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ドラマ『ザ・コンチネンタル』感想(ネタバレ)…ジョン・ウィックの世界から

ザ・コンチネンタル

スピンオフにお泊りですか?…ドラマシリーズ『ザ・コンチネンタル: ジョン・ウィックの世界から』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Continental: From the World of John Wick
製作国:アメリカ(2023年)
シーズン1:2023年にAmazonで配信
製作総指揮:デレク・コルスタッド、チャド・スタエルスキ、デヴィッド・リーチ ほか
性描写 恋愛描写

ザ・コンチネンタル

ざこんちねんたるほてる
ザ・コンチネンタル

『ザ・コンチネンタル』あらすじ

1970年代。殺し屋たちの聖域であるコンチネンタルホテル・ニューヨークにて、その安寧を揺るがす事件が起きる。そのホテルの支配人として君臨するコーマックは事態の対処にあたる。この状況を引き起こしたあの男を許すわけにはいかない。そんな裏社会の騒乱に深く関わることになってしまったウィンストンは、自分の人生の方向性を変えるような道に進む決断をすることに…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ザ・コンチネンタル』の感想です。

『ザ・コンチネンタル』感想(ネタバレなし)

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あのホテルの過去に迫る

2023年9月、日本最大手の映画館を展開する「TOHOシネマズ」が自社以外に作品を配給しないよう圧力をかけるなどして、映画の配給元の事業を不当に拘束し、独占禁止法に違反した疑いがあるとして公正取引委員会の調査を受け、再発防止などを自主的に確約する計画を提出していたことが報道されましたNHK

映画ファンならご存じのとおり、日本には数多くの映画館があれど、やはり「TOHOシネマズ」の勢力は巨大です。何と言っても大本には日本の映画業界のトップに君臨する「東宝」がいるのがそのパワーを無視できないものとしています。

だからこそ「TOHOシネマズ」がかなり横暴な圧力をかけようとも、それが平然と黙認され、常態化してきた業界事情があるのでしょう。

こうした業界の巨大権力企業が幅を利かせ、その他大勢が従うしかない状態になる…という構造は「ジャニーズ問題」でも露呈したばかりですが、多くの業界で見られる闇です。

今回紹介する作品は、傍若無人な業界の権力を前にただの個人が反旗を翻す…そんな作品です。その権力となるお相手は「ホテル」。でもただのホテルじゃない…殺人・脅迫・拷問…なんでもありの悪徳ホテルなのでした。

それを描くのが本作『ザ・コンチネンタル』

本作はあの“キアヌ・リーヴス”がボロボロになりながら懸命にアクションすることでおなじみの『ジョン・ウィック』シリーズの初のスピンオフ・ドラマシリーズです。映画は2023年に4作目の『ジョン・ウィック コンセクエンス』が公開されたばかりですが、世界はこうして拡張していく方針で、この『ザ・コンチネンタル』はその第一陣。

“キアヌ・リーヴス”演じるジョン・ウィックは登場しません。『ザ・コンチネンタル』はそのタイトルのとおり、作中ででてきた印象的な舞台のひとつであった「コンチネンタルホテル・ニューヨーク」を主題にしており、このホテルで過去に起きた大事件を描いています。

『ジョン・ウィック』シリーズにもたびたび登場していたホテルの支配人であるウィンストンの若い頃が描かれるのが主な物語です。

『ジョン・ウィック』シリーズは殺し屋だらけの世界ですが、この世界各地にあるコンチネンタルホテルは聖域。殺しが行われない安息地となっていました(まあ、いろいろ起きるんだけども)。『ザ・コンチネンタル』はこのホテルをめぐる、言ってしまえばギャング紛争モノ&ケイパーの合わせ技みたいな感じになっており、かなり登場キャラクターも多めです。映画の『ジョン・ウィック』シリーズとは雰囲気もちょっと違います。

もちろん『ジョン・ウィック』っぽいアクションもありますが、ずっとアクションを目に流しこまれるだけだった映画の濃密さは今回は無いと思っていいかな、と。

俳優陣は、ドラマ『フライト・アテンダント』“コリン・ウッデル”を筆頭に、『ハンガー・ゲーム0』“アヨミデ・アデグン”、ドラマ『リバーデイル』”ミシェル・プラダ”『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』“ジェシカ・アレイン”、ドラマ『アニマル・キングダム』“ベン・ロブソン”『この茫漠たる荒野で』“レイ・マッキノン”、そして『ファーザー・スチュー 闘い続けた男』“メル・ギブソン”。他にも何人もいますが…。

『ザ・コンチネンタル』はドラマシリーズなのですが、全部で3話しかありません。でも1話あたり約80~97分のボリュームなので、実質、短い映画3本分と考えていいのかな。一気に鑑賞できる時間を確保するほうがいいかもしれません。

