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『ウォークラフト』感想(ネタバレ)…世界で最も売れたゲーム実写映画ですが、何か?

ウォークラフト

世界で最も売れたゲーム実写映画ですが、何か?…映画『ウォークラフト』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Warcraft
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年7月1日
監督:ダンカン・ジョーンズ
ウォークラフト

うぉーくらふと
ウォークラフト

『ウォークラフト』物語 簡単紹介

滅びゆく故郷を捨てて安住の地を求めるオークの戦士たちは、平和な王国アゼロスに侵攻を開始した。オークにとってはこれは生存のために避けられない最後の手段だった。対して人間たちは自分たちの国を守るため、オークとの全面戦争を決意。双方の戦力が揃い、間違いなく甚大な犠牲がでることは確実。一方、人間との戦いに疑問を抱く1人のオークが、血を流すだけの戦争を阻止するためにある決断を下す。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ウォークラフト』の感想です。

『ウォークラフト』感想(ネタバレなし)

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日本の皆さん、初めまして

日本では人気ゲーム「バイオハザード」の実写映画シリーズにして、いよいよ最終章とされる『バイオハザード ザ・ファイナル』が好調に大ヒットしています。

ところで今年はゲーム実写映画の歴史において大きな出来事がありました。ゲーム実写映画の興収の記録を“ある作品”が塗り替えたのです。

その世界で最も高い興収を記録したゲーム実写映画が、本作『ウォークラフト』です。世界全体の興行収入は約4億3300万ドル。それ以前の1位は『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』(2010年)の約3億3600万ドルだったようです。ちなみに『バイオハザード』(2002年)は1億200万ドル、『バイオハザードV リトリビューション』(2012年)は2億4000万ドルでした。『バイオハザード ザ・ファイナル』のほうはアメリカ公開がまだなので、どうなるかわからないですが、前作を見る限り、4億を超えたりはしなさそうです。

えっ、そんな映画、公開されていたの?」と大多数の人は思うでしょうが、日本でも7月にひっそり公開されていました。なぜこんな扱いが小さいのか…それもそのはず、日本では「ウォークラフト」というゲーム自体の知名度が低すぎた。1994年から10作品を超える歴史あるシリーズなのですが、中国語版・韓国語版はあるのに日本語版はないのです。なので、映画『ウォークラフト』も日本では「誰だお前」状態であり、日本の興収が約65万ドルで終わったのも致し方ない…。やっぱり知名度って大事なんだな…。

「でもさすがにゲームを全然知らないから楽しめるのかな」と心配しているなら、きっとたぶん大丈夫ですよ(お気楽意見)。雰囲気としては『ロード・オブ・ザ・リング』や『ゲーム・オブ・スローンズ』みたいな王道ファンタジー路線であり、そこまで違和感もなくすんなりと見られると思います。

映像クオリティも映画らしく非常に豪華絢爛で、相当な製作費がつぎ込まれたことが窺い知れます。制作は「派手な大作なら任せろ!」でおなじみ(いや、本当に公式でこんな太鼓判は押していないでしょうけど)のレジェンダリー・ピクチャーズ。今回は怪獣や巨大ロボットは出てきませんが、圧倒的な世界観を持つハイ・ファンタジーを見事に映像化しています。

剣と魔法、人間ではない種族、独自の文化…これらの要素で体のファンタジー需要センサーが反応するなら、相性は抜群。ファンタジーな世界観が好きな人には見逃すのはもったいない映画だと思うので、気になる人はぜひ観賞してみてください。

しいて問題を挙げるならば、有名な俳優をあまり起用していないので、キャストで宣伝することが全くできないことです。たぶんこれは宣伝側も相当に苦労したはずで、正直、打つ手はなく、そのまま公開に至った感じも…。“ベン・フォスター”とか実力のある俳優が出ているので、決して演技が見ごたえないわけではないのですけど、いかんせん客引きにならない…。

こういうときこそ、ファンタジーファンのコミュニティが支えてあげるべきな気がします。感想を書くなり、頑張って布教活動しないと…。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ウォークラフト』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):アゼロスの平和は終わる

オークとヒューマン同盟(アライアンス)は戦い続けていました。緑の邪悪な魔力「フェル」の恐ろしさを知らずに…。

オークの族長であるデュロタンは、身ごもって腹の大きくなった妻の傍に寄り添います。この子の未来のために…。

ある日、オークの全氏族が集結し、戦いに備えていました。フロストウルフ氏族の代表としてデュロタンと、その副司令官であるオーグリムも一緒です。その大勢の中には強力なフェル魔法の使い手であるグルタンとその部下のブラックハンドもいました。

グルタンは魔法でを完成させ、そこから大群(ホード)を送り込もうとしており、生贄を犠牲にしてついにそれを実行します。緑の光が門を形成。一斉にオークたちがなだれ込みます。

しかし、門をくぐったとき、デュロタンの妻は苦しみ、子を産みます。その子は最初は息をしていませんでしたが、グルタンの魔法で息を吹き返し、産声をあげます。

一方のアイアンフォージ。ストームウィンドの騎士である人間のアンドゥイン・ローサーは、警備隊が襲われたので王に招集されます。城では怪しい奴を尋問。若い魔術師のカドガーという男で、遺体を調べさせてくれたら情報がわかると言います。試しにやらせてみると、守護者のメディヴを呼ぶべきと進言。

