなぞったカタチですね。加えて、昨今話題のフェイクニュースへの皮肉にもなっていてナイス。

その後も、実はジョン・ラーク本人だったウォーカーをハメるなど、チームワークが抜群に輝くシーンがたっぷり。個人的には、前作でイーサンを信頼していなかったアラン・ハンリー長官がきっちり対等なチームとして活躍している姿に胸がいっぱいでした。いいチームじゃないか、ほんと。イジメとかないよ、このチームには。だからこそ死んでしまうのは余計に辛い。こういうステレオタイプな上司キャラになりがちな人物の死にここまで心揺れ動くとは…。“クリストファー・マッカリー”監督の全員を大切にする姿勢が好きです。

ただ、これ以降はアクション一筋になるのです。それに関連してか、今回はあまり都合のいいガジェットが登場しません。終盤のヘリとか、なんかこう“ヘリの飛行を停止する”アイテムとか開発できないんですか、ベンジー!と思ったけど、ないんですね。

とくに終盤のカシミールのシークエンスは、イーサンの活躍に全てを懸けるという展開になります。これこそが本作の単にエンタメと片づけられない真面目なテーマだと感じました。

イーサンは自分の活躍のせいで一番身近にいる大切な人が危険にさらされるという「Fallout(副次的な予期しない影響)」に苦しむわけですが、今作はいつも以上にその追い詰めが激しいです。巧みなことに、冒頭のジュリアとの誓いの言葉での核爆発や、序盤の核兵器3聖地爆破フェイク映像、中盤のソロモン・レーン護送警察を銃殺する未来の示唆など、わざわざ最悪の状況を観客にも見せます。それによってイーサンにつきまとう副作用がよくわかるつくりです。

そんなイーサンの不安に対して誰よりも仲間が肯定してくれるんですね。大丈夫と。最後にジュリアが言うように「あなたがいるから眠っていられる」…そんな言葉をかけて。

これは本作、もっといえば様々なモノにも拡大解釈できる素晴らしいメッセージです。例えば、「スタントなんて人命を危険にさらしてまでやる価値あるの?」という声だってあるでしょう。でもリスクのある職業は世界にたくさんあります。建設作業員、救助隊、ジャーナリスト、研究者…数えきれないほど。リスク関係なしに話題をかえても、「映画やアニメを作る人なんてオタクの娯楽なんだから価値ない」とかいう人もいるほどです。でも、そんな世の中の職業の存在価値を平然と否定する人に対して、「あんたには理解できなくても、それで勇気や生きる希望をもらっている人がいるんだよ」という至極真っ当な言葉を本作は投げかけているように思います。それは劇中に登場した悪役、宗教否定派のデルブルックや、社会否定派のソロモン・レーンに対する言葉でもあります。

そもそも“トム・クルーズ”はそういう人たちの代弁者としてこんなに体を張っているともとれるわけで、単にバカみたいなアクションで自己満足に浸っているわけじゃないでしょう。私もこの感想の冒頭で「“トム・クルーズ”は映画に出ているYoutuber」と表現しましたけど、Youtuberの職業を否定できますか? 少なくとも私はしません。私なんかよりもはるかに社会に貢献していますから。

“トム・クルーズ”は世界の片隅で命を懸けて頑張っている人たちを映す鏡です。理解者がいるかぎり、ずっと挑戦し続けてくれることでしょう。

最高のヒロイン交代

しんみりした話になってしまいましたが、本作の映画的な位置づけに話を変えると、最初に観た時、結構「続編」としての意識の強い作品だなと思いました。同じ監督作ということもありますし、過去作に登場したキャラも続投していますから、007の『スカイフォール』と『スペクター』と同列に比較されがちですよね。

でも、インタビューによれば監督いわく、正式な続編ではなく「スタンドアローンになっている」そうです。そう考えると、確かに意外に本作は続編のようで続編としてロジックはそこまで気にしていないんですね。過去の話もぼやかされて抽象的に語られるだけですし。

そもそも今作は脚本が全然完成していない段階で撮影に入り、撮影しながらシナリオを煮詰めていったそうで、これも“クリストファー・マッカリー”監督と“トム・クルーズ”の直感的な映画作りの特徴がよくでています。それは、なんかクラシカルな映画の生み出し方のようにも思います。ここ最近の社会的狙いや商業的受けを意識してカッチリ隙なく作り込まれた作品も多いですが、こういう「その場のノリで出来てしまったもの」をお届けする映画はレアになってきたのかもしれません。この映画製作をしながら、ここまでの完成度を繰り出すコンビは本当に貴重です。これからも頑張ってほしいです。

あと、これは個人的な好きなポイントなのですが、本作の女性キャラクターの立ち位置が素晴らしいなと思いました。とくに二人、イルサとジュリア。スパイ映画の女性は、昔なら“男の相手”に過ぎず、最近はやたらと最強になったりしますが、今作はそのどれとも違う。すごくリアルな立ち位置で、社会のさまざまな圧力に揺れ動く姿が心に響きました。私の中でも映画史上もっとも印象的で最高なヒロインの交代でした。やっぱり“クリストファー・マッカリー”監督の全員を大切にする姿勢、愛している(急な告白)。

ちなみにラスト、イルサがジュリアに耳打ちするシーンは、監督も内容は知らないそうです。ニクイ演出だったなぁ。

さあ、次回作はどうなるか。散々ネタにされてますけど、宇宙ですか。ついていきます。

ROTTEN TOMATOES 
Tomatometer 97% Audience 91%
IMDb 
8.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 8/10 ★★★★★★★★

関連作品紹介

トム・クルーズ出演作

・『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』
…呪われて不死身になります。もう不死身みたいなアクションしてたでしょというツッコミはなしで。
・『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』
…『アウトロー』の続編。ユーモアは忘れないのがトム・クルーズ。
・『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
…理由不明で死んだから時間が巻き戻ります。やったね、これで危険なスタントし放題だよ。

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