それにしても正式な邦題は『ザ・コンチネンタル: ジョン・ウィックの世界から』なんですよね。原題の「The Continental: From the World of John Wick」をそのまま訳したのでしょうけど、ずいぶん雑だな…。中学生の英文和訳じゃないんだから…。

『ザ・コンチネンタル』は日本では「Amazonプライムビデオ」で独占配信されています。シリーズの世界観を余すところなく味わいたいならぜひ。

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『ザ・コンチネンタル』を観る前のQ&A

Q:『ザ・コンチネンタル』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:『ジョン・ウィック』シリーズの映画を観ないと物語がわからないということはありません。
✔『ザ・コンチネンタル』の見どころ
★多彩なキャラクターで世界が深まる。
✔『ザ・コンチネンタル』の欠点
☆3話で構成される物語は少し散漫。
日本語吹き替え あり
諏訪部順一(ウィンストン)/ 磯部勉(コーマック)/ 北田理道(マイルス)/ 白石晴香(ルー)/ 鍜治本大樹(シャロン)/ 佐藤せつじ(フランキー)/ おまたかな(イェン)/ 木下紗華(KD) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:ケイパー好きなら
友人 3.5:シリーズ初心者でも
恋人 3.5:恋愛要素は薄め
キッズ 3.0:暴力描写が多め
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『ザ・コンチネンタル』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ザ・コンチネンタル』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):兄弟はホテルに挑む

1955年、ニューヨーク・シティ。フランキーウィンストンという子どものスコット兄弟は警察の取調室で並んで縮こまっていました。年下のウィンストンは動揺しており、今にも泣きじゃくりそうなのを必死に抑えながら「知らなかったんだ」と呟きます。一方、隣の兄フランキーは「お前は何もやっていない、俺がやった」と言い聞かせていました。

数十年後、新年パーティーで盛り上がるニューヨークのコンチネンタルホテルに、フランキーがふらっと訪れます。「俺のことは言うなよ、ローレンス」と馴染みの顔に声をかけ、狂乱のパーティー会場へ。「コーマックさんが呼んでいます」と耳打ちされ、このホテルの支配人であるコーマック・オコナーに挨拶。コーマックは気さくにハグしてきて「拾ったときは子どもだったコイツをこんな悪党に育てあげた」と満足げです。

挨拶を済ませてフランキーは何も楽しまずに会場を後にします。新年で盛り上がる地下鉄に乗らず、その線路に降りて歩いていき、そして上の秘密通路へ。

そこはパーティー会場の真下。カウントダウンのタイミングで音を誤魔化してホテルの秘密の金庫に潜入。でも目当てはカネではありません。

同行した仲間に銃を突きつけられるも、隙を見て狙いの「箱」を抱えて逃げ出します。大勢の追っ手を銃さばきで蹴散らし、建物外へ。イェンの運転する迎えの車に乗り込みました。

ところかわってロンドン。実業家として成功しているウィンストンは駐車場への出資を取り付けるべく裕福な夫妻と食事をしていました。商談成立です。実はウィンストンはその妻と繋がっており、完全に策略でした。

ホテルの部屋で休んでいると、窓が不自然に開いているのに気づきます。そして謎の集団に襲われ、拉致されてしまい…。

コーマックは手下のシャロンにベランダのドアを開けさせ、コインプレスを奪還できなかった部下4人に死を迫ります。ここでは殺しはできないですが、自ら死を選ぶなら自由です。

その後、さらってきたウィンストンがコーマックの前に連れ出されます。

「フランキーを見つけろ」と命令されるウィンストン。兄とは連絡をしばらくとっていません。断るとあっけなく返されますが、それで諦めているとは思えません。兄は何をしでかしたのか。

ひとまずウィンストンは昔なじみの手がかりを頼りに兄フランキーの行動を探ることにします。

その頃、フランキーはかつてないほどに追い込まれていました…。

この『ザ・コンチネンタル』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/02/05に更新されています。
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プロのアクションに勝るものはない

ここから『ザ・コンチネンタル』のネタバレありの感想本文です。

『ザ・コンチネンタル』は極悪な権力者であるコンチネンタルホテルの支配人コーマックによって、人生を束縛されてしまっていたフランキーとウィンストンの兄弟による反逆の物語です。

ギャング抗争のように始まりますが、ジャンルとしては完全にケイパーもの

そのキーアイテムとなるが「コインプレス」というアーティファクト。この世界では殺し屋たちは特殊なコインで身分証明しているらしく、要するに「マイナンバーカード」みたいなものです。そのコインを生産するプレス機が盗まれるということは、いくらでも身分を偽れるわけで、業界にとっては致命的。なのでコーマックも血眼になって取り返そうとしますし、業界の頂点に立つ主席連合も怒ります。