さっそくレイン王に報告します。「あれはフェルです」とカドガーは説明。強い暗黒の力を確認できる…と。

不穏な空気に対処するため、ローサーとカドガーは雪山を越えます。目指すはメディヴのもと…。

そのメディヴの書庫でカドガーはフェルについて言及します。それは命を食らい、力の源とする恐るべき魔力のことでした。代償も大きく、アゼロスの地には存在しないもののはず。

その頃、王は周辺に現れたという、狼の背に乗った巨大な存在への対処に慌てていました。そんな存在は見たことがなく、王国の存続の危機です。

ローサーとカドガーは兵団を連れてエルウィン・フォレストに向かいます。そこには確かにフェルの痕跡があり、メディヴも信じられなさそうです。そのとき、攻撃を受け、体格の大きい存在が容赦なく斧を振り回してきます。

人間とオークの対決が始まりました…。

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脚本も変える監督のゲーム愛

最新の技術で映像化された壮大な世界観が売りなのは言うまでもない本作『ウォークラフト』。

それを見事に実現した“ダンカン・ジョーンズ”監督、実はかなりのゲームマニアでした。「ウォークラフト」は20年以上のヘビープレイヤーであり、他のゲームにも詳しく、インタビューを見ているとゲームについて語るときは実に楽しそうにしています。というか、以前はゲーム会社に勤めていたらしいですね。だったら適正というか、もうこの映画を監督するために今があるようなものです。

本作は製作初期の時点では、監督としてサム・ライミが手がける予定だったみたいですが、ダンカン・ジョーンズになって良かったのではないでしょうか。

熱狂的なファンであるダンカン・ジョーンズ監督は、まずすでにあった本作の脚本に「こんなの、ウォークラフトを何もわかってねぇ!」とダメ出し(多少、話を盛ってます)。その理由は、初稿の脚本では、人間が善で、オークが悪という単純な対立構造になっていたから。ダンカン・ジョーンズ監督いわく、「ウォークラフト」の魅力は自分がプレイヤーとして両サイドのどちらの視点の立側からでもプレイできることにある!と熱弁。そして、本作の完成形の脚本となりました。確かに善悪が明確な方が感情移入しやすく、カタルシスも得やすいですし、一般受けを狙うならそれがベターなんでしょうけど。ゲームファンであるダンカン・ジョーンズ監督はそれが許せなかった…。私はこのオリジナルを最重視する姿勢は素晴らしいと思います。

だからこそオークの夫婦の平凡な愛を感じさせるシーンから物語を始められるのですからね。あんなオークの姿が見られる映画、なかなかなかったです。

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ゲーム愛は良いけど…

ゲームファンだったら絶対ゲーム愛のある監督と脚本が良いに決まってますから。私は「ウォークラフト」を遊んだことないのが悔やまれるくらい、ファンだったらさぞかし嬉しいだろうなと。実際、小ネタもたくさん詰まっているみたいですし。

でも、ゲームを知らなくても楽しめる部分も多数あったとは思いますが。個人的には、ゴア表現をそれなりに頑張っていたと思います。あと、魔法の表現がクラシックで楽しかったです。

しかし、本作はゲーム愛は詰まっているけど、それ以外の目新しいものがないのが最大の欠点。

そもそも「ウォークラフト」の世界観自体は特別に変わっているものはないので、どうしても「どこかで見たことある絵」になってしまいます。映画化するのがもう少し早ければ評価も変わったでしょうね。

また、世界観以外にも本作がイマイチ物足りない理由として、ゲーム的な面白さを映画で体験させられないことにもある気もします。

本作は、中世ヨーロッパ風で多くの種族が登場するファンタジーな世界観をもって『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』シリーズと比較することもできますが、それらとは決定的に違う点があります。それは原作がゲームだということ。ファンタジー小説の映画化なら世界観を再現し、ドラマを描くことが重要です。でも、ゲームはこれに加えてもうひとつ、ゲーム的な触って遊ぶエンターテイメント体験をどう映画に落とし込むかが難しさとして立ち塞がります。そこは、やはり本作でも実現しきれていないでしょう。もとはストラテジーゲームですが、映画では戦略性を見せる戦いも乏しく、ただの殴り合いという感じだったのが残念です。

ゲーム愛だけでないもうひと工夫で、ゲームを知らない一般の映画ファンを楽しませることができていれば…惜しい映画でした。まあ、口ではいろいろと好き勝手に感想と称して文句を言えるのですけど、いざゲーム愛以外の面白さを考えろと言われると、ノーアイディアなのですけど…。やっぱり『ゲーム・オブ・スローンズ』方式で、エログロで最初は客を寄せ集めるしかないのか。それだとリスクもありすぎるし…。案外こうなってくると、映画という媒体自体が制約にしかなりませんね。
3部作を狙っているみたいなので、次回に期待しています。

『ウォークラフト』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 28% Audience 77%
IMDb
6.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2016 legendary and universal studios

以上、『ウォークラフト』の感想でした。

Warcraft (2016) [Japanese Review] 『ウォークラフト』考察・評価レビュー