まあ、コインプレスが盗難に遭うことくらい想定して、事後対処する仕組みとかないのかよ…とか、いろいろツッコめるんですが、この世界観はこんな感じで緩いからね…。

第1話の終盤でフランキーが殺害されてしまってからは、ウィンストンが指揮をとり、復讐のために今度はホテルの乗っ取りを狙います。買収とかじゃなくて、思いっきり暴力で制圧するのですけど、それでなんとかなるのがこの世界のクオリティ。

そこで第2話ではケイパーものらしくチームが集められるのですが、とても多彩な顔触れです。

マイルズルーという父親が遺した道場を引き継ぐアフリカ系の姉弟(マイルズはベトナム戦争時の旧友)、その知り合いのレミー、フランキーの妻でこちらもベトナム絡みで知り合ったイェン、隠居していたスナイパーのジーン・ジェンキンス、映画シリーズのバワリー・キングの地下組織の前身と思われる組織を率いるメイジー、そしてコーマックの助手ながらその野蛮さゆえに縁を切ることにしたシャロン

さらに子ども時代のスコット兄弟が犯した爆発事件のせいで家族を失って復讐に燃えるニューヨーク市警の刑事KD、そのKDと不倫関係にあるメイヒューも乱入。

『ジョン・ウィック』シリーズらしさだなと思うのはそうした座組を演じる俳優の中で、しっかり格闘技経験のある人が起用されるところですかね。

とくにイェンを演じた“ニュン・ケイト”はベトナム俳優で、格闘技経験が豊富(総合格闘技を昔から趣味でやっていたらしい)。おそらく今作の顔触れの中でもピカイチで圧倒的な身体能力を見せていたのではないでしょうか。やっぱりプロのアクションに勝るものはないです。

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キアヌ・リーヴス抜きは難しい

新しいジャンルをこのフランチャイズに投入してみせた『ザ・コンチネンタル』ですが、個人的には全体としてやや散漫な出来栄えだったかなとは思いました。

そもそもこのシリーズはさっきから言っているように、世界観の作りは荒くて、ツッコミを入れようと思えば無限にできるくらいに粗雑な作品です。それを映画シリーズでは“キアヌ・リーヴス”という最強の柱を立てることで強引に成立させており、あくまで「キアヌ・リーヴスだから、まあいいか」で許されているところが多々あるものでした。

今回、“キアヌ・リーヴス”抜きになったことでこの世界観を引き締めるものがなくなってしまい、どうしても散らかり始めると収拾がつきません。

同じ拡張性を試みようとしているアクションシリーズと言えば『キングスマン』がありますけど、それと比べると、この『ジョン・ウィック』シリーズはバカバカしさと真面目さのバランスのとり方に苦労している感じがあります。“キアヌ・リーヴス”抜きでそれを成り立たせる確定コンボを見つけられていないような…。

スコット兄弟の復讐劇も本来はシリアスなもので、そこにこのバカバカしい世界観設定を混ぜると陳腐に思えてしまうし…。それでいて作中では「チャイナタウンvs黒人道場」みたいな寄り道も多く、なかなか安定した軸が見えてこないし…。

あと、キャスティングとしてやっぱり“メル・ギブソン”はマズかったと思います。今作の“メル・ギブソン”が演じるコーマックは女性差別・人種差別など徹底して最低野郎なわけですが、“メル・ギブソン”本人がつい最近も同様の問題が指摘されていて、全然反省してもいないことが報じられているわけです。そういう人をこうやって起用するのは現実問題の矮小化に作品が加担していることになりかねないでしょう。

個人的に本作で一番興味を惹かれるキャラクターは、双子の暗殺者ヘンゼルとグレーテルだったかな。片方を演じた“マリナ・マゼーパ”『マリグナント 狂暴な悪夢』でアクロバティックな動きで恐怖を見せつけてきたあの人ですよ。この暗殺者の人生がもっと知りたいな…。

それに、私が一番スピンオフにしてほしいのは、あの裁定人ですね。常に謎めいている裁定人(今回は最後にあっけなく殺されますけど)。この世界観をこの裁定人目線で描くとどうなっているのか、そういう今までにない反転するようなアプローチで世界を掘り下げるのもいいのかなと思います。

その場合でも“キアヌ・リーヴス”を超えるインパクト大の主役をピックアップしてこないといけないので、なかなか大変でしょうけどね。

『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 63% Audience 80%
IMDb
7.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
4.0
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関連作品紹介

『ジョン・ウィック』シリーズの作品の感想記事です。

・『ジョン・ウィック パラベラム』

作品ポスター・画像 (C)Lionsgate Television

以上、『ザ・コンチネンタル ジョン・ウィックの世界から』の感想でした。

The Continental: From the World of John Wick (2023) [Japanese Review] 『ザ・コンチネンタル ジョン・ウィックの世界から』考察・評価レビュー